北米とヨーロッパでのLINEの状況

記者:北アメリカとヨーロッパでの展開について教えてください。

出澤剛氏(以下、出澤剛):先ほどご紹介したローカライズっていうのが、各国徹底してやっていて、それはアメリカにおいてもヨーロッパにおいても同じです。

ただ、非常に難しい挑戦をしてるという認識をしていて、いろいろなことを試して、トライアンドエラーをしているというのが現状です。

その中で特にアメリカについて言いますと、ひとつは若い方に使っていただくという意味で、いろいろなセレブリティとのコラボレーション、スタンプであったりイベントであったり、そういったことをしています。

あとはスタンプもそうなんですけど、特に絵文字というところは人気の部分ですので、LINE独特の新しい絵文字を提供したり、そういったスタンプだったり絵文字という切り口での新しい挑戦もしています。

その他いろいろなチャレンジをして、そのやった反応を見ながらトライアンドエラーをして、反応が良かったものに追加投資をしていくということで、非常にがんばって挑戦しているというのが現状です。

海外展開での具体的な施策について

記者:ヨーロッパで先行しているWhatsAppなどのサービスと競合していく難しさはどこにあるでしょうか?

出澤:ドライブの難しさで言いますと、やはりWhatsAppであったり、他のサービスに関して、先行するサービスが非常に多いということが挙げられると思います。

その中で、一番ベストな入るタイミングとしては、スマートフォンシェアが低い状態から急速に伸びるタイミングでマーケットに入ることが一番重要なことなんですけれども、世界を見渡すとそういった状況が少なくなりつつあるというのが現実的な認識です。

そういった中で、繰り返しにはなるんですが、今ユーザーの動きが見えている国についてはローカライズの施策をそれぞれの国で打っていくということをやっています。

具体的な内容は先ほど言ったとおり、企業とのコラボレーションであったり、スタンプや絵文字の提供といったこともやりつつ、まずは初速を上げていくということをやっています。

ただ、それぞれの国で状況が全く異なりますので、具体的にこれだという1つの方向があるわけではなくて、いろんなことをチャレンジしているという状況です。

絵文字やスタンプはどれだけ使われているか?

記者:絵文字などの「カワイイ」文化は興味深いです。沢山の人が絵文字を使ったメッセージを送っていると思いますが、メッセージの中で絵文字やスタンプが使われる割合などはわかりますか?

出澤:先ほど1日に170億回のメッセージというお話をしましたけど、そのうちステッカーをつかってのコミュニケーションがだいたい18億回くらいありますんで、分量としてはそのくらいの割合です。

あと先ほどもお話しましたが、ある調査ですと人間の対面コミュニケーションはジェスチャーだったり言葉を使わないものが8〜9割という話もありますし、そういった意味ではインターネットのなかで、もっとエモーショナルなやり方があってもいいのではないかというのが我々の考え方です。

ある日本の調査によると、LINEを使って40%のカップルが仲良くなったという調査を聞きます。

(会場笑)

記者:さっそく奥さんに送ってみようかと思います。

最近の投資先について

記者:IPOについては回答していただけないということでしたか、今後どのような分野に投資していこうとお考えでしょうか?

出澤:投資に関していうと、最近の大きなものですと、ロンドンベースのMixRadio(ミックスラジオ)という会社が一緒のグループになりました。それは世界戦略という意味と、コンテンツのサービスの拡充という両方の意味を込めています。

あとは我々のなかでLINEのゲームファンドとライフファンドというファンドを2つ作っています。そこでは、ゲームファンドはゲームに、ライフファンドはOtoOだったりとか、そういった領域への投資をしています。

テクノロジー的なことに関しては、いくつか新しいサービスを今後予定していますが、現状で確定してお伝えできることがございませんが、日々新しいサービス、企画のローンチへの準備もしておりますし、LINEの本体の改善も見えないところ日々やっているという現状です。

