「日本の大企業は全然怖くない」DeNA南場氏と元LINE森川氏がスタートアップの強みを語る

「結果を出す人」の思考法~「すごい人」は、なぜ「すごい」のか?~ #4/6

2015年6月4日、都内でC Channel・森川亮氏(元LINE)とDeNA創業者・南場智子氏の対談イベントが行われました。イベントでは両者の著書から名言を紹介。森川氏の著書『シンプルに考える』からは「フォワードにトップスピードで走らせる。それに組織を合わせるのが、強い会社をつくる最高の方法だ」。南場氏の著書『不格好経営』からは「命をとられるわけじゃない。たかがビジネス。おおらかにやってやれ」という部分をピックアップ。経営者としてのビジネスの取り組み方について語り合いました。

音楽の仕事がやりたかったのに、システム開発の担当になった

司会『シンプルに考える』の中で森川さんに書いていただいているのが、大学出られて日本テレビに入られて、その当時は「これで仕事真面目にやって、結婚して、それなりに出世してという道が自分の前に開けたような気がした」みたいな話をされているところからするとですね、今だいぶ違うところに来られていると思うんですが、変わったきっかけっていうのは何だったんですか?

森川亮氏(以下、森川):やっぱり、思い通りにならなかったからでしょうね。学生時代までは多少試験に落ちるとかそういうことはあったとしても、嫌なことはやらなくても生きてこられるじゃないですか、基本。ただ、社会人になると嫌なことでも基本プロだからやらなきゃいけないっていう状況になりますよね。

僕の場合、本当は音楽の仕事やりかったのに、コンピュータシステムの担当になって、かつ財務システムの開発の担当になったんですよね。それで自分の思う世界と真逆の方向に行ったので。

でも、それがあったからこそ、人生って何なのか、仕事って何か考えるきっかけになったのでよかったですよ。そのまま単にやりたい仕事やってたら、あまり深く考えずにそのまま時間が経ってたと思うんで。だから、すごくいい経験になりましたね。

司会:そういう意味では、思い通りにいく人生なんてないと思うんですけども、そういうものには早めに出会ったほうが良いんですかね?

森川:人生が思い通りにいかないというのは、早く経験したほうがいいですよね。すべて思い通りにいかないとキツイと思うんですけど(笑)。

ただ、ちょうど弊社がゲームのとき、モバイル(ガラケー)でうまくいかなくて、DeNAが伸びたじゃないですか。あれがあったので、スマートフォンに来たときに逆に吹っ切れたので。

検索もGoogleさんに全然追いつかなかった。でもだからこそLINEができたんで。必ず、うまくいくときもあれば、うまくいかないときもあるんですけど、そのうまくいかないことが次のうまくいくにつながるような、そういう考え方や生き方ができればいいんじゃないかなと思うんですよね。

「マッキンゼーを辞めて起業する」と言ったら、誰も賛成しなかった

司会:南場さんにお伺いしたいのが、マッキンゼーでガンガンやられててですね、まさに不確実な起業というものに飛び込んでいかれたっていうのは、本にも書かれているんですけど、改めてどういう心境の変化があったんでしょうか。

南場智子氏(以下、南場):あんまりロジカルな決定じゃなくて、もうやりたくなっちゃって、頭の中それでいっぱいになっちゃって、熱病にかかったって感じですね。今そんな感じ?

森川:そうですね。もうちょっと落ち着いてますけど(笑)。

(会場笑)

南場:マッキンゼーはすごく好きだったんですよ。好きなようにさせてもらっていたし。だから「マッキンゼー辞めまーす」って言ったときに、全員が反対。

親戚に至っては「智子ちゃんは小学校のときはいい子だったのに」とか言われて、すごくドロップアウト感で言われたりして、誰も賛成しなかったんですね。当時いただいていた給料も半減どころじゃなかったですから。

あと起業のステータスって全然今より低かった。あと、起業ってお金がかかったんですね、今より全然。サーバーとか高くて。

だから、成功確率がかなり今より低かったと思うし、それで失敗したら2度目のチャンスはないと言われました、日本では。だから、賢い人は取らない選択肢だったんですよね。

しかし、論理的になるほど冷めてなかったというか、熱病にかかっていたので邁進してしまったということだと思います。

悪いことを最大のいいことにつなげる

森川:あのシステムの外注のくだりは、さらっとは書いてあるけど、大変だったんだろうなと。

南場:そうですね、終わりですよね、普通は。ないよね、あんなことは(笑)。

森川:すごいですよね、あれを乗り越えたっていうのは。

南場:でも、今は何を聞いても、何があっても驚かないというのは、そういう経験があったからだと思うんですよね。

森川:でもそういう失敗というか、経験が次に活きますよね、絶対に。

南場:そうそう。逆に臆病というか、その点に関しては相当用心深くなっちゃったりして。そういう怖かった経験あります?

