2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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寺澤康介氏(以下、寺澤):お待たせしました、ProFuture寺澤です。それでは先ほどご講演いただいた内容を少し受けまして、いろいろと次世代のリーダーを育成することと、そのために経営者としてどういうことを考えていかなければいけないかというところをテーマに沿って髙田さんにお聞きしたいと思います。髙田さん、よろしくお願いします。
髙田明氏(以下、髙田):どうぞよろしくお願いします。
寺澤:それではまず、みなさんの質問代行者のような気持ちでお聞きしたいんですけれども、髙田さんはまだ大変お若いですし、お元気ですし、しかも過去最高益を出したという中で、なぜこのタイミングで、しかもこれだけスパッと辞められるのかと。
考えとしてはわかるんですけども、なぜそんなことができるのかというところをまずお聞きしたいです。なかなかできない人が多いと思うんですよね。
髙田:できない人が多いんですかね(笑)? その気持ちはあまりわからないですけども。僕の性格的なものもあるのかなと思いますね。人間にはペシミストとオプティミストがいますけど、僕はちょっと楽観的なところがありまして、何でもコミットして動くっていう部分がすごくありますね。
先ほどのお話の中でも、過去最高益を目指そうかと社内でそんな話をしてまして、ある取材を受けたときにちょっと考えてみたら「みんなで目指そうよ」だけではみんな動かないかなぁと思って、「じゃあ私が辞めると言ったらすごく動くかな?」と思ってすぐポッと言っちゃったんです。
過去最高益を出したときに、そろそろ年齢も年齢になってきたから、60過ぎからそんなことを考えていましたので、あと2年間はやろうと思ってたんですよ。
「2年間ちょっと頑張ってみるね」なんて社内で言ってたんですけど、取材を受けたらちょっと気が変わって「1年したら辞める」って。言っちゃったらそれはやらなきゃいけないからということで、シンプルなんです、それぐらいに。
私は人間の生き方っていうのはすごく自己更新の世界だと思っているんです。自分を常に更新し続ける。企業も更新を続ける。これはあまり人との比較じゃなくて、自分の中に課題を受け入れて、その課題に向かって自分が頑張るプロセスが大事です。
自分が100%、200%の力を出して、その結果として行ったところが自分の人生の終着点だと思ってるんです。
それで私の終着点はあと50年ということになってるんですけども。私があと50年(生きている)なんて信じてる方はみなさんの中で誰もいないでしょうけど……。結構やるかもしれませんよね? おそらく50年後にはこの中の8割はいないと思いますけどね(笑)。
(会場笑)
髙田:社長、どうですか? あと50年生きてますかね?
寺澤:いや、ちょっと難しいと思いますけど……(笑)。
髙田:ただそれだけのことなんですよ。でもそこに未練がないっていうのはおかしいじゃないですかっていうだけで、新たな夢を自分で作っていかないといけないですから。
67歳ぐらいでテレビの世界から自分が消えたときに、今度はちょっとまた別のことを考えようと思ってA and Liveっていう「明はまだ生きている」っていう名前の会社だけ作って、先は何もまだ決めてないんですけど。
ちょっとゴルフの世界に行ってみようかなぁと。みなさんから見たらすごくうまく見えるでしょ? 見えません?(笑) ゴルフの話もまたしたいと思うんですけど。そういう世界とか、女房にもすいぶん苦労をかけてきたので一緒に旅行にでも行ったり。
また語学も若い頃にちょっと勉強してましたので、もう1回英語とフランス語を70歳までの3年でマスターするために例えばアーカンソーにホームステイしてみて、2年間いたら英語がしゃべれるまでに復活するかなぁと。
それからフランスに1年行って。僕、フランス語は1年やったら覚える自信が結構あるんですよね。それで70歳で日本に帰ってきたら英語とフランス語がしゃべれる70歳のおじいちゃんがいて、また次のこと考えようかとか。
次の世代、次の時代の自分の中で夢を見てる、そこの部分は断ち切っていく。僕は23歳のときにヨーロッパで英語を勉強してたときに、ポーランドとかすごい回ったんですよね。
ほとんどヨーロッパの国は仕事含めて回りました。すごく今人生の中にプラスになっていて、この6月から43年ぶりにポーランド行くんですけど、ものすごい楽しみにしてるんですね。
夢っていうのはまた新しく描いているだけのことです。あまり深い意味はありません。ものすごく若い人が一生懸命頑張ってくれたらそれに越したことはないですよ。僕は違った世界を見ながら、また何か違った夢を発信することができればなっていう、それだけなんですよ。
あまり答えになってないんですけど、シンプルに考えて生きていますね。
寺澤:はい。ちょっと意地悪なことを聞きますと、そうは言っても、よく退いた後に戻ってこられる方がいらっしゃるじゃないですか? 「任せた」と言って、数年後に社長に復帰するという方々がよくおられますけれども、それは絶対にないですか?
