テレワークの取り組みについて

加藤彰浩氏(以下、加藤):ここからは総務省におけるテレワークの取り組みを、いくつかご紹介させていただきたいと思っております。

総務省では、テレワークは2種類の方法から選択となっておりまして。簡単に言うと、職場で使っているパソコンを持ち帰って、自宅から総務省のLANへ接続する。

あるいはUSBの専用キーに対応して、それを私物のPCに差していただいて、セキリティを保ちながら、職場システムにアクセスをする、「シンクライアント」の形を取っています。

さらにコミュニケーションツールも導入しておりまして、マイクロソフトさんの「Lync」を使っております。

これにより、家にいながら、残席確認からチャット、Webテレビ電話ができますので、自宅勤務でも、全然遜色なく、職場の人と円滑なコミュニケーションをとることが可能となっておりまして、必須なツールだというふうに思っております。

参考ですけれども、テレワークを実施するのに手続きが煩雑だとか、いちいち上司に報告しなきゃいけないとか、そういうことがテレワークの障害になると考えておりまして。

総務省の中だと、そんなに負担なく、事前の申請が1回必要なんですが、前日に、上司を含めて、勤務計画をある程度簡単なものをつくって、終わりにそれをきちっと上司を含めて報告して終わりだということで、そんなに面倒くさいものではないという形で進めております。

最近やった取り組みの1つとして、総務省テレワークウィークというのを7月に実施しました。

これは高市総務大臣の発案でもあるんですけれども、「まずは全職員、やってみましょう」ということで、非常に発破を掛けた取り組みでございました。

これによって、我々がびっくりした取り組みとして、朝来たら、全職員に対して総務大臣から、メッセージメールが届いていると。

全員が迷惑メールではないかと疑ったんですが、読んでみると「これはどうも本人が書いた言葉らしい」ということで、一部抜粋させていただきました。

「特に管理職の方たちは、部下の皆さんからその一挙手一投足を注目されていることをよく意識してください。上司が率先して動かなければ、決して組織は変わりません。まず、上司がテレワークを一度経験してみてください」

組織のトップである大臣から、自らこういった働きをしていただいたと。

幹部職員、事務次官も含めて、局長など、総務省には160人の職人がおりますが、これが一部の人を除いてほぼ全ての人数、154人がこの1週間でテレワークを1回は実施しました。

0と1の間は、私は非常に大きいものだと思っておりますので、これはとても効果があったんじゃないかという話。末端の職員も含めまして、3分の1ぐらいの職員が、これによってテレワークが進みました。

やはりまずは試してみるということが非常に重要でして、今後の課題として、それを継続的にどうやっていくかというのがあるんですが、テコ入れの働き方として、取り組みとして重要だったんじゃないかと思ってございます。

実際にやってみて理解したメリット

最後、まとめでございます。一番上ですが、オフィス改革、テレワーク推進をやる前、さまざまな懸念、不安が当然ございました。職員の中には「書類の整理とか、仕事が増えて面倒くさい」と、「何でこんなことをやるんだ」と、そういった声があったのも事実でございます。

ただ、やってみると、「これ、絶対やったほうが良かったんじゃないか」と、思ってくれている方が多かったというのが、おもしろかったと我々は感じております。

こうやって紙を使わないスタイルやテレワークは、一度慣れてしまえばまったく問題ないと私は思っております。

当課もこの半年の間、数回、人事異動を経験しまして、人も当然入れ替わっておりますが、新しい方も「慣れてしまえば、全然これのほうがいいですね」とか言ってくださっております。

むしろさまざまな場面で、これまでの非効率性に気づく、良いきっかけになったんじゃないかと思っております。

3番目、緑色のところがありますが、日本人的発想や役所的発想なんですけれども、「やる前からすべての課題を解決しようとして、いつまでたっても進まない」と、そういう状況になっております。

