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公務員のワークスタイル変革~地域に根差し日本を変革する行政サービス実現のために(全2記事)

2015.12.10

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オフィス環境を変えたら残業が減った--総務省が取り組んだワークスタイル変革とは

提供:日本マイクロソフト株式会社

日本マイクロソフト主催イベント「FEST2015」で、パネリストに総務省の加藤彰浩氏、豊島区役所の高橋邦夫氏の2名、モデレーターに日本テレワーク協会の富樫美加氏を招き、「公務員の働き方のこれから」を語りました。「残業が多い」「紙文化」などのイメージが根強い公務員という職務ですが、ワークスタイルを変革するためのさまざまな方法や逸話について紹介。果たして取り組みにあたっては、どんな苦労や秘訣があったのでしょうか。

古き良き公務員のワークスタイルを変革する

富樫美加氏(以下、富樫):本日はこれほど多くの皆さまにお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。これより、「公務員のワークスタイル変革~地域に根差し日本を変革する行政サービス実現のために~」を開始いたします。

本日のパネリストは、総務省行政管理局行政情報システム企画課 情報システム管理室課長補佐、加藤彰浩さん、豊島区政策経営部情報管理課長、高橋邦夫さんのお2人です。モデレーターを務めますのは、一般社団法人日本テレワーク協会の私、富樫です。

会場の皆さま、最後までどうぞよろしくお願いいたします。

今日のセッションでは、パネリストのお二人に、前半それぞれ15分で、これまで実施されたワークスタイル変革の目的や内容、効果などについてお話をいただきます。

そして後半は、導入プロセスやそれぞれ突破に苦労された課題について、伺ってまいりたいと思います。それでは総務省の加藤さん、よろしくお願いいたします。

加藤彰浩氏(以下、加藤):皆さん、こんにちは。総務省の加藤でございます。まず私のほうから、国家公務員のワークスタイルを変える取り組みといたしまして、最近、ちょっと総務省でいろんな取り組みを新しくやっておりますけれども、その一例をご紹介させていただきたいと思っております。

まず始めに、実際に国家公務員がどんな働き方をしているのか。どんな状況に置かれているのかということを、ごく簡単にご説明させていただきます。

こちらは、総務省で先般開催した研究会で、少し触れられているところでして。「国家公務員は今どういう状況なのか」といったことを簡単にサマライズしたものになっております。

ご承知のように、日本が抱えるさまざまな課題は、どんどん複雑化、困難化、そして高度化しています。

それに対応するために、われわれは日々頑張っているわけですが、「日々増え続ける仕事に、限られた人数で対応しなきゃいけない」といった形で、なかなか難しい課題に直面しているという状況です。

われわれは当然行政ですから経費がかかるわけですが、財政事情の問題がございますので、人を増やすとなるとハードルが高く、少数精鋭ながら、「それでも高い業績を上げろ」と困難に直面しているところでございます。

もう少し具体的に、ミクロ的に見てみますと、「日々どういった暮らしをしているのか」といった状況を、スライドにまとめてございます。文字ばかりで大変恐縮なんですけれども。

人手不足を残業でカバーする実態

加藤:まず上からですが、やはり人手不足というのは変わりません。そこをどうカバーしているかというと、「超過勤務でカバーしようとしている」と、それが実態です。

霞が関の中で、最近比較的ワークライフバランスを重視する声が高まっておりますが、そうは言っても、やはり終電ぐらいまで、タクシー帰り、あるいはそういった職員が少なからずいるということも事実です。

日々の業務に追われて、どうしても目先のことだけにとらわれており、中長期的な国家政策を、幹部も含めて、検討する余地がなくなってきていると。

それはわれわれのみならず、霞が関の、おそらくほぼ全職員が感じたことでもあると思うんですが、「何とかしたい」と皆さん思っているんですけれども。

特に役所によくありがちなことが、小さなことを少しでも改善しようとすると、とてつもなく大きなハードルにぶつかったり、労力を要するといったことが、非常に多くございます。

「規則を変えなきゃいけない」「これはどう整理するんだ」とか、「この予算に決まっているんだから、これは使っちゃ駄目」だとか、もろもろの制約があるところで、途中で頓挫してしまう。

人事異動のサイクルが1、2年ごとにありますから、「人が代わればまたゼロに戻る」みたいな形で、皆さん「変えたい」と思っているんだけれども、なかなか変えられない。そういう状況に我々は置かれております。

