2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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鈴木絵里子氏(以下、鈴木):今日のイベントは、多様性がディープテック業界においてどんな意味合いを持つのか、また、こういう視点でぜひディープテック業界を盛り上げていきたいなという趣旨で開催する、第1回目のイベントになります。
今日のアジェンダです。まず、私の自己紹介と、今回の主催者Beyond Next VenturesさまというディープテックVCについてご紹介させていただきます。そして、みなさまがすごく楽しみにされている3名のご登壇者のご紹介をし、トピックについていろんなディスカッションをして、最後にみなさまからの質問にお答えできればと思います。
私のことを簡単にお話しします。私はKind Capitalという会社をやっています、鈴木絵里子と申します。VCをしばらくやっていまして、インパクト投資寄りでグローバルに投資をしています。
そのためBeyond Next VenturesさまのようなディープテックVCにもミッションのところですごく近しく感じて、いろんなかたちで協業やお手伝いをしています。
今回、Beyond Next Venturesさまがこういうおもしろいイベントをされる背景をご紹介します。Beyond Next Venturesさまは、日本でのディープテックVCの先駆けにあたるようなすばらしいファンドです。
日本のヘルスケアに関連するテクノロジーのディープテックの会社や、気候変動や農業に関わるような、新しい技術が高いスタートアップに投資されている会社です。また、インドにも投資されているので、グローバル性が高いVCとも表現できるかと思います。
Beyond Next Venturesさまですが、もっとディープテックで活躍される多様な方を支援することで良い投資先が見つかり、既存の投資先も伸びると信じていらっしゃると理解しています。そんな活動の一環で、今日のイベントをさせていただいています。
ディープテックとはどういう業界なのかについてもフラットにお話ししながら、その中で多様な方々がどう活躍しているのかをリアルにお話ししたいと思います。
今日参加されている方々もすごく多様な方々です。すでにスタートアップにいらっしゃる方もいれば、VCに興味がある方、あるいはまだまったくわからないという方もいらっしゃるかもしれません。多くの方におもしろいと思っていただけるようなイベントにしたいと思います。
登壇者のみなさまも多様性を訴えている女性の中でも、さまざまなバックグラウンドをお持ちの方々です。お聞きになれば、必ずしもサイエンスの研究をされてきた方ばかりがディープテックに関わっているのではないと感じられると思います。ぜひ良い刺激を得ていただければと思います。
鈴木:では、アナウトの岡田さんからご紹介よろしいでしょうか?
岡田由佳氏(以下、岡田):アナウトの岡田と申します。よろしくお願いいたします。
私は、新卒で総合商社からキャリアを開始しました。3社ほど経営企画の業務を経験した後、9年ぐらい前にスタートアップの世界に来ています。そこから、業務委託ともあわせると7社ぐらいの会社のコーポレートの立ち上げをやって、1年前にアナウトにジョインしました。
多様性の性質というところでは、文系の人間から見ると、ディープテックの世界は「理系の人ばかりじゃないか」「専門性が高くないといけないんじゃないか」という不安や、「文系にはどういう職種があるのか」にご興味がある方もいると思います。
私のスタートアップでのキャリアの最初は妊活中で、アルバイトから開始して今に至っています。そのため、働き方などに何かご不安をお持ちの方がいればご質問いただければと思います。
あとは、子どももおりますので、子どもを持ちながらどうやって働くのかとか、100パーセントうまくお話しできるかはわかりませんが、何かみなさまの参考になることがお話しできたらいいなと考えています。
会社のほうも少し紹介させていただきます。スライドをご覧ください。弊社はプロダクトの特徴上、どうしても内臓(の写真)とかが出てきますので、苦手な方はちょっと目を伏せて、お話だけ聞いていただけると幸いです。
