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株式会社ラクスパートナーズ×村上臣氏 対談(全2記事)

2023.08.31

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中途募集増加により「転職前提」に変化したエンジニアのキャリア “人が居着く企業”になるために見直したい「やりがい」と「働きやすさ」

提供:株式会社ラクスパートナーズ

エンジニアの不足が叫ばれている一方で、育てたとしてもすぐに辞めてしまうエンジニアが多いのも事実です。では、エンジニアとしてキャリアを積むには、どのような手段があるのでしょうか。また、それに対して企業はどのように対応すべきなのでしょうか。 多様化するエンジニアの働き方について、『転職2.0』『稼ぎ方2.0』の著者である村上臣氏と、派遣エンジニアという働き方を提供しているラクスパートナーズ社取締役の森大介氏が、それぞれの立場からエンジニアの働き方と企業側の向き合い方について語ります。まずは最近の日本のエンジニアキャリアの動向について。

キャリアに対する日本のエンジニアの動向

ーーまずは村上さんにお聞きします。村上さんは『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』などの本を出されているのでエンジニアの動きをよく見ていると思いますが、最近の日本のエンジニアの動きはどうですか?

村上臣氏(以下、村上):そうですね。日本で唯一流動性があるなって感じるのは、ITエンジニアです。副業を含めてですが、今は上場企業の半分ぐらいが副業OKになっていて。エンジニア不足ということもあって、副業しているエンジニアの数は相当増えているなと肌で感じています。

流動性に関しても、3年、5年ぐらいで区切って転職を考えている世代が、若ければ若いほど比較的増えてきていて。学生と話していても、昔は普通の就職相談でしたが、最近は「1社目だったらどこがいいですか?」っていう質問に変わっているんですよね。転職することは前提で、最初に経験を積む「キャリアのファーストステップとしてはどの会社がいいと思いますか、村上さん?」という質問に変わっていて。これはだいぶ変わったなと思うんですよ。

今までも(転職は)していただろうけれど、「20代に1回するかしないかぐらいかな」だったところが、例えば3年とか5年とか、自分の中である程度区切りをつけて「1社目で学べるところは学んで、そこからステップアップしたい」みたいなことを強烈に感じる、いわゆるキャリアオーナーシップを持っている若い子が増えた印象はありますね。

ーーそれはやはり日本の企業が変わりつつあるみたいなこと(の現れ)なんでしょうか。昔は終身雇用なりなんなりで、「一生そこの会社でやる」っていう考え方もあったと思うんですが、会社自体がいろいろ変わってきたというイメージですか。

村上:そうですね。特にDXの号令の下にIT需要が高まり、中途のポジションがたくさん市場に出るようになったんですよね。昔は(求人が)「出てもちょっと」とか「たまに」っていうものだったのが、恒常的にポジション募集しているのに加えて、スタートアップが増えて「エンジニアが欲しい」と(なっている)。

市場的にはオープンポジションの数が昔よりかなり多くて、その半数以上がたぶんエンジニアなんですよね。PM、エンジニア、デザイナーはIT業界の中で“3大流動性のあるロール”なので。需給バランスにおいて一番不足を感じるのはPMなんですけれど(笑)。やはり(求人)数でいうとエンジニアがたぶん一番多いと思います。

ーー逆に未経験者は今どうなんでしょう。少なくなっているようなイメージですか?

森大介氏(以下、森):少なくはないですね。弊社はエンジニア未経験の方を採用して育成して派遣していくビジネスモデルの企業ですが、(応募してくる方は)やはり競合も受けていて、「ラクスパートナーズはそのうちの1社です」という人が多いです。

あとはITスクールとか、働きながら人材紹介がサービスで付いているスクールに通って、通いながら転職をする人もいますよね。

ーー企業側の目線で考えた時に、未経験者の人を採っても「1社目、2社目」みたいな(転職を前提とした)話もあって。それでも(企業としては)新人から採っていきたいと思うのか、あるいはそういうことも考えると経験者を採っていったほうがいいのでしょうか?

