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番外編 のぶみ学@豊島区民センター(全5記事)

「出版不況って言いたいだけやろ?」職業の寿命を受け止めて生き抜くヒント

キングコング西野亮廣氏と絵本作家のぶみ氏によるニコ生チャンネル「会議を見せるテレビ」。今回は、2016年3月15日に豊島区民センターで行われた番外編「のぶみ学」をお届けします。西野氏は、出版不況やテレビ離れなど、業界の景気の悪さをネガティブにとらえる風潮について語りました。

「出版不況」は語呂がいい

西野亮廣氏(以下、西野):「本の売上落ちてる」とか「本、調子悪いですから」って言うじゃないですか。

別に本に限らず、全部そうじゃないですか。テレビだって視聴率落ちてるし、CDだって落ちてる。「出版不況」という、僕はあの言葉の語感がよかっただけじゃないかと思ってるんですよ。

例えば、「視聴率不況」って言いがたいじゃないですか。「出版不況」って、「ヴィダルサスーン」みたいな感じで、ただ語感がよかったからワーって広がってるだけで。別に本屋に限らずすべてのことが……。

だって、人数が減ってるし、エンタメの数が増えて、細分化されていくんだから当たり前の話で。1980年のときと比べたら数字が落ちてるのって当たり前の話じゃないですか?「出版不況」というのは、ただ語呂がよかったという。

絵本作家のぶみ氏(以下、のぶみ):「ヴィダルサスーン」と「出版不況」の語呂がいいと。

西野:言いたくなるやつあるじゃないですか。「ボンゴレビアンコ」とか。

のぶみ:言いたくなりますね(笑)。

西野:だから別に、不況も出版業界だけじゃなくて、全部じゃないですか? お笑いもそうだし、音楽もだし、全部がうまくいってる業界なんか。新進気鋭のそれはあれだとして、1980年代と比べたらそれは全体的に落ちてますよ。

のぶみ:たぶん西野さんもそうだと思うけど。デビューするときに、バブルの後だから、けっこう「景気が悪くなってきた」って言われてるときからスタートしてるからあんまり。

西野:ピンとこないですよね?

のぶみ:ピンとこないんですよ。

西野:すごいわかります。景気がいいときを知らないから。そうなんですよ。そこと比べたら、落ちてて当たり前ですよね。

「ベストセラーを売らない」本屋が大人気

のぶみ:あと、出版不況だと言って。でもよく調べると、けっこう売上を上げてる書店とかもあるじゃないですか。だから、「言ってると本当になる」ということがあると思っていて。

けっこう出版不況だと言ってるから、「ひょっとしたらお前が本を売れなくしてるんじゃないのか?」というのはあります。

西野:口に出すとね。

のぶみ:「本当にそうかな?」と思うときがあって。僕、中学のときに勉強したくないから、カンニングばっかりしてたんですよ。カンニングをどんどん追求していったんですよ。天井に書いたり、黒板に薄く書いてサッと消すとか、小さく書いたり。それでやってたんですよ。

カンニングはやっちゃダメじゃないですか。でも、カンニングをやった人だったらわかるかもしれないけど、書いた時点でちょっと覚えてるんですよ。だとしたら、カンニングがダメって言った人は覚えないからダメなわけですよね。でも、ちょっと書いたときに覚えちゃうんですよ。

西野:なるほど。カンニングするたびに覚えちゃうんだ(笑)。むっちゃいいですね。

のぶみ:それで僕、三者面談のときに、都立の開成高校でも行けるって言われたんですよ。開成高校は一番上の高校なんですけど。でも僕、カンニングしてるってわかってるから、(倍率)0.5倍の蒲田高校を受けました(笑)。

西野:すごいな。なるほど。

のぶみ:「そもそも、それ、なんのために役に立つの?」というのを追求すると、学ぶことがあるかもしれないですね。「『出版不況』って言ったら誰が得をするのか?」とかね。「不況だったら、じゃあどうすればいいのかな?」って。

西野:それを考えたほうが楽しいですよね。だから、本屋さんがこれから(お客さんが)どうやったら買っていくかとか、そっちを考えるほうが楽しくないですか?