昨今、特にワークライフバランスを求める声が高まっておりますので、働き方改革というのは非常に急務であると。

最近、国家公務員採用も「女性職員を積極的に活用しよう」ということで、3割以上女性を採用すると。実際そういう実績になっております。国家公務員は、やはり働き方を変えていかなきゃいけないという現状です。

ペーパーワークが基本だった

加藤:実は、われわれはどういったことに取り組んだかというと、「オフィス改革」という1つのアプローチに取り組んでいます。

なぜ取り組んだか、というのはまさに今お話した通りで、「右肩上がりに増える仕事に、少ない人数で対応しようとしている」ということは、従来型のワークスタイルを続けていては、いずれ持たなくなるということで。

それを皆さん認識していて、政府戦略でもこういったことは重要だとうたってはいますが、掛け声だけで終わっていることが非常に多くございます。

「実行してみなければ何も始まらないだろう」ということで、総務省行政管理局という、いち組織でありますが、率先的に自らやってみて、その成果を検証して。

そして成功するのであれば、他の霞が関の省庁にも横展開するとか、そういった形ができるんじゃないかと。

とにもかくにも、やってみないと始まらないといったところで取り組んだのが、今回のオフィス改革の背景でございます。

従来の役所のオフィスの問題点について、何点かご説明させていただきたいと思いますが、例に漏れず、役所は、紙文化がずっと残っています。

いち例として、とある職員の机を、本人の承諾を得て撮らせていただきました。やはり紙に埋もれた机になっています。

ありとあらゆる業務をペーパーワークでやるのが当たり前というか、身に染みついていて、それがある意味、慣習のような形で残っております。

ありとあらゆる会議や打ち合わせで発生したものを、なかなか整理する余裕もなく、これだけ何となく積み上げてしまったり、書類は電子化の世界でつくっているにもかかわらず、紙でいろんな仕事をしてしまうのです。

そこに非効率的な部分が発生しているんじゃないか。「本当に必要になった文書がいざとなったときに出てこない」とか、そういったことであたふたしている職員もおりますし。快適な環境とは、言いがたいです。

次にお役所の紙文化ということで、先ほどの話と同じなんですが、打ち合わせや幹部への説明など、だいたいそういうことが大半を占めています。

ほとんど「紙でやる」という文化が根づいているため、若手職員が事前に「資料を10部印刷しなさい」と上司に命令をされて、そのために印刷したり、「やっぱり途中で差し替えて」とか。

せっかく印刷したものを破棄して差し替える。紙ベースでやっているがゆえに非効率的な部分が発生していました。

役所のみならず企業でも、「上に意志決定をしてもらう」という場はあるんですが、何か修正点が発生した場合、その場で紙にメモをして持ち帰り、また電子の作業をするとか、決してそれを非効率だと思っていなかったかもしれないんですけれども、そこはなんとかなる範囲なのではないかなというふうに感じていました。

管理職と部下との遠い距離

加藤:別の観点で、お役所の座席の秩序ということで、実は役所も決まりきった文化がございまして、窓際の人ほど偉い管理職が座っております。課長や室長といわれる管理職は、窓際でどんと構えて座っています。

私は課長補佐という役職ですが、それ以外の課長補佐、その下の係長、係員。それぞれ同じような仕事をする人たちなんですが、縦に並んでいて、簡単な話をしようにも、やりづらい配置になっていたり。

コミュニケーションを重視したオフィスのレイアウトになっていなかったんじゃないか、コミュニケーションが、必ずしも取れていないところがあったんじゃないかと。

管理職の距離が遠いということで、「用事がないと話しかけちゃいけないんじゃないか」と、距離があったということになっています。

次も非常によくある話で、どこの組織でもよくある話と聞いております。慢性的な会議室不足ということで、打ち合わせが多い仕事のスタイルをすると言いながら、スペースが取れていないというところですね。

総務省もお恥ずかしい話を1つご紹介しますと、共用会議室という総務省の部署で、「皆さんが共用で使いましょう」という会議室がいくつかありますが、内部システム上で3カ月先まで予約可能なんですが、現時点で全て予約可能な時間帯が埋まっております。

そして必ずしもその会議室が、100パーセント使われているかというと、直前になって使わなくなったりということが起こっていると。

必ずしも効率的に使われていないという話と、そもそもの話として、オフィス内で打ち合わせをしてしまえばいいはずなのに、そういうスペースがそもそも存在しない。

あるいは自由に使えるスペースもないという。オフィスに、そもそも余裕がないということで、こういった状況が生まれています。

このような課題点、大きな点として4つ挙げさせていただきましたが、それらを「解決してみようじゃないか」ということで、抜本的にオフィス改革ということで、取り組んできました。

