ゲストはTBSプロデューサー・角田陽一郎氏

 

和田裕美氏(以下、和田):WADA CAFEのオーナー、和田裕美です。ヤル気満々の人も、ちょっとテンション低めな人も今日が笑顔に染まるよう、いっぱいワクワクをお届けします。改めましてこんにちは、和田裕美です。

今日はゲストをお迎えしております。ラジオにはちょっと珍しい、テレビの業界からのゲストになります。今日はバラエティプロデューサーの角田陽一郎さんです。

『さんまのスーパーからくりテレビ』『金スマ』『EXILE魂』など、みなさんこれ聞いたら絶対「知ってる! 知ってる!」ってのを作っちゃってる人なんですよね。どんな天才かと言いますと、東大を出られてて、トントン拍子で、すごい人生を歩まれてるんじゃないかってすごい肩書きをお持ちなんですが。

この度、その中身の極秘ネタ、秘密を1冊の本に書かれたということで、今回その本の背景から、テレビの内容とかも含めて、ちょっとお聞きしたいと思っています。

テレビの世界だけじゃなく、私達の日常の中でどんなふうに生きてみたら楽しく、おもしろい発見があるのかということも、角田さんはお話してくださると思いますので、そんなヒントを今日は探っていけたらなと思います。和田裕美の和田カフェ、どうぞ最後まで楽しんでいってください。

「和田裕美のWADA CAFE」、今日はバラエティプロデューサー角田陽一郎さんをお迎えしました。今日はありがとうございます、こんにちは!

角田陽一郎氏(以下、角田):あ、こんにちは。

和田:突然すみません(笑)。お昼の番組なので、「こんにちは」ということで。

角田:いえいえ、すみません。よろしくお願いします。

本人も鼻につく「東大卒」「天才プロデューサー」のプロフィール

和田:角田さんのプロフィールということで、東京大学文学部西洋史学科卒業、1994年TBSテレビ入社以来、21年間バラエティ制作部に所属。

手がけた番組は……すごいですね。『さんまのスーパーからくりテレビ』『金スマ』『EXILE魂』ほか、映画監督もされて。

角田:映画監督もしてます。

和田:すごいです。今は、夜の番組『オトナの!』でユースケ・サンタマリアさん、いとうせいこうさんがMCを務める番組を企画制作されていると。

いろいろ本も出されてまして。この夏にですね、『成功の神はネガティブな狩人に降臨する』という本を出されたということで。角田さんのプロフィールを見ると、鼻につくプロフィールといいますか(笑)。

角田:鼻につきますよね!

和田:これ私、鼻につくのをまず最初に言いたい! みたいな(笑)。

角田:これ本当に鼻につくなって僕も思ってて。本の帯を見ると、「『金スマ』や『EXILE魂』、『さんまのスーパーからくりテレビ』を手がけたTBSの天才プロデューサー」って書いてあるんですよ。

和田:東大卒ってわざわざ書いてあって!

著書『成功の神はネガティブな狩人に降臨する』のテーマ

角田:『成功の神はネガティブな狩人に降臨する』は、「レッテルで人を判断していたら、全然おもしろくないですよ」っていう本なんです。

成功の神はネガティブな狩人に降臨する――バラエティ的企画術

そういう本を出したいって言って、出版社さんがじゃあ出しましょうってなったんですけど。「こういうレッテルを貼らないと出版物として売れないから、こういうレッテルを貼りましょう」って言われちゃったんです。

和田:なるほど!

角田:そこが僕ねえ、出版業界さんにひとこと言いたい。

和田:言ってください! その話でいいのかわかんないけど、言ってください!

角田:こういうレッテルで人を判断してたら、おもろくないですよ。そうじゃなくてもっと、自分でその人と話してみたり、自分でその場所に行ってみたりして、体験して好きなら好き、嫌いなら嫌い、つまんないならつまんない、おもしろいならおもしろいを判断するのが、バラエティ的な生き方。

そこから企画が生まれるし、おもしろい人生になるんだよっていう本なのに、この本の帯には全部そういう、僕のレッテルしか書いてなくて(笑)。そこはちょっと本気で不満で。

和田:鼻につくってのは冗談だったんです(笑)。

角田:僕が鼻についてるんです。嫌ですもん、だって。

和田:しょっぱなから言ったらどうかなって。

角田:いやいや、大丈夫です。僕もね、本当に鼻につくなって思ってて。

和田:でも、ご本人がそう言うと読み手は読みやすい。

角田:そうですか?