あらためまして、アナウト株式会社です。事業内容は「神経、結合組織、体の中にあるものの構造物を強調表示する」と書いていますが、具体的には、右の写真のように、この世界で映っている肌色や赤などの色ではなく、目につくような別の色で表現することで「ここに神経があるよ」「ここは切っていいよ」「ここにすい臓があるよ」とマッピングしています。
医療機器として、の販売はまだ開始しておりませんが、この写真のとおり、教育現場の非医療機器としての販売は開始しており展示会でも好評をいただいています。
プロダクトイメージを持っていただくためにこちらをお見せしますが、思いっきり内蔵です。今切っているのが結合組織で、普通なら透明なものがこのように水色に映ったりします。
あと、わかりやすいものとして、私が一番好きなのが胃と隣り合っているすい臓を切るシーンです。左下の細かくて何があるかわからないところが、真っ白になり、ここにすい臓があるよと教えてくれます。
すい臓を切ってしまうと、すい液漏といって、すい液が周りに漏れて大変な合併症を起こしてしまいます。そのため、手術の現場で、特に経験の浅い医師にとって、これが非常に役に立つというイメージを持っていただければと思います。
岡田:ヒストリーとしましては、2018年から医師である小林社長が温めていたものを2022年に創業し、今プロダクト化しているかたちになります。
トラックレコードと記載のように、主な株主さまは、本日主催いただいているBeyond Next VenturesさまとANRIさまに支えられ、ほかにも多数の助成金等をいただきながら運営ができています。
どういうバックグラウンドの方がいるのかをざっくり見ていただければと思います。取締役は3名中2名が医師です。開発チームを牽引するCTOは、ずっとソニーにいて、AIのプロフェッショナリティが高い方です。私の直属の上司にあたる細見はコンサル出身で経営の知見があるなど、それぞれが多様な領域で、プロフェッショナリティが高い方が揃っています。
私はプロフェッショナリティというより、広く浅くコーポレートの立ち上げの経験があってここに入れてもらっています。ほかにも製薬企業や、医学物理士というタイトルを持つ方や、ジョンソン・エンド・ジョンソンで営業の最前線にいた方とか、多様なバックグラウンドを持つ方が働いている会社です。
働き方の部分では、ほとんどが30代から40代で、あまり若い方がいらっしゃらないのが特徴です。
みなさま子育て中ですので、時間や場所の融通をきかせながら、お互いにコミュニケーションをとりながら働いています。子育てや介護に理解がある環境だと思います。
多様性を確保するべく、女性従業員比率も半分に近く、海外国籍の方の採用も進めています。簡単ですが、以上になります。
鈴木:ありがとうございます。非常に高度な技術で意義深いことをされていて、事前のミーティングの際に、すごく意義があることをやっている会社に勤めていることが醍醐味だとおっしゃっていたのも印象的です。ブリーフィングミーティングの時に、後ろにお子さまがいらっしゃったことも印象的でした。またいろいろとお話しできればと思います。
鈴木:では、BiPSEEの松村さんも、会社について自己紹介をお願いします。
松村雅代氏(以下、松村):BiPSEEの松村と申します。私の自己紹介ですが、スライドで説明させていただきます。
私は心療内科医ですが、もともと医師ではなく、ビジネスキャリアからスタートしています。先ほど岡田さんから「文系の」というお話がありましたが、もともと私も文系で、最初の大学での専攻は英語学でした。
医療への関心は、実際に自分で仕事をしながら、医師との関わりの中でちょっとこれは医師に任せておけないんじゃないかなと感じ、留学したところからスタートしています。
スタートアップは3社目です。アメリカのヘルスケア系のスタートアップで勤務していた時に、やはり医師のバックグラウンドがあったほうがいいなと認識し、その後医師になりました。
臨床領域は、心療内科医として特に大人の発達障害に携わることが多かったです。産業保健では、休職や職場復帰にも携わりました。
会社の説明です。私どもは2017年に設立しました。今は主にうつ病の薬事承認を目指した特定臨床研究に一番力点を置いて進めています。タイでも同じような臨床研究を行うことが決まっており、これも非常に不思議なご縁だなとありがたく考えています。また、国内外で、複数の主要製薬メーカーやさまざまな研究機関と一緒に共同研究も進めています。
弊社はまだとても小さく、正社員のメンバーは役員を入れて6名で、経営メンバーは私が医師で、ほかにエンジニア、経営コンサルタントというメンバーです。Beyond Next Venturesさまには本当にお世話になっており、心強く感じています。