:たぶん(基本的には)経験者を募集していると思うし、即戦力を求めている企業がほとんどかなって思っています。ただ一方で、経験者が採用できるかできないかでいうと、採用ブランドがないと経験者は採用できないので、経験が浅くても人を集めるしかない会社も出ているのかなとは思いますね。

ーー村上さんに「1社目どうしましょう?」と相談にくる学生は、1社目をどう選ぶものなんですか?

村上:だいたい2つのタイプがあるかなと思っていて。1つが、どれだけ自分で製品のインパクトを出せるか。細切れになった狭いスコープ、例えば「QAの一部だけやっています」とかじゃなくて、わりとちゃんと開発プロセスごとにバリュー出して、それをデリバリーしていく一連のプロセスをしっかり学びたいという人。

そういう人は「ゆくゆくはスタートアップとかそういうところで、リードエンジニアとして自社のプロダクトを直接ユーザーに届けたい」みたいな夢を描いている人が多いですね。

2つ目は、単純にもうとにかくステップアップして、「どっちかというと給料上げたいです」というタイプ。要は自分の価値が上がることやスキルベースで考えた時に、「今だったらAIですよね?」「LLMやったほうがいいですかね?」みたいな。どんどんエンジニアとしてタグを増やして、なるべくいい給料のタイミングを得ようとするタイプ。だいたいこの2タイプになる感じがしますね。

ーー2タイプになるというところで、例えば給料を上げていくという話になると、それは転職しながら上げていくイメージになるんですか?

村上:そうですね。基本的には転職しながら。もしくはスタートアップの世界に飛び込んで、ストックオプションで夢を見るような人はいますよね。

ーーエンジニアのキャリアパスの話になると、エンジニアでスペシャリストになっていくパターンと、いわゆるゼネラリストとしてキャリアをどんどん上げていくパターンがあると思います。どんどん給料アップしていきたいのならPMやCTOになったほうがいいんじゃないかみたいなところもあると思いますが…。

村上:「CTOを目指したい」って言う人は、大学生でもけっこういますよね。「ゆくゆくはCTOとかVPoEみたいなところにはなりたいです」みたいなことを言う人はたまにいます。

ーー給料面的なものもあると思いますが、その学生は「自分で何かを作りたい」とか「やりたい」ということが何かあるのでしょうか。

村上:たぶんビジネス、経営に興味が強いんでしょうね。エンジニアからスタートするけれども、やはりどちらかというと経営側というか。大きなビジョンを描いて出していくところに自分のスキルを掛け算して、ユーザーインパクトを出したいと思っている。ビジョンが大きい人はそんなタイプですよね。そのあたりの相談は、学生よりも20代後半ぐらいの子からが一番来ますね。

エンジニアとして20代を過ごして、テックリードぐらいになってきていて、だいたい(いろいろなことが)わかりました。次(のキャリアを考えた時に)、そこからさらにピープルマネジメントを得て、大きい組織でエンジニアをやっていくのがいいのか。もしくはPMとか、どちらかというとビジネス寄りの(キャリアを進める)ほうがいいのか。どうしようかと悩んでいる人はけっこういますね。

ーー一方でいわゆる派遣、ラクスパートナーズのところに来る、応募してくるエンジニアは、どういうキャリアパスを持っている感じでしょうか?

:未経験なので、「今の現職ではなくて違う仕事がしたい」(という気持ち)から始まっていると思うんですよね。「現職を辞めて転職をしよう。じゃあなにをしようか。未経験だ。あっ、ITエンジニアは未経験でもなれるのか」(というところ)から転職活動をする求職者も多くて。そこから「未経験だったらどの会社を選ぶか」といった時にラクスパートナーズを選んだり。

弊社は派遣なので、例えば職種がJavaのエンジニアだったり、インフラのエンジニアだったりAIのエンジニアだったりといろいろあるので、「あっ、その中からだったら僕はこれが合いそうだな」と選べる。

あとはいろいろな現場、例えば大企業やベンチャーに行ってみて、「自分はどういう企業に合いそうだな」というものを経験しながら、「自分のエンジニアのキャリアパスはこっちのほうかな」と探しているエンジニアも非常に多い印象です。

「なにがやりたいの?」と言うと、なにをやりたいって(いうのは)ないんです。だけど、「なんとなく年収500万、600万かな。30歳にはそれぐらいもらいたい」。ぼんやりしたところから逆算して、「どういうキャリアを積んでいくのが良いですか?」という相談はけっこう多いかなと思います。

ーーということは、最初は本当にぼんやりとして、(先のキャリアのことは)決まっていないけれど、そこ(派遣を経験すること)で決めていくみたいな。

:はい。

ーー中には「テックリードになりたい」というキャリアパスを決めている人もいますか?

