2024.10.10
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ソニックガーデンの代表・倉貫義人氏と仲山考材の仲山進也氏が、毎月さまざまなゲストを迎えて「雑な相談」をするポッドキャスト『ザッソウラジオ』。今回は創業100年を迎える木村石鹸の社長・木村祥一郎がゲスト出演。「自律型組織の経営」をテーマに、組織図作りの難しさや、組織図があることによる「思考の支配」などが語られました。
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倉貫義人氏(以下、倉貫):がくちょ的には木村石鹸さんというか、木村さんのここがおもしろいみたいなのはあったんですか?
仲山進也氏(以下、仲山):僕はまだそんなに木村さんのことを詳しく知っているわけじゃないんですけど、例えばTwitterとかでちょっと前に、「組織図とか作るの苦手だなぁ」みたいなことを書かれてましたよね。
木村祥一郎氏(以下、木村):はい、そうなんですよ。
仲山:そこは倉貫さんとかも「組織図どうしようかな」って(笑)。
倉貫:いや、毎回作るたびに途中で挫折してますよ(笑)。
仲山:そうそう。なので、今日は2人で「組織図ってどう考えてる?」みたいな話とかもおもしろそうだなと思っていたんですよね。きっと、「普通のよくあるかたちのピラミッド的な感じには作りたくないしな」みたいなことですよね。
木村:そうなんですよね。ちなみに倉貫さんの会社は、組織図ってあるんですか?
倉貫:ないんですよ。
仲山:前にMiroで作ってなかったでしたっけ。
倉貫:Miroで作ろうと思って、「組織」という箱を作ろうと思ったんですけど、兼務している人がいっぱいいるんですよ。そうすると、「箱を作ってもうまくいかないな」みたいな。「じゃあちょっと人の顔を並べるか」って並べ出して、「この人とこの人はつながっているよね」とかって、なんかネットワーク図みたいになって。
木村:ネットワーク図(笑)。
倉貫:だからぜんぜん組織にできなかったんですよね。最近また人も増えたので、ようやくできるかなと思ったけど、なんかちょっと動きの違うイレギュラーなやつが出てきて、「これ、図にできないな」みたいな(笑)。になりますね。
木村:ちなみに、「組織図を作ったほうがいいな」って思われたんですかね?
倉貫:人が増えたので、見やすくするために把握しようと思って、「組織図みたいなのができないかな」と考えたんだけど、うまくいかなかったですね。
木村:うちも5年ぐらい前に組織図をなくしたんです。なくしたというか、もともとはそれっぽいものがあったんですけど、更新して社内に発表するみたいなことをやめてしまったんですよね。なので、人によって書いている名前(部門名)がぜんぜん違うっていう(笑)。
倉貫:(笑)。
木村:おんなじ部門……。「部門」という概念もあんまりないので、昔からあった名前(部門名)を書いている人もいれば、好き勝手に書いている人もいて、ちょっとカオスな感じになっていて。さすがにあまりにもわかりにくく、対外的にもわかりにくすぎるし、あと新卒とかが入ってきて「よくわからん」と言われるので(笑)。
倉貫:そうですね。
木村:一応整理して、「なんかそれっぽいものを作ったほうがいいかな」と思ったりしているんですけど、やはり表現できないんですよね。兼務も多いし、「この部門はこれをやっている」みたいな整理もつけれないし。
逆に組織図を書こうとすると、「あまり曖昧なやつを作りたくないな」と思って、完璧に整理をつけたくなっちゃうじゃないですか。ちゃんとしたやつを作ろうとすればするほど、現実とぜんぜん違うっていう。それでもう諦めようと思って、社内から「気持ち悪い」とかいろいろ言われるんですけど、「気持ち悪いのに耐えろ」と言って(笑)。
倉貫:そうなんですよね。作っても変わっちゃうんですよね。僕らの会社もいっとき作っても、スナップショットでしかなくて。その時の、2023年9月の組織図はこうですけど。
木村:そうですよね。
