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イクボスプロジェクトについて(全1記事)

「育児とは期間限定の“プロジェクトX”である」 ファザーリング・ジャパン代表が語る「イクボス」で目指す社会

職場でともに働く部下のワークライフバランスを考え、その人のキャリア・ライフを応援しながら組織の業績で結果を出しつつ、ボス自らも仕事とライフを楽しむことができる上司「イクボス」。これを推進するための意識変革を同盟企業と一緒に啓発してきた、NPO法人ファザーリング・ジャパン。同団体が2020年9月9日、対外向けの勉強会として「社員が働き方を決める時代へ 〜AIG・カルビー・富士通の3社の転勤事例から紐解く〜」を開催しました。本パートでは、代表の安藤哲也氏が、ファザーリング・ジャパンとイクボスについて解説しています。

ファザーリング・ジャパンとイクボスについて

川島高之氏(以下、川島):それでは時間になりましたので、ファザーリング・ジャパン主催のオンラインイベントを開始したいと思います。私はファザーリング・ジャパンの理事でイクボスというものを推進しております。川島と申します。よろしくお願いします。

いわゆる「会社が社員の働き方を決める時代」が終焉というか、曲がり角に来ていまして、今日のタイトルのとおり「社員が働き方を決める時代」になりつつあると。その1つの事例として、転勤問題というのがあります。今日は転勤問題について、専門家の先生お1人と企業事例を3社、そしてそのあとパネルディスカッションというかたちで進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

それでは最初にファザーリング・ジャパンの代表の安藤から、ファザーリング・ジャパンとイクボスについて簡単に説明いただきたいと思います。安藤さん、よろしくお願いします。

安藤哲也氏:みなさん、こんにちは。ファザーリング・ジャパン代表の安藤です。今日はよろしくお願いいたします。私からまずファザーリング・ジャパンのご紹介をさせていただきます。

NPO法人ファザーリング・ジャパンは、2006年に日本で初めて生まれた父親支援のNPOです。「父親であることを楽しもう」という考えを持つ父親たちを応援する。育児の在り方だけじゃなくて働き方の見直し、ワークライフバランスや企業の意識改革も目的にしております。

私自身も共働きで、3人の子どもを育てました。もう20年以上前ですけれども、まだあの頃はイクメンなんて言葉もなく、自分も育児や(仕事との)両立に悩んできた時期がありました。おそらく日本のお父さんたちがこれから直面するだろうこういった課題を解決したくて、このNPOを立ち上げました。

今現在、全国に350名の会員がいます。支部も北海道から沖縄まで18、法人会員は13社ほど入っていただいています。

Fathering(ファザーリング)というのは造語でして、父親を楽しもうという意味です。地球上で父親ほどすばらしい仕事はない。育児は期間限定のプロジェクトX。育児をすると仕事にもいい能力が開発されるよ。別世界への入り口かもしれない。父親になったらよい父親ではなく、笑っている父親、家族や地域、会社の同僚なんかとも笑っていられるようなそういう存在、父親になろうということを我々は目指しています。

ファザーリング・ジャパンのさまざまな事業

ファザーリング・ジャパンの事業はさまざまあるんですけれども。最初は父親向けの支援をやっていまして。今で言うと男性育休を推進していく「さんきゅーパパプロジェクト」というのを展開しています。そのほかパートナーシップであるとか、子どもの思春期であるとか。逆に母親ですね。再就職、育児休業復帰されるママたちを応援したりもしています。

あとはおじいちゃん向けのイクジイプロジェクトや、人生100年時代のプロジェクト。そして発達障害の子どもがいる家庭の支援であるとか。あとはハウスハズバンド、主夫のコミュニティなんかも作っています。こういった事業を14年くらい展開してきまして、国や自治体、企業とも連携して進めている状況です。

具体的な活動内容は、一番多いのは(スライドを指して)こういったセミナーやワークショップというところで、笑っている父親になるためのセオリーとか極意を伝えています。男性の料理、家事参画なんかも今話題になってますけれども、派手な料理だけじゃなくて、いわゆる名もなき家事というようなことも教えたりもしています。