:います。けれど(そういう方は)レベルが高いポジションなので少数です。学生の時にやっていたり、自分自身で勉強できる人はそっちの方向に行きます。だけど、そうじゃないエンジニアもたくさんいますね。

ーーずっと派遣でやりたいエンジニアももちろんいる?

:いますが、派遣でやりたいというよりは、優秀なエンジニアであればあるほど「僕はどこでも転職できるので派遣でいいです」という感じもあります。

「いつでも転職できるし、たぶん前の現場の人にも声を掛けたらすぐに転職できるし、『来てください!』って言われると思う。なので別に僕はどこでもいいんですけど、今の現場やラクスパートナーズに不満はないのでここにいます」って。そういう方も多い気がしますね。

村上:めちゃくちゃいい話ですね。

ーー(そういう人は)いいところを見つけたら……。

:(別のところに)行くかもしれないです。けれど、(もともと)今のエンジニアは転職ありきの働き方になっているので、もうそれ自体はしょうがないかなと。ただ、それが起きないようにするには、それ(が起きないようにする)ぐらいのレベルであったり、彼らのキャリアに市場価値(を与える)であったり、先ほどのタグが増えるような現場を探してあげることで、弊社に残ってくれる。1つプラスになるかなと思います。

「働きがい」には2種類ある

ーーそうなると、エンジニアを雇う側の企業として、エンジニアを自分のところに入れるためにどういう手を打てばいいのでしょうか。

村上:エンジニアに限りませんが……。僕はよく働きがいの話をしていて、やはり働きがいのあるところに人は居着くんですよね。

働きがいって2つの要素でできていて、やりがいと働きやすさなんですよね。いかにやりがいのある直近の仕事にアサインメントするか。ここに成長実感はたぶん必要ですよね。

あとは特にエンジニア(について)は働きやすさ。リモートワークができたり、速いマシンがあるとか(笑)。生産性に関わるところですよね。コミュニケーションがいいとか、カルチャーがいいとか、そういう「働きやすさ」という定性的なものも含めて。

この2つががっつり合っていると働きがいがある職場ができて。ここにはもうエンジニアに限らず(居着くし)、「私はここでがんばろう」ってなると思うんですよね。

これはマシン(のスペックの問題)だけじゃなくて、例えばコミュニケーションの仕方とか。最近ではチャットツールを使っているところも多いですが、なんか一部には、常に「急かされている」とか言って電話してくる人もいるじゃないですか(笑)。

集中が切れると、(その集中力が戻るのに)ものすごい時間がかかるので。例えばノーミーティングデイがあるかとか、そういうところもやはり見ますよね。エンジニアの生産性を経営レベルでちゃんと意識しているかは、けっこう見られていると思います。

よくわからないミーティングに追われて、発言も求められず……。「だったら俺はコードを書いていたほうが会社に貢献するんじゃない?」って思うじゃないですか。

ーーラクスパートナーズさん自体は、エンジニアが働きやすい環境として、何か整えていたりすることはあるんですか?

:ラクスパートナーズでいうと、(エンジニアが働くのは)派遣先になってくるので。その視点でいうと、環境が整っている派遣先には(エンジニアは)長くいたがります。完全に分かれますね。そうじゃないところは「現場をすぐに切り替えたい」とやはり言われます。

ーー相手の現場にアドバイスしたりすることはあるんですかね?