和田:そうなんですよ。あまりにも条件が揃い過ぎてる感が角田さんのプロフィールの中にあって。

そうすると「この人、最初っから頭良くって、アイデアあったんじゃねえの?」みたいな感じの視点から、そこから角田さんが本の中では降りて「俺、オワコン」みたいな話が途中で出てくるあたりから、すごい人でも途中で席がなくなって降ろされた話があって。

そこからまた気付きがあって、そして新しい番組を作っていくって、ストーリーの起承転結のおもしろさみたいなのが本の中にあるので。最初に「この人、鼻につくプロフィールですが(笑)。実は落ちてるんですよ」ってことを伝えたい。

物事を俯瞰して見ていた少年時代

角田:本当ですね。まあ僕の書きたかったことを言っていただけたんですが、本当にそんな感じです。すごい人っていうかすごくない人っていうか……でも勉強は昔から死ぬほどできたんですよ。

和田:やっぱり!

角田:もう、偏差値3桁ありましたもん。

和田:へっ!?

角田:3桁。

和田:そんなにIQ高い方って……。

角田:いや、IQ高いかどうかはわかんないですけど。

和田:記憶力が激しく(良い)?

角田:いや、記憶力は全然。ただ何にでも興味があるんですよ。要するに、宇宙物理学とアダルトビデオとかに、並列に興味があるんですよ。

だからロックも興味あるし、クラッシックも興味ある。そうするとクラシック聴いてる人がロック聴かないって、なんで聴かないでシャットダウンしちゃうんだろう、つまんねえなって思っちゃう。

例えばこの間も話してたんですけど、幼稚園の時に、お母さんと話してて「子供はどうやって生まれるの?」みたいな話になると「コウノトリが連れて来る」みたいな話あるじゃないですか。ああいう話を聞いてる時に、5歳の僕は「論理的に成立してないな」って思ったんですよ。

和田:5歳で!?

角田:5歳で。要するに、「お母さんの顔に似た赤ちゃんが出てくるのはわかる。お父さんの顔に似たのが出てくるのはその情報をどう伝達するんだ?」って。

それが、大人たちの説明が論理的に矛盾してるってずーっと思ってたんです。

和田:5歳では「論理的に」って言葉はまだ知らないから……。

角田:まだないです。「つじつま合わないじゃん!」って思ったの。

和田:そっか。良い悪いとか、好き嫌いとかじゃなくて、もうちょっと俯瞰した目線で物事を見ているから、「お母さんが嘘付いてる」とか「大人って何なんだ」じゃないんですね?

角田:そう!「嘘付いてるお母さんなんてのも、なかなか味があるよね」って思っちゃうんです。

和田:5歳で。

バラエティ番組のプロデューサーになった理由

角田:5歳で。だから学校の先生でいうと、例えば教育って「良い教育を受けるのが教育」みたいなのがあると思うんですけど。

すごい教育者として不適格な先生とかも1、2回くらい体験したほうが良いんですよ。6・3・3の12年のうち、逆に良い先生って2〜3人に出会えれば良いと思うんですよ。人生ってそんなもんだから。

後の9年間くらいはろくでもない先生で、その先生の「あの先生、嫌だな!」ていうのを友達と共有して、それをどう乗り越えるかっていうのが人生だと思うんですよ。

だから、ビジネス本とか指南本とかって全部「こうやるとあなたは豊かな生活になれますよ」とか、「こういうテクニックがあるとあなたは全部すばらしい人生になりますよ」みたいなことが書いてあるんですけど、「いやいや、ダメなことも経験しろよ」というか。

和田:そうですよね!

角田:そう。「それだとダメなんだな」とか「あいつムカつくな」っていうのを経験した上で、自分がどう行動するのかっていうほうがおもしろくないかなって思うんです。

和田:そうですよね。失恋しないと恋のことわかんないですもんね。

角田:そうそう。だから、そこを排除してる世の中みたいなのが僕はすごい嫌で、自分はバラエティ番組のプロデューサーになったんですけど。

今、自分がバラエティプロデューサーって名乗ってるのは、番組だけじゃなくてそういう生き方としてバラエティに様々なことをやるということで、なんでもインプットしちゃっていいんじゃないかと思ってるからなんです。

「くだらない」は最高のほめ言葉

角田:昔、関西大学の教授でもう亡くなっちゃった木村(洋二)先生っていう僕の尊敬する方が、笑い測定器ってのを作ったんですよ。その測定器で測定して、お笑いのレベルが出て。

そのレベルの単位は「アッハ」っていうんです。「aH」って書いて「アッハ」。「1アッハはこれくらいの笑い」とか。「10アッハはこれくらいの笑い」とか。ちなみに、1000アッハになるとギガになるので「GaHガッハ」になるんですけど(笑)。

和田:なんだそれ(笑)。すごい真面目なことをやってるんだ。

角田:くだらないんですけど。その先生は、笑い測定器を作って笑いの尺度ができたら、例えば『お笑いワールドカップ』ができると。

そうするとパレスチナとユダヤも、笑いで争って勝ったほうがエルサレムを獲得できる、みたいな。

戦争を無くすために『お笑いワールドカップ』をやるのが夢だって木村先生は言ってまして。それって最高だと……。最高のブラックジョークであり、最高の平和というか、笑わせたほうが勝ちという。それ、すごいおもしろいなと思って。

和田:それ、引き継いでくださいよ。

角田:細々とは協力してるんですけど。笑い測定器ってのは本当におもしろいなって思って。おもしろいを最高のレベルだと思って生きていくと、自分が老けたとか太っちゃったとか関係ねーやって。

和田:全部ネタになりません?

