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株式会社EventHub 井関正也氏ピッチ(全1記事)

新規受注ゼロ、既存顧客のキャンセル続出…どん底から売上を20倍にできた事業のピボット

新しい未来の実装に挑むエンジニアのためのピッチコンテストStartup CTO of the year 2024。スタートアップCTOによるピッチコンテストを実施し、事業成長に連動した技術戦略を実現する経営インパクトや組織開発力などを評価指標に、2024年最も輝いたCTOの挑戦を讃えました。本記事では、株式会社EventHub 取締役CTO 井関正也氏の6分間のプレゼンテーションの模様をお届けします。

2029年には5兆3,000億円まで成長が見込まれている市場 

井関正也氏(以下、井関):EventHub CTOの井関です。「15万人」。こちらの数字は何だと思いますか? これは、今までEventHubで生まれた出会いの数です。私たちは、「日常を超えるつながりで世界をひらく」というミッションの下、イベントマーケティングを支援するサービスを提供しています。

イベントは、情報や人とのつながりでビジネスの可能性を開く、強力なマーケティング手法です。イベントマーケティングの市場は世界的にも注目されており、2029年には5兆3,000億円まで成長が見込まれています。



私たちはこの領域において、国内シェアNo.1のサービスです。今日みなさんが参加しているこちらのイベントでも、EventHubは活用されています。

コロナでイベント自粛、2週間でオンライン開催対応

井関:EventHubがここに至るまで、CTOとして「3つの挑戦」がありました。1つ目は、技術での事業創出です。EventHubはもともと、オフラインイベントの交流促進サービスとして作られました。2019年末に、「本格的にリリースしていくぞ」というタイミングでコロナの流行に当たり、国からはイベント自粛要請が出されました。

これにより、新規の受注はゼロ。既存顧客からもキャンセル続出。エンジニアは副業メンバーと自分だけ。ただ、何よりも困っていたのはイベント主催者です。「来月のイベントが開催できないと、収益がゼロになってしまう。どうにかなりませんか?」という、ひっ迫した声をいただきました。

この声に応えるためには、2週間でのオンライン開催対応が必須でした。これはつまり、数万人のイベント参加者が同時にアクセスしてもダウンしないサービスを、2週間で作り切るということです。



データベース構成を工夫し、局所的な負荷にも対応できる設計を採り入れたことで、2週間でリリースできました。

迅速にリリースしたことで、お客さまから「伝統的なイベントを絶やさずに開催できた」「事業危機が救われた」などの、数多くの感謝の声をいただきました。これにより、売上は20倍にまで増加しました。


解約数増加の要因を探り、継続率を倍にまで改善

井関:2つ目は、技術での事業成長です。コロナをきっかけに、急激にお客さまが増えました。あらゆる目的で利用されることで、あらゆる要望をいただきました。これにより、ターゲット顧客のニーズの変化を見落としてしまい、解約数が増加しました。

解約理由を聞いていくと、以前までは「イベントを開催できないこと」が一番の悩みでしたが、今では、「イベントの成果が可視化できないこと」が悩みであることがわかりました。



これを解決するためには、単にイベントを開催できるツールから、イベントの成果を可視化できるツールに変化する必要があります。



イベントの成果を可視化するためには、顧客のデータやイベント内での行動ログデータを、あらゆるシステムと連携する必要があります。ただし、この連携のパターンは1,000通り以上にも及び、すべてに対応するのは現実的ではありません。



そこで、100件以上の顧客ヒアリングを実施し、網羅性の高い連携方法を解明、要件定義から実装までをリードしました。これにより、単にイベントを開催するツールから、イベント成果を分析できるツールに変化したことで、継続率を倍にまで改善できました。

マネージャーに過剰な負荷がかかる状況を打開する策

井関:3つ目は、組織での事業発展です。コロナをきっかけに、イベントマーケティングの市場は目まぐるしく変化しています。この市場の変化に対応するために、エンジニアチームは、要件定義から設計、開発、その後の運用サポートまでを、一気通貫で携わるスタイルを採用しています。



ただし、このスタイルを採用することで、チームのマネージャーに過剰な負荷がかかってしまい、マネジメントへの挑戦に後ろ向きになるという課題にぶつかりました。これを解決するために、チームのマネージャーの役割を再定義しました。



「プロダクト」「ピープル」「プロジェクト」「テクノロジー」の4つのマネジメント要素を求め、必要な権限をすべて渡す仕組みを整えました。これら4つの要素すべてを満たすことは難しいとされていますが、市場の変化に追随するために、あえてこの挑戦を続けています。

