
2025.02.18
「売上をスケールする」AIの使い道とは アルペンが挑む、kintone×生成AIの接客データ活用法
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平澤直氏(以下、平澤):続きまして、「国内外のインタラクティブ産業との融合」の話を進めましょう。少しご説明させてください。左側に「表示形式とメディア」を時系列で上から順に並べています。劇場映画、据え置きテレビ、据え置きPC、スマホ、ARメガネと並んでいます。
お客さんに対して提供している独自の価値がそれぞれにあると思っているんですが、大事なことは視聴メディアが今、スマホにシフトし始めていること。ゲームの主戦場はもうスマホに移っていて、よりデバイスやプラットフォームに合わせた作品体験の提供が考えられていくんじゃないかと見ています。
これだとメディアの話で少し定性的なので、定量的なお話もさせてください。これはPricewaterhouseCoopers(PwC)という調査会社が出している資料です。日本・アメリカ・フランス・中国・インド・インドネシアの、「音楽」「映像」「出版」「ゲーム」「VR」の市場規模を、それぞれ棒グラフにしているものですね。
2022年の段階でこうなるだろうと。これはコロナ前の予想なので、もう少しドラスティックに変わると思うんですけれども、つまり何が言いたいか。
世界の市場のけっこうな量を、中国とアメリカと日本だけで取っている。実はエンターテインメントに限らず、GDPの話で言うと、大西洋に面している国のGDPの合計を太平洋に面している国が上回ったのって、わりとここ4〜5年の話だった気がします。今の産業全般で、太平洋に面している国が地球の中心になった。
エンターテインメントのセンターも、これからは太平洋になる。その西側と東側に中国とアメリカがあって、それぞれゲームにせよ、映像にせよ、かなり大きなマーケットを持っている。その中で日本がどうあるべきか、と考えるのがまず重要でしょう。
そして、映像産業をゲーム産業が猛追しているという状態です。定量的なデータでも、アプリゲーム市場はすでに映画より大きくなっている、ということが起こってきています。具体的にはどういうことか。
平澤:これは、映像市場の各国の市場規模です。日本・アメリカ・フランス・中国・インド・インドネシアが、2022年に「ホームビデオのデジタル/フィジカル」「テレビ」「映画館」「SVOD(定額制動画配信)」「TVOD(都度課金制動画配信)」のジャンルで、それぞれどのぐらい成長しているかを「〇」「△」「×」「◎」で表現しているんですけれども。
やはり映像はこれからもSVODが伸び続けて、名実ともに映画市場を完全に凌駕していくだろうと言われています。アメリカですらSVODは倍ぐらいいくだろうと言っていて、しかもこれはコロナ前の予想なんで、もっといきますね。この予想が一気に進むだろうと思っています。いわゆる売り切り型のTVODも、まだまだ数字が伸びるんじゃないか、という調査が出ております。
続いてゲームはどうか。今はコロナでちょっとアレですけれども、ゲームはe-スポーツが伸びるんじゃないかと。やっぱりソーシャルゲーム、この場合はアプリゲームのことですね。オンラインアプリゲームの合計が、すでにアメリカにおいてもハリウッドの劇場興行より大きいんですね。
数土直志氏(以下、数土):アメリカってあんまりアプリが盛んじゃないような気もしたけど、そうなんですね。
平澤:そうですね。ハリウッドの映画興行、アメリカの映画興行自体は1兆円ちょっとで、ソーシャルゲームはもう1兆2,000億円とかあるので、凌駕し始めていると。こういった伸びがさらに見られていくであろう、と言われています。なのでやっぱり、ゲームはインタラクティブ産業と映像がどう結びつくかを考えていく時代になるんだなと思っております。
ちなみにですけど、出版がおもしろいんですね。「書籍のフィジカル/デジタル」「雑誌のフィジカル/デジタル」「新聞のフィジカル/デジタル」と並んでおりますけれども、これは国によって成長する場所がけっこうバラバラなんです。
やっぱり日本だとまだまだフィジカルな書籍や物理的な書籍が多くて。これ(出版市場)はアメリカにおいても、ゲームよりぜんぜんデカいんですよね。衰退しつつあると言われるかもしれないけれども、大きな影響力を持っていて、しかも各国ごとにバラつきがあるところもあります。
これらの産業が今後それぞれ変わっていく中で、特に自分が注目しているのは「インタラクティブ産業・ゲーム産業」です。ゲームのハイスペック化の中で、よりハイクオリティな映像体験が必要になって、それを求めてくるプレイヤーがけっこういるかもしれない。
そういった方々とどういうふうに組んでいけるかというのは、これからのアニメ産業の大きな課題になってくるんじゃないかなと自分は思っております。今回の基調講演の1発目で、ぜひこのことを強調したかったなと。「アニメ×ゲームサミット」ですからね(笑)。
平澤:というところで、まずは簡単ではありますが、3つのブロックをお話ししてまいりました。さて、第3ブロックが終わったところでここからが本番。どうぞ数土さん、よろしくお願いいたします。
