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キャディ、hokan、noteのCTOがディスカッション。スタートアップ・創業期CTOの役割とは?(全3記事)

「期待されることは事業ドメインやフェーズによって違う」 キャディ・hokan・noteのCTOが考える、経営における役割

「スタートアップ・創業期CTOの役割とは?」というタイトルで登壇したのは、キャディ株式会社の小橋氏、株式会社hokanの横塚氏、note株式会社の今氏。事業ドメインやフェーズなど会社の特性はもちろん、歩んできたキャリアや強みがそれぞれ異なる3社のCTOが、これまで担ってきた役割や目指すCTOの姿、何に悩みどんな挑戦をしてきたのかを話しました。全3回。1回目は、経営におけるCTOの役割について。

テーマは「スタートアップ・創業期CTOの役割」

藤倉成太氏(以下、藤倉):それではさっそく始めていきたいと思います。今日は「スタートアップ・創業期CTOの役割とは?」ということで、ご覧になっている方々は、エンジニアの方もいればマネージャーの方もいたり、もしくはCTOとして我々と同じような努力をされている方など、いろいろいらっしゃると思うんですね。

その中で特にスタートアップ企業であったり、創業期にジョインをしたCTOだったり、会社のマネージャーだったりという人たちの具体的な仕事を知ってもらって、同じように苦労している方にヒントを得てもらったり、もしくは今後のみなさんのキャリアの1つの選択肢として、スタートアップ・創業期のCTOになる・目指すみたいなこともあってもいいんじゃないかなと思います。

なので、そのあたりでみなさんのお話を聞きながら膨らませていければなと思っています。私は先ほどオープニングセッションもやらせていただきましたが、日本CTO協会の理事をやっている藤倉と申します。よろしくお願いします。

キャディ株式会社 小橋昭文氏

藤倉:さて、みなさんにはまず自己紹介からしていただきたいと思います。会社の話などもしてもらえれば、みなさんのディスカッションの背景・バックグラウンドがどうなっているかが、少しわかってくるのかなと思います。では、まずは小橋さんからですかね。

小橋昭文氏(以下、小橋):初めまして。キャディでCTOを務めている小橋と申します。私はもともとは空を飛ぶものだったり、消費者電気製品の大量生産だったり、幅広い範囲で物理のモノづくりに関わってきました。

2017年にキャディの代表の加藤(加藤勇志郎氏)と一緒に共同創業しました。代表の加藤も、もともと製造業という領域でコンサルティングだったり、製造支援にあらゆる方面から携わっていました。今、私はソフトウェア開発の技術組織の統括をさせていただいています。

次のスライドですね。私たちキャディは「モノづくり産業のポテンシャルを開放する」というミッションを掲げています。物理の世界の情報を物理の世界に変換することを「モノづくり」と言えたとすると、このすべてを包含するモノづくり、製造業のポテンシャルを開放するというのをミッションに持っています。

モノづくりに関わっている方々ももしかしたらいらっしゃるかなと思うんですけれども、最上流には設計、ソフトウェアでも設計をするという工程があると思いますし、最下流にはそれを販売するという工程があります。ソフトウェアは、自社で作る場面も多いと思いますが、製造業にあたってはやはり外部の会社にご協力いただく場面がすごく多いかなと思っています。すべての製造装置を自社で持っていない会社も多いかなと思っています。

なので、外部の会社さんの協力を得る上での調達という業務があったりします。上流の設計は、例えばCADだったり、3次元のシミュレーションだったり、いろいろなかたちでデジタルトランスフォーメーションやイノベーションが進んでいます。製造もロボットなどが進化していますが、調達という法人間をまたいだり、設計者と下流の工場をまたぐというところにあたって、ぜんぜんイノベーションがないと感じています。