8割、9割OKだったら、いったんやってみようと。走りながら、課題をつぶしながら考える、そういった発想が非常に大事なんじゃないかと。

最後は、我々いろんな制約がございますが、変革が最も難しいと思っていた役所、特に霞が関でこんなことができたというのは、非常に大きな一歩だと思っております。

そのために、もちろんトップランナーの理解と、下の推進部隊の実行力。この両輪がないと進められないと思っていますので、ぜひこの取り組みを広めたいと思っております。

質問や見学、お問い合わせがございましたら、総務省の加藤、その他、ご連絡先までいただければと思います。すみません、長くなりました、ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

富樫美加氏(以下、富樫):加藤さん、ありがとうございました。続いて、豊島区、高橋さんお願いいたします。

区長から言われた「外に出なさい」という言葉

高橋邦夫氏(以下、高橋):皆さん、こんにちは、豊島区の高橋です。よろしくお願いいたします。豊島区なんですが、今、総務省さんからお話がありました、国家公務員と違って、我々は地方公務員です。

地方公務員の特色って何かなと思ったところで、考えてみたんですけども。正規職員が減っているという部分は、国家公務員さんと同じだと思いますが、やはり女性職員が、地方公務員は多いですね。

豊島区でいうと、6割が女性職員でして、事務職にだけに限っても5割が女性職員という状況です。

最近の話題として、やはり育児休暇を積極的に取得しましょうということもありますが、介護休暇の取得者がだんだん増えてきております。やはりまだまだ女性職員が介護に入らなきゃいけないという時代なのかなと考えています。

また、窓口職場が多い、これは地方公務員の特色なのかもしれません。企画や総務部門を除くと、ほぼすべての職場は窓口さんですが、一方で、委託化がどんどん進んでいまして、窓口に座っているのは委託の職員が多く、正規職員はデスクワークが増えてきたというのも1つの特徴だと思います。

そんな中、豊島区は5月に新庁舎に移ったんですけど、その前までは、区長から何度か怒られていたのは、「職員が現場に出ていかないじゃないか」と。「パソコンばっかり見ているじゃないか」と。

要するに、「自席で下を向いて働いていて、何だか笑顔がないよ」ということをよく区長に言われていました。

職員側からすると、「外には出ていきたいんだけど、どうしてもメールが多い、または電話がかかってくる、だからなかなか席を離れられない」という問題がありますし、会議や打ち合わせが多くてそのための資料作成、帳合作業がすごく大変だということを言っていました。

一方で、住民との協働の機会が増えています。「外に出ろ」ということを言われていまして、NPOさんの方とお会いする機会も増えています。

そんな中、豊島区は新庁舎移転の機会に何を目指したかというと、いきなり在宅勤務やテレワークではなくて、「自席じゃなくても働ける環境をつくりましょう」ということで、新しい業務改革を進めているところです。

Wi-Fiでどこでも働けるスタイルに

高橋:5月7日に新庁舎がオープンしまして、建築家で歌舞伎座などを設計された隈研吾さんがつくったということで、NHKのニュースなどで話題になりました。

最近でも、「借金ゼロで庁舎をつくった」とか、ネット上でもいろいろ話題になっておりますけども。

そうは言っても、「こんな時代に庁舎をつくりやがって」という声は当然ありましたので、我々としては、極力、「区民のための庁舎なんですよ」ということを考えていて。ぜひ一度来ていただきたいんですけれども。

10階の屋上庭園や、各廊下には区内ゆかりの美術品だったり、それから、来訪者向けにはフリーWi-Fiがどこでも使えるという部分で、とにかく区民に来てくださいというような庁舎を目指しました。

フリーWi-Fiにつきましては、実は、職員用にもともとつくっていたWi-Fiなんですね。職員用の無線の通信アクセスポイントを、来訪者用にもバンドを変えて提供することで、あえて新しいお金をかけなくても来訪者用のサービスができたということで、非常に今、総務省さんから注目を浴びているところです。

我々職員、ワークスタイルを変えていったんですが、一番大きな狙いは「無線LANを使ってどこでも働けるようにしましょう」ということでした。全てのフロア、どこでも使える。会議室でも、休憩室でも、変な話、トイレでも使えるというふうにしまして。

