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SDGs100人カイギ vol.12:世界を変える、サーキュラー・エコノミーの挑戦。(全4記事)

これからは「お金以外の資本」が重要な時代 新たなローカルコミュニティを生み出す“家のサブスク”

2030年までに本気で世界を“変える”ことを目標として、さまざまな活動をしている「100人の話」を起点に、クロスジャンルでゆるやかな人のつながりを生むプロジェクト「SDGs100人カイギ」。2020年11月25日に開催されたVol.12では「世界を変える、サーキュラー・エコノミーの挑戦。」をテーマに4人のスピーカーが語りました。本パートでは、株式会社アドレス 事業開発マネージャー 池田亮平氏のお話を公開します。

「非金銭資本」組み込んだライフデザインを目指して

池田亮平氏:みなさん、よろしくお願いします。アドレスの池田と申します。いろんな場所でアドレスの紹介をしているんですけれども、SDGsでの文脈でお話することは多くないので、楽しみにしてまいりました。よろしくお願いします。

前半で「アドレスってどんなことをやっているの?」みたいなサービス紹介中心のお話をして、後半で「SDGsとどう接続されるの?」みたいな順番で話していこうかなと思います。

その前にまず自己紹介をさせていただくと(スライドを指して)。ざっくりいうと学生時代、東京大学にいた頃に、AIESECという日本全体で900人ぐらい(メンバーが)いた、けっこう大きい規模のNPOの人事をやっていて。

そこからは人事のコンサルティングの会社、リンクアンドモチベーションに入って、ソニー生命を経て、独立して。今はアドレス、プラスいくつかやっているという、そんなかたちになります。

なので最初は「人と組織」というテーマでずっとやっていたところから、ライフプランナーという仕事でお金を切り口にした「人生全般」にテーマが移って。今は「暮らしを中心とした豊かさ」をテーマに扱っております。

今日は時間の関係で割愛しますが、けっこう紆余曲折、ドロドロな人生を裏側では歩んできてまして、それを通じて、今、座右の問いとして「これからの時代の豊かさとは何か」というものを置いて活動しております。

これもいろんな切り口があってたくさん話したいことはあるんですが、端的にいうと、10年以上ライフプランナーという仕事で、世の中と個人の家計と企業の財務とを見てきたわけなんですが。正直、人口減少フェーズに入ってしまった日本においては、経済のパイはシュリンクしていかざるを得ないので「お金だけに依存しすぎる人生は、なかなか苦しいな」というのを感じ続けた10年でした。

なので、ソニー生命を出たきっかけでもあるんですけれども、これからの時代の豊かさを作っていくためにはお金だけではない「お金以外の資本」。「非金銭資本」と呼んでいますけれども、そういうものがとても大事になっていくし、それらを組み込んだライフデザインをどうしたらやっていけるのか、実現していけるのか? をテーマに活動しています。

特に、非金銭資本の中でも社会関係資本といわれるものがすごく重要だと思っていて。人のつながりであったり、ローカルのコミュニティ等々のつながりがすごく大事だと考えているんですが。これがアドレスに関わっている理由でもあるんですよね。

サブスクで利用できる「家のシェアリングエコノミー」

アドレスというのは、日本全国多拠点生活のプラットフォームを展開していまして。簡単にいいますと、地方や郊外の空き家などをリノベーションしたものをうちが借り受けて、会員のみなさまでシェアをします。その意味でシェアリングエコノミー。家のシェアリングエコノミーかつ月額制でやっているので、サブスクリプションサービスでもある。

そういったプラットフォームで、1つの住所だけではなくて日本全国の多拠点で暮らしていくことで。いろんな人のつながりを作って豊かにしていけるなというのもあって、アドレスという事業にコミットさせていただいています。

ここからはアドレスをもうちょっとご説明するんですが「アドレスって何をやっているんですか?」という質問に一言でお答えするのであれば、月額制で全国の家に自由に住める「多拠点コリビングサービス」というものをやっています。

コリビングサービスというもの自体が、まだなかなか市民権を得ているワードじゃないと思うんですが。既存のサービスでいうと、いわゆるシェアハウスとコワーキングスペースが同じ建物の中で1つになっているとご理解いただくのが近いかなと思います。みんなで暮らしながら、仕事もそこでできちゃうよと。それを全国の空き家を活用しながらやっているので、月額4万円という個人会員の価格でやっているんですが、それぐらいでできているのはそういう背景がありますね。

