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離職を無くしエンゲージメントを高める組織づくりのポイント(全2記事)

信用は「過去の実績」を信じ、信頼は「相手の未来」を信じること 組織のエンゲージメントを高める、未来志向の信頼を築くコツ

エンゲージメントを高める組織づくりをテーマとした株式会社リンクアンドモチベーションの主催イベントに、日本KFCホールディングス在籍時にスーパーバイザーとしてチームの生産性の4倍向上と新入社員の離職率0パーセントを実現した『ケンタッキー流部下の動かし方』の著者・森泰造氏が登壇。組織のエンゲージメントを高める方法を語りました。

「商品」「労働」「資本」の3つの市場にあらわれた変化

山中麻衣氏(以下、山中):日本市場においても、エンゲージメントという言葉はもう市民権を得たと思っています。背景として、人的資本経営が注目されるようになったことがあるでしょう。ただそれだけではなく、私はもう少し大きな市場の変化が背景にあると思っています。

市場の変化とは、商品市場・労働市場・資本市場という3つの市場の変化のことです。1つ目の変化が商品市場の「ソフト化」です。日本の産業全体において、第3次産業の割合が高まっています。

ご存じのとおりS&P500(米国の代表的な株価指数)の構成企業もほぼ第3次産業で、ITをはじめとするサービス業によって支えられています。サービス業が事業価値を高めたことで、多くの企業においてソフト化が進んでいます。

有形ではなく無形のサービスを提供する第3次産業においては、価値の源泉は人にあります。人のアイデアやホスピタリティがなくては、良い商品や良いサービスを提供できません。従業員のエンゲージメントを高め、優秀な人材に選ばれ続けることが、企業経営の生命線だと思います。

2つ目の変化が、労働市場の「流動化」です。欧米に比べれば日本はまだ流動性が低い状態ですが、過去と比べれば、あきらかに流動性が高まっています。

転職が当たり前になり、1つの会社で働き続けるとは限りません。従業員が、明日や1ヶ月後に辞めてもおかしくない状況になり、企業にとっては、優秀な人材から選ばれ続ける難易度が高まっていると言えるでしょう。

それに輪をかけて、3つ目の変化として、資本市場が「無形化」しています。特に海外投資家と対話されている方だと、身に染みて感じていらっしゃるかもしれませんが、世界的に人的資本をはじめとする非財務情報の開示が求められるようになりました。

日本では、経済産業省から「人材版伊藤レポート」が発表されたのち、内閣府から「人的資本可視化指針」が発表されました。また、2023年3月期の有価証券報告書から、人的資本情報の開示が義務化されました。

投資家から「人的資本経営の目線でこの企業はどうなのか」と評価されるようになりました。企業にとっては、「人的資本経営」をどのようにして実践していくかがを問われる「実践」フェーズに入ったと言えるでしょう。

エンゲージメントの低さは経営課題

山中:今日のテーマであるエンゲージメントは、政府が発表した「人的資本可視化指針」の中でも、開示項目の1つとして取り上げられており、重要性が高い項目です。私たちリンクアンドモチベーションとしては、エンゲージメントは人的資本経営を進める上で、開示項目の中でも特に重視しています。

では、その背景をご説明できればと思います。組織状態が悪い、あるいは経営陣の信頼がないといった、エンゲージメントが低い状態は、経営として問題があります。

なぜなら、経営としてパーパスやミッション・ビジョン、中期経営計画の目標など、推進していきたい方向性があっても、マネージャーや現場の方に共感してもらい、そこに向かって動ける状態にないからです。そうなれば、経営として実現したいことができなくなります。

この状態を脱するために、エンゲージメントは非常に大事な指標です。

私たちは、エンゲージメントとは、「会社と従業員の相互理解・相思相愛度合い」とお伝えしています。エンゲージメントは本来「婚約」を意味する言葉ですが、お互いが結び結ばれ共感し合っている状態だといえます。人間関係もそうですが、その状態であれば、何をするにしても想定よりも良いことが起きますよね。

逆にエンゲージメントが低ければ、よかれと思ってやったことがマイナスに働き、最悪の場合は関係解消に至ることがあります。従業員と会社の関係も同じです。

エンゲージメントはグローバルスタンダードな指標であり、国内外問わず多くの人的資本経営の先進企業でKPIとして採用されています。

エンゲージメントが高ければ、経営方針に賛同し、「一緒に進んでいこう」と思う社員が増えるので、組織の推進力と実行力が向上します。最近では「両利きの経営」と呼ばれ、多くの大手企業が経営の中心テーマとしていますが、その実現のためにもエンゲージメントが必要でしょう。

エンゲージメントの高い組織・低い組織の違い

山中:1つ例を見てみましょう。、新規事業を始めようという時に、エンゲージメントが低い組織だと、(スライドの)上の状態になります。

新規事業の担当者からすると、「人が増えて複雑性が増したな」「よく知らない人が増えてやりづらいな」と感じることがあります。一方で、既存事業の担当者の立場からすれば、新規事業は好き勝手にやっているように見え、お互いが仕事を推進しにくい状況になります。

エンゲージメントを高めると、(スライドの)下のように、既存事業と新規事業の両方がポジティブに進められるようになります。このようにして、組織の実行力が上がるというわけです。

当社の調査では、エンゲージメント向上の効果として、退職率の低下に加えて、生産性や営業利益率、企業価値の向上が明らかになっています。さらに、エンゲージメントはROE(株主資本利益率)やPBR(株価純資産倍率)の向上も相関が見られつまり、エンゲージメントは企業経営の重要な指標として有益だということです。