司会:一般的な話として、資本の調達というのは大切なことだと思います。親会社からの投資やファンドの活用など、さまざまあると思いますが、いかがでしょうか。

出澤:そこに関しては以前からお伝えしているとおりで、いろんな企業の成長にとって資本の調達というのは非常に重要な要素なので、IPOも含めた選択肢というのは常に検討したり議論したりというのは、以前から変わりありません。具体的には何か決まっていることはないというのが現状です。

LINEタクシーの現状

記者:2つ質問があります。1つ目はタクシーサービスについてで、競合するUberなどと比較した数字はあるでしょうか。もう1つはペイメントについてで、ヨーロッパでも近いうちに展開する予定はあるでしょうか?

出澤:タクシーに関してですけれども、データ的なところで言いますと、まだ開示はしてないんですが、まず東京限定で始まっていて、今時点でいうと日本のおそらく60%くらいのエリアで使えるようになっているというふうに思います。

あとは定量的な情報ではないんですけれども、特に日本の若者の中でタクシーに乗る習慣が非常に少なくなりつつある中で、LINEタクシーをはじめてから若いお客さんが増えているという話は聞いています。

もうひとつLINEユーザーは非常にリピート率が高い、普通に使うお客様より次に使う確率が高いというデータが出ています。

Uberに関して言うと、まだ日本でそこまでエリアを広げて展開できていないという現状だと思います。

我々にとってサービスのカバレッジ、LINEのユーザーのみなさまに使っていただくということが非常に大事だと思っておりますので、我々は日本交通という日本の最大手のタクシー会社と手を組んで展開しているというところです。

もうひとつペイメントのご質問になりますけれども、今ですね、世界すべての国のLINEユーザーさんが、LINEにクレジットカードを登録するっていうことはできるようになっています。

ただ、まだ実際の決済に使えるっていうところで言うと、日本国内が拡充されているというだけの状態ですので、そういう意味では全面的な展開という状況ではないです。

記者:タクシー会社とLINEではどのようにレベニューシェアをしているのでしょうか?

出澤:ユーザーに払っていただいて、その手数料を我々が決済手数料としていただくというかたちですね。

記者:LINEタクシーを使うときに、ユーザーは追加でお金がかかりますか?

出澤:ありません。

LINEのセキュリティはどうなっているか

記者:1つ目はセキュリティに関する質問です。LINEは私のスマートフォンの中に入って、どんなデータを持っていくでしょうか。2つ目は、FacebookやGoogleに買収される可能性はあると思いますか?

出澤:まずセキュリティの問題で言いますと、我々がユーザー様からお預かりする情報っていうのは、基本的には電話番号と電話帳に登録されている情報で、基本的には我々が見えないかたちでお預かりしているという現状です。

当然ながら今おっしゃっていた友人間の通信ということに関しても、完全に暗号化されてますし、我々も見ることができないというポリシーです。

さらに進めて、ユーザーがメッセージを発信した時点で暗号化して、相手に届いた時にそれを解読するというEnd to Endでの通信の仕組みを、すでにヨーロッパ等では始めています。

あとは、他の会社からのことについては特にコメントする立場にはないので(笑)。

記者:EU以外、アジアや日本については暗号化の仕組みは進みますか?

出澤:今手元に正確なものがないのですが、多くの国でもそれが選択できるようにしています。で、それを順次拡大しているという状況です。

記者:日本ではまだでしょうか?

出澤:今は日本では提供していないですね。いろいろ状況を見ながらやっていきます。

記者:もし政府がLINEの通信情報を開示するように言ってきた場合どうするでしょうか? さまざまな国でさまざまなサービスを展開していますが、その場合はどうなるのでしょう?

出澤:基本的にはLINEのコアな通信の準拠法は日本になっておりますので、日本の法律に従って、条件が合致するときに対応するという方針でやっています。あとは国によって状況が変わるところもありますが、基本的にはさっき言ったポリシーにもとづいてやっていきます。

法律に則った手続きの場合は開示することがあります。基本的にはそれがすべてなので、なにかイレギュラーな手続きを外れたかたちで開示するということはありえません。

10年後の状況はまったく想像できない

記者:LINEの10年後をどのように想像していますか?