のぶみ:そうですよね。本屋さんは考えてますよね。

西野:僕、大阪の「スタンダードブックストア」という本屋さんでよくお世話になってるというか、呑みに行って「ああしようぜ、こうしようぜ」みたいなことを考えるんですけど。

「スタンダードブックストア」はすごいですよ。だって今、出版不況みたいなこと言ってますけど、店舗をバ〜って増やしましたから。すごいでっかい店舗なんですよ。今、大阪でたぶん3店舗ぐらい、超でっかい本屋さんですけど、やってるんじゃないですかね。おもしろいですよ。本をどうやって売ってるかといったら……。

のぶみ:「ベストセラーは売りません」という。

西野:そうです。あれを早めに言ったのは1個いいかもしれないですね。要は、「Amazonのベストセラーは売りません」という看板に掲げてるんですけど。別に……ベストセラー置いて売ってるんですよ(笑)。なんていうんですか? ベストセラーだから置くっていう売り方をしてないという。

のぶみ:詐称じゃないですか(笑)。

西野:自分が好きなものがたまたまベストセラーだったら、それは置くけども、ベストセラーだからといって置くことは絶対しないという、そういうやつです。

のぶみ:ヴィレッジヴァンガードとかもそうだもんね。

本屋はマーライオンのお土産から学ぶべき

西野:あの本屋さんは、でも、もうあっちに行くと思うんですけどね。僕ずっと言ってるんですけど、Kindleってあんまり未来がないと思ってて。それよか本のほうがぜんぜん楽しいんですよ。未来がある。

というのは、お客さんがどんどん体験のほうに流れていってるじゃないですか。いろんなことがスマホでいけるから、お客さんがとにかく体験のほうに流れるじゃないですか。リアル体験。お祭りとかライブとか。CDは買わないけど、音楽ライブには行く、みたいな。そっちに流れていってるじゃないですか? 

そのときにむっちゃいいのが、やっぱりおみやげというグッズというのがあるから、本はこの先たぶんグッズとして残るんじゃないですか?

のぶみ:そうかもね。

西野:だから本屋さんがやらないといけないのは、大阪の本屋さんにも言ってるんですけど、「絶対に劇場作ったほうがいい」って。本屋さんの中にもステージを作って、ここで体験できるようにしちゃって。本を「本」として売るんじゃなくて、体験を味わった人の……。

みんな作品にはお金を出さないけれども、おみやげって超買うじゃないですか。シンガポールのマーライオンの置物だとか。

のぶみ:なんでマーライオン買うんだ(笑)。

西野:いらないのに買っちゃうじゃないですか。ペンダントとか、ああいうのって。

のぶみ:いらないですよね(笑)。

西野:いらないじゃないですか。マーライオンの置物とか宮島の三角形のペンダントとか。でも、あれも作品ですよね。いちおう作家さんがいらっしゃって。でも、作品買うときってみんなすごい渋るのに、ああいうおみやげとかって超買うじゃないですか。

「なんでかな?」って考えたときに、おみやげって必要なんですよ。なんで必要なのかというと、思い出を残しておかないといけないから、「物」が必要なの。小学校の時の、中学校の時の思い出を残しておかないといけないから。

つまり、おみやげというのは、お米とかお水とかパンとか毛布とかと同じカテゴリーで。要は生活するうえで必要なものだから。

だから、本はおみやげ化したほうが。おみやげ化するには、たぶん体験する場所を作ったあげったほうが残るんじゃないかなと思って。本屋さんは、だから、体験スペースを。もうそうじゃないと勝てないですよ。

のぶみ:あと僕は、本屋のサイン会をけっこう断っちゃうのは、体験スペースが少ないからなんですよ。やっぱり読み聞かせする場所もすごい少ないし。ワークショップみたいなやつをやってから、サイン会もやったり、講演会もしたかったりするんだけど。でも、ダメなんですよね。だから、けっこう狭いところでやらせてもらうんだけど。

本屋さんは、それでけっこう僕任せにしたりするんですよね。TwitterとかFacebookでやるから、あんまり自分で近所の幼稚園とか回ったりとかして、ワークショップとか講演会やる人はやってくれるのに、本屋さんは回ってるところ見たことないんですよ。

だから僕は「これは本屋さんちょっと勘違いしてる」と思って。「それやってたら、俺やめるよ」って思うけどね。

あと難しいのが、小学校や中学校が教科書がなくなって、Kindleみたいなやつになったときですよね。あれに慣れてると、本じゃなくてそっちに移り変わる。

西野:こっちに慣れちゃうとね。絶対きますもんね。幼稚園から小学校から教科書なんて間違いなくなくなると思います。教科書って超効率悪いですもん。

例えば、現代史の教科書って、こんな毎日いろんなニュースが起こってるのに、この教科書印刷されたの1年前ってやばいじゃないですか。1年前のニュースに書かれたことってもはや覆ってるかもしれないじゃないですか。「実はこうだった」みたいな。だから、間違いなく教科書はスマホになるし、ってなったときにやばいですよね。