倉貫:「この組織図でいくぞ」みたいな感じではなくて、やっていくうちに「いや、なんかちょっと違う」と、勝手に現場でうまいこと最適化されてって。「あれ、あそこの組織ってどうしたの?」って言うと、「今動いてないです」とかって。「あ、じゃあもうやめよう」みたいな感じになったりするので、「これでいこう」って決めるというよりは、その時のスナップショットとして図を作るくらいはするというのと。
あと、僕らも似ているなと思ったのは、「気持ち悪い」とか「難しい」って、わかっていない状態じゃないですか。「わかっていないとか決まっていなくていいよね」ってするというか、「それを受け入れていこう」というスタンスに今はなっていますね。
だからスパッと制度を決めたりすると、判断しなくてよくなるから効率は良くなる。例えば「経費はいくらまで」とか「有休にする時はこういうルールで」とかってルールを決めると、考えなくなるんだけど。
決めすぎず、ふんわりしておくと、境界を決めないといけなくなるので、効率は悪いんだけどみんな考えるっていう。考えるのはしんどいけど、「しんどいけど考えたほうが良くない?」って言い続けるみたいな感じでやっていますね(笑)。
木村:気持ち悪いかもしれないけど、その気持ち悪さも受け入れたほうが、実は社員にとっても自由度が高いし。
倉貫:そうなんですよね。
木村:「メリットはけっこういっぱいあるよ」と言っていて。すっきりしてわかりやすくなることで気持ち良くはなるけど、それによっての不自由さとかデメリットも実際にはあるから、どっちがどっちというわけじゃないんですけど。ただ、今の木村石鹸のサイズとか社員との関係、信頼性とかで言ったら、「曖昧にしておいても大丈夫でしょ」ということで、一応誤魔化して。
倉貫:そうですね。
木村:例えばこれが100人とか300人とかになっても成り立つのかどうかはちょっと正直わからないんですけど、今だったら大丈夫かなと思ってやっています。
倉貫:いや、完全にアグリーですね。僕らもよく言われるんですけどね、「倉貫さん、その感じで今の倍になったらどうするんですか?」って。「いや、倍になったら倍になったで考えるんじゃない?」って(笑)。
木村:そうですよね。僕もそう思うんですよね。
倉貫:「今の人数だからいけるんでしょ」って言われて、「そのままでいけるんですか?」って。「そのままでいくつもりはないよ」と思っているし、「その時に考えましょうよ」と言ったほうが良いという感じはしていますね。
木村:「その都度、最適なかたちで考えればいいんじゃないの」とは思っているんですけど。中には、「人数的に組織が小さい時にきちんと作っておかないと、大きくなった時にインストールするのはすごく大変だよ」とかってよく言われたりとかするんですけど。
倉貫:おっしゃっているのは、どこかのタイミングで組織、事業が大きくなってきたら、たぶんOSを置き換えないといけないということだと思うんですね。
木村:OS自体を変えるみたいな。
倉貫:そう、「OSを変えないとうまくいかないよ」という成功体験のもとにおっしゃっているんだとしたら、「いや、僕らはこのOSでバージョンアップしていくつもりなんですよね」という。要はOSを入れ替えせずに、MacだからMacでバージョンアップしていくという。途中でWindowsに変えないからって。
木村:なるほど、バージョンアップで(笑)。
倉貫:このOSのままでいけるかというと無理なので、事業の成長とか組織の成長に合わせてOS自体はバージョンアップしていくけど、「OSの再インストールとか載せ替えはしないので大丈夫です」という感じです。
木村:「OS自体の種類はもう変えないぞ」と。
倉貫:そうそう、OSの種類は変えない。でもバージョンアップをしないかっていうと、「いや、Macだってバージョンアップするでしょ」みたいな感じがあるので。
木村:なるほどなるほど。
倉貫:メタファーとしては、僕はそっちのイメージかな、みたいな。マイナーバージョンアップでやり方は変えていくけど、「流派はそろえたままアップデートするので、根本の考え方を変えない限りはあとで困らないんじゃないかな」みたいに思ってやっていますけど。わかんないですけどね(笑)。