なおかつパソコンも無線LAN対応、そうじゃなかったら無線LAN用のUSBを買ってということで、全台を使えるようにしたと。

これによって、会議室を取らなくても、会議がどこでもできますし、ペーパレス化も進むようになりました。

マイクロソフトさんの製品で「OneNote」という製品があるんですが、このOneNoteを使って、全員で自分たちの意見を、自分で書き込みながら会議をするというスタイルをやっています。

そうしますと、「会議が終わった途端に議事録ができている」と、すごく便利なことをやっております。

これは、最近の課長さんたちの集まりの会議なんですけども、見ていただくとわかるように、全員がタブレットやノートパソコンを持ってきて、仕事していますので、紙はあえて配ってないと。

ただ、まったく紙をなくしたわけではありません。どうしてもやはり年配者なんかは、次第だけは自分で打ち出して持ってくるとか。チラシなどは配布して、広報が出したりということはやっております。

IP電話の採用とペーパーレス化

高橋:またコミュニケーションの統合、先ほど、総務省さんからもLyncという話がありましたが、私どもも「ユニファイド・コミュニケーション・システム」を入れまして、電話は、すべてIP電話に換えてしまいました。

そうすることによって、相手が自席でパソコンを触っているかどうかがわかる。そこから電話をかけますから、相手がいないっていうことがないんですね。「電話をかけた相手は必ずいる」という状況で仕事ができるようになりました。

わざわざ電話をしなくても、チャットができるようになりましたから、若い職員なんかはチャットでどんどん仕事を進めています。あと、資料共有とか、Web会議もできるようになっていますね。

これは実際の休憩室なんですね。後ろにごみ箱があったり、電子レンジが置いてあったりしますが、職員しか入れない休憩室でちょこっとした打ち合わせできるようになりましたので。

休憩室ってどうしてもお昼以外はガラガラだったりしますけれども、豊島区の場合には、結構、朝行っても、夕方行っても、誰かがちょこっといて、こそこそと会議をやっているというのが見かけるようになりました。

それから先ほど、総務省さんも話していらっしゃいましたけど、紙をなくすためには出力物を減らすこと。思い切ったことをやったのは、それまで、複合機は各課契約だったんですね。

そうしますと、各課の庶務課に行くっていうのは面倒くさかったんですけども、全部一括契約して、総額コストも抑えちゃったんですね。1枚あたりの単価も抑えちゃいました。

台数も77台あったんですけども、それを46台に統合しちゃいまして、機械が減ることで、いやでも印刷できない仕組みをつくっちゃったんですね。

ちなみに私、政策経営部といって、企画や財政、広報という一番紙を出す部門にいますけども。

当初はそれぞれにコピー機があって、いつも稼働していたんですが。今は政策経営部が六十何人いて、プリンターは2台しかありません。

庁内LANからプリントを出そうと思ったら、ここに出すしかないんですね。だけど、意外と空いていて、ほとんど使ってないというような状況になっています。

なぜかというと、一番大きかった企画課の主催する会議がペーパレス化になったからかなと思っているんです。

会議室を効率よく使うために

高橋:さらに、会議室の話なんですが、会議室の管理システムを入れたんですね。豊島区は、先ほど総務省さんであったように、会議室が、だいたいもう3カ月前までほぼいっぱいで埋まっているという状況でした。

意外と夕方は空いているんだというのは何となく感覚的に思っていましたので、こういうシステムを入れたらどうなるか、見える化しようと思ったんですね。

会議室の前にこういうタブレットが置いてあって、入るときに「入室」というボタンを押すと「使用中」になって、終わったら「退出」を押すと「空き」になるんですね。

そうすると、皆さん会議室を使うときは長めに抑えるじゃないですか。会議が1時間で終わるなと思ったら、たぶん2時間抑えるんですよ。

本当にそれがどうだったかというと、これをやってみて、あと30分間、入らないとキャンセルしちゃうっていう、そういう強制的なものがあります。

これをやった結果、会議室の予約率は、まず8割に減ったんです。昔は10割だったんですね。予約率が8割に少し減りました。

なおかつ使用率は4割に近かった。まさに、「2時間取って1時間しか使ってない」っていうのが、実態としてわかるようになったんですね。

今回、これは良かったなと思ったのは、Outlookと連携していますから、「退出」を押した瞬間にOutlook上のスケジューラーも、「この会議室は空いている」ってわかるようになったんですね。

