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セカンドキャリアに幸あれ!! 前園真聖×玉乃淳(全1記事)

前園真聖「ゴールは決めていない」堕ちた天才ストライカーが這い上がれたのはなぜ?

サッカー解説者の玉乃淳が引退後のサッカー選手の生活に迫る「セカンドキャリアに幸あれ!!」。今回は、元サッカー日本代表、'96年のアトランタ五輪でブラジルを撃破した“マイアミの奇跡”の立役者、前園真聖選手のインタビューを紹介します。※このログはTAMAJUN Journalの記事を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

暴行容疑で逮捕、ドン底からの再スタート

玉乃淳氏(以下、玉乃):グアムで焼き肉に連れて行ってもらって以来ですね。それにしてもビックリしました。あの事件(2013年10月13日、泥酔状態でタクシー運転手への暴行容疑で逮捕。翌日に処分保留で釈放)。でももう10年くらい前のような気がします。

前園真聖氏(以下、前園):いや、ぜんぜんだよ。まだ1年半ぐらいしか経っていないから。

玉乃:サッカースクールもやっていますし、親御さんへの説明とか大変だったのではないかなと思っていました。

前園:すぐに謝罪会見を開いてもらって、まずは自分のスクールにも行かせてもらって。でもそのとき、逆に「頑張ってください」と温かい言葉もかけていただいた。子供たちからも応援してもらって、そういうのが本当に支えになった。

玉乃:とはいえ、辛い時期を過ごされたと思いますが、いかに気持ちを切らさずにいたのですか?

前園:誤解を恐れずに言えば、とにかく「切り替え」が必要だと思った。

当たり前だけど、反省したし、落ち込んだし、「この歳で何やっているんだよ」って自己嫌悪に陥った。でも、やってしまったことをいつまでも引きずるより、次にどんな行動を取るべきかを考えた。

現役時代で言えば、壁にぶつかったり、失敗もあったりで、そこからどう這い上がっていくのか……そのメンタルはサッカーで鍛えられたと思うんだよね。

サッカーと仲間たちに救われた

玉乃:一緒にプレーしたヴェルディ時代には、監督と衝突して試合に出られないこともありました。

前園:それでも辞めなかったし、バッシングされても、諦めずに現役を続けてきた過去があるから、「負けちゃいけない」というか「もう一度、やらないと」という気持ちを常に持っていたのは確かだよ。

玉乃:サッカーに救われたと?

前園:サッカー仲間のサポートも大きかった。事件の後、4ヶ月ぐらいの自粛期間があったけれど、すでに決まっていたイベントやサッカー教室の仕事を、自分ができない代わりに、ラモス(瑠偉)さんや福田(正博)さんたちが手伝ってくれた。手を貸してくれた人たちへの感謝の気持ちとともに、サッカーのおかげだと救われる想いだった。

玉乃:ラモスさんも福田さんも熱い人ですからね。彼女の存在も大きかったのでは?前園:そうだね。愛想を尽かされてもしょうがないと思っていたけど、彼女だけでなく、彼女のご家族も、自分の家族も含めてみんながサポートしてくれたよ。

玉乃:ありきたりですけど、家族とか彼女って最高ですよね! 欲を言えば、奥さんだったらもっと最高かもですね。早く結婚してください。期待しています(笑)。

前園:ははは。

タレントとしての忙しい毎日

玉乃:周りの方々の支えもあり、そして今は本当に引っ張りだこというか、テレビで見ない日はないと言ってもいいぐらいじゃないですか!

前園:そんなことないけど、休みはほとんどないし、1日のスケジュールもビッシリ。ありがたいことだよ。

玉乃:テレビ以外でも、イベント等も多いのですか?

前園:やっぱりメディア関連の仕事が多いかな。週末や平日にイベントが入ることもあるけど。

玉乃:相当なハードワーカーですよね。ある意味、事件の前後で生活は一変したのでは?

