2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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(『野火』のメイキング映像を上映)
塚本晋也氏(以下、塚本):これは『野火』のBlu-rayとDVDの特典として1時間のものが入っているんです。最初の立ち上げから、映画祭に行って配給し終わるところまでのところを全部、60分にまとめているうちの真ん中あたりですね。もしよかったら、ほかのも観ていただいて。
東野正剛氏(以下、東野):はい。ぜひみなさんにも観ていただきたいと思うのですが。こうした自主製作で低予算の中ではこういった仲間であるとか、本当にみなさんの力というのはすごいものですね。ダンボールで作ってみようと言ったらみんな作るんですね。
塚本:最初は唖然としていたのですが。
(会場笑)
その前のときも、僕は別の映画でもダンボールと言ったことがあるのですが、その時はさすがに「イヤイヤ監督」と言ってベニヤで作ったりして。この時はやはりボランティアの方でプロではないので、僕がダンボールと言えば「ダンボールかぁ……」ということで、ある時本当に「監督、ダンボールでできそうです」と言って。こんな感じです。
東野:我々は映画祭でショートフィルムの監督とも付き合いがあり、やはりショートフィルムを作られた監督にとっても共通することですが、結局、映画って作るまではもちろん大変なんですが、じゃあ作った後どうなるんだというのが非常にショートフィルムの若手の監督にとっても大事で。
監督の先ほどの予告編にもありましたが、作られた作品というのは、やはりまず海外の映画祭でデビューというかたちで、いろいろな映画祭で各国を回って、最終的にはこちらで配給ということなのですが、監督の一番最初の海外の映画祭での受賞だとか、行かれた経験というのは?
塚本:これは『鉄男』だったんですね。つまり、劇場映画の最初でした。そこまではいつか映画を作りたいと思っていても、海外を視野に入れたことは一度もなくて、本当に鎖国状態で日本の中で作って上映するものだと思っていました。
ある時、『鉄男』を作って東京ファンタスティック映画祭・ディレクターの小松沢陽一さんに「初めて映画を作ったものですから、チラシにコメントを下さい」と持って行った時に、小松沢さんがちょうどローマ・ファンタスティック映画祭に行くので「これを持っていっていいか」ということになり、20代の終わりの頃でしたが「いやー、そんな、ありがとうございます。ローマってどこだっけ」みたいな話で持って行ってもらったらグランプリをもらったということで、びっくりするのを通り越して笑うというようなことがあってから変わりました。
あとでその『鉄男』がローマでグランプリを取った時の会場の雰囲気があまりにも熱狂的だったという話を聞いて、行ってみたいなと思って。次に作った『鉄男2』は、映画を作ったり、いろいろ仕事をするのを一切やめて、1年をかけて世界の映画祭を回りました。
最初、アボリアッツ映画祭(アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭)というSF映画の登竜門がフランスにあって、スピルバーグ監督やキャメロン監督がデビューしたような映画祭なのですが、そこを皮切りに、その年に誘われた映画祭に全部行くという。
1年間、いろいろな映画祭を回った時に、あまりにもいいことがいっぱいあって。当時は黒澤監督の映画とか、もうちょっと次の世代では大島渚監督とか今村昌平監督は海外に行っていらっしゃるのですが、それ以降はあまりなかったのですね。もちろん、石井聰亙監督とか長崎俊一監督なども行ってはいたのですが、あまり例がありませんでした。
その時のメリットの1つは、海外のお客さんが自分の映画を観てすごく喜ぶのを目の当たりにして、非常に勇気づけられて、世界が急激に広がった感じがするというのが、自分のモチベーションになったことです。
あともう1つは、映画祭に行くと夢のような人たちに簡単に会えるということです。その年にはツイ・ハーク監督とかタランティーノ監督とか、いろいろな人に会える夢のような1年になるわけです。そういう人と会ってつながりができることと、そして大事なのは、海外で賞を穫ったりすると、日本の宣伝に使えるということ。
あとは、最初は海外で配給してお金をもらうというのを「棚からぼた餅」と思っていたのですが、やがてそのことが完全にできるようになってくると、そのお金も製作費に加えて計算することができるようになるんですね。おかげで製作費も小さいなりに膨らむし、自分の映画を観てくれるお客さんがいろいろな場所に広がっていくということなので、これが一番大きいです。
最初に『鉄男』を作った後、『鉄男2』で割と早くそのことに気づいたので、以降はとにかく1本作ったら、海外の映画祭に出すというのは当たり前の流れになって行きました。
やがて、どの映画祭に出すのが一番いいのかということを考えるようになりました。それで、いくらこっちでそうしたいと言ったって、映画祭のほうから嫌だと言われればそれでおしまいではあるのですが。でも長い期間をかけて自然と映画祭との関係性ができていきました。