のぶみ:やばい。おみやげの話でいうと、サザンオールスターズのコンサートを観に行く人たちって、みんな桑田さんの曲を聴きにいってるんですけど。そのときに付き合ってた彼女とか、そのときに行った旅行とか、サザンの曲を聴いて思い出すことがあるらしいんですね。

サザンのコンサートは、頭の上で思い浮かんでる人がみんな違うらしいですね。だから、ふとしたところで涙出たり。

西野:わかるわ。音楽いいもんな〜。

のぶみ:それはちょっといいですよね。

西野:音楽、それいいですよね。思い出のね。

のぶみ:本は難しいですよ。いろいろ考えないといけないよね。

すべての職業には寿命がある

西野:楽しいですけどね。未来の話超好きなので。「じゃあ、あの仕事なくなるな。これ、仕事なくなるな。じゃあ、こうしていこうか」みたいな。もう将棋してるみたいで、超楽しいです。

のぶみ:タクシーとかね。自動運転のやつを。今全部、トヨタも開発してるから、あれたぶん開発されますよ。オリンピック始まるくらいに。

タクシーが足りなくって、僕がタクシーキャンペーンを運輸省でやってるんですけど。「ママさんがタクシーの運転手になってください」という流し方なんですけど。でも、たぶん自動運転のやつができるだろうな、というのはありますよね。

西野:そうですよね。自動運転のほうがいいですもん。事故らへんし。

のぶみ:ちゃんと距離取るからね。

西野:よくないですか。別に居眠りとかもないし。

のぶみ:僕も自動運転の車が出たら買おうと思ってますね。

西野:絶対そっちのほうがよくないですか? そういうこと言うと、すごい怒られるんですよ(笑)。新しいものを「こっちのほうが効率いいじゃん」みたいなことを言ったら、絶対にワーって怒ってくる人、絶対にいるんですよ。困る人、食いっぱぐれる人。それで食いっぱぐれる人が絶対にすごい怒ってくるんですよ。

のぶみ:そうだろうね。Googleが自動運転の車を作ったらしいんですよ。最初ハンドルなしでボタン1つで動くというやつにしたんだけど、それが国道で走れないということになって。小さいハンドルとかでも、ブレーキは絶対つけないといけない、というルールはあるんですよ。

ということは「免許がいる」ということなんだな。免許いらなくなるのかなと思ったけど、そうはいかないんだよね。けっこう微調整が足りないから、そういうことになるんですよね。

西野:そういうのマジで見たいんですけど、ぼく子供のときに、でっかいチューブの中を、スーパーマンみたいな感じで「ヒョーン!」みたいに行くみたいな。あれ、本当に来ると思ってたんですよ。

のぶみ:ドラえもんのね。僕もそう思ってました。

西野:そっちに向かおうとしたら、みんなすごい怒るんですよ。「ダメだ、ダメだ!」とか言うじゃないですか。

のぶみ:なんでなんですか?

西野:食いっぱぐれるじゃないですか。「ロボットタクシーのほうがいいじゃん」って言ったら、タクシードライバーが食いっぱぐれるじゃないですか。怒られるんですよね。

新しいもん肯定したらだいたい怒られる。しかも、それずるいんですよ。毎回Yahoo!ニュースに載ってすごい炎上してるんですけど。でも、未来のやつ見たいんですよね。

それで、それに怒るんじゃなくて。どうせなくなるし。だってすべての職業に賞味期限というか寿命があるんだから、それは受け止めて。

例えば、芸人だって絶対にあるし。すべての職業に寿命があるんだから、それは受け止めて。それをみっともなく生きながらえようとせずに、ちゃんとスルスルっとちゃんと未来と共存する体づくりしてたほうがよくないですか?

のぶみ:「ダメだ!」って言ってネガティブになるのはいいんだけど、絶対みんなネガティブにはなるので。

ネガティブになったときに、「次、じゃあどうすればいいの?」って考える人がたぶん前に進んでいって。ネガティブになって「ああ、だから僕ダメだ。難しいや」って言ってったら、たぶんついていけない時代にはなるんだと思いますよね。

西野:そうですよね。どんどんどんどん僕言っていくので、「西野なんか言ってるな」と思ったらリツイートしてもらっていいですか?(笑)。なんかすごい叩かれるんですよ。

のぶみ:叩かれるよね(笑)。

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