2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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河上純二氏(以下、河上):ちょっとシビアな話をすると、この10年ぐらいの間に、いわゆる技術とクリエイティブの世界観の中で価値向上のギャップがけっこうぐっと上がってきているな、変わっているな、と。
それで、エンジニアの価値はどの国も急激に上がっていって枯渇状態なのに、クリエイティブの領域に対してはあんまりそういう声は聞いていない、と。そこには何があるんだろうね。ニーズに合わせて価値が向上するわけだから、当然エンジニアが不足してます、と。プログラミングの領域が圧倒的に足りていません、だから作業者がいないです。こういう理論でどんどん技術サイドの金額は上がっているけど、クリエイティブの方はそんなには上がっていない。そこはなんだろうね?
呉京樹氏(以下、呉):そうですね。そこは僕も考えるところです。やっぱりエンジニアってこの10年くらいですごくマーケット的に変わってきて、世界的にもそうですしね。Googleのエンジニアの年収とか聞くと目ん玉が飛び出そうになりますけど。ただ僕は、近い将来クリエイター業界でも同じことが起きると思ってるんですよね。
今はやっぱりエンジニア業界でもUI/UXはすごいテーマになっていて。だから要は技術だけじゃなくてデザイン領域。最終的に人が見て手に触れるものって、デザインの領域なんですよ。13年間やってきて実感しているのは、今はかなりデザイナー不足というのが表れていて。
河上:それはそれでリアルとしてあるよね。
呉:10年前にエンジニアの環境がすごく変わっていったのと同じく、僕はこの10年くらいにかけてやっぱりいいものを作れるクリエイターは、世界中でもっともっと一気に価値が上がっていくんだろうなと思っています。なので、それを全力で支援することが僕のやりたいことだったりしますね。
河上:自分も少しかじっていたから、ツール面というか、ソフトウエアの面でなんだか最近大きな変化がある。俺らの時代のクリエイターってもちろん、フォトショップ、イラストレーターから始まって、アフターエフェクトだ、プレミアだっていう動画のメンバーもいて、3Dもいろいろソフト揃えていて。今はツール面も充実しているから、クリエイターの人たちが自分の思っているイマジネーションを叶えるためには特に支障がないところまで、もうツール面は追いついているという理解でいいのかな?
呉:それはそうだと思います。
河上:何も問題はなく実現したいものは実現できる?
呉:はい、もうツールは素晴らしいですよね。逆にiPhoneだったりスマホっていうのも、こんなに身軽に映像撮れたりとか、そういう意味ではその辺のツールは整ってきてるし。
河上:手元のところではね。でも一方で俺、このテーマだと、俺らの時代にとってみればAdobeがクリエイティブツールの最先端で、Adobeがわからなかったら何もできなかった。それが今のAdobeはマーケット会社になったじゃん。Adobeがマーケティング会社になったという、このこの2~3年の変革はもう驚くべきことで。もう圧倒的にびっくりしちゃってるわけ。
これだけ変化しているから、多分クリエイティブ側の環境整備も大きく変わってくる。だって最前線がマーケティング会社になっているということは、もしかしたら数字がわからないとクリエイターとは言えない時代になる可能性があるというぐらい。俺は最近のAdobeの変化をそう見ているんだけど、どう思う?
呉:いやいやいや、もうそれは純さんのおっしゃる通りで。
河上:本当?
呉:やっぱりマーケティングができるクリエイターが、世の中的にはたぶんこれから必要になってくる。絶対そうなんです。
河上:しんどいねー。
呉:さっき言った評価制度の裏返しですけど、僕はそれも含めて、ちゃんとクリエイターの人たちが、自分が世の中にどれだけ影響を与えたかというマーケティングのデータをちゃんと見てほしい。
河上:そうだね。
呉:そう。そういうものも含めて評価制度だと思っているので。まあそれは実現していかないといけないんだろうなと思っています。
河上:でも、クリエイターの人たちはそういう数字やへったくれは好きじゃなくて、イマジネーションや右脳の話がしたくてそうなっていったのに、もしこれから価値が高いクリエイターが数字がわかる人ということになっていったとしたら、ちょっと寂しいんじゃないかなと。寂しい環境になるかどうか心配しているんですよ。
呉:それはもう本当におっしゃる通りで。だから、これはすごく難しいんですよね。クリエイターの中でもいわゆるアーティストと言われる人と、商業デザインというところで。例えばピカソみたいなぶっ飛んだ作品を誰が評価したんだというところもあるんですけれども、「こんなもの見たことない」というクリエイティブは今後も必要だと思うんです。だから、僕はどっちになりたいかということをクリエイターとして明確に決めていかないといけないと思うんですけどね。
及川真一朗氏(以下、及川):いわゆる、アーティストとプロダクトデザインというところのね。
呉:全然違うんですよ。
及川:スタンスを決めないとね。
河上:先鋭的な未来の車のデザインを考えたりとか。
及川:極端な話、今現時点では乗れない車を作る人と、今乗れる車を作る人でやっぱり全然違いますからね。
呉:機能性だったりという意味を含めて使いやすいかどうかというと、使いやすさには関係なく、これがこれからの世界を作っていくんだというアート的なクリエイティブの領域って、僕はやっぱり2つに分かれてくるんじゃないかなと思いますね。
河上:あーすごいね、今日は全然羽目を外さないね。
呉:(笑)。
及川:けっこうコメントもいただいています。
河上:本当?
