2024.10.01
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テーマ「ヨーロッパの盟主ドイツよ、どこへ向かうのか?」について(全1記事)
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堀潤氏(以下、堀):さぁ、高橋さん。テーマの発表をお願いします。
高橋浩祐氏(以下、高橋):じゃん! 「ヨーロッパの盟主ドイツよ、どこへ向かうのか?」
(テーマ「ヨーロッパの盟主ドイツよ、どこへ向かうのか?」について)
堀:先ほど、EUの話ありましたけれども。
脊山麻理子氏(以下、脊山):昨年ドイツでは難民申請者がおよそ109万人に上り、フォルクスワーゲンの排ガス規制問題などさまざまな事件が起き、今年どう持ち直すのか世界が注目しています。
堀:さぁ、高橋さん。どういう切り口で。
高橋:ドイツというと、これまでEU(欧州連合)の中で経済で一人勝ちしてきた。メルケルさんの強い指導力、サッチャーさん以来のすごい指導者と言われていますよね。その方が、ウクライナ危機とか、ギリシャ危機とか、いろいろな場面で政治力発揮と。昨年のタイム誌の「今年の人」にもメルケルさんが選ばれました。
ドイツは経済的にはモノ作り大国としてすごい成功していて。
堀:牽引役ですね。
高橋:経常収支黒字というのは、EUの中でドイツ単独。今、国際的に見ると中国と肩を並べていて。
堀:あ、そうですかぁ!
高橋:ある専門家の方には、ついこの間まで「ドイツ帝国の復活」と言われていました。
堀:言われていました!
高橋:言われていましたけども、今そのドイツが大変だよと。五里霧中な状態に突入。それは、難民危機が引き金になりそうだと。それについて話したい。ドイツは元々、第二次世界大戦中にナチスがユダヤ人を迫害しました。
堀:虐殺しましたね。
高橋:ユダヤ人の他にも、ロシア人とかポーランド人とか、ドイツが支配している地域の少数民族の方の抹殺計画という反省もあったので、今は戦後、移民とか難民の方を受け入れようという方針でずっときていた。
メルケルさんは元々、東ドイツ出身で、わりと社会主義的な政策にも前向きだということで、受け入れてやってきたと。昨年ドイツは、110万人難民を受け入れました。
堀:かなりの数ですね。アメリカなどに比べると突出して多い。
高橋:当初は80万人の見込みだったじゃないですか。それよりも大幅に30万人も増えたと。なおかつ、昨年2015年から3カ年、2015・2016・2017年EU全体では、300万人の難民の受け入れの予定を、ドイツだけで110万人受け入れちゃったと。
相当な受け入れ、寛容スタンスでやってきたんですけれども。
エチエンヌ・バラール氏(以下、エチエンヌ):付け加えたいのが、ドイツにとって少子化問題がすごくシビアで、難民でどうにかしようとしているところが一番経済の面で大きい。
高橋:50万人くらい足りないんですよね。
堀:1つには人道的な知見もあれば、もう1つは国内の産業を維持するためにも人口増加は必要だと。そういう総合的な政策ですよね。
高橋:ありがとうございます。
堀:そうした中……。
高橋:例の大晦日の事件がありました。ケルン集団暴行事件。
ケルン中央駅とか大聖堂で集団暴行事件が起きたと。僕は、この速報を初めて聞いたときは、受け入れ反対の人のプロバガンダじゃないかなと思ったんですよね。
堀:ある種のね。
高橋:情報操作で。
堀:「ダメです」と。「受け入れを止めましょう」っていう。
高橋:その後事実が流れてくると、そうではなかったというのがわかって。今のところわかっているのは、集団暴行とか強盗とかスリとか、いろいろなものを含めて、被害件数516件。4割が性的暴行。容疑者32人のうち、22人が難民申請者。その中にもアメリカ人とかドイツ人もいるんですけど、大半がアルジェリア、モロッコ、イラン、シリアなどということで。
これを受けて、少しメルケルさんも特に右側の勢力から突き上げくらっていて。来年、メルケルさんは難民申請で厳格化するという方針をすでに出しているんですよね。BBCが性的暴行を受けた女性の方のインタビューを放送していました。
そしたら、どういう場面だと彼女が言っていたかというと、20人くらいに囲まれたと。アラブ系の人だったんですよね。彼女はお母さんと一緒に新年を祝うために来ていたんだけど、お母さんと手を引っ張られて引き離されて、服とか脱がされて、ポケットから財布とか全部盗まれたと。
その間、性的暴行の話とかもあったんですけど。ここでは省いて。そういったことがあったんで、ドイツの人はメルケルさんの元でやってきたのを少し不安がっている。
堀:メルケルで本当にいいのかと。メルケルの体制でいいのか。あの方針を変えるべきだ。
高橋:これは他の都市でも起きているんですよね。北部のハンブルグとか、南部のシュトゥットガルトで同時に起きているから、一部ではスリの人が暴行を装って、仮装してこういうのを計画的にやったんじゃないか。難民じゃなくて、スリ集団が。
堀:元々の犯罪集団が難民を装ってやっている可能性もある。
高橋:そういう指摘もあるんですけど。
さっきの大半が難民申請だったって話もあるので。
堀:これ、難しいですよね。
高橋:今、ドイツ国内の世論がどうなっているかっていうと、これおもしろいですね。難民の受け入れがドイツに不利益と考える人が、ドイツの国営放送の調査ですけども、41パーセントが不利益と。38パーセントが有益と思っている。68パーセントがテロによる不安を常に感じているということで。
先ほど言ったナチスドイツの反省からきた受け入れ積極体制というのが、今年大きく変わる可能性があるかもしれないなと。僕は、積極的に受け入れて、人道的にやってほしいんですけど。ドイツがどこ行くのかなと。
堀:この辺りは非常に難しい問題ですけど、どう国際社会、そしてそれぞれの国はどう対処すべきか。Twitterを見てますとね。
はくびさん、「この状態で難民がドイツの不利益と言っている人たちを、ナショナリストと言っていいのか?当然じゃないか?」っていう声。そして、「これは適正に対処しないとネオナチが勢い増すよ」というような。逆にそういった勢力に正当性を与えてしまうような印象を持たせてしまう。
高橋:今、すでに極右勢力、ネオナチみたいな人たちが出てきて。昨年1年間の難民キャンプとか収容施設に対する事件が、昨年1,000件を超えて、一昨年よりも2倍くらいになっているっていうから。ドイツの世論も右のほうにいっている気がしますよね。
もう1つ。ドイツの今年の試金石になるかなと。ドイツの行方を見る上で。それは、ヒトラーの著書の『我が闘争』。これ、再出版されましたよね。
このヒトラーの本の著作権がOKになって、これが排外主義というんですか、外国人嫌いっていう言葉で「ゼノフォビア(Xenophobia)」ってありますね。ナショナリストというよりも、外国人恐怖症とか。そういうふうな排外主義を強めていくのか。
あるいは、ヒトラーの本で、あれはナチスに批判的な注釈も付いている。それを踏まえて、歴史の教訓としてヒトラーのこの本があって、こういう悪いことをしたよというふうに思ってくるのか。
排外主義か反省か。歴史の糧とするのか。ドイツの『我が闘争』っていう本が、どう受け入れられていくのかっていうのも注目かなと思いますね。
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