観光以上・移住未満の「関係人口」という関わり方

サービスが生まれた背景をもうちょっとお話しますと。今、国も地方も移住促進でみんながんばってきたのは事実なんですが、正直そこまで移住・定住者が増えたかというと、そうではないんですよね。私自身も移住は検討しているんですけれども、子どもが3歳と0歳だったりして、子育てとかを考えるとなかなかハードルが高くて踏み切れない。そんな感じなんですよ。

そこがなかなか難しいので、今は地方自治体も国も「関係人口」というところにフォーカスをするようになってきていますね。観光以上・移住未満の「関係人口」という関わり方に注目が集まっていて。ちょうどアドレスがそれを推進するプラットフォームでもあるので、応援していただけているという背景があります。

(スライドを指して)こちらは社会課題の大きなものの1つですが、空き家問題ですね。これはコロナ前の推計なので今後どうなるかはまた変わってくるとは思うんですが、とある推計でいうと「2033年には全国で2,000万軒を越える」といわれています。「日本全国の家の30パーセントが空き家になる」という、けっこうインパクトのある試算ではありますけれども、そこをなんとかしようと。

空き家問題って、犯罪の温床になったり、倒壊リスク、火事のリスクとかいろんなものがあるので、本当に自治体の方々にとっては深刻な問題なんですよね。なのでアドレスというかたちで、そういった空き家を活用することで空き家の数を減らしていく。問題解決の一助になっていけるんじゃないかなと考えております。

特に今はコロナの波が来まして、みんな「もう都市に住んでいる場合じゃないな」となっています。脱都会・脱東京みたいな流れが大きく、かなり前倒しで世の中に来たなとは考えているんですが。アドレスは今、全国100拠点以上になろうとしているんですけれども、そういう価値観の方々が、ゆったり個室で過ごしながら多拠点ライフを送れます。

あとは、各拠点に家守という存在がいまして。管理人兼コミュニティマネージャーなので、そこに行けばいつも家守がいます。家守がその土地ならでは人とか体験をつないでくれるので、単なる観光とはぜんぜん違う、暮らしに近い体験ができます。あとはAfterコロナを見据えた、いろんな価値観のとがった方々が会員になってくれているので、次のライフスタイルを模索したいという方々がアドレスを楽しんでいただけているという感じですね。

温泉24時間入り放題な拠点からホテル暮らしの拠点まで、さまざまな拠点が今、全国に100ヶ所。ちょうど今月100ヶ所を超えるところなんですけれども、そんな拠点展開をさせていただいているビジネスになります。

これからの時代の安全保障の1つのかたち

Airbnbなどの民泊と大きく異なる点としては、やはり家守の存在が非常に大きいなと考えています。本当に多種多様な方々に家守になっていただいているので。例えば(スライドを指して)一番上の南房総の横山さん、今年もう83歳になられましたけれども、池田家行きつけの拠点なんですね。

うちの3歳の息子はリアルなおじいちゃんだと勘違いしているぐらいの、池田家にとっては第3の実家みたいな感じなんですよ。「いつ移住してくるんだ?」みたいな話もあるんですけど、行けば横山さんが迎えてくれて、いつもあったかく身を寄せられる、心を寄せられる場所が池田家にとっては1つ大きな存在になっています。

そういった拠点が世の中、日本の中に何拠点も持てるということは、豊かさを広げることにもなりますし。これ、アドレスの切り取り方の中で個人的に大事だなと思っているんですが、特に自然災害等の多い日本で暮らしていく上で、これからの時代の安全保障にもなっていくと思うんですよね。

住んでいる特定の場所で大きな自然災害があったとしても、いざとなれば身を寄せられる場所があるというのは、安全保障にもつながっているなぁというのは個人的に、もともと10年ぐらい保険の仕事をしていたのもあるので。これからの時代の安全保障の1つのかたちかなと思っています。

一人ひとり、多種多様な引き出しと才能を持った家守がいるので、本当に観光地としてはぜんぜん有名なエリアじゃなくても「家守に会いに行く」という楽しみ方ができるのが、アドレスの多拠点ライフの特徴かなと思っております。

そんなプラットフォームだったりするので、使えば使うほど、冒頭にお話した「お金ではない人のつながり」、社会関係資本をどんどん増やしていける、積み上げていけるサービスなんじゃないかなと考えていますね。

もうちょっとだけ私個人の観点でいうと、住居のコストって個人の人生、個人の家計の中ではすごく重たいものだと思うんですよ。特に都会、東京に住んでいると、半分は家賃のために働いているようなものだと思うんですけれども。