そういった長い関係の中で、僕は37歳の時に『HANA-BI』がちょうどグランプリを獲った時のヴェネツィア国際映画祭の審査員をやらせてもらったことも大きかったです。それまでに作品を出したこともないのになんで僕がヴェネツィアの審査員をやれたのかわからなかったのですが、映画祭の中で『鉄男』を好きな人がいたようでした。
東野:すごいですね。
塚本:その後に『バレット・バレエ』からは、ずーっとヴェネツィアでプレミア上映をさせてもらうというかたちになりました。この『野火』も理想的なかたちで映画祭を回ることができました。プレミア上映がヴェネツィア映画祭で、その次が北米で一番大きなトロント映画祭、その後がアジアの釜山映画祭という、映画祭を押さえるのに重要な3本の柱を立てられたので、後々の展開が非常によくなっていくという流れを作るに至ったという感じです。
東野:その3つの映画祭に出るということ自体がすごいことだと思うのですが。後はやはり海外映画祭で、その作品がそれぞれの国で配給されるような会社であるとか、チームの人たちとも仲よくなったりするわけですよね。
塚本:そうですね。いまはもういっぱいあるのですが、当時は日本の映画を海外に配給してくださる人がいらっしゃいませんでした。そこでゴールド・ビューの朱さんという人が、海外にセールスする担当になってくれて、そのときは自分の映画だけを海外の配給会社に売るという作業をずーっとしてくださったのです。いまで言うところのセールスをしてくれて、つぶさに営業してくださいました。
東野:実は、私もサンプルで少し持ってきたのですが。監督の作品はヨーロッパでも北米でも向こうのエディションとして販売されていて、例えばサード・ウインドウ・フィルムズという配給会社ですが、これは『鉄男』と『2』が一緒になったセットで、『東京フィスト』であるとか『バレット・バレエ』『六月の蛇』『KOTOKO』もこのサード・ウインドウ・フィルムズで、ほぼすべてのBlu-rayが海外のバージョンで。
塚本:そうですね。いま紹介していただいたのは、ちょうどサード・ウインドウ・フィルムズのもので、わりと最近出たものですね。長いなかでは『鉄男』から、その都度、いろいろ出していただきました。
東野:今回この『野火』は、北は北海道から南は沖縄まで、監督がミニシアターであるとか、いろいろな劇場とコンタクトをとって上映しておられるので、そこの背景をちょっとだけ。
塚本:映画を作って、海外でもいろいろやらなければいけないのですが、日本でも観せていくのはもちろん大事なことです。ただ、いままでも映画を作ったらキャンペーンと言って、劇場に行くことはありました。しかし、主要都市だけというのがほとんどです。
今回は映画がとにかく特殊だったこともあるのですが、この『野火』というのは、多くの人に観てもらわなければいけない。それは自分の映画だから観せなければいけないというだけではなく、やはり時代の空気感が怪しかったので、なんとかみなさんとその空間を共有したいという気持ちがあったので、押しかけるようなかたちで行きました。
それでも最初は本当にいくのかなーと引っ込み思案の僕は尻込みもしたのですが、自主配給スタッフの熱情に押されて、決心を固めました。
最初に手を挙げてくださった映画館が40館あったので、とにかくその40館にはもう行くと。近いところ同士だったら、交通費などもみなさんとうまく相談して工面できますよね。単発だとちょっと往復の負担が大きくなってしまう。映画館側の負担も大きくなるので、だいたいこのブロック、このブロックと分けて、九州なら九州だけで一気に行っちゃうというかたちで、最初に手を挙げてくださったところはすべて行きました。
結局、80以上の館が上映してくださいました。
行ったおかげでやはり、どこにどんな映画館があるのか知ることができました。お客さんがたくさん入るような映画だったら、シネマコンプレックスや配給会社に任せてやってもらうという方法もあります。多くの映画がそうですが。ですが、ちょっと自分で変わったことをしたいけれど、でもお客さんと接点を持ちたいという場合は、ミニシアターというのは欠かせないものになります。
そこは、自主映画ではなくて、ちゃんとした映画ではあるけれど、いろいろ特色のある映画を上映してくれる映画館を知っておいたほうがいいわけです。今回こんなリスキーな映画を上映してくれるのはどこなのかということがはっきりわかったし、その劇場でどういった人が支配人であるのかということもわかりました。それは非常に重要なことです。
今日はこのような場所に来てはいますが、本当に引っ込み思案なところもあるので、これは「押しかけ」なんだと奮い立たせて、無理やり行っているような感じですね。でも、そのおかげで、そういったいい縁が得られたということですね。
東野:貴重なお話をいただきましてありがとうございます。時間がなくてすみませんが、当然、塚本監督のキャリアをこの2時間でしゃべるというのは不可能なことですので。ただ私が思いますに、映画のセルフプロデュースも最終的にはもう作り手のパッションというか、モチベーションというか、情熱というか、それがないとそもそも不可能なんじゃないかなと。
塚本:それだけあれば後はついてくるものかもしれません。
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