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いいチームを作りたい!!〜関係の質を改善するために私たちがやったこと〜 (全3記事)

いいチームづくりのために重要な“関係の質”の改善 味方を増やすための「失敗してみる」挑戦

日本XPユーザグループ(XPJUG)が主催になり、毎年秋に開催されている「XP祭り」。ここでKDDIアジャイル開発センター株式会社の小糸氏、三宅氏が登壇。まずは、マージンを積んでしまう問題と、ステークホルダーの過剰な期待・マネージャーとの距離がある問題に対する対策と、その結果得られたことを紹介します。

「いいチーム」とは

小糸悠平氏(以下、小糸):では「いいチームを作りたい!!〜関係の質を改善するために私たちがやったこと〜」というテーマで話します。よろしくお願いします。

三宅潤也氏(以下、三宅):お願いします。

小糸:最初にみなさんに共有してみたいことがあったので、話したいと思います。(スライドを示して)先ほどスライドを差し込みました。私はふだん関東に住んでいますが、今は阪急梅田駅の「テレキューブ」という場所、写真でいうと一番左側の場所で作業をしています。

外を見るとものすごくたくさんの人が歩いているんですが、意外と快適で。

テレキューブはすごく便利で、料金も15分単位で使えるので、みなさんぜひ使ってみてください。

三宅:ここから(配信に)入ってきた人は、なんの話をしているのかぜんぜんわからないですね(笑)。「テレキューブの人なのかな」みたいになりますね(笑)。

小糸:そうですね。ぜんぜん関係なくて、お金ももらっていないですね(笑)。

ではようやく本題と言いつつ、本題には(まだ)入っていないんですが。いきなりですが、みなさんに質問です。今日のテーマは「いいチームを作りたい」ということですが、“いいチーム”と聞いてどんなチームが浮かぶでしょうか。もしみなさんの中でDiscordに書ける人がいたら、想像して書いてもらえるとうれしいです。

三宅:もうさっそく「テレキューブの宣伝」みたいな(コメントが書かれています)(笑)。「意見が言いやすい」。そうですよね。いいチームですよね。

小糸:なるほど。確かに「楽しく」はすごく重要ですね。

三宅:「楽しい」は大事ですね。

小糸:「アウトカムができる」。すばらしい。

三宅:そうですね。「アウトプットよりアウトカム」みたいな話はよくチームでしたりしますね。

小糸:そうですね。ありがとうございます。

本日は「いいチームを作りたい」と常々考えている登壇者が、これまでやってみて効果のあったことを共有していきたいと思います。

ただ注意としては、これは必ずしもすべてのチームに効果があるわけではないので、用法・容量を守って適切に使っていただくということで、よろしくお願いします。

三宅:(それを)言っておけばなにを言ってもいいみたいな感じがありますよね(笑)。

小糸:そうですね(笑)。スクラムでは意外とアンチパターンになりそうなことも今日は話そうかと思うので、盲信しないでもらえるとすごくありがたいです。

小糸氏・三宅氏の自己紹介

小糸:(スライドを示して)本日の登壇者ということで、名前を紹介するタイミングがきました。私は小糸悠平です。よろしくお願いします。KDDIアジャイル開発センター株式会社という、すごく長い名前ですが、KAGと呼ばれている会社に所属しています。業務はWebサイト開発のスクラムマスターを、かれこれ5、6年やっています。モットーは「楽しくないのはスクラムじゃない」です。

先ほどDiscordでも「楽しく切磋琢磨」みたいなコメントがありましたが、楽しくないとすごく気持ち悪いと思うので、それはあまりスクラムとは呼びたくないです。

最近の悩みです。もともと(は)KDDI株式会社に所属していて、今日からかな(笑)?

三宅:そうですね(笑)。

小糸:今日からこの会社(KDDIアジャイル開発センター株式会社)の所属が本務になったんですけれど、すごく社名が長いので、略称で呼ぶのも恥ずかしいしどうしようかなというのが最近の悩みです。では三宅さん、お願いします。

三宅:三宅潤也です。同じくKDDIアジャイル開発センター株式会社という、ちょっと長い社名のところから来ました。KDDIにも兼務していて本籍はそちらにあるのですが、出向でこの会社にいます。

業務はMaaSシステムの開発者と、あと時々スクラムマスターという感じです。モットーは「我以外、みな我が師」ということで、5歳と2歳の子どもたちからもいろいろ学んでいる毎日です。

最近の悩みが、KAGと書いて「カグ」なのか「ケーエージー」なのか問題ですごくモヤモヤしています。KとAとGと見た時に、みなさんはなんて読むかなと。ファーストインプレッションをDiscordでぜひぜひ教えてもらいたいなと思います。社内は若干「カグ」が多かった印象です。今日はよろしくお願いします。

小糸:よろしくお願いします。

なぜ“関係の質”が重要なのか?

