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テーマ「コミケを文化多様性条約で守る」について(全1記事)

「日本のオタク文化を守りたい」コミケに魅了された仏ジャーナリストが危惧する著作権法改正

コミケやコスプレ、アイドル、アニメ、漫画など、日本のポップカルチャーは海外でも根強い人気を誇ります。1990年代に来日し、日本のオタク文化に魅了されたフランス人ジャーナリストのエチエンヌ・バラールさんは、TPPの大筋合意による「著作権侵害の非親告罪化」の影響を危惧する1人です。プロ・アマチュア問わず、クリエイターの自由な創作活動を維持して、文化の多様性を守るには何をすべきか? 自国フランスの映画産業を例に挙げて対処法を語りました。(TOKYO MXとの共同企画でニュース番組『モーニングCROSS』を書き起こしています)

TPPで著作権侵害の規制が強化

堀潤氏(以下、堀):さぁ続いて、バラールさんテーマの発表をお願いします。

エチエンヌ・バラール氏(以下、バラール):僕は、今日はこれです。

(テーマ「コミケを文化多様性条約で守る」について)

脊山麻理子氏(以下、脊山):TPPの合意に伴い、著作権法が改正されることになりました。これにより、著作権侵害が権利者の告訴がなくても、捜査機関の判断で立件できるようになり、日本の「二次創作文化」の現場では不安が広がっています。

著作権の非親告罪の適用範囲

:さて。コミケを主催するコミックマーケット準備会です。コミケって、本当に今大きなイベントになりまして。

TPP合意後の国の文化審議会で、「二次創作はクリエーターの裾野を広げている。将来の名作・クリエーターの芽をつぶさないよう自由な創作活動の維持を」と訴えたというんです。

昨年11月の知的財産戦略本部会合で安倍総理は、「二次創作が萎縮しないように留意します」と明言したというんです。いわゆる非親告罪ですよ。

著作権を持っている本人が訴え出なくても、当局や周辺の人物が「これは著作権侵害だ」と訴えれば、そこで罰することができてしまう非親告罪。これの適用範囲がTPPの議論の中でも問題になりました。国は非親告罪の適用範囲について、悪質性が明らかで原作者が経済的に甚大な被害を受ける海賊版など限定的にする方向だというんですね。「二次創作を守ろう」という動きが。

バラール:僕はどうしてこの問題が大事かというと、コミケは本当に日本が誇るべき文化的なイベントだと思って。政府が促進しているクールジャパンの基盤の1つであると思います。

:うちのスタッフの中にも、実は本業はコミケで書くという(人がいて)......。けっこう皆さん買っていくみたいですね。

バラール:僕は初めてコミケに行ったのが1990年早々だったんですけれども、そのとき欧米人はおそらく僕くらいしかいなかったと思うんです。

:1990何年ですか?

バラール:1990年くらい。

:1990年くらい! Windows95以前!

バラール:以前ですよ! 

:インターネット社会以前ですね。

バラール:そういうときに、コミケに魅了されたというか、圧倒されたというか。すごいパワーだなと思いつつ。

:当時、何がそんなにバラールさんを魅了したんですか。

バラール:当時、オタク文化にかなり関心を持っていて。

コミケに行く前、日本のマンガ文化はいわゆるプロのものだとしか考えていなくて、目に入らなかったんですが、コミケに行ってやっと、実は、裏にはそのプロの商業的な文化を支えているのがアマチュアの同人誌をやっている人たちだなという。

シナリオを書く技術を磨いて、それでファンたちの支持を得て、中にはプロになる人も何割かはいたでしょう。今は、ご存知のように欧米人なんかもかなりツアーで行くほどの……。

:すごいですよねぇ!

バラール:海外にも人気があり、話題になっているイベントであって。それは、そのままであってほしいと個人的には思うんです。

自国の映画産業を守ったフランスに学ぶ

:その文化を、「文化多様性条約で守る」。これはどういう?

バラール:振り返ってみると、フランスの文化的例外というような政策を思い出してほしいんですけれども。実は、フランスは1950年代から、いわゆる戦後間もなく、アメリカのハリウッド産業の帝国主義的な圧勝を恐れて、「自分たちの映画産業を守らないとこれから大変だよ」っていう意識を持ってたんですね。

そのとき何をやったかというと、文化というのは他の商業的なものとはるかに違うことだよと。その国の表現力、その国のスピリッツでもあるというふうに見なしてほしいと。

それを言うのは簡単ですけれども、どういう対策をとったかというと、当時の目的がフランス独自の映画産業を守ることだったんで、チケットの価格に対して10パーセントの付加価値税をつけたんですよ。

:なるほど。環境税みたいなものだ。みんなで環境を守るために税金を。みんなで文化を守るために映画を観るときには税金をと。

バラール:おもしろいのが、例えば、アメリカ映画をみんな観に行ったとしても、税金はかかるんですよ。それがフランスの映画機構というのが特別な措置があって、機構が税金を取って、それでフランス国内の映画産業の1本1本の作品、または全体の促進に使っていくと。

:すごいな。

バラール:それが長年続いたけ結果、他の周りのEUの国々の映画産業はみんな破綻したのに、フランスだけは今でも健全だということを思い出してほしい。それがきっかけに、今、実はユネスコのレベルで文化多様性というのがあって。それに基づくと、商業的な国際条約の中で、多様性条約をかけるというようなかたちになるわけ。だから、日本にもそういうような文化多様性条約をかけて、本当に安倍政権がクールジャパンと言ってやっている。本気でやろうと思うなら、こういうのをつけるべき。

:なるほど!

バラール:使うべきじゃないかなと思います。

:確かに。僕も先週、ハリウッド版スターウォーズの時間に、ずいぶん自分の時間を割きましたが(笑)。

一方で、やっぱり、そういう文化を守る枠組みっていうのは本当に大事ですよね。商業主義的なものとは別にね。

バラール:共存共栄すればいいですけれども。ただ、気をつけないと、簡単に流される可能性があるんですよね。

:さぁ皆さん、ぜひ注目をしてください。本日のオピニオンCROSSは以上とさせていただきます。

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