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【第1部】愛されるチャンネル・伸びる動画の作り方(全3記事)

インスタグラマーのYouTube進出はなぜ失敗する? “長尺消費”と“ながら見”から考える、時代の変化

2019年7月25日(木)、YouTubeのチャンネル登録数130万人を超える超人気グループ「さんこいち」のほりえりく氏、SNSのカリスマと呼ばれる佐藤ノア氏をゲストに招いたセミナー「Z世代に刺さる動画と愛されるチャンネルの作り方」が、BitStar社で開催されました。企業の動画マーケティングやSNS運用担当者を対象とした本セミナー。第一部では、ほりえ氏が「愛されるチャンネル・伸びる動画の作り方」について知見を披露しました。このパートでは、YouTubeやインフルエンサーの最新トレンドを中心にトークを展開。後半には、視聴者に嫌がられないタイアップ動画の極意を語ります。

ほりえ氏が語る、時代が変わった瞬間

泊大輔氏(以下、泊):続いてのテーマですが、最近のYouTubeやインフルエンサーのトレンドについて教えていただけたらと思います。最近注目されているジャンルやユーチューバーの方はおられますか?

ほりえりく氏(以下、ほりえ):今、自分自身がYouTube以外にもYouTubeのコンサル的なことをやっていて、今4組ほどのユーチューバーを見ているんです。その中で深く考えたり、YouTubeのノウハウを教えたりしながら男女比や収益などを見ていて。

その持っている子たちの中で、「いんちき姉妹」という子たちがいまして。裏の話になっちゃうんですけど、その子たちが動画の投稿時間を増やしたところ収益が2倍3倍になったというのはおもしろかったですね。

:ちょっと先のやつになりますけど、こちらのスライドですね。

ほりえ:そうですね。(スライドを指して)この子たちなんですけど、もともとは5分以内や3分以内の動画が多かったんですけど、ある時を境に28分や24分など、もうほとんどテレビと変わらないような企画をするようになって。そこから再生数、動画の再生時間、そして収益がすごく変わったことに驚きました。

丸本貴司氏(以下、丸本):スマホで長時間見る人が増えてきた。慣れてきた。

ほりえ:それで「時代が変わったんだな」というのに気づきました。

丸本:これは、長尺のほうが収益がいい?

ほりえ:収益は本当に目に見えるほど変わると思います。

丸本:単純に5分の動画を1本出すよりも、10分だったら2倍になるってこと?

ほりえ:そうですね、それくらい……いや、2倍どころじゃないかもしれないです。

:10分にすると間にCMが出るようになるので、10分前後でやるんだったら10分以上にして投稿しようという方がけっこう多いですよね。

ほりえ:そうですね。

インスタグラマーのYouTube進出が失敗する理由

:丸本さんはなにか最近のトレンドというか、注目されている部分はありますか?

丸本:YouTubeでいうと、ずっと「インスタグラマーがYouTubeの業界に行くと失敗する」と言われていて、ことごとくみんな失敗してきたんですけど、最近、「inliving.」さんや「なえなの」さんが始めたんですよ。いんちき姉妹やさんこいちなどもそうだと思うんですけど、「テンション高めで効果音ドーン」みたいな感じがYouTubeのイメージだったところに、ゆるい感じの動画も出てきて。

従来のユーチューバーはゴシック体の太めの文字を入れていたものが、インスタグラマーからユーチューバーになった子たちは細めの文字で、ながら見するような感じが最近回るようになってきたので、ここがトレンドなのかなと。

ほりえ:インスタグラマーはもともとInstagramでの世界観がものすごく大事じゃないですか。それをユーチューバーに寄せてしまうと、ちゃっちい世界観に格下げされてしまうというか。そうなると結局視聴者は「じゃあインスタグラマーでいいや」になると思うんです。

だからむしろインスタよりおしゃれにするか、インスタと同等くらいのところに持っていってあげないと、YouTubeのコンテンツとしてうまくやっていけないのかなと思います。

丸本:最近そういうのがすごく増えてきた感じがありますよね。

肩書が物を言う

:では、続いてのテーマなんですけども、もともとモデルとしても活動されていたということですが、モデルとインフルエンサー、活動する時に違いを意識されていたことはありますか?