木村:人数が増えてきたタイミングで、「ちょっとわかりにくい」とか、そういう不満が出てくるようになったけど、もともとは、組織図があるようでないような状態だったんですよね。人数も少ないし、営業と開発と製造みたいにわかりやすく分かれているので、特にそんな組織図とかは考えずに、一応動けていた。
それに僕が入って、新しい取り組みをやるチームを作ったりとかして、「組織図みたいなものが必要かな」と思ってやり始めたんですけど、うまく表現できなくて「もういいや」と思って取っ払った。
取っ払ったら取っ払ったで「気持ち悪い」と言う人がいて、どうしようかなというのを今悩んでいたところで。『ザッソウラジオ』でも「ソース原理」の話とかもありましたけど。組織って、一瞬だけ切り取ってもあまり意味がないなとすごく思っていて。
倉貫:そうですね。
木村:常に変わっていっているじゃないですか。
倉貫:そうそう、そうそう。
仲山:作った瞬間にもう劣化していきますよね。
倉貫:そうなんですね。
木村:だからスナップショットを取るってね。
倉貫:組織化するという状態を続けていくのが組織ですよね。組織を作って終わりではなくて、組織作りはずっと続いているという感じがあるので。「いや、だとしたら組織図で決められないじゃん」みたいな話と。
評価も、自己申告型の評価だったら、「過去をベースにしないで、未来の期待でやりましょう」という話だと思うんですけど、その考え方って組織にも同じことが言えるのかなと思って。
要は、組織図は過去のものをベースに作ってしまうことになり、過去のもので作ったもので未来が縛られるって、けっこうもったいないですよねという話で。でも未来は確定できないから、未来の組織図なんて作れないとしたら、結局組織図って作れないんじゃない? という。
スナップショットか今を把握するためのものでしかないのかなという話は、今聞いていて共通点というか、この後の話にも通ずる、木村さんのOSの一端がちょっと知れた感じはありましたね。
木村:未来の組織図なんて作れないというお話は言われたことがなく、そこを結びつけて考えていなかったので、採用させていただきます。めっちゃいいなと思いました。
倉貫:ありがとうございます(笑)。
仲山:あと僕が組織図で思うのは、それこそ自律型の組織にしていきたいみたいな話が出た時に、なかなかうまく進まないことが多いと思うんですけど。
それってみんなが、従来の分業された、四角と四角が離れて書かれたイメージで組織を捉えているから、「あのイメージを持っているままだと、なかなか難しいよな」と常々思っているんですよね。
『サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質 才能が開花する環境のつくり方』という本を一緒に書いたサッカー指導者の菊原志郎さんが言っていたんですけど。
志郎さんも育成年代の選手とかにサッカーの布陣を伝える時に、よくあるのって選手がマグネットで置かれて、「自分のポジションはここなんだな」みたいにみんなが考えるわけですけど。
それをやると、人と人との間が空いちゃうことになる。それを意識してもらうためにゾーンで描くと言っていました。
木村:なるほど、点じゃなくてゾーンで。
仲山:そう、だからすべてが誰かのゾーンの中に入っていて、お互い重なり合っているみたいな書き方をするって言っていました。
倉貫:おもしろい。
木村:なるほど。すごくおもしろいですね。
仲山:それで人の意識って絶対変わりますよね。
倉貫:ホワイトボードにマグネットを置いたら、そこにしかいない感じがしますものね。
木村:確かに。思考も組織図にけっこう支配されますよね。あれをイメージして動くのと、あと上下関係みたいなこともあるし、情報のシェアの範囲や仕事の範囲もそれにかなり影響を受けちゃうところがあるかなと思いますよね。
倉貫:さっそく第1回としては十分な時間になったということで。
木村:早い。
倉貫:早いですね。
仲山:いきなりおもしろい。
倉貫:おもしろいですね。ということで、この調子で第2回に続けていきたいなと思います。
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