アドレスって、ファイナンシャルプランナーの目線で見て重いコストである「住居費」を、半分解放できる可能性があると考えています。現状のメニューだとアドレスのみで暮らしていくには専用ベッド等をオプションで契約しないと難しいのですが、一部の会員さんは既にアドレスのみで暮らしていたりします。

さっき話した、暮らしを通じて人のつながりを作っていくことができるというのもあるし、安全保障の話もあるし。アドレスはこれからの豊かさを支える非金銭資本、安心安全というところを分厚くしてくれるサービス、プラットフォームだなと考えていますね。

アドレスとSDGsの接点

そのアドレスとSDGsみたいな観点で、どのあたりが接点なのかな? と改めて考えて整理をしてみたんですけど。いろんな目標がある中の、(スライドを指して)この「11 住み続けられるまちづくりを」と「12 つくる責任つかう責任」あたりかなと個人的には思っています。

まちづくりの方でいうと、先ほどもお話ししたような空き家問題の解消が1つは大きいですよね。人口減少が著しくて、町・村自体が消えていってしまう可能性があるといわれている中、定住ではなくても関係人口として足しげく通ってくれる半分帰属した住人たちがいることで、その自治体自体が存続できるという観点もありますし。

空き家だらけになると犯罪とかに使われて、危ないエリアになっていってしまう可能性がある町を、住みやすい感じにもできていく。

これ、シェアリングエコノミーの観点でもけっこう大事でして。シェアリングエコノミーって、もう国の方策の真ん中にも入ってくるぐらいの、みなさんご存じの言葉だとは思うんですが、シェアをするためには人が必要なんですよね。

シェアリングエコノミーって、多くの人がいて一人ひとりが空いちゃっているもの、遊休資産などをシェアしていくから成り立つという話なんです。でも地方では、人の数がどんどん減ってしまっている。そのためにシェアリングエコノミーのスキーム自体が回りにくい。そいうった問題が、地方都市ではけっこうあるのが現状なんですよ。

都市なら人がいっぱいいるし、物に関しても、ちょこちょこ余った物を寄せ集めればシェアで回るんですけれど、地方だとそもそも人がいないので難しい。それを定住者じゃなくても関係人口として、常にその町に人がいるというかたちであれば、シェアリングエコノミーのいろんなサービスが回り始めるというところもあるので。その側面でも、意味があるんじゃないかなと考えています。

あとは、都市への一極集中を緩和させるということで。都市部の環境負荷を減らすという意味でも、貢献はできる部分かなと思っていますね。

日本に根強く残る「新築信仰」の弊害

もう一つ「つくる責任つかう責任」みたいな話でいいますと。私たち自身も、代表の佐別当(隆志氏)をはじめとして、けっこう環境負荷への意識を持っています。

例えばアドレスが使用している電力も、すべて自然電力株式会社にシフトしたりとか、あとアメニティのタオルもIKEUCHIORGANICさんを使っていたりとか。あとはバスアメニティとかもオーガニックのものを使っていたりというところでこだわっているというのは、一事業者の目線でのポイントにもなっていますね。

あとは、さっきも空き家の話でちょっと触れましたが。なんで日本でこれだけ空き家が増えちゃうかというと、本当に根強い「新築信仰」があるんですよね。「住むなら新築!」というのが、すごく強いお国柄だったりするので。人口が減っているにもかかわらず、家がじゃんじゃん建っているという希有な国なんですよ。なので、空き家が増えてしまう。

新たな家を建てる環境負荷、環境コストを考えれば「空き家がたくさんあるんだから、そこを活用してみんなで住んでいこうよ」というライフスタイルを推進していくことは、エコにもつながっていくんじゃないかなと思っていますね。

小さいところでいうと、家守の方々の中にもかなり持続可能性を志向している方が多かったりするので、各拠点で使っている洗剤などを、自主的に持続可能なものに変えていただいている方もいたりします。

あとは拠点によっては隣に畑が付いていたりするので、会員も集めながらみんなで野菜を育てて自分たちで食べるというライフスタイルをやっている方もいますね。

「生産者と消費者が分断されてしまっている」みたいな話は色々な文脈で言われていますが、自分の行きつけの場所ができて関係人口になっていくと、その土地が自分事化していくので地域にちゃんと根を下ろした生産消費者になっていく。そんな変化が、アドレスというプラットフォームを通じて進めていけるんじゃないのかな? みたいなことを考えております。