プロダクトはVRで、うつ病の治療を行い、Webもあわせたかたちで進めています。、認知行動療法に基づいたVRのプロダクトを提供しようと進めています。以上です。
鈴木:ありがとうございます。私は数年前にイベントで松村さんをお見かけして、ビジネス界でもご活躍の上で医師に転身されたというのがとてもすばらしいなと思いました。
かつ、VRという新しいテクノロジーを駆使されて、グローバルにご経験もあるので、今後ますます大きな市場を狙っていかれるのかなと。なかなか日本でお会いすることができない起業家さんだと思ったことを思い出します。
鈴木:では、菅さんも自己紹介と、会社についてお話しいただければと思います。
菅愛子氏(以下、菅):みなさま、初めまして。株式会社メトセラの菅と申します。簡単に会社紹介と私の紹介をさせていただきます。
株式会社メトセラは、心臓領域で細胞医薬品のような再生医療等製品を開発している創薬ベンチャーです。
フェーズ1には、心臓のメインパイプラインの1つであるVCFと呼ばれるものがあります。また、フェーズ3にはCSCと呼ばれる心臓内幹細胞があり、小児向けの心不全の患者さまに使っていただけることを期待して開発しています。
今まで培ってきた基礎研究等の結果を基に、今後が「心臓以外にも治療薬を届けよう」とほかの臓器疾患への開発も着手しています。
基礎研究からのプロセス開発で、人に投与するためにはその細胞医薬品をある程度のスケールで作る必要があります。スケール開発、プロセス開発を経て臨床試験を実施し、承認申請に向かうという創薬のステップを踏みますが、私どもはここのすべてのバリューチェーンをカバーする組織体制を取っています。
もともとメトセラは基礎研究から始まって、先ほどの成人向けの心不全細胞医薬品を開発し、プロセス開発もして、第1相試験(健康な成人を対象に、主に治験薬の安全性や薬物の体内動態などを調べる試験)に入ってきました。
2021年にJRMという会社を吸収合併しまして、プロセス開発から先の臨床開発、後期臨床試験を実施する体制も備えることができました。このように、ベンチャーにしては非常に幅広いバリューチェーンをカバーできています。
菅:自己紹介させていただくと、私はもともとザ・理系で、薬学部を出た後、製薬会社で研究員をしていました。研究開発を進める中で、いわゆるディープテックがどうやって世の中に出ていくんだろうと興味を持ち、2年間経営学を勉強することになりました。
その後、もう一度製薬会社に戻って、医薬品のバリデーションのようなことをやっておりましたが、せっかく経営に携われるならとスタートアップに職場を移しまして、今メトセラにいるところです。
研究員で、サイエンスを相手にしていたところからは180度変わったような感じで、対人などのスキルが問われ、資金調達で外部の方とお会いしたり、経営管理については社内の支援もやっているところです。
当社の多様性としては、人数は30人から40人で、男女半々ぐらいになります。男性も育児休暇を取ったり、女性も産休から明けた方は働き方になるべくフレキシビリティを持たせて、組織も成長していきたいと思っています。年齢は40代半ばが中心です。
研究開発のメンバーが多いので、理系が多いところはあります。それに伴って、修士や博士も3分の1ずつぐらいいるような、デモグラフィックなダイバーシティになります。
外国籍については、3人ほどノンネイティブジャパニーズの方がいて、私も英語を駆使しながらなんとかコミュニケーションを取っているところです。簡単ですが、以上がご紹介になります。本日はよろしくお願いします。
鈴木:菅さん、ありがとうございます。再生医療のベンチャーの中で、リーダー格のメトセラさまの内部に関する貴重なお話を聞けて、すごくありがたいなと思っているところです。
鈴木:さっそく本題に入らせていただきたいと思うんですが。転職されたお二人、特に岡田さんと菅さんは、ディープテックに興味があるなと思われた後に、どうやってその会社を見つけられたのか。エージェント経由なのか、それとも知り合いからのツテだったのか。
きっかけも含めてどのように今の会社に移られたのか。最終的に「ここに決めよう」って判断された理由もぜひお聞きできればと思います。時間があれば、今やってらっしゃる業務がどんな感じかもぜひ教えていただいて、それは松村さんにもお聞きしたいと思います。
岡田さんは何社か経験されていると思うんですが、いかがでしょうか?