ほりえ:インフルエンサーは、とくに……。

:とくにない?

ほりえ:すいません。

:(笑)。

丸本:たぶんインフルエンサーというのは曖昧な言葉で、世の中に溢れていて。あとは数字だけになってくるから、「2つの職業で一番になったら掛け算で稀有な存在になる」みたいな感じで言われると思うんです。

ほりえは『Samurai ELO』という、もうなくなった雑誌で専属モデルをやっていたんですけど、その時も肩書があったことで、「雑誌の専属モデルでユーチューバー・インフルエンサー」みたいな感じで他と差別化ができるところがよかったのかなと。

ほりえ:そうなんです。企画をやる上でも肩書はけっこう必要だと思っていて。みなさんもそうだと思うんですけど、例えば「〇〇がここに登壇するから見に来る」「〇〇がやるから」というのに引き寄せられることが多いと思うんです。

企画も同じで、モデルが「服の紹介をするから見に来て」と言うのと一般人がそれを言うのでは全然違うと思うから、モデルをする上でそこの肩書が欲しかったというのはありますね。

丸本:肩書の問題だと思います。

ほりえ:影響力をつけたかったんだと思います。

商品を出しすぎて「案件っぽすぎる」、視聴者からバッシング

:わかりました。続いては、YouTubeのチャンネルの運営を行う上で、今までで一番大変だったことはなんでしょうか?

ほりえ:もともとは丸本さんがやっていたレキシントンというところに所属していたんですけど、今は自分で会社を設立してフリーでやっているんですよ。事務所に所属していないので、案件などは全部自分で対応しないといけないのが大変ですね。動画制作で苦なことはないので、そこは大丈夫です。

:ユーチューバーの方はビジネス的なやりとりも個人でやらなくてはいけないところがあると思うので、そのあたりで大変なところは?

ほりえ:そうですね、代理店さんがいる前で言うのはあれなんですけど、自分たちはこういうふうに動画を撮りたいのに、「商品をもっと出してくれ」とか言われたりすると。それじゃあお互いにいいPRにならないのに、商品を出しまくって視聴者の方からバッシングを受け、「案件っぽすぎる」みたいな感じで言われてしまうんですよ。

それだと結局PRにもならないし僕たちも炎上するし、僕たち的には「今回PRできなかったじゃない? なのにお金だけもらう」というのが一番大変です。

企業とYouTuberの方針が合致しないと再生数は伸びない

丸本:僕、今でも覚えているのが、さんこいちが初めて案件を受けた時で。それまでずっとモデルとか3人の男女の友情とかでやってきたのに、一番最初に受けた案件がゲームの案件だったんですよ。それまでゲームをやったことがないのに、あれはちょっとよくわからなかったよね。

その案件を受けて、言われるがままにやって。やっぱりサムネは大事で、それで再生回数がだいぶ変わったりするんですけど、「サムネにゲームの画面を入れてくれ」と言われて入れたら、それまで1日で平均30万回くらい回っていたのが、ゲームのやつだけ10万回も回らなかった。5万回しか回らなかった。これは印象的でした。

ほりえ:今もそのゲームの動画は残っているんですけど、たぶん一番再生回数が低い。

丸本:ワースト。

ほりえ:です。

丸本:たぶん、代理店や企業の方側とユーチューバーたちが一緒に上っていかないとダメ。誰も得をしないですね。

ほりえ:テレビは勝手に再生されるものじゃないですか、でもYouTubeは見てる側の人たちがアクションを起こさないと見られないものなんです。そこに対してちょっとでも苦があると、視聴者側も嫌だと思いますし。それに合ったコンテンツをお互いにタイアップする時は苦を出さないように、両方に意義があるものでなければいけないと思います。

チャンネルを見ておかないと“事故る”

:このあたりがYouTubeマーケティングの難しさでありおもしろいポイントかなと思います。今回は代理店の方もたくさん来られているのですが、発注する企業・代理店側として注意すべきポイントはあるのでしょうか?

