2024.10.10
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テーマ「『子どもいらない』独身の若者増加」について(全1記事)
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堀潤氏(以下、堀):このコーナーは専門分野に長けた論客の皆様に独自の視点で今、知るべきニュースを角度持って思う存分お話いただきます。
脊山麻理子氏(以下、脊山):ゲストをご紹介します。著述家の北条かやさんです。お願いします。
北条かや氏(以下、北条):よろしくお願いします。
脊山:そして、カナダ出身のジャーナリスト、古歩道ベンジャミンさんです。お願いします。
古歩道ベンジャミン氏(以下、ベンジャミン):よろしくお願いします。
堀:それでは、北条さんお願いします。
北条:こちらです。
(テーマ「『子どもいらない』独身の若者増加」について)
脊山:厚生労働省が若者を対象に実施した「21世紀成年者縦断調査」で子どもを望まない独身の若者が10年間で増加していることが明らかになりました。
堀:厚生労働省世帯統計室の担当者によりますと、「独身で子どもを望まない比率が高まったのは、非正規雇用の広がりや結婚を望まない人の割合が増えていることなど、複合的な要因が影響したと考えられる」と話しています。
ま、そうでしょうと。
北条:そうですね。この短い報道だけでは、どういう調査なのか、あまり理解できない。そこで、元データを当たってみたんです。
堀:お願いします。
北条:今回の調査は、「21世紀成年者縦断調査」といって、同一の世代の若者の意識が、その後どのように変化していくかを探るものです。毎年行なっているもので、第1回の2002年には、全国の20〜34歳の若者を対象に、既婚か独身か、職業などの基本的な属性に加え、結婚観や子ども観などを尋ねているんですね。
それを毎年重ねていって、ある世代がどういう人生を辿り、どのように意識が変わっていくのかがわかるという調査なんです。
今回は、第1回調査から10年以上経っているので、10年間での意識の変化が分析できるということで、第1回の時に独身だった人が、その後どういう考えになっているのか、ですとか、今も独身だった場合、どういう考えになっているのか、調べることが可能なんですね。
北条:今回の対象者は、現在31〜45歳の既婚男女、独身男女。こちらのフリップが今ニュースになっている結果なんですけれども。
堀:「希望する子どもの数」の推移。14年と24年。10年間でどう変わったか。
北条:平成14年に独身だった人は、希望する子どもの数が0人という回答が、男性8.6パーセントから2倍弱まで増えていると。女性も7.2パーセントから11.6パーセントまで増えている。
一方、既婚の場合は、前結婚していた人は、むしろ「子どもが3人以上ほしい」っていう人が、大きく増えていて、それは、男女ともに同じ傾向なんですよね。
独身グループと既婚グループで、子どもへの意識が、ますます差を広げているということがあるんですよね。
堀:独身で子どもを作ったら、まずいんですか?