あとはミクロな利用者視点というところで見ると……うーん、そうですね。「いつかは持続可能なライフスタイルへの一歩を踏み出したい」と思っている方はいっぱいいると思うんですけど、やっぱり移住ってハードルが高いので。アドレスの存在は、そういう方々への最初の一歩を踏み出す後押しになるんじゃないかなと思っていますね。

よく大前研一さんが「自分を変革するには、時間配分と住む場所と付き合う人を変えるのがいいんだ」みたいな話をされていますけど。その住む場所とか付き合う人を変えていくきっかけになるのが、アドレスならではのライフスタイルかなと思っていますね。

「都市か地方か」ではなく「都市にも地方にも住む」という世界

あと、アドレスを通じてSDGsへの関わりを考えていくという観点でいうと、1つは今スライドで出しましたが、自分にとって「水が合う」場所探しという観点があるかなと。

「持続可能なライフスタイルにシフトしていきたい、都会を出てそういう住む場所を探したい」となっても、正直、移住を考えるんであれば、絶対すぐには場所は決まらないです。

移住までいかずに関係人口的に関わるとしても、場所を探し、人を探し、自分にフィットする場所を見つけるまでって、けっこう時間がかかって大変なんですよ。

「ここが合いそうだな」となっても、そこに根を下ろしていくためにはさらに時間がかかるので。そういう方々のご相談に乗ることもあるんですが、小さなステップでまずは水が合う場所を探し始める。「これからは、もう都会じゃないな」と感じている方が、最初の小さな一歩でいろんなアドレス拠点を試しながら「どこのエリアがいいんだろう?」と探すことのお手伝いができるんじゃないかなと思っていますね。

各地方への関わり方もいろんなグラデーションがあって、先ほどの「移住があって観光があって、その間の関係人口があるよ」という話もそうなんですけど。高排出な都市か低排出な地方かの二者択一だと、やっぱり分断を生んでしまうなと思っているんですよね。

なので、アドレスが目指しているのは「都市か地方か」ではなくて「都市にも地方にも住むよ」という世界観です。人が回遊しながら、都市にも地方にも住めるライフスタイルを広げていこうとしているので、一足跳びに低排出な地方に移住をするという選択が取れない人にも、まずはその中間の選択肢を提示できるというのが、けっこう大きな存在意義かと思っています。

その地域の風土を規定するものとして、風の民・土の民がいるよという話があります。どっしりそこに根を下ろす土の民だけではなかなかできないことも、いろんな土地を巡りながら風の民、風のようにいろんな土地を巡っていく方がさまざまな情報だったりつながりを運んでくるからこそ、その土地が持続可能に成り立っていくという話もあるので。

どこかで移住先を見つけてどっしり移住していく人ばかりが正しいわけじゃないので、アドレスのようなプラットフォームを通じて風の民としていろんなところを巡っていくということ自体も、関わり方の1つとしてはあるんじゃないかなと思っていますね。

採用力強化にもつながる、アドレスの法人会員

最後にもう1つ、アドレスの法人会員にも触れさせていただきます。先ほどお話ししたように2033年に2,000万軒の空き家が出てしまう状況をなんとかしようと思っても、個人会員を増やしていくだけでは追いつかない可能性もあります。「多拠点生活をしてみたくても、会社のOKが出ないから難しい」という方もけっこういらっしゃるんですよね。そのため、企業単位でそこを解決すべく、後押しをしてもらう力も必要だなと思っています。

導入する企業のメリットとしては、アドレスのプラットフォームには先ほどお話ししたような観点があるので、ESG課題へのアプローチにもなりますし「そういう働き方を推進しているんだよ」という採用力強化にもつながります。そのため直近は、法人会員を増やしていく活動にも力を入れています。

いろいろなきっかけがあっていいと思うんですが、SDGsという観点からアドレスに関わる個人会員さんとか法人の会員さんが、もっともっと増えていければいいなと思っています。まだまだスタートアップで小さい会社なんですが、みなさんのご協力もいただけると、個人としての豊かなライフスタイルを実現しながら社会課題を解決していき、SDGsにもなんらかの貢献をしていけるようなプレイヤーになっていけるのかなと思っていますので、みなさんどうぞよろしくお願いします。

最後、個人的には、最近の池田家の移住先候補として、資源リサイクル率12年連続日本一の鹿児島県大崎町みたいな話もありまして。

地方につながりをたくさん持つようになってから、持続可能性に取り組むおもしろい地方都市がたくさんあることを知ったので、そういったことも世の中に広めていければいいなと思っております。

以上、駆け足になりましたが、ありがとうございました。

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