「ジョブ型」が日本で浸透しない3つの理由

ーー村上さんの著書『転職2.0』、読みました。非常におもしろいなと思ったのと同時に、働き方がメンバーシップ型からジョブ型に変わるところに対して、非常に欧米的な印象を受けました。今回村上さんがこの本を書くにあたって、どこでそう思ったのか、きっかけはあったんですか。

村上臣氏(以下、村上):ありがとうございます。私はLinkedInが初めての外資。そして完全なジョブ型で働くというのも初めてだったんですけど、これまでの働き方と比べて違うところが多かった。特に採用の仕方が日本の企業とまったく異なるかたちでした。自分が採用をしている中でも感じましたし、我々のお客様も人事部の方が多いので、採用に困っているという課題に一緒に向き合っている中で気づいたこともありました。

日本はいわゆるメンバーシップ型雇用だと言われていますが、実は日本の大企業はかなり海外売り上げ比率が高まっているんですよね。ですから、日本本社のグローバル企業というのがおそらく正しい言い方で、日本以外の支社はすでにジョブ型でやっているんですよ。日本本社だけが特別な仕組みでやっていて、例えば社内のローテーションであったり、ヨーロッパの人を本社に連れて来ることになったりという時に、雇用形態が違うことがある種のハードルになってしまっている現状があります。

そのような話を聞いている中で、「日本だけが特別なやり方をしているんだな」というところに気がついたのが、本を書いたきっかけとして大きかったですね。

ーー先ほど、言われたように、グローバル化していれば海外の例もあるわけで、日本に取り入れようと思えば入れられるような気がするんですけど、なかなか日本だけ浸透しない理由はあったりするんですか。

村上:いくつかありますが、一言で言ってしまえばやはりまだ昭和を引きずっているということなのでしょう。高度経済成長期においては、このメンバーシップ型は非常によく機能をしていたんですよね。それは戦後復興の中心が製造業だったので、まず新卒でガサッと採用して社内の人材プールを作って、順次社内のいろいろなところを経験させて養成していったわけです。

日本も昭和の時代にジョブ型に変えようとしていた時があったんですが、具体的に採用するまでにはいたらなかった。それを今も引きずっているのが1つ目の理由です。

2つ目は、教育に関わる部分。日本では学生時代に、いわゆる「キャリア教育」が、現時点でもあまりされていないですよね。

そうなると、身近で唯一のロールモデルは親になるんですよ。その親世代は、もちろんまだ昭和を引きずっています。今ちょうど過渡期なんだろうなと思うのですが、これがあと20年、30年すると1周して、親世代も普通にジョブ型になる。そうやって自然に全体が変化していく感じになるんだと思うんですね。

3つ目が、これは非常に難しいテーマだなと思うのですが、日本の社会保障制度に関係する部分ですね。例えばアメリカだと全員確定申告しますが、日本は多くの割合を占める会社員がすべて間接型になっています。本来国がやるべきところを企業が肩代わりしている。給料天引きとかは良い例だと思いますが、それによって効率化されてうまく回ってきたところがあると。年金や保険という社会保障制度が、かなり昔に作られているものを改変しながら今までやってきているので、基本的に国が何か直接個人を支援するという仕組みになっていないんですよ。

まとめると、これまでの歴史を振り返ると、働き方と教育と社会制度とが複雑に絡み合って運営しているがために、なかなか1個だけを動かしても全体が動かないというところがある。これが今のジレンマなんじゃないかなと思っています。

ーーなるほど。そういう方向に持っていくためには、どれか1つだけをやるんじゃなくて、全体を動かしていかないといけない感じなんですね。

村上:そうですね。全体の話だからこそ官と民が協調しながら、新しい方向性、まずはビジョンから握っていく必要があると思います。

辞める時も良い経験をしてもらうのが大切

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