数土:めっちゃ気になったのは、配信やe-スポーツやアプリが伸びるというのは、たぶんみなさんわりと気づいてると思うんですけど。最後の「出版社との融合」の部分ですよね。ゲームとアニメと出版社が融合するって、つまり具体的にはどういうことを指しているんですか。
平澤:アニメとゲームと漫画の中で、IPの創出力という観点から見た時に、出版産業って桁違いに強いんですよね。『鬼滅の刃』は記憶に新しいと思います。新しい漫画を1個作るためには年月がかかります。漫画家の育成だったり、そこに寄り添う編集者だったり。時間はかかるけれども、ほとんどの漫画は人数で言えば20人いないんですよね。さいとうプロとかは別ですよ(笑)。
数土:(笑)。
平澤:もう1個。出版社さんは特定の天才と付き合う機能が極めて優れています。ゲームには、何百人で作るものと、何人かの少人数で作るものがあって。ひょっとするとですけど、特定個人のゲームクリエイターと向き合う手法を、漫画出版社さんたちが編み出される可能性もあるんじゃないですかね。
数土:ああ、そうか。それはアニメーションにもいますよね。監督さんとかアニメーターさんに対して(天才の才能を引き出せる人が)。
平澤:おっしゃるとおりです。先ほど「ブティック型」のアニメスタジオと申しましたけれども、「特定の才能を支えるのだ」という類のスタジオ。たぶん、これからさらに人数を少なくしようと思えば少なくできていく側面もあると思います。
実際に今、YouTubeですごく再生数を回してる音楽ユニットのPVやMVを作っている人たちって、個人の方がけっこういらっしゃるんですよね。新海(誠)さんやロマのフ比嘉さんたちが切り開かれてきた「個人作家による映像制作」という道が、ツールの発達によってよりハードルが下がってきている。
なので、アニメ産業が「作ろうと思えば一人で作れる」という状態になってきた時に、まさに漫画家さんのように一人でキャラクターもデザインして物語も作って、というような方の才能を支えられるかというのも、1個大きなポイントになると思いますね。
数土:海外の話もさせてください。先ほど、日本・アメリカ・フランス・中国・インド……。インドネシアが出てきたのはちょっと驚きましたけど、平澤さんがこれから日本のアニメやゲームも含めて、進出するチャンスが大きいと思う地域はどこですか?
平澤:中東と東ヨーロッパとインドです。
数土:ほう。東ヨーロッパはまだアリ、ということなんですね。
平澤:そうですね。ラテンヨーロッパと西ヨーロッパはもうすでに進出はかなり進んでおり、豊かな産業連携があります。東ヨーロッパは今、ゲーム産業の勃興で一気に距離を詰めてきている会社がいくつかあります。そういったところとの連携がこれから図れるととてもいいんじゃないかというのが、東ヨーロッパにおいて言えることですね。
数土:中東とインドは人口は多いですけど、インフラがまだまだという印象はあるんですが、どうなんですか。
平澤:まったくそのとおりです。あと中東は、きちんと宗教適応することと、独自の商習慣と向き合うことがポイントにはなります。ですが、ある種、日本が特定の強い宗教の影響を受けていないことを好材料として、お仕事しやすいなと積極的に思っていただけてる国も何ヶ国かあるようです。
あとは現地にいらっしゃる日本人の方々の成果や、これまでの業界の先輩方の営々とした努力によって、コラボレーションへの道が切り開けていると思います。
インドはマーケットは大きいけど、なかなか突破口が見つからないところではありますが、ゲームはとても人気なので、なにか手はあるんじゃないかと。
インタラクティブ産業との融合のところで言うと、ゲームはもっともっと世界中に輸出されてるので。アニメがさらにそこに乗っかって、いわゆる映像配信ルートとは別のルートでお客さんに届き始めたらいいな、というふうには思ってますかね。
数土:わかりました。時間がもうそろそろなので、最後に。今回「アニメ×ゲームサミット」の場でお話をしてるんですけれども、こういったオンラインマッチングの場やビジネスの場についての将来性と、なにか感想がありましたらお聞かせください。
平澤:自分は今までフィジカルな場で、お客さんの顔の変化を見ながら講演をしてきたことが多く、こういったタイプの場はなかなか初めてではあります。
だから劣ってるってことじゃなくて。それだけ多くの方が同時にご覧いただけるということでもあるし、まさにこの小さな画面を通して、我々がより信頼関係を構築する手法を編み出すタイミングだと思っています。
多くの方々とよりカジュアルに会う中で、可能性を探っていくという信頼の獲得のルートがこれまで以上に整備されていけばと思います。今回自分もこの機会をいただいて、ぜひアニメ・ゲームのいろんな方々と知り合ってみたいなと思っている次第でございます。
数土:貴重なお話、どうもありがとうございました。みなさまご清聴ありがとうございました、これにて基調講演を終わりにさせていただきます。では失礼いたします。
平澤:失礼いたします。
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