そして廊下から「今から入室」というボタンを押せますし、Outlook上で、「今、空いているね」と使えるってことです。

これで何が変わったかというと、豊島区にとっては、これまで会議を抑えてから、会議をやっていたんです。

私が部下に「会議をやろうよ」と言ったら、「会議室が空いていませんから、今週は無理ですよね」と平気で言われていたんですけども、今はそんなことは誰も言いません。

もうどこでも会議できるんですよ。会議室も空くようになったんですよ。「今やろうよ」と言ったら、「空いているところ探してみますね」と言って、そこから打ち合わせを入れるようになったということが、大きなワークスタイルの変化かなと思っています。

管理職はノートパソコンからタブレットへ

高橋:そして最後の話として、やはり管理職なんです。私も今日あそこに置いてありますが、タブレットを配りました。今年の3月にタブレットを配って、庁舎移転前の4月の末に、ノートパソコンを全部取り上げちゃったんですね。

だから今、管理職はタブレットしかないです。自席にはタブレットがあって、ディスプレイとマウスがあるって、そんな感じです。

ただ、ディスプレイは2つになったんで、拡張機能を使って便利になりましたが、こんな状況になりました。

あと全管理職に携帯を渡しました。そうしますと、確実に管理職は捕まるようになったんですね。

もともと職員同士でも、相手のプレゼンス状態を見て「いるか」「いないか」がわかるっていう、なおかつ管理職は元からスケジュールは全員に入れていたんですけども、一般職員もスケジュールを入れるようになったんです。

「今、会議中」とか、「資料作成中」とかってわかると、相手が電話してこないんですね。そういう意味では、全職員がスケジュールを入れたというのはすごく効果があったと思っていますし、管理職は絶対どこでも捕まるという、そういうことになってしまったので。

こうやって出先に行っても、かなり安全な方式で閉域網を使って、パソコン、庁内LANに入ってこられますので、どこに行っても決済できちゃうんですね。

だから、今日も私、多分これが終わったら、ここでパソコンでメールチェックをして、決済をすると思います。

議会でも広まるペーパーレス化

高橋:先日も3日間、長野と新潟に行ってきましたが、部下の職員は全然私がいないということさえも気が付かないぐらい、常にメールは開くし、常に決済が終わるということですね。

これは超過勤務の決済画面なんですが、出先でも決済ができちゃうということで、外国に行かない限りは決済ができるので、こんなスタイルになりました。

我々管理職にとっては、区議会が今、ペーパレス化を進めてくれています。議員さんにもタブレットを渡しました。

その引き換え条件として、理事者も議会にタブレットを持っていってもいいですよという条件をいただいたんですね。これはすごく大きいことでして。

議会っていうと、管理職が何十人も参加します。これを紙に打ち出していたら、とんでもない資料ですし、我々はそれが終わったあと、ほとんど無駄な資料をたくさん抱えているわけです。

そういったものは一切いらなくなった。こうやって、「何とか委員会」と誰でも開けるようになったんです。誰もが保管できるようになりました。

そういう仕組みをつくったことで、過去の資料を探すのも簡単になりましたし、それから直前まで帳合作業がいらなくなったということですね。これは非常に大きいと思います。これはペーパレス化を決定づける一打だと思いますね。

皆さんも議会を説得するということはすごく大変だと思うんですけども、これをやらないとペーパレス化は進まないんじゃないかと思っています。

最後、「セキリティはどうなんだ」って皆さん聞かれますが、セキュリティもちゃんと考えて、我々の場合は職員証と連携を取って、セキュリティを担保していますよということで。