髙田:もう100%ありませんね。橋下(徹)市長が一回やめるとおっしゃってるという話がありますけど。みなさんにも信じていただけると思うんですが。というのは、もう託した時点で、極端に言ったら、会社がなくなるか、会社をどこまでどうしていくか、そこまで託してますから。
それ(未練)がもしあるんだったら、会長として僕は残ってると思いますよ。そこまで自分の中に割り切りと信頼というものを持って退いているということでございます。
寺澤:そういう任せるという決意、しかもそれをはっきり表明しておられるということが、残った人たちにとっても決意を持って会社を永続させようという気持ちにつながっていくということですね?
髙田:そうですね。やっぱりそうでないと、新社長以下たくさんの社員たちも本気になるっていう部分の深みは違ってくると思いますから。私が退いた後も、新社長の下、一生懸命汗を流して全員が本当に頑張っている姿を見ていますので、まぁこれはしっかりやるだろうと。
結果的に会社なんていうのは、もう悪くなる時もあるし、良くなる時もあるし。人生みんなそうですよ。いつもこんな調子で行く人生なんてありえないことだし。
売上が1759億から1170億に、600億下がった時にも、僕はもう本当の話、全く(引退することを)思わなかった。だから上場しなかったんです。上場していたら僕はもうクビになってますよ。
600億下がって利益を半分にされたら社長交代となりますよね。最初からそういう方針を自分の中に持っていましたので、だからやれたのかなって。
将来は(上場は)わかりませんよ、景気の良し悪しで企業は変わっていきますから。でも今は全然考えてないです。そういうところだと思いますね。これから50年の間に戻ることはありません。50年過ぎたらわかりませんけど……。
(会場笑)
寺澤:ありがとうございます。今は経営者、託す側としてのお考えをお聞きしたんですけれども、ちょっとスライドをお願いします。
寺澤:私どもで調査をしました。人事の方々に対して、何がいちばん会社の中で人事課題になっているのかということを聞いたんですが「次世代リーダー育成」というのがいちばん上になっています。近いところで「新卒採用」その次に「中途採用」っていうのがあるんですけれども。
これは複数回答ありの場合なんですが、実はもう1枚スライドがありまして。
この中で最も重要なものは何ですか、1個だけ選んでくださいとなると、圧倒的に「次世代リーダー育成」が1位になる。それだけ今は非常に変化の激しい困難な時代であると。
今までだったら、誰が社長になっても右肩上がりだし、まぁうまくやっていくよねっていうのがあったのが、今後はトップ次第で会社がすぐにダメになるかもしれない、良くなるかもしれない。そういうことで、次世代のトップ、リーダーっていうのを育成するのが企業にとっては極めて重要なことになっていると。
バトンタッチに関しても、そういう能力のある人が見つかったからこそバトンタッチができて、後を任せてすっきり退くこともできるわけで、そういう人が見つからなければなかなか会社を託すことができないというわけですけども。
社長・トップの責務として、次の世代のリーダーを育てるということに関しての髙田さんのお考えをお聞きしたいんですけれども。
髙田:ここに書いてありますように「次世代リーダー育成」今日の演目タイトルのメインかもしれませんけども、僕もそう思います。
国にしても、総理大臣が変われば方向もすごく変わりますよね。民主党時代と今では全く違う。アメリカだってオバマさんが大統領のときとブッシュさんでは全く違った世界がある。
ほとんどの企業でも、例えば1人いらっしゃる企業でも、1,000人の企業であっても、トップの影響力がすごく大きいということは間違いなく言えると思いますね。トップが走ればその方向にみんな行く。
しかしその反面、見ていて思いますのが、たとえば新卒、中途、若手育成って言いますけど、本当はそれだけでは完結しない世の中かもしれませんね。
やっぱり企業統治というトップゆえに大変なことになることもありますし、ガバナンスっていうのはやっぱり社外取締役を入れましょうとかいうのが国の政策で出ているということは、やっぱり時代の経過の中で、そういうことが求められる時代になってきているとは思いますが、そこだけには1点終始できない。