呉:(笑)。名村さんだ。
河上:誰来てる?あっ、名村さん、おおー。名村さん、不動産テックをやっている社長だね。
呉:めちゃくちゃ仲いいです。
河上:彼ね、いいやつだよね。俺も古い付き合いだから。がんばってる? 川口さん、はい、がんばってね。彼も社長ですね。中田さんは? 呉さんの友達?
呉:中田さんは僕らの採用を手伝ってもらっている方です。
河上:これは今日はけっこうみんな見てるよ。俺、もっとくだけた話をするつもりだったのに。でも、いい話だったから。
呉:くだけた話も全然できますけれども。
河上:すごくいい話だった。
及川:今の日本のクリエイティブ事情をね。
河上:俺も久しぶりにけっこうまじめな話をしちゃったな、おもしろかったなー。じゃあちょっと呉さんの方から、見ている人たちに向けてメッセージがあればぜひ。真面目な話でもどっちでもいいけど。応援してください、なのかな。
呉:そうですね。応援してください、はもちろんありますね。クリイエイターにとっていい社会を作るために、みなさんもぜひ一緒に協賛していただけるとありがたいなと思うところはあるんですけど。
でも、どうなんですかね。会社を続ける意味というのはすごく大事だと思うので。継続は力なりじゃないですけれども、僕も1つのことを13年やっているので。僕はやっぱり続ける意味はあるなと思っています。その辺りは経営者の方たちみんなに伝えたいなということと、さっき阪神大震災で僕のレストランが潰れたという話をしたんですけれども、オーナーというか、いわゆる会社のトップはこうあらないといけないなというものはすごくあります。
僕が阪神大震災の時に働いていたレストランのオーナーさんは、要は(お店が)潰れて火災が起きて見つからなかったんですよね。もちろん一番最初に行ったし、でも(お店があった場所は)真っ黒こげでいないし、家もないし、「オーナーさんはどこに行ったんだろう」と。僕らも亡くなったかなと思っていたけれど、ニュースを見ていても名前が出てこないし。
それで、実は4~5年経ってから、偶然ばったり街中で会ったんですよね。それで、僕はその時に、「僕はこういう経営者でありたいな」と思ったんです。街中でぱっと会ったんですよ。それで真っ先に僕のことを見つけてくれて、「呉くん生きてたんだ」と言われて、握手して、「本当に良かった」って言ってくれて。その時に何が出てきたと思います?
当時、要は急に地震が起きたので給料をもらっていなかったんですよね。僕はそんなことどうでもいいし、お店が焼けているのにそんなことどころじゃないですよ。その社長は、全従業員のその時の給料を、現金で封筒に入れて毎日持ち歩いていたんです。
河上:うわっ、すごい。
呉:5年間ですよ、5年。それで、「呉くんにこれを渡してなかったんだよ」と言われて封筒をもらった時に、僕はすごく感動して。
河上:涙出そう。
呉:本当に涙が出て。僕は自分が会社をやったらこういう経営者でありたいな、という思いがものすごくあるんですよ。だから、やっぱり今のビジネスモデルで人を大事にしないといけないとか、スタッフも家族という意識。いやいやではできないですよ。自分たちもこれからの生命の危機もわからないのに。それを現金を封筒に全社員分入れて、5年の間、毎日ですよ。
毎日バッグに入れて持ち歩いて、いつ出会うかもわからない。全員と出会っていなかったら、もしかしたら死ぬまで一生持っているかもしれないし。そういうこともあって、会社経営はうまくビジネスをやるだけじゃなくて、僕はそういうマインドを持っているということがすごく大事だなと学ばせてもらったんですよね。
河上:そうだねー。ちょっと泣いちゃったよ。
呉:(笑)。これはもうホントに僕はいまだにもう…。
河上:自分ができる自信はない。0パーセント。
呉:僕も同じ環境だったら、正直できるかわからないです。明日、例えば関東大震災が来て、会社が潰れたりした時に、僕も自分が同じことをできる自信は正直ないですけれども、まあそうありたいなということは常に思っていますね。だから、なんだかクサい話になっちゃいましたけれども、経営者の人たちはみんなそういう思いをぜひ、持っている人がほとんどだと思いますけど、特にベンチャーの経営者は……。
河上:ずいぶん大きな課題を投げて終わらせますね。すごい。これは難しいですわ。
呉:とくにこれから会社を作るベンチャーの人たちにはそれくらいの覚悟をたぶん持って……。
及川:確かにそういう学びというか、そういう情報がやっぱり起業家には必要だと思うんですよね。そういう基準があるかないかで、企業経営は全然違うと思います。
河上:そうだねー。この話はすごく大変だぜ。大変だと思う。宴もたけなわなんだけど、そろそろ1回終わらせないといけないと思う。1時間以上しゃべったよ、これ。呉さん、みんなを感動させて終わらせるのは今回が初めて。
呉:(笑)。そうなんですか?
及川:こんなにみんなが泣きそうになったの初めて。
河上:この後、ちょっと呉さんも仕事に戻らないといけない関係もあるからね。1回終わらせようと思うんだけど、今日はいい時間でしたね。
磯村尚美氏(以下、磯村):いい時間でしたね。
呉:これで良かったんですか? 大丈夫ですか?
及川:めちゃめちゃいい話でした。
呉:純さんの期待を……。
河上:そうそうそう。ホントにうるっと来ちゃうとこだったよ。
呉:(笑)。
河上:また後でちょっとゆっくり。今日はクリエイターズマッチの呉社長に来ていただきました。どうもありがとうございました。
(一同拍手)
呉:ありがとうございます。
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