前園:一変したというよりも、正直、ここまで仕事をいただけるとは思っていなかった。

玉乃:さらに俳優業まで(笑)。

前園:それはよくわからないけど、とにかく、本当にマイナスからのスタートで、どういう状況になるかまったくイメージできなかったなかで、未知の分野にも飛び込んだ。それはそれで新鮮だし、今はすごく楽しく仕事をやらせてもらっているよ。

玉乃:実は今のゾノさんが本当の姿で、セカンドキャリアはタレントとしてバリバリ活動したいというビジョンがあったのでは?

前園:いや、まったくそんなことは考えていなかった。サッカーしかしてこなかったから、引退した後は当然のようにサッカーに携わるのだろうなというのが、まずあった。

玉乃:指導者は?

前園:周りからはよく言われたし、玉乃もそうだと思うけど「スペインの経験を活かしてください」とか言われるでしょ? でもそれがすべてではないよね。スクールに携わってはいるけど、指導者以外の道があってもいいはずだよね。

現役選手しか味わえない“あの瞬間”

玉乃:引退後になにをするのか、明確に定まっていないのは別に不思議ではないと思います。ただ、現役時代に感じたような、心の底から「うわぁああああああ」って感情が迸ることはないですよね?

前園:あれは一生ないでしょ。満員のスタジアムに足を踏み入れるあの瞬間、試合前の雰囲気とか、アドレナリンが出まくる感じは、どれだけおもしろい番組に出演しても、有名な芸能人や綺麗なタレントさんと会ってもないだろうね。あの感じは現役でしか味わえないと思う。

今もすごく楽しいけど、それはまた別次元の感覚。やったことないからわからないけれど、監督になっても無理だろうね。選手のときが絶対一番。サッカーをやっているほうが一番楽しいよ。

玉乃:なるほど。今後の目標というか、方向性というか、最終的なゴールって見えてきました? バラエティキングになるとか(笑)。

ゴールは決めていない

前園:ゴールはね、俺、決めていないんだ。決めていないというか、だって、復帰させてもらってまだ1年半だから。

この取材の後も収録があるけど、1年半前の自分を考えれば、奇跡に近いからね。いただいた仕事をひとつずつ、一所懸命やっていくだけ。2年後はどうなっているかわからない。とにかく経験を積まないと。

自分がこれからどうしていかなければいけないか、どのように周りと接していくべきか、なにをすれば自分がこの世界で長くやれるかとか、そういうのはいろんな経験のなかで学んでいけるはず。だから、目の前の一つひとつの仕事に真剣に向き合うだけだよ。

玉乃:学校の授業を受けているみたい!! まさに〝しくじり先生〞じゃないですか(笑)!

前園:ははは。でもね、本当にそうだと思うよ。自粛期間は仕事が一切ないから、収入もゼロ。そういうこともあって、「もし次の仕事のオファーをもらえたら、精一杯やろう」と。スケジュールが空いている限り、全部やるつもりでいる。それしか今の自分にはできないから。

玉乃:ゾノさんらしいです。最後に現役選手へのメッセージをください。

前園:プロとしてみんな一生懸命やっているはずだから、やれる限りは続けてほしい。もっとも、先がどうなるかわからない世界だから、いろんな選択肢を、なんとなく持っていたほうがいいと思う。怪我だってあり得るわけだから。

そして、どんなことにもチャレンジするのも大事。そういう気持ちを持って、これからも頑張ってもらいたいね!

【前園真聖プロフィール】生年月日 1973年10月29日鹿児島県出身1992年鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。1996年、アトランタオリンピック本大会では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などをチームのキャプテンとして演出、サッカーファンのみならず、広く注目される事となる。ブラジルのサントスFC・ゴイアスEC、韓国の安養LGチータース・仁川ユナイテッドなどの海外クラブでプレーし、2005年5月19日に現役引退を表明。その後は解説者としてメディア等で活動しながら、ZONOサッカースクールを主催し、普及活動を行う。現在は、メディアに出演しながらも、ZONOサッカースクールを中心に全国の子供たちにサッカーの楽しさを教えるための活動をしている。

サッカーダイジェスト2015年6月25日号掲載)

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