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画期的な躍進にいたる転機の時(全1記事)

松下幸之助が語った、イノベーションを殺す「敗北者の考え方」

停滞か、躍進か。ビジネスで限界に立たされたとき、それを画期的なイノベーションへと転化させるためにはどのような発想が必要なのか。松下幸之助から社員へのスピーチを書き起こし。

今、松下電器はちょうど、さらに躍進するか、このまま停滞するかというような、ひとつのやはり「限界」に今立っている、という見方もできるのではないか、と思うのであります。それはひとつは、会社自らの総合力の培養ということと、いまひとつは時代、ということ。この業界の動き、時代ということですね。この経済界の動きというようなことから関連いたしまして、そういうように私は解釈できると思うんです。そうでありますから、案外私は、個々に、お互いに、非常にすぐれた知恵を要求される時やないかと思うんです。

今こそ本当に、知恵を、われわれは要求されてる時やないか、と思うんです。会社経営にあたっていまして、そうでないといけないんやないか、という感じがいたします。それから、この個々につきまして、各事業部が分かれておりまして、各事業部の経営につきまして、うまくいくところ、うまくいかないところ、あるいは中途のところ、まあ、いろいろありますが、私はどの事業部もですね、多少の差はありましても、だいたいうまくいく、というのが原則だと思うんです。

「うまくいかないということはありえない」と、一応、考えてみたい、と思うんです。みなさんの担当してる事業部なら事業部が、昨年よりの1年間の躍進の状態がどうであるか。あるいは20%躍進したか、30%躍進したか、あるいは横ばいであるか、あるいは利益が上がってるか上がっていないか、ということ、いろいろございましょう。いろいろございましょうが、自分の担当している事業が今、非常に恵まれない事業部である。だから「この程度に食い止め得たならば、まだよほど、ええんだ」という考え方は、僕は敗北感を持っている人だと、私は思うんです。

「事業というものは、性質上、まず横ばいが非常にいいんだ」と、こういうふうに考えるということは、これはもう斜陽的な、多少傾向にあるんだ。だから、これ以上伸びないんだと。こういうような場合にですね、見方によればそうかもしれない。しかし必ずしもこのとおり、やらなくてもいい。もっと違った考え方によって、これをば成長産業に転換する方法がありやしないかどうか……というような、まあ、考えをもってみると、往々にして、これが成長産業に転換するような内容に変わってくるのであります。

そうでありますから、そこに非常に大きな成果をもたらす、ということになろうかと思うんです。われわれは何を生み出すかということに、自ら生み出せないと考えるか、生み出せると考えるかということによって、変わると思うんです。行き詰っている仕事でありますとか、うまくいかないというような仕事は、私は「新しいものを生み出すひとつの転機に立っている」と考えたらええと思うんです。

すーっとうまくいっているということは、まだ転機に立っていない。だからそれは、そのまま続けていってよろしい。しかし、うまくいかないということは、これを画期的な方向に変える転機に立っているんだと、そういうような考えを持ちましたら、行き詰っていると考えますか、行き詰っていないまでも、横ばいというか、その、する仕事というものは、画期的な躍進の仕事に変わっていくだろうと、私はこう思うんであります。

これはおそらく間違いない、と私は思うんです。まあ、私は「それじゃ、そんな仕事でもあんたのところへ持っていくよって、あんた、ひとつ躍進の転機になるようにしてくれ」と、みなさんが言われる場合に、ことごとく「そうしましょう」ということは、言えないかもわからない。

けれども、おそらく私は、あるひとつの問題を与えてもらったならば、「これは何とかして、やらなならん」というような場合には、必ず画期的なそれを転機として、そこに革命的なものを生み出すことに成功する、というような感じを、非常に強く、私は持っているんであります。そこに松下電器が、本当に責任を感じつつですね、一方、経営というものに恐れを抱かずしてやってこられた、私は大きな原因だろうと思うんです。

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