出澤:我々の会社は1年計画も立てない会社でして(笑)、もう10年後と言われるとまったく想像がつきません。

非常に、特にスマートフォンの領域、特にスマートフォンアプリの領域は動きが速いですし、その中で我々はシェアを取ることができましたし、それはまた逆も真なりですし、またデバイスも変わっていくでしょうし、そういう中でいうと、我々は固定の長期の目標とかあるべき姿というのを決めずに、まず現状起こっていることを正としてビジネスをしていこうというかたちでやっています。

記者:それでも、10年後のことを想像してみてください。

出澤:いま我々がやっている見立てが正しいとすると、スマートフォンのインターネットはより、今までのPCインターネットに比べて生活にもっともっと入っていて、世の中のあらゆるトランザクションに関与してくるんだと思います。

これからIoTみたいな話の中で、いろんなデバイスがあって、あらゆるものがインターネットにつながっていくなかで、我々が持っているスマートフォンメッセンジャーというのは、その入口、あるいはコントロールするリモコンとして非常に重要なんじゃないかと思っています。

今ここで説明させていただいた方針がうまくいくと、非常に多くの国でLINEを使っていただいていて、今のメッセージングだけではなくて、いろいろな場面で使っていただいているというのが、2、3年後の未来として来るんじゃないでしょうか。

10年後はまったくゼロになっているかもしれませんし、いろんなことが起こり得ると思います。

LILEはメールをリプレイスするか?

記者:LINEは日本と韓国のすばらしい繋がりのように思います。LINEやNAVERの人々は、お互いにフィードバックや協力関係にあるのでしょうか。

出澤:ご存知のように、我々はNAVERの100%子会社ですので、そういう意味でいうと、LINE自身がNAVERの国際展開の中のひとつだということだと思います。

その中でNAVER自体もいろいろなサービスをグローバルに展開していますし、そういう意味でいろいろな協力関係にありますし、ときにはあるエリアにおいては競合する関係になることもありますし、そこは是々非々でやっているというところです。

記者:LINEはEメール、ウェブブラウザなどをリプレイスするのでしょうか。

出澤:少なくともEメールの大きなリプレイスというのは、あると思っています。例えば日本では直近のある大学の新入生に対する調査で、もうメールを使わない学生が半分くらいいるという調査結果が出ていました。それは多くの世界で起きている現象ではないかと思います。

ただEメールだけではなくて、電話だったり、あらゆるコミュニケーションに関してLINEは何か新しい付加価値を提供できると思っています。

ブラウザはブラウザであり続けると思いますが、ただ事実としていまのインターネットのアクセスに関してパソコンの時代はブラウザがほとんどだったんですけど、いますでにアプリでの滞在時間が60〜70%を超えているという調査が出ていますので、そういう意味ではすでにLINEというか、スマートフォンのアプリケーション自体が重要になってきています。それはすでに起こっていることだと思います。

デジタルいじめに関する取り組み

記者:子どもの間で起きているデジタルいじめについてどう考えていますか。またLINE側でこれに対応するために効果的な新機能などは出されたのでしょうか。

出澤:まずいじめとか未成年の使用という問題について言うと、我々は事業者として真摯に向き合わなければいけない問題だと考えています。日本でこれだけのユーザーに使われていることへの我々の責任はあると思っていますので、学校や教育関係者に対して、一緒に勉強して、啓蒙していくことが非常に大事だと思っています。

そのために去年1年間でだいたい300くらいの学校だったり、PTAだったりを回らせてもらって、ワークショップ形式で一緒にやったり、あるいは講演をさせていただりしています。また静岡大学の教育学部の教授と共同して、LINEの啓蒙の教科書、カリキュラムを作成して、ネット上で公開しています。