森川:前の事業で言うと、入って1週間でデータベースが壊れてしまって、全部データが消えたみたいな話があって、1週間止まったんですよ、サービスが。あのときはおしまいだなと思いましたね。何とかバックアップから復旧できたんで良かったんですけど。

南場:あ、うちも1回あったなぁ。あれ、本当に肝を冷やしますよね。データをパージしちゃったり。

森川:ああなると、最終的にはインフラも大事にしなきゃってなりますよね。

司会:入社して1週間ですよね?

森川:(入社からは)1ヵ月くらいですかね。責任者にならないかって言われた翌週くらいですかね。

司会:それは、後悔はしなかったですか? 入って間もなくですよね。

森川:でも、それが良かったんですよね。逆にそれがあったお陰で人間関係が、信頼が高まったので。すべて悪いことが裏返しでいいことにつながる、というか、つなげないと終わっちゃうので。いかに悪いことがあったときに、それを最大のいいことにつなげるかっていうようなことは常に考えていますね。

ヒット商品を出すか出さないのかで経営環境が変わる

司会:ありがとうございます。そのテーマを引きずりつつ『不格好経営』で「命をとられるわけじゃない。たかがビジネス。おおらかにやってやれ」という言葉について……。

南場:そうですね、私は熱くなりやすいので(笑)。ちょっと広い視野が必要な時とか、ちょっとおおらかに構えたほうが物が見えて、対処の方法が良くなることがあるので、絶体絶命のときこそ、これを自分に言い聞かせて「落ち着け落ち着け、命をとられるわけじゃないんだから」と言ってやるようにしていますね。

森川:確かに、野球に例えると、ちゃんとバットを振り切らないと、ちゃんと当たらないですよね。

南場:そうそう、ちゃんと振り切る、ある程度の脱力が必要ですね。

森川:そうですよね、ゴルフもそうですもんね。

南場:そう思います。

司会:はい、ありがとうございます。もう少しご対談進めていただいて、その後会場の皆さんからの質疑応答をお願いしたいと思っておりますので、質問をいろいろ考えていただきたいと思います。続きまして、経営のお話もお伺いしたいと思っておりまして。

意識も高くて、やる気もあるすごい社員をですね、活かす経営についていろいろお話を伺えればと思っております。一つ目は『シンプルに考える』から。

「現場はひたすらユーザーのために全力を尽くす。経営は、現場がとことん集中できる環境を守る」ということなんですが、森川さんいかがでしょうか。

森川:そうですね。いろんな企業経営者と会うといろんな課題があるんですけど、でも結局突き詰めると「ヒット商品を出すのか出さないのかで経営環境が変わる」っていうのが僕なりの考えで。

そうするとヒット商品を出すにはどうしたらいいかっていうと、社員は社長のためとか、そういう細かいことではなくて、やっぱりお客様のために全力を尽くすことに集中しないと、ただでさえビジネスっていうのは厳しいので、それやらないとなかなかヒット商品ていうのは出ないんですよね。

なので逆にそれをやってもらうために、それ以外を自分がやるみたいな、そんな気持ちでやってましたね。

南場:社長だけじゃなくて、課長さんとかマネージャーもそうなんですけど。

森川:そうですね。

怒られてもチャレンジしようと思うのが重要

南場:やっぱりマネージャーの仕事って、仕事しやすい環境をつくるってことが一番大事だと思うんですよね。だから、社長じゃなくてもマネージャーは、判断をするとか、決める人っていうだけじゃなくて、仕事しやすい環境をつくる、発想が委縮しないような、ユーザーに集中して向けるような環境をつくることが一番大切だと思います。

森川:そうですね。中間マネージャーがお客様よりも、自分の出世ばかり考えちゃったりすると、うまくいかなかったりしますよね。

南場:そうですね。それってよく見えるじゃないですか、周りから。注意してあげればいいと思うんです。あと、私がすごく反省するのが、真剣になり過ぎて、チームが委縮することがあるんですよね。