北条:可能ではあるのですが、今の制度ですと、特にシングルで子どもを持つということは、女性に不利になってしまうケースが多いんですよね。
堀:そうなんですね。
北条:おそらく、「未婚の母」と言われるような状態になってしまって、制度的な差別下に置かれてしまう。なかなか、シングルマザーをあえて選ぶ方はいないと思います。
堀:標準家庭といえば、サラリーマンのご主人がいて、専業主婦の奥さまがいて、そして子どもが2人いる。これが、標準とされて、生活設計されている以上は。
北条:そういう標準家族を増やすことを目指して、厚労省は90年代から少子化政策をやってきたわけです。なぜ若者は結婚しないのかという調査研究は数多くなされてきたのですが、最近になって少し、論調が変わってきています。
昔は「(いくつになっても実家を出ない)パラサイトシングルが、独身の自由を謳歌したいから結婚しないのだ」という論調が主流だった時期もありましたが、今は非正規雇用の増加などで、若者の貧困問題がクローズアップされています。
それで「若者は結婚したくてもできないのだ」「それは経済的な問題である、結婚したくてもできないのだ」という論調に、変わってきているんですね。
北条:こちらのフリップをご覧いただきたいのですが。今回の調査結果を見ますと、若者が結婚しない、子どもを産まないのは、もしかすると経済的な問題だけではないのではないか、とも受け取れるんですね。
10年前に独身だった男女の子ども観です。これを、希望する子どもの数別に見たんですね。緑色の部分が、「子どもが欲しい人」の子ども観で、オレンジの部分が「子どもが欲しくない、0人」と答えた方なんですけれども。
答えている意識の差が歴然としてますよね。「子どもが欲しい」人たちの間では、男女ともに「家族の結びつきが深まる」とか、「子どもとのふれあいが楽しい」の割合が高い一方で、「欲しくない」の意識を見ると、男性で見ていただきたいんですけれども。
こちら「感じていることは特にない」という回答が断トツで多いのです。特に思うところはなく、あったとしても言葉にする必要性を感じていないといいますか、「子どもは、まあ別にいらないかな」っていう男性が目立つ結果になっています。
堀:子どもがいるライフスタイルと子どもがいないライフスタイル。それぞれの、実は、選択できるようになっているということでもあるんでしょう。
北条:そうですね。ライフスタイルの自由度が増した結果だとも受け取れますね。
ベンジャミン:本能の問題もあると思います。自然の中で、セックスする本能があるけれども、子どもを作る本能がない。子どもがいれば、母性本能が強いから。そういう問題もあると思う。
堀:そうか、確かに。結果によって大きく変わってくる。
北条:私がすごく今回感じたのは、次のようなことなんです。私は、東京と地方、両方に住んだことがあり、どちらの空気も経験しているのですが、東京23区にいると、地方とは全く違う空気を感じるんですよね。
というのは、「23区は、独身者に優しい街だ」ってことなんです。もちろんエリアによっては、東京23区内でもお年寄りが多い地域とか、子育て世帯が多いエリアもありますので、地域による差はあるのですが。
独身男女は、東京23区に住んでいると、「私は、マジョリティーだ」と思うことができるんですよね。実際に、マジョリティーなわけですから。
ちょっと、数字を出して頂いて……東京23区の「女性の未婚率」は、30代前半でも45パーセント。30代後半でも3人に1人の女性は結婚されていないので、23区にいる限りは、独身だからといって、子どもがいないからといって、少なくとも平均初婚年齢が23区よりずっと若い地方にいるよりは、同調圧力を感じる機会は少ないのではないかと思うんです。
独身でも、仕事さえあれば安心できるというか、そこまで切迫感をもって「結婚しなくちゃ」という気持ちにならない人も、少なくないのではないかと。
結婚した方は、特にお子さんが産まれると、23区内では土地が高いので、郊外に行かれるケースも多い。ある種のゲーテッドコミュニティ化といいますか、既婚者とお子さんを育ててる世帯で、互いの顔が見えなくなっていって、意識の差が広がってしまうんじゃないかっていうことを危惧しているんですよ。顔が見えないと、相手の立場への想像力も働かなくなりますから。
堀:これ、どうしていくべきだと思いますか? 最後。
北条:難しいですよね。ゾーニング化は止まらないと思うんですよね。独身者と既婚者では、子ども観もどんどん離れていって。顔が見えないので……子育て世帯と、子育てが終わった世帯をつなげるということがすごく難しい。
フランスにあるような「保育ママ」という制度。子育てを終えた女性たちが、今子育て中の世帯に入って育児のお世話をするというような。そういう感じの出会いの場を行政が作らないと、どんどんある意味でゲーテッドコミュニティ化されたところになっていく。
堀:こういう現象があるということを認識した上で対策を取って、溶け合うような……。
北条:そうですね。ライフスタイルの多様化、自由化によって、結婚する人、しない人、子どもがいる人、いない人の間で、意識がどんどん乖離していくというのが、今回の調査ではっきりしたのではないかと思います。
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