丸本:担当の方が本当にYouTubeを見ているかどうかだと思いますね。事故る時はだいたい担当の方がYouTubeを見ていない人の場合。再生回数と登録者数で、なんとなく「ああ、こんだけ回っているから人気なんだろう」という感じで来た時なんですよ。

最初は「好きにやっていいですよ」と言ってもらえるんですけど、「好きにやっていいんだ」と思ってオリエンまでして、本人たちも目の前で担当と話したりして、いざ上げてみたら「いや、これ全然違う」と言われたり。それで事故ることが多いので、お願いするユーチューバーやチャンネルは絶対に見ておくべきだなとは思います。

「風呂をのぞいてみた」より「わちゃわちゃしゃべる」ほうが伸びる

:続きましては、チャンネルの具体的な制作や方針についてです。さんこいちさんのチャンネルのところになると思うんですけど、YouTubeのチャンネルを運営するにあたって、なにか3人で決められているルールなどはありますか?

ほりえ:先ほど言ったように、僕たち自身は今、YouTubeに関する案件は月に1回しか受けていないんですよ。それも見え方をあまり企業っぽくしないようにしようというのが一番で、それをわかってくれるクライアントさんと一緒に案件をやっていこうというのは3人の中で大切にしていこうと思っています。

丸本:さんこいちは動画を出す時に「この動画は伸びる」「だいたいどのくらい回る」「この動画はもしかしたら回らないかもしれない」というのはわかるものなんですか?

ほりえ:最初に、古川とやっぴが「伸びる」と言ったものは伸びず、僕が「伸びる」と言ったものが伸びたことがあって。それからは企画とかを全般にやっているんですけど、だいたいはわかります。「こういうワードを入れれば伸びる」「こういうワードが今トレンドだ」というのは、ものすごく勉強しました。

丸本:伸びる動画ばかりを出したほうがいいの?

ほりえ:伸びる動画は全部が全部そうじゃないと思うんです。ファンがつきにくいこともあって、例えばエロ系の動画がありますよね。このエロ系の動画は人の三大欲求に触れているので結局は伸びるんですけど、それだけじゃファンにはなってくれないと思うんですよ。ですから、「3人でわちゃわちゃ遊んでいるだけの動画が好き」という人のほうが多い。

丸本:再生数はエロ動画よりも……エロ動画ですかね、あれ(笑)。「古川の風呂覗いてみた」みたいなやつよりも、やっぱりわちゃわちゃ喋っているほうが再生数は伸びないけどファンはつくという。

ほりえ:そうですね。

男女のグループだからできること

:(スライドを指して)次はこれですね。ちょうど今お話しされていた企画・撮影・編集で一番重要視しているところは?

ほりえ:もちろん全部大事なんですけど、僕は基本的に企画と編集をとくに大事にしていて。企画は先ほど言ったように、最初のうちは「伸びるワードとかは絶対に2つ入れよう」とかやっていましたね。人がやっていないものでこれとこれをかけ合わせて、ちょっと違った目線で見てみて、男女だからこそできるものをやるようにしていて。

編集に関しても、うちは今編集者を雇っていて、その編集者がさんこいちの色を出してくれるようにしているんですけど、ユーチューバーにとって編集は大事だなと思っていて。よくある「ドドン」みたいな感じの効果音を入れればいいだけじゃなくて、そのチャンネルに合った編集を見つけ出してから進んでいかないと、ただ上げているだけじゃ視聴者も慣れてくれないところがあるんですよ。

丸本:これでびっくりしたのは、初期のころはほりえとやっぴと古川本人が1人ずつ編集していたじゃん。そうしたらコメントでファンの子が「今回やっぴくんの編集ですよね」と、けっこう当てていて。俺世代だとあんまりわからなかったんだけど、ファンの子たちは誰が編集したかわかるんだと思って。