ここの巨大な120兆円の市場に立って、イノベーションを起こすことをきっかけに会社を始めています。

私たちの事業は今2つあります。「CADDi MANUFACTURING」という、実際にモノを作ってお客さまにお届けするというところですね。物理的なモノの最終の納品責任まで背負っているビジネス。あとは(スライド)右側の「CADDi DRAWER」という、製造業の設計図面などを活かす・活用するデータプラットフォームのSoftware as a Service、SaaSをやっています。

この2つを中心に、今私はざっくりと90人から100人ぐらいのエンジニア組織の統括をしています。今日はよろしくお願いします。

一同:よろしくお願いします。

藤倉:よろしくお願いします。

株式会社hokan 横塚出氏

藤倉:では続いて横塚さん、お願いします。

横塚出氏(以下、横塚):株式会社hokanの取締役 CTOの横塚と申します。私は大学時代にシステムの受託系の開発や教育事業の会社を起業して、大学卒業後は中小企業や大企業でエンジニアとしてプロダクトの立ち上げを行っていました。その後、開発組織を良いかたちで作りたいという思いから、2018年2月に株式会社hokanにCTOとして参画して、プロダクト開発から開発組織のマネジメントを担当しています。

ちょっと簡単に会社紹介ですね。我々の会社のミッションは「保険業界をアップデートする」で、金融の中でも保険というドメインに特化した事業を行っています。いわゆるInsurTechという領域になるのですが、まさに2019年が「InsurTech元年」と言われているので、FinTechの中でも熱い領域だと個人的には思っています。

どんなことをやっているかと申し上げると、保険会社やメーカーがコンシューマーに向けて保険商品を提供していくのですが、この間には保険代理店さまという、保険の流通を担っている営業の方々がいます。我々は、この方々に顧客や契約管理を行えるソフトウェアを開発・提供しています。

1990年代の保険の自由化から、2016年の保険業務の改正も踏まえて、金融庁ともいろいろ話しながら進めている領域を、個人的にかなりおもしろいと感じています。そんなことをやっています。よろしくお願いします。

藤倉:よろしくお願いします。

note株式会社 今雄一氏

藤倉:では続いて、今さんですかね。

今雄一氏(以下、今):初めまして、noteの今と申します。私は大学卒業後にDeNAに入り、そこでソーシャルゲームのタイトルの開発・運用を3年弱ほどやっていました。そのあと、現在は社名が変わったのですが、ピースオブケイクに入り、ここで今のnoteの新規開発ですね。0→1からの開発だったのですが、そこに携わり、リリース後も一貫してnoteのプロダクトの運用や開発組織など、全般のマネジメントを担当している者です。

noteについて簡単に説明いたします。当社では「クリエイター」と呼んでいるのですが、個人、法人、公的機関などの方々が自分の思いを伝えたり、経済的な成功ができるようにサポートしていくプラットフォームになっています。分解すると、コンテンツを作成する「クリエイション」、それを読者にきちんと届ける「ディストリビューション」、そして作ったコンテンツをマネタイズする「ファイナンス」という3つに分けることができると思います。

全部やりたい方もいらっしゃると思うのですが、それぞれをnoteで個別にサポートできるようにプラットフォームを作っています。現在(2023年2月末時点)MAUは4,000万ほどで、会員数は600万人ほどになったのですが、トピックとしては2022年12月に東証グロース市場に上場しました。上場して半年ほど経ってまたアクセルを踏み直して、プラットフォームを磨いていっているところです。どうぞよろしくお願いいたします。

藤倉:よろしくお願いします。

とにかく会社の成功にコミットするのが経営におけるCTOの役割

藤倉:パネルディスカッションということなので、いくつかのトピックスを用意しています。さっそくそれらについてみんなで会話していければなと思います。

1つ目のトピックスを出していただけますか。今、画面の左上に出ていると思いますが、「経営におけるCTOとは」ということで、チーフオフィサーですよね。やはり経営のある種の一角を担うような役職であるはずです。ただ、もしかしたらご覧になっている方々の中にも、「そもそも経営の一角を担うとは?」みたいな人もいるかもしれません。

実際に期待されている役割も、やはり会社ごとに違うじゃないですか。なので、そのあたりをお聞きしたいと思います。「CTOを上手にできています!」でもいいですし、「こうなりたい、これからも目指していきたいと思います」でもなんでもいいのですが、CTOはどうあるべきかをちょっと聞きたいと思います。どなたからいこうかな……じゃあ小橋さんからいきますか?