実はこの取り組み、このような課題を解決することももちろん重要なんですが、われわれが一番目指したのは、「働き方を改革するんだ。業務を効率的にやり、さらにワークライフバランスも高めよう」ということで。

後ほどご紹介しますが、テレワークにも非常に資する取り組みだと感じておりますので、決して1つのことだけを目的にやったわけではないんですが、いろんなメリットを、ご紹介させていただきたいと思っております。

「フリーアドレス」を採用

加藤:まず1点目、これは先進的な民間企業さんがすでにやられている取り組みですが、「フリーアドレス」といわれる、個人の座席を特定しないという形を、思い切ってやっています。

やってみてわかったんですが、やはり個人の席がないというのが重要だというのもありますが、書類を保管するスペースを極力つくらなかったので、一人ひとりの意識が「紙を使わないように、なるべく仕事を工夫しよう」というふうに意識が働きました。

やる前は不安があったんですが、いざやってみると、「身の回りの文書ってそんなになくていいよね」とか。今までメールが来ると、添付ファイルも含めて、いったんプリンターで打ち出してから見るとか、そういう文化があったんですが、それがなくなりまして、身の回りから、ほぼ紙が消えた状況になっています。

もちろんコピーや印刷のコストが減ったということはあるのですが、そこにかかっていた手間、これが大いに減ったんじゃないか。

あとは文書保管に、身の回りにあった引き出しや、空いたスペースがかなり不要になり、オフィスの省スペース化が図られている状況になっています。

次の観点として、「職員同士のコミュニケーション」という観点がありましたが、われわれは思い切って管理職の席も廃棄して、課長や1年生の職員が同じテーブルに座るという形をとっています。

これは何を目的にしたかというと、日ごろ同じような仕事をしている中で、ふとした疑問点や話したいことがあるときに、その人の席までわざわざ行かなきゃいけない、そういうわずらわしさがあったんですけど。

これをチーム型テーブルと呼んでいますが、大きな机にみんなで腰掛けて、何か話し合いが発生したときはみんなでわいわい話し、議論するような場所として使えるんじゃないかということで、こういったテーブルを導入してみました。

これはもちろん上座、下座の概念にとらわれることなく、試してみたところがございまして。確かに当初は「課長までなった人の席をわざわざ廃止して、こんな席にしていいのか」という議論もあったんですが、試しにやってみようじゃないかっていうことで、こういう座席にしたんです。

やってみたところ、課長とかに聞くと、一番いいのは下がどんな仕事をしているか、入りやすくなったということを、メリットとして考えておりました。

これは、これまで自分のところに挙がってくるまで気づかなかった話や、「もう少し早く言ってくれたら自分で軌道修正したのに」みたいな話が、あえて聞こえるということで、自分が間に入っていけるとか。

あと、このスタイルになったことで、部下からフランクな話として、上司に挙げやすくなったという声も聞かれますので、評判だと感じている職員が多いという声が聞こえています。

ペーパーレス化の取り組み

加藤:次は業務もすべてペーパレスでやろうという取り組みに伴って、打ち合わせも当然のことながら、ペーパレス化しています。

総務省は、一応、庁舎内はすべて無線LAN化を対応していますので、基本的に、個人に貸与されたノートパソコンを庁舎内どこでも持ち歩くことで、常に打ち合わせが可能だというスタイルを取り組んでいます。

打ち合わせテ-ブルには当然のことながら、大きいディスプレイがあると、全員で論点を共有しやすいという話と。

先ほど意思決定が遅れていたという話があったんですが、修正点をみんなで議論しながら、資料をつくり上げることができるので、幹部から指摘があったときも、すぐに直して確認ができるので、業務の効率化が図られています。

役所らしからぬ取り組みとして1つ取り組んだ点で、窓際、外の景色が見えるところなんですけども、カフェのようなスペースをつくっています。

これの1つの目的は、おそらく役所の仕事でいうと、「チームみんなで議論して仕上げよう」みたいな仕事と、「1つのWord文書、発出文書を一人で仕上げたい、集中して文章を書きたい」という作業があると思いますが、個人単位で仕事をしたいとき、ふらっとノートパソコンを持って落ち着ける環境に行って、一人で個人用の集中作業として使う。

実はここ、職員が飲んでいるお茶類のスペースと隣接してございますので、さまざまな人が集う場所となっております。

なかなか日ごろ接しない、他のチームの人ともコミュニケーションが取れるような場所、いろいろな目的として使ってございます。

日頃、役所の業務に関わるような新聞雑誌類を、今までは一人ひとりに回覧する形で回しておりましたが、こういったペーパレスのオフィスに伴い、ここに全ての最新の情報を集約して、皆さん情報収集を積極的にしましょうという、発想を変えたような場所にもなっております。

