【3業要約】
・「部下に怒鳴る」「指示がコロコロ変わる」など、パワハラ気質の社長との関係に悩む幹部社員は少なくありません。
・浅井隆志氏によれば、その背景には社長の高い要求水準や、会社への意見を自分への否定と捉える傾向、24時間会社のことを考え続ける姿勢があるといいます。
・効果的な対処法は、社員の能力を言語化して伝える、批判ではなく改善提案をする、会社の方向性を明確にする、そして業務プロセスが見える報連相の仕組みづくりです。
パワハラ社長の特徴と対策とは
浅井隆志氏:それでは定刻となりましたので始めていきたいと思います。みなさんこんにちは。株式会社PDCAの学校、代表取締役の浅井隆志でございます。
本日は企業のNo.2、いわゆる幹部の方ですね。会社で言う「番頭」と呼ばれるような、社長の右腕・左腕の方に捧げるテーマでございます。いかにして社長を変えていくのか、動かしていくのか。パワハラ社長、ポンコツ社長への処方箋を学べるセミナーということでお話をしていきたいと思います。
本日の内容につきまして、概要といたしましては、まず「パワハラ社長の特徴と対策」。それから「ポンコツ社長の特徴と対策」。自分で言っておきながら「僕は大丈夫かな?」なんて、ちょっと不安なところもありますが(笑)。
そして「社長の代わりにみなさんがどう動いていくか」「どう社長にアプローチしていくのか」についてお話をしていきたいなと思っております。
過去には僕自身がさまざまな企業さまの支援やサポートをさせていただきました。実際に社長に意識改革をしてもらい、それから行動を変えていただいた体験や経験がございます。そこを踏まえて実際に何が効果的で有効なのかについてお話をしていきたいと思います。
創業社長の情熱が裏目に出るパターン
パワハラ社長といえば「すぐ怒鳴る」というイメージでしょうか。時代的少なくなってきたかなと思いながら、ちょっと言葉が強いとか、会議の場で社員を詰めるとか、そういう傾向がまだまだあるんじゃないかなと思います。
それから、僕は15年前に起業しましたが、その前は普通に会社員をやっておりました。「朝令暮改」なんていう言葉がありますように、当時の会社の社長は、朝言ったことが夕暮れ時にはコロコロ変わるみたいな感じのことも経験しております。
それからパワハラ社長というと、けっこう好き嫌いが出ているんじゃないかなとも見受けられます。10:0の話ではないんですが、創業社長に多い傾向があるんじゃないかなと、なんとなく感じております。
創業社長といえば立ち上げのオーナー社長で、一代でそのビジネスを築いています。なので、やはりパワフルさや情熱があり余って、あふれて、そこについてこられない人とのギャップが生じているのが実際なんじゃないかなと思っております。
「できて当然だろう」マインドの弊害
じゃあ、なぜこういうパワハラ社長が感情的になるのかというと、当然、社長が要求するレベルが高いわけですね。「やれて当然だろう」「できて当然だろう」「そこまで考えて当然だろう」ということが根底にあるのではないかなと思っております。
同様に、「(自分はできた経験があるので)基準や理想が高い」のもあります。創業社長はだいたいその道のプロフェッショナルで、1人で市場を切り開いて数字を作ってきたからです。スーパー営業やプロフェッショナルってみんな、こういう傾向が強いですよね。

なのでパワハラ系のオーナー社長でイチから立ち上げた方は、最初からお金だけ出して経営をしていたというよりは、現場で駆けずり回って自分で数字を作ってきた方が非常に多いんじゃないかなと思っております。
No.2の方からけっこう「うちの社長って感情的なんですよね」とご相談いただきますが、なんでそういう社長って強めに表現するのかを理解していかないと、攻略がなかなか難しいんですね。
「社長、今はパワハラは問題になるのでやめてください」ではなくて、パワハラチックになっているその人の背景や、そうなってしまう原因を理解することによって、上手にお付き合いができるようになるのではないかなと思っております。
意見を言うと否定されたと感じる
まず、社員が会社に対する改善提案をする場合、「社長、これは問題だと思うんですよね」とか「いや、それはどうなんですか?」という意見を、会社を良くするために言ったとします。けれども社長は「なんで会議の場で俺の意見を否定するんだ?」「なんで俺の味方にならないんだ?」みたいな感じで、否定されたと感じる傾向がある。
実際、これは僕もけっこうありましたね。だから、「会社のために」とか「会社を良くするために」という言葉が聞こえてこないダメ出しは、否定されたような感じがしてしまう。

これは、社長に限らず人間ってこういう傾向があります。社長は「自分でこの会社を作ってきた」という自負があるからこそ、余計に否定されたように感じてしまいます。会社に対する意見には「本当にそれが会社のため。そしてそれが社長のためです」としっかり付け加えておかないと、納得してもらうのはなかなか難しいんじゃないかなと。
それからこれはよくある勘違いで、社長だけじゃなくて幹部の方や管理職の方にも気をつけていただきたいなと思います。社員に対するダメ出しと言いますか、指摘や注意は必要ではありますが、「1人に言うことによって周りの人間にも聞かせたい」と、人前で叱責をする傾向がある。あとはちょっと幼稚ではありますが「マウントを取りたい」ということもあるかもしれません(笑)。
常に会社のことを考えている
次に、なんで考えがコロコロ変わるのかというと、これは良く言えば、やはり24時間、常に会社のことを考えているからです。「オン・オフを切り替えています」という経営者の方には、ほぼお会いしたことがないですね。
「ほとんど」というのがどれぐらいなのかというと、感覚的で大変恐縮でございますが、97パーセントぐらいです(笑)。お会いした社長は365日24時間、やはり会社のことを考えているわけですよ。
そうすると「これが大事かな、あれが大事かな、やっぱりこうかな」という考えがどんどん出てきてしまって、場合によっては、朝は「これ」と言ったのが、夕暮れに「(朝のは)やめて、やっぱりこっち」と言うのは、ずっと考えているからというのも正直あるわけですね。
これは当然、言われたほうはたまったものじゃないですよね。「いや、だって、これでやれって社長が言っていたじゃないですか。いつの間に変わっているんですか?」という。
しかも変わった理由も聞かせられない。「どういうことなんですか?」みたいな状況によくなっておりますね。これは危機感を持っているということです。