:します。営業としてはそこに派遣し続けてほしいので、「エンジニアもこういうモチベーションです」と伝えます。ただ、先ほどお話にあった「経営レベルでそこまで(働きやすさを)考えられているかどうか」がやはりあって、直属の上長がマネジメントしてくれていても、経営レベルで会社の制度や雰囲気、仕事の進め方(をどう考えているかというところ)は、やはりエンジニア自身がすごく感じているようなので、それがある会社、ない会社によってぜんぜん変わってきます。

日本と海外の働き方にはまだまだギャップがある

ーー日本も働き方がけっこう変わってきたと思いますが、(その変化は)海外に追いついてきている感じなのでしょうか。

村上:僕の知り得る限り、まだまだ大きいギャップがあるかなとは思いますね(笑)。一番の根っこの原因は、やはりまだ流動性が足りないっていうところに尽きるんです。

例えば海外でSaaSのビジネスがすごく大きくなったり、デカコーン(企業)になったりしているのは……。アメリカでいうと、全職種で均すと、平均勤続年数って4.2年くらいなんですよ。そうすると、同じ業界で標準のツールがあったほうが、オンボーディングが単純に速いですよね。なので、こっち(の企業)に行ってみたら(使っているツールが)「Workday」で、こっちに行ってみたら別のツールでわからないとか(にならない)。

(アメリカの)ベイエリアは特に、プロダクトチームのやり方がほぼ標準化されているんですよね。カルチャーは会社ごとにかなり違いがありますが、日々の仕事に関してはほぼ同じツール、同じプロセスでできるので、流動性が高まっている。結果、それをサポートするツールもどんどん進化するという好循環ができていて、全体として生産性が上がっているところがあります。

日本はまだそこまで行っていない。進んでいる会社はけっこう整っているけれども、一歩外に出ると「Excel」を魔改造したようなもので(仕事をしている)(笑)。バグのトリアージをしていたり。そういうのを見ると、まだまだギャップがあるなという気がしますね。

ーーその流動性のところって、ツールの部分はもちろんありつつ、やはり日本の文化的な部分、あるいは国の施策的な部分もやはりあるのかなという気がしているんですが、どうやって解消していけばいいんですかね?

村上:これはだいぶ難しい話だと思います(笑)。日本の特徴として、すごくクオリティにこだわるところは良いところでもあり、悪いところでもあります。ともすると、近視眼的に見えているところを最適化したがるんですよね。そのわかりやすい例が戸籍の外字の話です。

外字であれば、全部をサポートするために……。昔はメインフレームで富士通は富士通外字があって、IBMはIBMみたいに、どんどん個別最適していった。これは基本的に経営のデシジョンなんですよね。なので「もうこれはここでいったん良しとしよう」というところ。

お客さんのことでも、すごくこだわるのはわかるんだけど、そこをこだわることで業績上がるのかというのが、たぶんキークエスチョンなんですよね。

上がるならやればいいし、そこは本当にバランスの問題で。かけている労力に対して、それがどれぐらい企業としての最終的な業績になるのか。このトレードオフをちゃんとできている経営が少ないんじゃないかという気がしています。

なので、QAにしてもすごく細かい指摘にひたすら対応すれば、まぁ確かにクオリティは上がるんでしょう。ただ、99パーセントを99.5パーセントにするのが、お客さんにとってどれぐらいのインパクトになるのか。ひいては、それは業績として返ってこないといけない。そこをちゃんと測れていますかというと、たぶん測れていないんですよね。

「やったか?」と言われるので、みんな「おぉ、やったぞ!」って言ってローンチするじゃないですか。そこを(一歩)引いた目でちゃんと見られているのか。そしてそこを測れているのかというところが、たぶん日本の課題だと思います。

ーー一方でラクスパートナーズさんは、派遣先にいろいろな企業があると思いますが、企業ごとのギャップはどう埋めているか、あるいは今後どうしていきたいかはありますか?