「難しい挑戦だからこそ、まず自分が背中を見せる必要がある」と考え、自らチームを持ち、毎週1件以上のリリースをしてきました。



これにより、エンジニアメンバーも前向きに挑戦してくれるようになり、今では意欲と技術があれば、マネジメントへの挑戦が可能な土台が整い、メンバーからマネージャーに昇格する例も増えてきました。

これら3つの挑戦を乗り越えたことで、EventHubは国内シェアNo.1のサービスとなりました。これからも挑戦を続け、人と企業の可能性を開くEventのHubになっていきます。

最後に私の話をさせてください。私はコミュニケーションがとても苦手で、特に初対面の人と距離を詰めるのが得意ではありません。そんな自分が、今ここにCTOとして立てているのは、数多くの人との出会いによって自分が変わったからです。

誰もが然るべき人々と出会い、日常を超えたつながりで、自身の可能性を開いていく。そんな後押しができるプロダクト作りを続けていきたいです。ありがとうございました。

(会場拍手)

エンジニアのキャリアパスの設計

司会者:いや、秘めたる思いを聞けました。そして、今日は(社員の方が)井関さんの応援に駆けつけてくださっているということで、力になったかと思います。最後にご自身のこともお話しされていましたが、今日は秘めたる思いをぶつけられましたか? 

井関:はい、ちゃんとぶつけることができました。

司会者:井関さん、ありがとうございました。それでは、審査員のみなさんから質問があれば、お願いいたします。それでは、塚田さんどうぞ。

塚田朗弘氏(以下、塚田):ありがとうございます。僕もめちゃくちゃコミュニケーションが苦手なので、すごいなと思って見ておりました。途中で、マネジメントに挑戦する人もその後増えて(仕事の)パスもできたというお話がありましたが。

エンジニアとマネージャー職って、よくあるエンジニアのキャリアパスの議論になると思うんですよね。御社として、そこらへんのエンジニアのキャリアを、どう設計したり価値観を作っているかを教えてください。

井関:今はまだ、スキルに特化した役職は用意し切れておらず、みんながプロダクトを作るエンジニアとして採用しています。ただ、今後組織が拡大していく上では、各領域、フロントエンド、バックエンドのなどの領域に特化したエンジニアチームを組成していこうと考えています。

塚田:事前の情報としていただいているものだと、開発組織の人数は7名でしたか?

井関:業務委託も合わせたら、今はエンジニアチームは15名の組織となっています。

塚田:マネジメントをしている人はどれぐらいいるんですか?

井関:4名です。

塚田:けっこう多いような気もするんですけど、それぞれ移譲した4つのマネジメント要素を担っている感じなんですか?

井関:そうではなく、4チームのマネージャーに、先ほどの4つのマネジメント要素を求めているということになります。

塚田:それぞれが、そのチームの全責務をリードする役割なんですね。ありがとうございます。

事業をピボットできた背景

司会者:ありがとうございました。小野さん、お願いいたします。

小野:ありがとうございました。コミュニケーションが苦手というのは、CTOにはあるあるだと思います。私も人と目を合わせていると、だんだんMPが減っていくタイプなので、よくわかるんですけど(笑)。

それはともかくとして、先ほど「3つの課題があった」という中で、1番目のコロナで、急遽2週間でオンライン対応したり、その後に求められているのは、実はイベント成果の可視化だったということで、ピボットした話があったと思うんですけど。

例えば2週間で作るとなったら、技術サイドからの「できる」という判断がないと、経営判断できない気がするんですよね。ピボットのところも、技術サイドから「可視化ツールとしてこういうものを作れば実際に機能する」ということが言えないと、経営判断できない気がします。

そのへんのピボットするタイミングでは、技術サイドから「これだったらできます」と経営に働きかけたのか。それとも「オンライン対応できないともう駄目だ」と言って、経営からの要請で技術部門がなんとかすることになったのか。両方あるとは思うんですけど、主にどっちが強めでしたか?

井関:そうですね、中途半端な答えになってしまうかもしれないですけど、両方ありました。もちろんビジネスサイドといいますか、経営判断として「ここはやらなきゃいけない」というお客さまからの声もありますし、技術としても、「ここは言い切ってでも進めるしかない」というタイミングがあったので、その両軸があって、初めて実現できたピボットかなと思っています。



小野:ありがとうございます。特に2週間という期間もすごく短いわけじゃないですか。たぶん「絶対できる」とは確約できなかったんじゃないかと思うんですよね。「ベストエフォートで、できるところまでやってみます」みたいな感じでやられていたんですかね。

井関:そうですね。もう、「気合と根性」という回答になってしまいます。

小野:(笑)。非常にスタートアップらしいと思います。ありがとうございます。

司会者:小野さん、ありがとうございました。

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