小糸:では今日の発表タイトル、「いいチームを作りたい!!〜関係の質を改善するために私たちがやったこと〜」というテーマですが、まず、なぜ関係の質が重要なのかということで、そこから最初に話をしようかなと思います。

(スライドを示して)知っている方もいるかもしれませんが、“関係の質”は、ダニエルキム氏の提唱する「成功の循環モデル」に登場するキーワードです。この成功の循環モデルでは、組織を「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」と4つの質で捉えています。

「成功の循環」はどういうことをやるのかというと、「まず関係の質から入りましょう」というのが成功の循環モデルの1歩目です。ここでいい関係性、対話によって信頼関係が構築できると、思考の質が変わります。メンバーの意見交換によって多くの気づきが得られて、思考の質が向上します。

思考の質が変わると、今度は行動の質が変わります。チームでの自発的な行動につながる流れになります。行動の質が変わるとここまでくるとなんとなく読めると思いますが、結果の質、より良い成果が得られるようになります。

より良い成果が得られるようになると、さらに信頼関係の構築ということで関係の質が改善していきます。

同じように失敗の循環もありますが、失敗の循環は「結果の質から最初になんとかしようとなった場合に失敗の循環に陥るよね」というのが、ダニエルキム氏の成功の循環モデルの中で言われています。

関係の質を高めるための取り組み ①失敗してみよう

ということで、今日は関係の質に特化して、私たちが関係の質を高めるために実際にやった取り組みを話していきます。

リハではけっこう時間が余ってしまって。みなさんのコメントも拾っていきたいので、チームでやったことや感想など、多くのコメントをお願いしたいと思います。

では最初に「失敗してみよう」というテーマです。(スライドを示して)チームの傾向です。どんなことが起きているかを書いているので、あなたがスクラムマスターだったりチームのメンバーだったらどんなことをしようかをみんなで考えてもらえるとうれしいなと思います。

最初はマージンを計上してしまいます。我々はスクラムでやっていますが、「ストーリーポイントは少なくいけると思うけど、なんか終わらないと嫌だから、多めにマージン積んじゃおう」みたいな傾向がチームにあります。

あとは早すぎるスプリントゴールですね。1回、2回とか、たまにならいいんですが、どのスプリントでも真ん中ぐらいだったり、真ん中よりちょっと終わりぐらいでゴール達成してしまうような傾向があるんじゃないかということです。

こういう時にどんなことをすればいいかということですが、三宅さん、なにかこのあたり(の対策)は、ありますか?

三宅:あるあるすぎて盛り上がりますね(笑)。僕と小糸さんは違うチームで、仕事自体では実は1度も関わったことがないんですが、(これは)たぶんいろいろなチームでよく聞く話なんじゃないかと思います。自分がいたチームでも、「マージンをちょっと乗っけておくか」みたいなことは自分もよくやっちゃっていたなというのがあります。

小糸:そうですね。なんとなくそんな傾向もあるんじゃないかなと思います。スライド19

マージンを積んでしまう時に働いているマインド

(スライドを示して)こんな時にどういうマインドが働いているのかと仮説を立てて検証してみたのが、この後の話です。

なんとなくあるのが「失敗を恐れているんだろうな」ということです。具体的に言うと、「見積りどおりに終わらないと、自身の評価やチームの評価が下がってしまうんじゃないか」というマインドだったり、あとは「スプリントゴールに到達しないと、よくわからないけど、何かマイナスなことが起こるんじゃないか」みたいなことを考えているのではないかと想定しました。

ではどうすれば解消するかというと、実際に体験してもらうのが手っ取り早いのではということで、「失敗してみましょう」ということにつながります。

(コメントを見て)アライさんがコメントをくれていますね。「50パーの達成率ぐらいがいい」みたいな。どこで見たんだろう? 私もそんな記事を見た気がします(笑)。

三宅:僕も見た気がします。ただ、なにで見たかというと出てこないという。不思議ですね(笑)。

小糸:検索したら出てきそうだけれど。後で探してみよう。

マージンを積むことをやめて得られたこと

実際にやってみたことです。「失敗してみた」ということで、見積り基準を再確認してマージンを積むのをやめることです。見積りをする時にはだいたいベースとなるバックログのポイントがあると思うんですけれど、それを都度確認して、「これは本当に適切なポイントである」とチーム内で徹底しました。