怒ったり爆発することが年に1回くらいあって。言っていることはそんなに間違っていないと思うんですけども、その後チームが委縮して。

委縮してるってことは、発想にブレーキがかかったりとか、余計なことを気にするようになって、そこはすごく反省するというか、委縮しないチームをつくらないといけないなと毎年言い聞かせています。

森川:情熱の表れだし、それが緊張感につながるいい場合もあるけど、多少小心者みたいな人がいると、厳し過ぎちゃう。バランスですね。

南場:そうそう。「こんなこと言ったらまた怒られちゃうかな」みたいに思われるのが、一番良くないですよね。

森川:でも、怒られてもチャレンジしようと思うのが重要ですよね。

南場:それがプロの仕事だと思うんですけど、自分に原因がある場合は言えないのよね、あんまり(苦笑)。守安さんに「チームが委縮するから、そんな言い方やめたほうがいい」って、すごい言われます。森川さんは怖くないんだ、全然。

森川:殺されるわけじゃないですからね。

森川、南場:(笑)

南場:森川さん自身が怖いってマネージメントになったことないわけだ。

森川:怖いんじゃないですかね、きっと。

南場:やっぱり怖いよねー。

森川:こういう顔ですけどね。

南場:顔ってどこまで引っ張るの(笑)。

森川:ゆるキャラって言われてたんですけど(笑)。

南場:私も昔、似た髪型してたことがあって、眼鏡も似てたことがあったのよ。もう1個のそっくりな眼鏡があって。結構、他人と思えないと言われてたことがあったのよ、森川さんと。

森川:ありがとうございます(笑)。

南場:すみません、くだらない話で…。

司会:ちなみに、念のためという感じの質問なんですが、現場が仕事にとことん集中できる、働きやすい環境を守るということなんですが、これは社員が心地よく働く環境という意味ではない…?

森川:心地良いほうが成果を出せるなら、心地良くしますよね。結果を出しやすい環境とは何かを考えるということだと思うんですよね。心地良くてのんびりして仕事ができないと、それはまずいので。かといって、あんまりバタバタして仕事ができないのもまずいですから。

職種によって実は心地良い環境って違いますよね。営業であれば駅の近くが心地良いし、開発であれば静かなところが心地良いし、そういうのも考えてどう設計するか、かなと思うんですけどね。

トップダウンで世界最高のスピードで走る

司会:ありがとうございます。次に参ります。これも『シンプルに考える』から。「フォワードにトップスピードで走らせる。それに組織を合わせるのが、強い会社をつくる最高の方法だ」。

結構日本の企業だとボトムアップということが言われると思うんですけど、それとは真逆の考え方なのでしょうか。

森川:なんて言ったらいいんでしょうね。多分、世界で勝つためには、世界最高のスピードで走っていないとなかなか勝てないと思うんですよね。ただ、日本は優しい人が多いので、どうしてもダメな人がいると、あいつを何とかしようと思いがちなところがあると思うんですよ。

もちろんそれも大事なんですけど、ダメな人に力を注ぐよりは、すごい人に力を注いだほうが結果も出るし、結局会社も成長すると思うんで。やっぱりまずすごい人をエンターメントして、結果的にそうじゃない人もそれについていって成長するような、そんなやり方が重要なんじゃないかと思いますね。いかがでしょうか。

南場:そうですね。結構日本の会社が、特に大企業のスピードが実際に恐ろしく遅いと思うんですね。例えば、わが社がある事業をやりましょうって言ったときに、巨大日本企業が同じことを新規事業でやろうとしてますって聞いたとしても、怖くないよね。怖くなくないですか? 多分、絶対に負けないっていうふうに。

森川:スピードが全然違いますからね。

南場:そうそう、そこなんですよね。LINEさんもそうだし、DeNAもそうなんですけど、ある程度の規模になってきたので、逆にそうスタートアップに思われていないかっていうところが大事で。

森川:なるほど。

南場:だから結局、トップスピードに合わせていくっていうことはすごく重要だと思いますね。

森川:そうですね。大企業は横並びで、みんな一斉に走ろうとしますからね。

南場:それって、社内の和を重視する、要するにユーザー不在の考え方ですよね。そういう会社は競争相手じゃないんだろうと思うんですよね。

森川:本当に世界で戦うためには、早いスピードで動かないと、ほかがどんどん抜いていっちゃいますからね。やっぱりそういうものが大事かなと思いますね。

司会:ありがとうございます。

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