小橋:「CTOとは何だろう」というのは常に考えています(笑)。今回のテーマは「創業期から」ですが、私は社員が2名のところから始めたので。やはり最初はCTOというものは本当にただのラベルでしかなくて、会社を成功させることがみんなのミッションです。徐々に大きくなっていくと、責任の分界点や分業ができてくるのかなと思っています。

なので、基本的にCクラスには会社の成功を常に追求するということが、常に求められることかなと思っています。そういう意味では、テクノロジーという武器や、そのバックグラウンドを適宜活かしていくということが一番重要なのかなと思っています。

その中で、もちろんよりレバレッジが効くフェーズもあれば効かないフェーズもあると思うんですけど。そういうふうに、とにかく会社の成功にコミットするということが一番重要なのかなとは常々思っていますね。

藤倉:なるほど。

「手段は問わないから、自身の実力とスキルセットでいい感じにして」がCTOに対するオーダー

藤倉:じゃあ横塚さん、その並びでいきましょうか。

横塚:まさに私も取締役3人で会社をスタートさせて、やはりこの最初の3人は会社の成功を一番願っているはずで、そのためであればなんでもやるという感じでした。最初は僕自身も、CTOとは何なのか、何をやればいいのかにすごく迷いながらやっていたのですが、とりあえず走るというかたちでやってきました。

やはり会社が成長してくると、それこそいわゆるCxOでどのような役割を分担して、どのような権限でやっていくか、どうマネジメントメンバーを構成していくかというのは先々のフェーズになるので、これをうまくやられている会社さんの事例は大変勉強になりますし、そこは本当に会社次第なのかなと思います。

創業期は、やはり単純ですね。モノを作って最初のお客さまを捕まえて、お客さまの成功にコミットすることが、やはり会社の成長に一番つながると思います。なので、私自身も最初はやはりモノを作ってお客さまにあてる、というところをやっていました。

藤倉:今さんはどうですか?

:そうですね。CTOに限らず「CなんちゃらO」というのは、基本的には「会社をとりあえずいい感じにして」と。

(一同笑)

藤倉:いい感じに(笑)。

:「手段は問わないから、自身の実力とスキルセットでいい感じにして」というオーダーをいただいているものだと思っています。CTOの役割は、特にそれを技術カットでやっていくことで、しかも創業期とグロース期と当社みたいに上場したフェーズではまた微妙に違うので、「状況を見ながらいい感じにやって」ということでもあるので、ここがまた難しいと思っています。

創業期で言いますと、プロダクトの性質やCEOのキャラクターなどにもかなりよると思っていて。当社の場合はCEOもCXOも、相当クリエイタータイプといいますか、言ってしまえば癖の強い人で(笑)。「やりたいことがメチャクチャあります」タイプなんです。センスの良い方なので、彼らの思いを結晶化すれば良いモノができるんだろうというのもあって、自分はそこのエグゼキューションにかなり特化して創業期はコミットしていた記憶があります。

藤倉:そうですね。今、今さんがおっしゃったとおり、ボード(ボードメンバー)の人々のキャラクターや、もちろん会社のビジネスの業界など、いろいろなものにも関係すると思うのですが、抽象的に言えば(CTOは)Cクラスであり事業の成功にコミットする。もう少し解像度を上げると、それこそ私が所属しているSansanという会社であれば、やはり作りたいものとか、「こうしたら事業が伸びるんじゃないか」というアイデアがいろいろなところに書いてあるんですよ。

なので、私もどちらかというと今さんに近い、そのエグゼキューションに対して、どれだけうまく作っていくかにけっこう腐心していた時期が長かったと思います。

(次回へつづく)

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