2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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記者:フリーのジャーナリストで、田中龍作と申します。今回の事件で、日本政府側から中田さんに何らかの接触はありましたでしょうか。つまり、要請はありましたでしょうか。イスラム国側とのパイプはまだ健在でしょうか。
ハサン中田孝氏(以下、中田):日本政府から直接の要請は私にはございません。しかし、コンタクトはないわけではございません。また、イスラム国とのパイプにつきましても最初に申し上げましたとおり、私はこれまでできる限りコンタクトをしないようにしておりましたけれども、コンタクトが取れることは確認しております。
記者:それに関連する質問でございますが、日本政府は中東地域全体におきましてはどのくらいのコネクション、コミュニケーション、手段をお持ちでしょうか。かなりいろいろ話が通じる、コネクションとなる人はいらっしゃるのでしょうか。それとも、正直言ってゼロから始めなきゃいけないという状態なのでしょうか。
中田:もちろん、私自身がそれについて答えられる立場ではございませんけれども、一般論としましては、私自身も2年間サウジアラビアで専門調査員という立場で大使館で働いた経験もございますので。
日本にはアラビストというシステムがございまして、100人以上のアラブの専門家が働いております。その意味では、アラブに関する知識がないということはもちろん申せません。
しかし彼ら自身、アラビストが外務省の中で主流派かというとそういうことはございませんし、特にイスラム関係ですね。イスラム主義、あるいはイスラム学の専門家に対するコネクションが非常に弱いということは、残念ながら申し上げていいと思います。
記者:私はフランスのテレビ特派員です。先生はたくさんイスラムについての本をお書きになってらっしゃると思います。しかし今回の人質事件とイスラムは、本当は直接関係はないと私は思います。ムスリム、イスラム教徒である私の友人がこのようなことを言っておりました。
「今回イスラム国がやっていることというのは、組織を見ると傭兵ばかりだし、それぞれの社会の敗者でもある。遠隔操縦をされているような人たちばかりで、人間的な価値がまったくない組織だと思う」
そう彼は強く非難しましたが、この私の友人のコメントについてはどう思われますでしょうか。
中田:最初におっしゃったように、私はカリフ制というものを支持しております。これまでも、平和裏にカリフ制というものが樹立されることを世界に訴えてまいりました。
そして当然その意味は、カリフ制というものが本来イスラムが目指すべき体制、イスラムの合法体制ということですので、それが不在の現在においては、私自身も含めましてイスラム教徒の行っていることはすべて、ある意味では間違っているということになります。当然、イスラム国もそのひとつであるというふうに私自身は考えております。
記者:私の友人の言っていたことは、イスラム国は傭兵(の集まり)であって、元の社会の敗者が集まった、まったく人間の価値のないような組織であるということなんですが、そのコメントについては何か。
中田:その友人の方がどういう方か存じませんし、内容についてどういう根拠で言っているのか存じませんので、それについてはコメントはできません。
先ほども言いましたとおり、私のイスラム国への訪問というのは、もともと私の友人たちを訪ねていったものです。その友人たちはそういう方ではありません。これは長年の経験から言えることであって、イスラム国に加入する前の彼らの本国での暮らしぶりも、普通の人というよりもずっと正直で、教養が高くて、信頼できる人たちであったというのが私の個人的な感想です。
知らない人間については、私は何も言う理由はございません。
記者:北海道新聞のニシムラと申します。先ほどのお話の中で、日本の人道支援をやるのであれば赤新月社とトルコを通じて行うべきだということがありました。これが、実際に難民の方にどのような形で届くようになるか、もう少し詳しく……方法というか、どう届くかご説明いただきたいのと、それはイスラム国によるテロを防止する役割を担うのかどうか。これについていかがでしょうか。
中田:「難民」といった場合、国外難民と国内難民がございます。今回の提言というのはトルコおよび赤新月社を通じた、あくまでもイスラム国の支配地域についてのお話ですので、その意味では国内難民の話になります。
これはイスラム国からのレポートを読めばわかるとおり、イスラム国での生活は非常に苦しいものがございます。それは私自身も見てきたことですけれども、その場合の人道援助がどのようになるのか、それがテロを減らすことになるのかというのは……しかし、それは考えないというのが人道援助の基本ですので、直接の効果は必ずしも期待できないかもしれません。
しかし、先ほど申しましたとおり、こういうイスラム国の前身が出現したこと自体が、イラクおよびシリア……特にイラクですけれども、アメリカの空爆によって難民化した人たちに対する、保障がなかったことに対する恨みを間接的に減らすことになるともいえると思います。
具体的には食料・医薬品、およびシリアも冬は厳しい環境ですので暖房器具・毛布、そういった人道支援以外には関わりがない物資を配るというのが、具体的な方法としては一番思い浮かぶことです。