オフィス改革を進めてきたわけでございますが、いくつか効果も出ていて、お話しさせていただきたいと思います。

膨大な数の書類をなくす

加藤:まず、身の回りの文書がなくなった。これは先ほど写真からご覧いただいたとおりで、テーブルの周りにはもうほぼ文書がないといった状況をつくっています。

本日は芝公園っていうこともたまたまなんですが、比較してわかりやすくするために東京タワーの写真を。実はわれわれの身の回りあったものを積み上げると、東京タワーのこの展望台ぐらいの高さになるとのことでした。

目の前に7階建て、8階建てぐらいのビルが見えるんですけど、それぐらいの高さにもなっているということで、身の回りから文書がなくなっていいんじゃないかという形を実現しております。

当然のことながら、印刷、コピーも減った形になっておりまして、過去の月間の印刷枚数を記録して取ると、半減以下になっていて、コピーの音が聞こえることがなくなったと。

私も、従前のオフィスでは、ずっとコピー機の音っていうのは鳴りっぱなしが当たり前のような環境で過ごしていたんですけれども、全くそういった音が聞こえなくなりました。

逆に、コピー機が動いているほうが、「あれ? 誰か今何を印刷しているんだろう」って気になってしまうほど、だいぶ環境の変化が起きているという状況になっております。

これは先ほどのチーム型テーブルを導入したことによって、非常に好意的な声が聞こえておりまして。始める前は、皆さん半信半疑状態でしたが、始めると、「このテーブルの形は非常にやりやすい」と、好意的な声が多数聞かれているといった状況です。

別の観点なんですけれども、実はこういったペーパレスオフィスを実現すると、書類の保管場所は身の回りにほとんどいらなくなると。

ノートパソコンを置けるスペースさえあればどこでも仕事ができるということで、職員1人あたりの職務スペースを小さくするというメリットがあります。

これによって先ほどお話した、打ち合わせ、会議室不足をある意味解消できるんじゃないかということで、オフィス内に7つの新たなスペースをつくりました。

そもそも机自体が大きいテーブル型ですので、チーム内の打ち合わせであればそもそも自分の机でできちゃうっていう話もあるんですけれども。

外部の業者とお話しするときとか、そういった外部のお客さんが来られるときにすぐ使えるようなスペースを7つほど新たに、床面積は変わってないにもかかわらず、こうやって生み出せたというのは、効果としていえるんじゃないかなと思っています。

ペーパーレス化で職員の意識改革の効果も

加藤:さらに、これがおもしろい結果なんですが、職員一人ひとりが意識改革ということで、意外と環境が変化すると、それに自分の仕事のやり方をうまく合わせてみようと、一人ひとりが意識を変えてもらった部分が、実は副次的な効果としてあったのかなと思っております。

今まで紙を使って仕事をするのが当たり前だと感じておりましたが、意外と環境を思い切って変えてみると、「もう紙は使えないから、どうしたら仕事がうまく回るように変えてみようか」とか、あるいは「今まではこんなことが非効率的だったよね、じゃあもう少しみんな変えていこうよ」みたいな雰囲気が、なぜか醸成されまして。

これによって、この効果だけではないと思っているんですが、残業時間が縮減されていると。3~7月まで、1カ月単位で前年度比と比較をしてみたんですけども、どの月も減っておりまして。月によっては2割3割ぐらい。

50〜60時間ぐらい残業しているという数字は、お恥ずかしい数字なのですが、減っているという効果が現れているといった形になっています。

次は、テレワークの観点ですが、総務省全体としても進めているんですが、問題点はやっぱり紙文書が身の回りにあると、「それも持ち帰らないといけないんですか」と、そういった問題がありました。

ただ、われわれも日頃の仕事のしかたから見直して、紙を使わない環境で仕事をしておりますので、職場の使っているパソコンをそのまま持ち帰って、家でテレワークすることに抵抗がないといいますか。家にいても、職場とほぼ同様の環境が保てるということで、テレワークが進んでいます。

行政情報システム課というところで、テレワークを対象職員は三十数名いるんですけれども、問題なく、各自がテレワークをやっているような、総務省の中でも先進的な部署でして。

まだまだ他の部署ですと、テレワークをやるということを言うと、浮くわけじゃないんですけれども、「珍しいよね」と言われるところがあるんですが。

われわれの部署だと、逆にテレワークをやらない人のほうが珍しい。そういった部署になっております。

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