:そうですね。弊社はエンジニアの教育を、JavaやWebアプリケーションのフレームワークならSpring、インフラならLinuxと揃えています。企業が汎用的に使っているオープンソースを研修に入れているんですよね。

先ほどの汎用性の話に近いかもしれませんが、その技術を使っている会社が多いので、エンジニアとしては、例えば現場が変わったとしても、技術のスタックが変わらなければ活躍できるし、スキルも積み上がっていくのかなと。そうやって、なるべく幅広い企業に派遣できるような技術を選んで教育をしています。

C#を使っている企業さんも多いと思いますが、そこはあまりやらず、選択と集中でJavaやWebアプリケーションを選んでいるというのはあります。なので、派遣先が変わったとしても、技術が変わっていないのである程度は対応できる。

あとは文化の部分や仕事の進め方の部分で若干適応していかなきゃいけませんが、その適応の仕方は経験値としては積み上がっていくところになるので、さっきのタグ付けで言うとJavaとアジャイルとか、Javaとウォーターフォールとか、そういうようなところで業務の幅を広げていけると良いのかなと思います。

でもそうやって職務経歴書が積み上がっていくと、エンジニアの市場価値は上がっていくので、派遣事業としてもプラスですし、エンジニアのキャリアとしてもプラスにはなっているということが実現できているかなと思います。

ーー一方で、求める企業の側が、古いプログラミング言語や技術のものを改修しながら今も使っている時に、「この際、新しい技術に置き替えましょう」という仕方で、(新しい言語が扱えるエンジニアを)紹介したりするのか。あるいはレガシーな言語を扱えるエンジニアを派遣するのかでは、どちらなんでしょうか?

:そうですね、弊社の場合、例えばVBの案件だったら派遣しないですし、C#の案件は派遣しないと決めています。(技術ターゲットが異なります。)Javaのリプレイスをするのであれば、弊社のエンジニアのスキルは貢献できるので派遣をします。営業の立場からすると「どんなエンジニアでもいいよ」って(お客様は)言っているのに提案できないことがあるので(苦しい部分はありますけどね)。

(一方で、)エンジニア側もなんでもいいわけではなくて、「Javaを勉強してきたから、勉強してきたものを仕事として活用して、それでキャリアを積み上げていきたい」という人たちもたくさんいます。

それを「いやいや、もう仕事なんだから、なんでも(どんな技術の案件でも)やりなさい」というスタンスでは、やりたいことができずに、結局働きたくなってしまって、「だったら自分はスキルがあるので、そのスキルを買ってくれるところに転職をする」っていうかたちになりますよね。

ーーそうすると、COBOLのような使い手の少ないツールのプログラマーは派遣できなくなるので、そうなったらリプレイスして、汎用的にしていかないといけないという感じですかね?

:私はCOBOL出身なんですけど(笑)。

村上:私もCOBOL(わかります)(笑)。

:あぁ、そうなんですか(笑)。

(一同笑)

今となれば、(コボラーであれば)COBOLを必要としてくれるところだったらどこにでも行けると思います。でも、今の若いエンジニアの子たちは、けっこう目に見えるものを作りたかったりとかするんですよね。COBOLや金融システムを思い描いて「エンジニアになりたい」という子は多くないのかなと思っています。ITスクールであればRubyとかGoとか(学習できますね)。勉強をする材料もやはり多いし、どこにでも行けるような技術を学んでいる人が多いかなと思います。

日本のDXはフェーズは変わったけれど、あと一段階以上の変化が必要

ーー最近ではAIを学ぶエンジニアも多いのかなとは思いますが、市場的にAIのエンジニアは増えてきているんですか?

:弊社も機械学習エンジニアっていう分野で育成をやっています。(研修では、)Pythonや数学・統計を学習をしています。派遣先では、最近では、機械学習より、データ分析とかデータサイエンティストなどのオーダー、ニーズのほうがちょっと多い気がしますね。

村上:AIというとちょっと広すぎて。実際にモデルを作ったり、ファインチューニングできる人材は、世界でも見てもやはり少ないんですよね。市場としてもそんなにないんですよ。

そのために一握りの人たちがやっていればよくて。大多数は今お話にあったようにデータサイエンティストとか……。実際にダッシュボードを作るとか、アナリティクスをやるような半エンジニア、半アナリストみたいな人たちが、たぶん一番需要が多いところだと思うんですね。

それ以外は、ビジネス側の人がいわゆるノーコードのツールとかでブロックを組み立てて、「Power BI」みたいなダッシュボードを作るためにちょっと触るみたいな。だいたいこの3レイヤーになっているかなと思います。エンジニアの部分でいうと、真ん中の部分が、たぶん一番需要があるかなと思います。