司会:11時に終わるということになっておりましたが、少し延長できますのでご安心いただければと思います。
記者:AFP通信社のハセガワと申します。これから中田さんは日本政府に対して提案すると声明でおっしゃっていましたけれども、これ以降政府に対してどういうアプローチを取るのか、ご予定を教えていただければと思います。
中田:私自身、いま必ずしも自由な身ではありませんので、とりあえずここで話したことを全世界に伝えてほしいと思います。それはもちろん日本政府にも届くはずですので。
記者:フリーのタケウチと申します。先ほどのAFPの方とも関連すると思いますが、今日までの報道を見る限り、日本政府はこの件に関しては交渉のパイプ役はいないと報じられております。
今回、先生がパイプ役になれるということをここで表明されたわけですので、もし先生のアピールに政府が反応しなかったとすれば、政府は人質を救出する気があるとお思いですか? (政府は)この間2ヶ月、後藤さんのことを放っておかれたわけですけれども、その件についてもいかがでしょうか。
中田:私が9月にイスラム国に訪問したとき、事前に外務省に間接的にですけどもお知らせしまして、協力することがあれば協力したいと申し上げましたけれども、そのときに外務省のほうからは、トルコの空港で「これは自己責任であって行かないことをおすすめする。行く場合もご自由に」ということで、協力はいらないということでした。
もちろん私自身が協力しなくても解放できるのであればそれで結構なことですので。そういうことでしたけども、現在までの展開を見ると極めて怪しいのではないかと、残念ながら私は思っております。
記者:読売新聞のタケダと申します。質問は2点あるんですが、1点目は中田先生がイスラム国のどのような立場の人と実際にコネクションをお持ちで、そこを通じて交渉した場合、どの程度2人が解放される確率があるのかという点です。もう1点が、72時間を過ぎてしまった場合、2人の生命にどの程度の危険があると今お考えか。その2点について教えてください。
中田:まず第1の点ですけれども、(コネクションのある)ウマル・グラバー師は最初に秋田さんからも説明がありましたけれども、イスラム国の中で唯一、表に出ている人です。というのは、フェイスブックとかツイッターで公式のアカウントを持っておりまして、最近つぶやきが減ってはいますけれども、今でも発言を続けております。
それで本人自身が特定できる。顔も(ネット上に)上がっておりますし、今まで日本でも常岡(浩介)さん、横田(徹)さんというジャーナリストがインタビューをしております。その2回とも私自身その場に立ち会っておりまして、実際にイスラム国の中でどこまで指導的地位にいるかというのは私もはっきりと申し上げられませんけれども、少なくともイスラム国の行政機関の中で働いている。
「司令官」という名前で呼ばれて……今は、彼は広報というか宣教担当の地位にいますけれども、そういう立場の人間です。先ほどから何度も申し上げていますとおり、顔も出しております。特定できる、表に出られる人。皆さんでも「ウマル・グラバー」で見て(検索して)いただければ見ることができる人です。そういう意味で、だまされるだとか偽者であるということはありえません。
しかし、彼自身が公式にイスラム国の代表、スポークスマンとして話せるわけではありません。あくまでも、私はそれを繋ぐことができるというだけの話です。
第2の点ですけども、72時間という非常に短い時間。このことが何を意味するのか、私もまだつかみかねております。しかし、実際に72時間でお金が払い込まれるというのは、どうやって払い込むかという交渉その他もありますので、72時間以内にお金が払い込まれなければという話ではないと思います。まず交渉の糸口がつかめるかどうか、それが72時間の対応にかかっているんだと思います。
そういう意味で、ともかく交渉の糸口をつかむということに全力をあげたいというふうに私は考えております。
記者:読売新聞国際部のミズノと申します。1点だけ確認なんですけども、資料の「湯川さんの救出の経験など」のところに2013年とありますけど、これは一昨年の話でよろしかったですか。資料のほうでは2013年8月26日というようなところが……。
秋田一恵弁護士:期間を間違えてますね、それは。(中田氏に)去年ですよね? 2014年です。ごめんなさい。
記者:司令官のウマル・グラバー師と交流があったのは2013年でよろしかったですか。
秋田一恵弁護士:(中田氏に確認)ウマルさんは2013年です。
記者:わかりました。質問なんですけども、目下72時間ということで2億ドルの身代金をどうするかというのが、政府の中でも(いろいろな)お話があります。身代金を支払うかどうかというところについてはどのようにお考えでいらっしゃるか、またその理由も教えていただければと思います。
中田:先ほど申し上げましたとおり、身代金を払うということではなくトルコを仲介に赤新月社を通じて、イスラム国に……イスラム国の支配下である地域の国内難民について、あるいは戦争被害者に対して人道援助をおこなうということで、彼らを信頼して任せるということですね。