角田:ネタになりますよね、ええ。

和田:ちょっと崩れてたほうがおもしろいし、ツッコミやすいですもんね。

角田:だから僕らテレビ業界人には、おもしろいより上があって、一番僕らが絶賛するときって「くだらない」なんですよ(笑)。

和田:ああ。何か高度すぎる、それ!

角田:もう「うわっ、くだらない」って言ってるときって僕ら最高で。ベストおもしろいは「くだらない」ですね。

和田:でもそれって本当に「くだらない」んですか?

角田:何て言うんですかね? 本の中に書きましたけど、「戦争になったら要らない」って言われるものこそ、価値があるんじゃないかなって僕は思っていて。なので僕は、バラエティでくだらないことを職業にしたんですよ。

テレビやラジオからの情報の受け取り方

和田:ああ、そっかあ。私ちょっとバラエティって、わかり過ぎてわかりにくくなってるって思ってたの。

角田:ああ、鋭い!

和田:画面に全部テロップで説明ができるからわかりやすいんだけど、頭で考えないからわからない。わかりやすいことがわからないことをテレビがずっと作ってる感じがしてたんですよ。

角田:鋭いです。おっしゃる通りです。僕も岡村靖幸さんをゲストに呼ぶ機会があって。僕は岡村さん大好きなんで出ていただこうと思ったんですけど、若いディレクターとか知らない人がいるんですよ。

そうすると、岡村靖幸さんってどんな人だっていうナレーション原稿を書いて、ナレーションで説明しようとするんですよ。だから僕、怒るわけなんですよ。

岡村靖幸のすごさをお前の稚拙なナレーションで説明するなと。そんなのいらないと。岡村さんがテレビに出てしゃべって、1曲ギターを即興で弾いてるだけで、すごさがわかっちゃうから。その凄味だけを伝えろと。

それを見てすごいと思った視聴者は検索すればいい。そしたら「うわっ、この人本当にすごいんだ」って実感すると思うんです。

それからiTunesでCDを買ってもいいし、ライブに観に行ってもいいし、ファンになってもいいし。あるいは嫌いだって思ってもいいし。

だからその感性っていうか、最初のその気持ちを惹起させる装置がマスメディアなのに、今はどっかで惹起された今話題のものを、話題だからといって後からテレビやラジオに連れて来て番組作ってるからつまんないんじゃないかなって。

和田:考えなくなっちゃって。うちの姉が「ココナッツオイルが良いんだ」って言い始めてて、「お姉ちゃんさ、ココナッツオイルが何で良いかって調べたの?」って聞いたら「知らない」って。テレビの影響って、絶えず良いっていうものに飛びつく視聴者みたいな感じになってる気がする。

角田:テレビがちょっと間違ったこと言ってると、Twitterとかで「間違った!」って糾弾するじゃないですか。実は自分で「適度に疑って、適度に信じりゃいいんじゃないかな」って思うんですよ。

それをマスコミが言ってるから「正しい」とか「間違ってる」っていうのは、自分で判断しなきゃいけないのに、テレビのほうで判断してること、ラジオのほうで判断してることを過剰に「正しい」と信じすぎたり、間違ってるものは徹底的に叩くとか。いや、自分で判断すればいいだけなんじゃないかと思うんです。

和田:そう、自分自身の自分の頭で考えることが大事。だから、結果的にいろんなことを経験して、この本の中で「いろいろ経験して選べ、自分が正しいのを選べ」って言ってた生き方を角田さん自身がされてるんですよね。

角田:してるし、今後もしたいですね。

和田:そうですよね。冒頭は箱根の九頭龍竜神社のことや……。

角田:(笑)。和田さんとお会いした。

和田:神社のことを書いてあって。この帯にあるすごい感じから、冒頭から「あれ? この人、神社行ってるんだ」みたいな崩し加減がまた角田さんっぽい。

角田:企画術って言ってるのに、最初「あなたの企画が通る方法は神頼み」って書いてあるんですよ(笑)。

そんな企画の本、普通ないじゃないですか。そういうふうに、本自体の構成がバラエティ的にはなっています。

和田:ああ、そうか。これからはまた本も出したり、いろいろ新しい番組を作ったり、制作は続けていかれるんですか?

角田:はい。バラエティ的○○ってのでどんどん出しちゃおうと思って。「バラエティ的勉強法」とか。「バラエティ的東大合格必勝法」とか出しましょうか?(笑)

和田:それいい! たぶん効果あると思います! よろしくお願いします。楽しみにしてます(笑)。

角田:どうも、ありがとうございました。

和田:今日はどうもありがとうございました。