今年に関してはすでに前年の回数を超えていて、おそらく1000以上の学校・PTAでこういった取り組みをする予定です。

機能的な部分で何か効果があったかという質問ですが、LINEのグループの中で誰かを退出させるのが、以前は誰が退出させたからわからない仕様でしたが、いろいろな声を受けて、誰が退出させたかわかるような仕組みに変更したという実績があります。

LINEメッセージの開示について

記者:2点ほどお願いします。さきほどLINEメッセージの開示についてお話出てましたけど、「しかるべき手続きがないと開示しない」というお答えでした。逆の伺い方をさせていただきたいと思います。これまでにしかるべき、例えば捜査機関からの問い合わせ、照会などがあって開示をしたケースはあったのでしょうか。あったとすれば過去何件くらいあったのでしょうか。開示可能な範囲で教えてください。

2点目ですけど、業績開示のあり方について、いまウェブで公表されている業績開示の仕方を拝見すると、売上高が開示されています。一般的な上場企業ですと、利益も開示されると思います。現段階このような開示をされている意図、また今後変更される予定はあるのか。この点について教えていただければと思います。

1つ目の開示に関しては、数字はお伝えしませんが、実績としては法律に則って対処していますので、過去実績は当然ながらあります。あと売上に関しては「通常の上場会社であったら」とおっしゃってましたが、(LINEは)上場会社ではないので我々の基準で開示をしているという状況です。

記者:ヨーロッパでもっとも重要な国はどこですか? また自然な成長と、マーケティングによる成長、どちらを重要視していますか。

出澤:ヨーロッパですとスペインが一番ユーザー数が多いので、そういう意味ではスペインが一番重要だと思います。自然発生的か、がんばって盛り上げていくかですが、自然発生的に伸びていくなかで強力なマーケティングをするのが一番の理想です。基本的な考え方としてサービスとしてきっちり伸びていない状況でマーケティングだけ打ってても、実際の貢献はマーケティングが終わってしまえば終了するものなので、基本的にはユーザーの自然な盛り上がりが非常に重要だと思います。

LINEのMAUはどのようにカウントしているか?

記者:マンスリーアクティブユーザーの捉え方の質問なんですが、現在月間2億人という発表がございました。

ところでこれは、LINEのメッセージ機能を使った場合のユーザー数の数え方だけでしょうか。それとも、ツムツム(LINE:ディズニー ツムツム)ですとか、御社から出してるゲームアプリ、あれは利用すると強制的にLINEにログインしてしたようになるんですが、たとえばツムツムだけを遊んだだけの方もLINEのアクティブユーザーに数えられるんでしょうか。

また、LINEアンチウイルスですとか、いろんなアプリを出しておられますけれど、ああいったユーザー数も含まれるんでしょうか。

あと更に加えて言いますと、メッセンジャーとツムツムと、両方使ったような場合に1としてカウントされるんでしょうか。2としてカウントされるんでしょうか。よろしくおねがいします。

出澤:細かい計算はあるんですけど、基本的に言うと、LINEとプラットフォーム上で展開しているサービスを足して、さらにそれを重複を排除して、ユニークなものにしたのがMAUです。

ツムツムもMAUに入っておりますが、重複はカットしていると。

ちょっとその内訳までは申し上げられないんですが、ほとんど多くのユーザーがLINEユーザーであるということなので、そこに大きな違いはありませんけども、今開示している数字を厳密に言うと、LINE上で展開しているほかのアプリケーションも含んで、かつ重複を排除した形のMAUとなります。

記者:ビットコインのような仮想コインについてはどのようにお考えでしょうか。

出澤:ビットコインをはじめとする最近の流れに関しては、ひじょうに新しい動きですし、非常におもしろい試みだというふうに関心を持って見ている状況ではありますけども、また現状の段階でLINEがなにかするとか、そういった具体的なアイデアは持っておりません。

現状のLINEのペイメントであったり決済に関しては、基本的に今はクレジットカードの連携であったりとか、実際の銀行口座の連携であるということなので、そういったところをLINEは強化しているというところです。