結局、分配に関しては彼らを信頼するしかないわけですし、また現在イスラム国あるいは前身だったヌスラ戦線というものがとりあえずここまで支持を広げた大きな理由は、他の軍閥あるいは民兵集団と違って、彼らは援助金あるいは援助物資を公正に人々に分配した。そのことによって、特にヌスラ戦線は他の自由シリア軍たちに比べて支持を得たという実績がございます。
それを信じて彼らに任せるということであって、テロリストの要求に屈して身代金を払ったということではなく、あくまで彼らの要求を……日本政府はアメリカの同盟国を通じて人道援助をおこなったので、我々を通じて同じような人道援助をしてほしいということだと理解してほしい。そういうふうに私は考えております。
記者:中田先生に日本語で質問いたします。今回ビデオの中でイスラム国側の人間が「日本は十字軍に参加した」という表現を使っています。一方で日本政府は、今回の2億ドルというのはあくまで人道援助で、そこに誤解があるようだという発言をしていると。
そこで先生にお伺いしたいんですけど、日本はいつから、イスラム国の認識で十字軍と彼らが呼ぶものの一部になったのか、あるいは今回人道援助と言っているけれども、はたしてそれは誤解なのかどうかを含めて、そこのところを話していただければと思います。
中田:まず(日本は)十字軍の一部になったのか。これについては、もちろんイスラム世界の中でも認識は異なっていると思います。特にイラクに関しては、日本は自衛隊を派遣しております。それはイラクですので、当然彼らは知っているわけですね。その意味では、いま特に新しいことが起きているという認識ではないと思っております。
ただ一般的に、中東ではいまだに「日本はアメリカとは違う」という認識が確かにございます。今回の件に関しても、アメリカに対するメッセージ、今までの人質が首を切られるときの(声明では)「攻撃をやめろ」とかそういうメッセージだったんですけれども、日本に対しては明らかに違うんですね。日本の役割はあくまでもお金を出すことであると。
これはやはり、直接攻撃するものとは別だという扱いは今でも維持されております。ただし先ほども、イスラム国の支配地域で人道援助をおこなうことがテロリズムに対する支援にならないか、という質問が出ました。これは、彼らから見ても同じことです。
当然アメリカ軍に対して人道援助という形で支援していても、支援していることには変わりない。しかも、先ほどから何度も申し上げているとおり、イスラム国だけを名指しして「それと戦うために」という言い方をしておりますので、これは特に彼らイスラム国から見ると、我々と戦っている十字軍だという認識になってしまうのは仕方のないことではないかと考えております。
記者:産経新聞のアラフネです。今回、脅迫の映像では(黒服の男が英国人である)ジハーディ・ジョンとされる……今までは英国人の人質に対して英国人の人が脅迫するというのが多かったですが、今回はなぜか同じような国籍の人ではなかったと認識してます。
これはつまり、イスラム国の日本人を調達できなかったということなのではないかと考えるんですけど、もし北大生の渡航が実現していればジハーディ・ジョンとされる立場の人が北大生になったという可能性がないとはいえない、あるいは十分にありえるんじゃないかと思います。
その場合、さらに今回の状況が悪化した可能性があるんじゃないかと思うんですけど、その点を中田先生はどのように認識されていますか。
秋田一恵弁護士:今回は北大生の件については特にコメントしないということで、ここにおります。非常に仮定がいくつも進んでおりますので、この仮定の質問に答えてくださいというのもちょっと難しいと思います。
記者:AP通信のヤマグチと申します。よろしくお願いします。日本政府は今回の人質事件に関連して人命第一というふうに言っておりまして、もちろんその手段として先ほど中田先生がご提案なさった方向で進むのはそうあればと願うわけですが、人命を救出するということだけを考えた場合、他に何かの手段が可能性としてあるのかどうか。
そして、今後最悪の事態を含めてどのような事態が予想されるかということを教えていただければと思います。
中田:私自身は先ほどの方法が唯一の方法だと考えております。最悪の事態というのは、空爆によって……それはアメリカ軍である、あるいはシリア軍であるかもしれませんけども、空爆によって殺されてしまうというのが一番最悪の事態だと考えております。
記者:日本テレビのヤナミと申します。よろしくお願いします。今の質問で1個だけ確認なんですけれども、いま処刑ビデオというか、殺害予告ビデオが流されています。これまでそのビデオに登場してしまった人質の方々は、ほとんどのケースが殺害されてしまっています。
先生は「最悪のケースは空爆によって死ぬことだ」とおっしゃいましたけれども、このビデオの後で彼らの求めるような回答が得られなかった場合に、あの2人の人質の方々は処刑されてしまうことになるのではないかと思うんですが、それについてはいかがお考えですか。
中田:まず私が最悪の場合と言ったのは、空爆で殺される可能性というのは今現在でもあるわけです。72時間後であるということすらないですね。現在多くのシリアの……イスラム国にいる人たちが、女子供、民間人も含めて殺されています。それと一緒に殺されてしまうというのが、私は最悪だと考えています。もちろん72時間を過ぎて日本政府からの反応がなくて、殺されるという可能性もございます。
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