例えば新卒採用。企業の人事の方は採用に力を入れますよね? どんなに優秀な人をその企業の人事の方が採用しても、これだけでは絶対に成功にはつながらないと最近思うんです。
どんな人を採っても、教育と連動しなきゃいけないということですね。採用と教育が相まって初めて企業は強くなっていくという、複数の要素がリンクしてるんじゃないかと思います。
ちょっとご質問の内容と違うかもしれませんけれども、そのあたりの考え方がこれからの人事にはすごく必要じゃないかなっていう気がしますけどね。
寺澤:はい。この裏で「育成という項目も上位に来ています。次のリーダーを育成していくことを、常日頃からトップが心がけるということですよね。
その時期が来たから、たまたまいる人の中から選ぼうというのではなくて、先ほどの講演の中でもGEなどのお話がありましたが、そういった次のリーダーを育てていくようなことは、会社の土壌の中にもないといけないと。
髙田:そうですね、本当は「育てるということは何だろう?」っていうことにすごくヒントと問題があるような気がします。
カルロス・ゴーンさんが日産を立て直すときに日本に来られましたよね。「どういう人を採用しますか?」っていうときに、確か本の中で書かれていたと思うんですけども「自分の意見を自分で発言し、動ける人」ということをおっしゃってるんですよ。
そういう人でないといけないと。そこは日本人はちょっと弱い部分があるんですね。スキルに関して教育を受けていても、なかなかそれを活かして発信はしないという。
私は教育っていう部分では、新入社員が入ったらルーチンな作業とか基本的な基礎の部分は必要なんですけども、基礎を学んだ上に、やっぱり夢を語れたりだとか「○○のために仕事してるんだよ」「こんなに仕事って楽しいじゃないかっていう、そういうことを語れるリーダーシップ論がある教育をしていかなければいけないんじゃないかってすごく思います。
マッキンゼーで採用を10年以上されていた伊賀(泰代)さんという女性がいらっしゃって『採用基準』っていう本を書かれているんですね。これは一度読んでいただいたらすごくいいと思います。一度佐世保の本社にも来ていただいて、社員の前で講演もしていただいたんです。
2人で採用関連のトークセッションもやったんですけども、その中でいちばん印象に残っているのが、日本の教育の中で「リーダーシップ論」というのがないのは欧米から見たら不思議なことで、欧米では小学校からあるということ。
これはどういうことかというと、例えば10人で会議をします。そうしたら、日本の場合にはリーダーシップを誰が発揮するかというと、トップがするんだと。そこを仕切っている人がやる。
会議でよくこんなことはありませんかね? 3人ぐらいがしゃべって、あとの7人は誰も何も発言しない。発言しない人がいっぱいいる。マッキンゼーの場合はそういうことが2回続いたら次の会議に入れてもらえない。
リーダーシップっていうのは一人ひとりが発揮する、もう上下関係なんか関係ないんだと。そういう自己の意見を言える人を育てることが教育ですよと。
私も本当にそう思うんです。やっぱりみんなが発言していけば、10人の人がいればボトルネックとか本質を見出す力は10倍になるし、やっぱりそこの部分が次世代の、特にトップに立つ人にとってみたら、自分の言葉で発言できるっていうことは大事ですね。
ジャパネットにはクレドというものがありまして、みんながこういう小さいものを持ってるんですね。リッツ・カールトンにもクレドという行動基準がありますね。1年1年書き変えて行くんですけど、その中にどういう人材かっていうのが書いてあるかというと「思いや夢を言葉にして、それを実践できる人をジャパネットは求めます」というようなことが書かれているんですね。
3人の部下、1人の部下でも、100人の部下がいればなおさら、1万人の会社のトップであれば1万人に夢を語って、人間として生きている価値、企業活動している価値、人生においてどれだけ人のために役に立ってるかっていうのを語れるというのが、僕は次世代リーダーにいちばん求められている部分であり、いまの日本の中でいちばん弱い部分じゃないかなっていう気がしていますね。
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