このあと、ご質問がありましたら、こちらのほうにご連絡いただければと思います。どうもありがとうございました。

苦労した点と成功に至るポイント

富樫:高橋さん、ありがとうございました。それでは後半に移りまして、形を変えて、パネルディスカッション的な形に変えまして、またお二人に、今日ご紹介いただいた仕組みの導入プロセスについてお話しいただこうと思っております。

今日は同じお立場の公務員の方が、皆さんお集まりいただいているだろうということもありまして、導入の中で、特にご苦労された点や、成功に至るポイントになった点について触れていただきながら、時間は短いんですが、それぞれお二人、5分程度でまとめていただくということになっております。

今表示しておりますのは、今日お話しいただいたそれぞれの実施項目、効果、こういったことをまとめたペーパーになっております。それではまた加藤さんからお願いできますでしょうか。

加藤:はい、ありがとうございます。総務省のいわゆるペーパレス化も含めたオフィスの改革なんですけれども、おそらく検討が始まったのが1年ほど前ぐらい。

そこから半年ぐらいで、調達から何から、突貫工事でやりまして。おそらく半年もかからないぐらいで、今年の1月から新しいオフィスにしようと始めております。

我々も、実は40、50名ほどの部署ですので、さほど大きくない規模でしたので、だからこそできたのかなというとこも、実はあるかなというふうに思っています。

導入のときにどういったところが苦労したかというところなんですが、先ほどプレゼンでも触れさせていただきましたが、なかなか全員の思いをまず共有しなきゃいけないっていうところ、「何のためにこれをやるんだ」とか、「こうすると、こんないいことがあります」っていうところがもちろんあって。

ただ、ここら辺は悩ましいところなんですけど、実は我々もやってみないとわからなかったことっていうのがものすごく大きくて、やっていく中で改善したことも非常に大きいと。始める前は見えなかったメリットが、やってみたことでコミュニケーションが良くなったとか。

実際に働いてみて業務をおこなってみないと、どこで効率的にできるのかとかって、やっぱりわからないところがあるもんですから。

なかなかそういったことが見えない中で、手探り状態で始めざるを得なかったというところが悩ましいところです。

成功の理由は、トップダウン

加藤:それでも、なぜできたのかというと、おそらく1つはやはり、トップダウンというのがあったんじゃないかと思っております。

我々も総務省の幹部から「まずはやってみろ」と、ある意味、指示のようなことが下りましたので、そこはもう、命令だということで。やらざるを得なかったと、半ば強制的でやるんだと言ったことでやれた、ということは非常に大きかったなと思っています。

あとは、それを推進する下の実行部隊ですね。上の人がやる気があっても下の人がまったくやる気がないという状況だと、こういったことは進みませんので、上の理解と、こうやって取り組みを強力に推進していただけるような職員が複数名いると、有機的にうまく回っていくんじゃないかなというふうに感じております。

そういった形で、まずはやりながら走った、というところが多くて、我々も実は、「本当に自信を持って、詳細な検討をしてやりました」と自信を持って言えるものではなくて、8割ぐらいの状態で「もう飛んでしまえ」ということで飛んでしまって、紙を無理やりなくして、今の状態で、非常に落ち着いているというところもありますので。

やってみなければはわからないところもある中で、トップの理解もあったので、進められたというのは非常に大きいんじゃないかということになっています。今思いつく限りではそんな状況になっています。

富樫:ありがとうございます。高橋さんのお話に入る前に、1つ私から質問をさせていただきたいんですけど。

日本テレワーク協会に集まっている事例では、テレワークなどワークスタイルの変革を導入する際に、中間管理職の皆さん、やり方を変えることに非常に抵抗されることが多いと。

総務省では先ほどのテレワークウィークで、管理職を含めて一斉におやりなっていましたけど、その辺りについては、特にご御苦労なかったんでしょうか。

年配の方へのアピールを続けたい

加藤:そうですね、これを言っちゃうと身もふたもないんですけれども、実は行政情報システム企画というところは、年齢層はさまざまな職員がいるんですけれども、ITベンダーさんとお付き合いをして、国のシステムをつくり上げるという部署だったものですから。