ほりえ:そうですね。それぞれ編集のやり方は一緒なんですけど、癖がすごく出ちゃうんですよ。「こういうところでこういうテロップ出をす」「こういう写真出をす」とか、先ほど言っていた「ゴシック体の太文字を出す」「細い文字を出す」とかは、本当に人それぞれ変わるので、編集は大事だなと思います。

チャンネル登録者数より再生数を重視

:ちょっとそこにつながるかもしれませんが、チャンネル登録や再生数を伸ばすためにとくに意識しているところで、そもそもチャンネル登録と再生数のどちらを追いかけているとかはありますか?

ほりえ:もちろん目標としてよくチャンネル登録を見られると思うんですけど、自分的にはそれは企業さんに向けたステータスみたいなところかなと思っていて。やっぱり再生数が視聴者の意見なので、今は再生数と高評価を意識して動画投稿をしています。

丸本:すごく思うんですけど、BitStarさんはとくに詳しいと思うんですけど、企業さんや代理店さんは、ユーチューバーの値段を出す時にだいたい「チャンネル登録者数×いくら」みたいな感じになるじゃないですか。でも(チャンネル登録者が)100万人いても再生数が微妙なユーチューバーはいっぱいて。それはどうなんですか?

:そうですね、弊社では、提案する時にある程度平均の再生数を目処にさせていただくことが多いですね。

もちろん登録者数なども見るんですけれど、結局タイアップした時にどれくらい回るかが一番見られるところなので、過去のタイアップされた動画の再生数やふだんの動画の平均再生数などを打ち合わせさせていだたくこともけっこうあります。

ネームバリューの持つ意味

ほりえ:そうするとネームバリューとかも大事になりますよね。例えば「ヒカキンさんがやっているこれ」みたいな感じで他のユーチューバーがやったり。

芸能人でいうと「芸能人がこれを持っているからこれをやろう」みたいな感じのインフルエンサーが横につながっていくこともありますよね。僕的にはチャンネル登録も再生数ももちろん大事だと思うんですけど、ネームバリューも大事なのかなと思います。

丸本:知らない方も多いかもしれませんが、すごく気になったのが、一時期みんな一斉にタガメを食べるような動画があったじゃないですか。あれは案件だったのかどうなのかがいまだにわからなくて。あれは案件じゃないの?

ほりえ:「しばなんチャンネル」という夫婦のチャンネルがあるんですけど、そこで女ユーチューバー運動会みたいなやつをやって、その罰ゲームで。

丸本:あれ、罰ゲームなの?

ほりえ:罰ゲームなんですよ。負けたチームが罰ゲームでタガメを食べなきゃダメというやつがあって。それはPR案件ではなかったんですけど、Amazonでタガメの在庫がなくなるという(笑)。

丸本:そうなんだ。

YouTuberが見出した「ペヤング」のおもしろさ

:企画を考える時に、その時点でのユーチューバーの方々のトレンドみたいなものがすごくあるなと思って。ペヤングの焼きそばをみんなが食べたり、スライムをみんなが作ったり、そういうところはけっこう大事なんですか?

ほりえ:やっぱりテレビを見ていても、キャッチーなものが目に留まるじゃないですか。目新しいものとかは目に留まりやすいので、その目新しいものをいかにキャッチして視聴者にお届けできるかが僕たちだと思うんです。それが「ペヤングさんが最近おもしろいものをいっぱいやっているな」と見えているだけなのかなと思います。

:伸ばすためにどういったところを意識しているかについてですが、関連動画に載るようにするとか、そういったところは考えられたりしていますか?

ほりえ:関連動画に関しては、それこそGoogleさんとよくお話をするんですけど、YouTubeのアルゴリズム的にも高評価のもの、コメントが多いもの、再生数、いろんな基準があって。それもよくわかっていないらしいんですけど、それを含めた上で関連動画に載りやすいとか急上昇に載りやすいとか、いろいろ変わってくるらしいです。

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