ーー今、ビジネスユーザーも「ChatGPT」やノーコードを使う人がどんどん増えてきていますが、よりそうなっていった時に、エンジニアの仕事はどんどん減っていくものなんですかね。

村上:これはどんどんやってほしいと思うんですよね。なぜならエンジニアの活躍の場が増えるからです。今の日本のDX方面の課題って、結局ビジネスインパクトが出ずにPoC(Proof of Concept)だけで終わっちゃうみたいな。この10年、「やったけどあんまり効果ないよね」みたいなので元に戻るっていうことを繰り返しているんですよ(笑)。

逆に本当に課題をわかっている現場の人が、ノーコードなりそういうGPTみたいなのに触れて、「あっ、これすごいんじゃない?」って言ったならば、そこにエンジニアが加わることで、本当に継続性のある改善につながるんですよ。

ノーコードで作るのとかって、結局仕様が決まっているので、何か凝ったことをやろうとするとできないんですよね。プロトタイプを現場の課題を知っている人が作ってくれるのが、エンジニアとしては一番うれしいわけですよ。出戻りも少ないですし(笑)。RFP(Request for Proposal)が書きやすいじゃないですか。

「こんなの作りたいんだよね」って言ってエンジニアが入って、その会社に合ったものを作るという場合には、今以上にエンジニアが必要なので、やはり(エンジニアの活躍の場が)広がる。ここの部分がたぶん日本のDXを伸ばすために一番必要なパーツで。なので本当にどんどんやってほしいですよね。

ーー日本ではDXと叫ばれてだいぶ長いですが、ここに来てフェーズが変わったのかなという気がしているんですけど。

村上:今までの課題は新規事業をやる時と一緒ですが、推進室みたいなのができるんですよ(笑)。新規事業推進室とかDX推進室みたいなのが本社の中で要はプロジェクト的にできて。(でも)それだと現場の課題を持っている人と遠いんですよね。

その人たちが走り回って課題を見つけようとするんですが、やはり浅いところまでしか入れないわけです。本当に課題を抱えている人がやってほしいんですが、やはりリテラシーの問題だったりで、なにがどうなっているか、どう改善できるかがわからない。でもなんか紙はむっちゃ多い、みたいな(笑)。こういう遠さがあったんですよね。

それが、例えば自分たちでプロトタイピングできるようになって、そこに支援が入ったりすると、とりあえずどういうことができるのかはわかるじゃないですか。そうしたらスケールさせられるので。

東京都の副都知事に宮坂さん(宮坂学氏)がなってドライブしてやっているようなことがまさにそれで。要は、中央の支援体と現場にも教育をして、ユーザー部門に対して「こういうふうにやるとできるよ」「もしくは、こうやってやるとプロトタイプを作れるよ」みたいなことをやると、現場のほうから「これをこうやってやったら、こんなことができないんですか?」みたいなものが来て、ジョイントでいろいろインパクトを出せるようになってきた。

ーーラクスパートナーズにもDXについての依頼が来ると思いますが、どういう依頼が多いでしょうか?

:「推進室ができた後、なにをやったらいいですかね」と(笑)。やはり(そういう)フェーズだというのもあります。「プロジェクトを始めたいと思うんだけど、誰かいないか」みたいな(話があります)。けど、(そもそも)そのエンジニアのスキルの定義ができていないのが実感としてあって。

情シス、ちょっとITを知っている人がDXと言われて派遣されたんだけれども、結局情シス業務をやっているだけでDXになっていないということもけっこうあったりします。

我々としてはDXを推進したい会社にけっこう派遣していたりするんですが、本当にビジネスのところまで改善しているようなチームに入っている人はいるか? (というと、)印象としてはあまりいないです。だけども(要望の)声はすごく多いです。IT企業じゃない企業から「DXをやりたい」という話は多いです。

村上:期待感だけは高くて。

ーーフェーズは新しくなったけれど、その先に進むにはもう1つ何かが必要な感じはしているんですか?

:我々が今オーダーを受けているところや取引先のところからすると、もう一段階かもう二段階ぐらい何かが必要なのかなと思います。人なのか、DXに対する考え方の変更なのかはわからないんですけれど、まだ入りきれていない気がしますね。

次回につづく

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