スプリントゴールの未達という点で、見積りをきっちりするとスプリントゴールは自然と未達なことがたぶん増えてくると思うので、実際に未達をやってみました。

得られたことです。すごくいいなと思ったのが、未達であっても責められることはなくて、責める人がそもそもいないので、それがチームとして経験できたのがすごく良かったです。これによって、チーム内、チーム外に向けても心理的安全性が確保されました。

あと追加で良かったのは、失敗した時のふりかえりでのチームの発言量がすごく増えて、いい議論ができたことです。成功していると、ふりかえりはやはりそんなに活発にならなくて、「なんかうまくいったね」というものになります。

この議論によってチーム内の遠慮がなくなって、今後のいい関係の構築につながりました。

三宅:「失敗してみた」というのは、スプリントゴールの未達を意図的に起こせたということなんですかね?

小糸:そうですね。実はこれ、私はけっこうあくどいことをやっていて、ベロシティをちょっといじりました(笑)。

三宅:(笑)。

小糸:誰も気づかなかったのでそのまま進めたんですけれど、ふだん20ポイントぐらいなのに、25と嘘をついて、それに対してスプリントを計画しちゃいました。

三宅:用法・容量をお守りください系がさっそく出ましたね(笑)。

小糸:そうですね(笑)。なんとか早く失敗したいなと。たぶん、上のマージンを積むのをやめていたらいずれはゴール未達になるとは思いますが。無理やり失敗に導くスクラムマスターがここにいましたね(笑)。

三宅:初めて見た時、自分は新しいなと思いました。自分のチームでもいつかやってみたいとちょっと思いました(笑)。ありがとうございます。

ステークホルダーの過剰な期待と、マネージャーとの距離がある問題

小糸:次がチームの傾向です。ステークホルダーの過剰な期待があったり、マネージャーと距離があったりすることですね。

ステークホルダーの期待というのは、具体的にはアジャイルを正しく理解していない人たちが、なんとなく「アジャイルなんだからうまくいくんでしょう?」みたいな期待をしてくることです。

あとは、マネージャーにちょっと話しかけにくい空気がチーム内にある場合です。こんな時にも「失敗してみよう」がけっこう役に立ちました。

三宅:マネージャーの顔がメチャクチャ恐いですね(笑)。

小糸:そうですね。「いらすとや」はすごいなと思います(笑)。

三宅:いらすとやは、みんなが抽象的に思っていることを形にするのがメチャクチャうまいですよね(笑)。

小糸:そうですね(笑)。これはなんの顔だったかな。「恐い」みたいなので検索したら出てきて、「おお、ピッタリだ」と。

三宅:ストレートなんですね(笑)。いらすとやの検索ワードもちょっと笑っちゃう時がありますよね。「これで出てくるんだ」みたいな(笑)。

小糸:そうですね(笑)。

失敗した話を共有することで得られたこと

ではそんな時どうしたかというと、過剰な期待に関しては、スクラムをよく知らないんだろうと。記事によく載るような「4倍早くなる」みたいなところだけを見て、すごいものと思われがちです。

あと、距離があるのは話すネタがないからで、話さざるを得ない状況になれば自然と距離が縮まるだろうと仮説を立て、これも同じく失敗してみたらいいんじゃないかと。そうすると過剰な期待もなくなるし、共通の話のネタができそうだなと失敗してみました。

失敗のその先ですが、失敗した話を共有するところで、スプリントゴールの未達をネタに会話をすると、まずは純粋に会話が増えます。会話のハードルが下がって、ちょっと話しやすい雰囲気が築けるようになります。

あとは、マネージャーやステークホルダーはプロダクトにすごく興味があるんですが、失敗の話を共有すると、プロダクトだけではなくて、チームにも興味を持ってもらえるようになります。なので、チームに相談できる味方がドンドン増えていき、すごく関係性が良くなりました。

あとは、アジャイル開発に対する理解が進んで過剰な期待をされなくなるのも、失敗していくことのメリットかなと思います。

三宅:POがチームに興味を持つのは、けっこうすごいことですよね。

小糸:そうですよね。今のチームでも「失敗したよ」という話を上の人たちとけっこうするんですが、そうすると、本部長はメチャメチャふりかえりのボードを見てくれています(笑)。

Miroでボードを管理しているんですが、よく本部長の名前のカーソルが動いていて「おお、見てる見てる」みたいな(笑)。

三宅:本部長のカーソルがMiroでうろちょろしている絵を想像すると、けっこう笑えてきますね。かわいいというかなんというか(笑)。

小糸:そうですね(笑)。ということで、共有するとけっこう楽しいという話でした。

(次回につづく)

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