あとはお父さんと子どもだけでキャンプに行く。その日はお母さんはお休みというかたちで、こういうコンセプトでキャンプとか旅行の企画なんかも展開しています。

これまでに各種の書籍を発表してきました。パパ向けのものは最近、出産祝いなんかでも贈られるようになってきていますし、女性の活躍が進むと同時にやはり育児休業の取り方なんかも記載された本も出しております。右上のほうはイクボスについてですね。この本も出版しています。

夫の家事育児時間を先進諸国に近づけたい

このように事業を展開してきましたけれども、ご存知のとおり、夫の育児家事参加と同時になかなか日本の女性活躍が進まない。公務員はだいぶ管理職の女性も増えているんですけれども、民間企業においてまだまだの部分があります。そうなると我が家もそうでしたけれども、共働きにおいて妻側に負担がかかってしまってですね。これが原因で、女性のキャリアアップが図れない。

あるいは(スライドを指して)一番下にありますけれども、2人目以降の出生数がなかなか伸びない。少子化問題ですね。こういったものが日本の構造的な問題だと言われています。夫の家事育児時間を増やしていくということで、先進諸国のようなバランスに近づけたいと思っています。

本人たちの意識や努力というのはだいぶ進んだんですけれども、やはりNPOに寄せられた声としては会社の雰囲気といいますか、特に上司の意識とか働き方を変えてほしいというリクエストがいっぱい来ましたので、2014年に川島らとともに「イクボスプロジェクト」というのを立ち上げました。

イクボスとは職場でともに働く部下、スタッフのワークライフバランスを考え、その人のキャリアとライフを応援しながら組織の業績も結果を出しつつ、そしてボス自らも仕事とライフを楽しむことができる上司のことを指します。

決して育児をしている部下のマネジメントだけでなく、ダイバーシティ、多様な部下をそれぞれオーダーメイドで育てていく。そして組織を育て、社会を育てるという大きなミッションがイクボスにはあると思っています。

社会のキーパーソンが次々に行う「イクボス宣言」

ただ、我々のような弱小NPOが吠えていても届かないということで「イクボス宣言」というコンテンツを作って、社会のキーパーソンにイクボス宣言をしていってもらいました。霞ヶ関であるとか、大学機関であるとか、県警本部。スライドにはないですけど、最近は自衛隊とかそういったところでも盛んに、イクボス宣言が行われるようになっています。

あと、みなさんがお住まいの自治体の市長や知事もイクボス宣言をしています。単なる住みやすさだけじゃなくて、働きやすさ、ワークライフバランスを推進してもらい、それを父親の育児参加に繋げていただいています。

こういうことでいろんなメディアにイクボスが4、5年前から取り上げられるようになってきました。新聞なんかでも特集が組まれたりということで、だいぶイクボスという言葉自体も広がってきたように思います。

ただやはり、企業が具体的に変化していくという姿を見せたかったので、2014年の12月に「イクボス企業同盟」を発足いたしました。イクボスの必要性を認識し、積極的に自社の管理職の意識改革を行って、新しい時代の理想の上司を育てていこうとする企業のネットワークになります。

最初は(スライドを指して)こちらに写真が載っている、11社の方々と一緒に立ち上げました。最初11社で始まったイクボス企業同盟も、先週も1社入ったんですけれども、今現在231社になっています。

今日、このフォーラムをご覧の企業の方でまだ加盟されていない方は、ぜひご関心があれば事務局に問い合わせていただければと思っております。私からは以上になります。今日はどうぞよろしくお願いします。

川島:ファザーリング・ジャパン安藤代表による、ファザーリング・ジャパンおよびイクボスの紹介でした。まさにイクボス宣言が非常に増えてまして。いよいよ大阪大学が来週イクボス宣言をしますので、どんどん広がりを見せています。

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