ペーパレス化ですとか、業務効率化っていうことに理解のある人が多かったというのが、1つ幸運なポイントだったとは思います。

とは言っても、やはり我々は、これは成功事例だと思っていまして。決して我々の部署だからできたということではなく、他の部署でも、基本的にはできる取り組みだと思っています。

それを広げるためにどうするかというところでぶつかる部分、まさにおっしゃったような年度層といわれるような、考え方が数十年前のまま進んでいなくて、新しいことを取り入れるのに抵抗のある方がいるというのも事実です。

総務省の中でも、この取り組みは、若手職員も含めて絶対良いと言ってくださる方もいる一方で、まったくこのオフィス、写真でしか見たことないような方々の、一部ちょっと年配の方からすると、色物扱いをされているところもありまして。

そういうところの人たちへメリットを打ち出して、「やっぱり良いんだ」というアピールを、これからしていかなきゃいけないというふうに思っています。

富樫:ありがとうございます。では、高橋さん、お願いします。

仲間を巻き込んで改革を進めた

高橋:豊島区の場合は、やはり全職員が一斉にやらなきゃいけないということもあり、さっきの会議室予約システムのように、突発的に偶然入ったものもありますけども、「無線化をしてIP電話にする」というのは、2年以上ずっと審議してきました。

2013年には、もう全庁会議で俎上に載っていますから、私の頭の中には、2012年ぐらいから、「IP電話化したい、無線化したい」という思いはありました。

そんな思いを持っていたのは、私がいろいろな業者さんとつき合っていたからなんですね。日本マイクロソフトさんをはじめ、シスコさん、ゼロックスさん、ここではあれですがHPさんとか、いろんなベンダーさんの新しい社屋に行ったときに、「これを入れたい」と思いました。

私がよかったのは、1人だけで行ったわけではなくて、当時の企画課長、財政課長、それから庁舎建設の担当課長と、一緒に何人かの課長を巻き込んで、その施設を見学しにいったということがあります。

最終的にはその全庁会議の中でも、彼らが味方になってくれた、推進役になってくれたのかなと思っております。

苦労した点は、やはり電話なんですね。パソコンはまだ使い始めて、せいぜい20年ぐらいじゃないですか。

でも、電話って生まれたときから、みんな使っているわけですよ。電話の音質が変わるっていうことに対しては、特にベテランの方。

若い人たちは、LINE電話などを使っているから、そんなに違和感ないみたいですけども、ベテランの方は、やはり相手の顔色が伺えないっていうのはすごく不満を持っていまして、いまだに電話に関しては、文句は出ています。

ただ、これはもう一つひとつ、つぶしていくしかないかなと思っていますので、あと何カ月かけても、きちんとした音質を安定させたいなと思っております。

ワークスタイル変革を成功させるには

富樫:ありがとうございます。「これ」と思った方を巻き込んで、お仲間を増やして、ポリシーに賛成をしていただいたというお話があったかと思います。

最後に、今日の話のポイントをまとめてみたいと思います。導入に関しましては、どちらの例とも、トップのリードと実行部隊の推進力が合わさることが大事だったということがあると思います。

それと、取り組む前は、なかなか効果というのは保証できなくても、やってみれば、いろんな効果がこれだけ出ているということが、先行事例としていろいろ出てきていますと。

なので、これから同じようなことを進められる皆さんにとっては、こういった事例を踏まえることで、越えるハードルをかなり低くできるようになっているんじゃないかというふうに思いました。

それと、それぞれのお仲間をつくったり、抵抗されるレガシィな方を説得していくっていうところについては工夫があったと。

今日、パネリストのお二人と何度か打ち合わせをさせていただいたんですけれども、その過程で、やはりこういった変革のリーダーには、「この人の言うことなら、仕方がないな」と思われるような人間力がある方を付けるのも、1つ重要なポイントじゃないかというふうに個人的に思った次第でございます。

それでは、以上をもちまして、本日のセッションを終了いたします。会場の皆さま、最後にパネリストのお二人に大きな拍手をお願いいたします。

本日はご参加いただきまして、誠にありがとうございました。

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