今日はエンゲージメント向上の一例として、日本KFCホールディングス株式会社を取り上げます。同社がどのようにしてエンゲージメントが高い組織に変革し、どのような成果を上げたかについて、森さんにお話しいただきます。具体的な組織成果として、チームの生産性が4倍に向上し、新入社員の離職率が0パーセントになったそうです。

これは、店舗ビジネスの中では非常に素晴らしい数字だと考えます。それでは、ここからは森さん、よろしくお願いします

エンゲージメントとは「貢献欲求」

森泰造氏(以下、森):山中さん、ありがとうございました。ここからは私から「エンゲージメントの高め方」のお話をします。

今日話す内容は『ケンタッキー流部下の動かし方』という私の1冊目の書籍にも書いてありますので、そちらも確認されると復習になるかと思います。

エンゲージメントとはいったい何でしょうか。エンゲージメントを高めてくれるものは何でしょうか。エンゲージメントは何があれば高まるのか。先ほど山中さんは、エンゲージメントとは会社への愛着だと話されました。

私はエンゲージメントとは「貢献欲求」と捉えています。「会社により貢献したい」「チームにより貢献したい」「もっと会社をよくしたい」……そういった貢献欲求ですね。そういった思いを高めてくれるものがエンゲージメントだと思っています。だから愛着も生まれるし、組織に対しての貢献心もより強くなるということですね。

その事例として、くすぶっていた年上の部下が1年で日本一になったお話をします。これは私がケンタッキーフライドチキンのスーパーバイザーをやっていた時の、年上の部下(店長)のお話です。

この部下がどういう改善プロセスを行ったのか。そして個人的に得られたものは何だったのかというお話をしていきます。その後で、強い組織にするためにリーダーに求められる2つの能力についてお話しします。

この2つの能力は頭で理解していても実践できない人がたくさんいます。それを実践できなくする、成功を阻害する要因についてお話しして、最後にGHCDみらい創世塾の案内を簡単にさせていただき、山中さんにバトンタッチしたいと思います。

組織のエンゲージメントを高めるもの

:さっそくエンゲージメント、貢献欲求を高めてくれるものとはなんぞやというお話です。いろいろな経営者の方から相談を持ちかけられますが、このエンゲージメントという言葉は、最近では当たり前のように聞かれるようになりました。

ただ、どういう構造でエンゲージメントが成り立っているかまでは、詳しく知っている方はあまりいらっしゃらないので、まずそこの確認をしていきたいと思います。

ここに図を出しています。会社(組織)と上司を「イコール」として見る部下が非常に多いので、会社と上司を横並びにしています。

エンゲージメント、貢献欲求がある状態になると、社員に「上司やチーム、会社に貢献したい。より良くしたい」という思いが生まれます。

この矢印を見てもらうとわかるように、一方通行ではないんですよね。会社や上司からも「社員や部下に貢献したい。社員や部下をより良くしたい」という思いが出ていると、エンゲージメントは高くなるということです。

それは、縦だけではなくて横も同じです。部署の異なる社員同士でもお互いに尊重し合っている、お互いにより良くしていこうと思えている状態。これがエンゲージメントの高い組織になります。

このエンゲージメントを高めてくれるものはいったい何なのか。それは信頼関係です。みなさんもちょっとイメージしてもらうとわかると思いますが、信頼できている仕事のメンバー同士だと、お互いに良くしようと思う気持ちが自然に発生するじゃないですか。

逆にお互いの信頼関係がない、信じられない関係性だと、どうしても自分の立場を守ろうとしてしまいます。この上下の関係性、横の関係性の信頼関係を高めていくことで、エンゲージメントが高まっていきます。

組織のエンゲージメントを高める、未来志向の信頼を築くコツ

:では「信頼関係とは何ぞや」という話です。信頼とは「信じて頼る」と書きますね。人が未来に向けて信じて頼ろうとする相互の関係性です。

信用との違いは、信用は過去の実績を信じることなんですね。例えば過去の実績を信じて「あなたを信用してこれを任せます」というのが信用です。一方信頼は、その人の未来を信じることです。

信じて頼るためには何が必要か。共有できるものが必要です。共有物があると、信じて頼ることができます。逆に共有できるものが見当たらなくて、違ったものが見えてくると、人は違和感を感じるんですよ。

「なんかこの人ちょっと違うな」「考え方が合わなさそうだな」とかそういった違和感が生まれます。共有できるものがあると信頼関係ができますが、共有するものによって信頼の度合いも変わってきます。

つまり組織としてエンゲージメントを上げていこうと思ったら、より深く、より強い信頼関係を結ぶことが大事になります。

共有できるものは、探そうと思ったらすぐ探せると思うんですね。今日のウェビナーでは私はみなさんのお顔が見えないんですが、例えばこの中で眼鏡をかけている人もいらっしゃると思います。

眼鏡をかけている人は「私も眼鏡をかけてますよ」と言われると、ちょっと親しみが湧いてくると思うんですよね。こうした見えるものは信頼関係を作る入り口として非常に使いやすいです。

ただ深い信頼関係を作っていくためには、見えるものではなくて見えないものを共有することが大事なポイントになります。

ではエンゲージメントの事例検証、くすぶっていた年上の部下がやる気になり1年で日本一になったお話をしていきます。

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