岡田:前職で、ちょうど子どもが小1になる時に、小1の壁のようなものがあって、取締役から執行役員に立場を変えてもらったのですが、その時に実は双子を妊娠しまして。
執行役員でも続けるのは難しいかもとなった時に、やはり職場を変えたほうがいいと考えました。その時に(アナウトの)取締役の1人が友人で、パートタイムでもいいからジョインしないかというお話をいただいたんです。
なので、ディープテックで会社を探していたというよりは、自分のライフスタイルチェンジがきっかけとしてありました。
もともと私の価値観としては、ディープテックという軸よりは、今40歳手前ですが、40歳を過ぎたら自分軸ではなく、どういう領域で社会に貢献していくかを考えていきたいと思っていました。
私の中では、子どもの貧困、介護、終活、医療のうちのどれかだとはっきりと決めていました。その中で医療領域に携わるチャンスがあったので、もう迷わず決めました。いただいたチャンスを掴みにいったというかたちで、思いのほか早く夢が叶ったなというところではありました。
結果、子どもは産むことができなかったんですが、体に無理のない範囲でと、今は時短の6時間で勤務をさせていただいています。
鈴木:ありがとうございます。とても参考になります。価値観でフィットされたところもあれば、働き方でデザインされたのかなとも思いました。
岡田:決して働きやすかったらどこでもいいと思っていたわけではなく、チャンスが来た時に「この領域で働きたい」という軸はしっかりと持っていて、医療分野という非常に専門的で新しいチャレンジを選んだかたちですね。
鈴木:菅さんはいかがですか? 製薬会社から何でもやらされるベンチャーで、大きな転換だったと思うんですけど。
菅:そうですね。今でも代表と笑い話としてよく話すんですけれども。実は私、この会社のほかに転職活動をしたことがなくて。初めてベンチャーの面接をして決めちゃったので、あまり自分の軸を持っていなかったのが正直なところです。
ただ、振り返ってみると、その時に話した代表と目線が合っていたかなと。日本の小さい会社だからできないことがあるという話ではなく、海外展開もしたいし、製薬会社とのライセンス交渉も自分たちでちゃんとしたいというところに共感できたのはすごく大きかったかなと思います。
あと、自分のパーソナルな部分もあります。大学を出て入社した頃は若かったので、仮に会社が潰れたり、お給料が払われなくても、なんとかなるだろうという気楽さもあって、いろいろ比較してもどうせわからないこともあるしと、1社目で決めてしまいました。
実際に入社したら人数が少なかったり、会社のステージにもよるんですけれども、未経験でも非常に幅広い業務を教えてもらい、そこから任せてもらえるようにもなって、すごく楽しい経験をしたと思っています。
鈴木:ありがとうございます。代表の方と共感できる部分があったのもすごいなと思いますし、大きな夢を抱かれている会社にチャレンジされた菅さんも本当にすばらしいと思いました。
松村さんの会社は今6名ほどとおっしゃっていましたが、採用する側としてどういう方を採用したいかがあれば、ぜひ教えていただければと思います。
松村:弊社の場合、メンバーは主にエンジニアのバックグラウンドを持っていまして、会社のために働くだけではなく、自分が独自にやりたいことが会社にいることで促進されるというメンバーが集まっていることを、私としても非常にうれしく思っています。
鈴木:ありがとうございます。みなさんにお聞きしていて、いろんな採用のスタイルや動機があると思いますので、自分にあったところが見つかればいいのかなと。自分がやりたいことをやれる会社を探すのもそうかもしれないですし、会社の大きなビジョンを支援したいという思いもあるのかなと思いました。
鈴木:次の質問ですが、今回はディープテックという視点でお話しさせていただいているので、会社として医療に携わって「こういういいことがあった」「気持ちがすごく高ぶるものがあった」という経験をぜひシェアしていただきたいです。
あとは課題。ディープテックは大変さや難しさもあると思いますので、その両方について、お話しできる範囲で、菅さんからお聞きしてもいいですか?
菅:今のご質問にストレートフォワードに答えられるものではないのですが、今回のお題をいただいて、私なりにディープテックやスタートアップ、ダイバーシティとは何だろうと考えてみました。ネタの提供にご紹介して、ぜひみなさまからご意見をいただきたいと思います。
まず、なぜ今回ディープテックがお題になったのかなと考えると、いわゆる多様性が、視点やスキルの多様化につながる。一般的に、そういった組織や土壌がないとイノベーションはなかなか生まれづらいと言われています。肌感覚的にもそうかなと思っているので、ディープテックこそ多様性が望まれるというのは、自然に理解できると思います。
そこにスタートアップがどういうふうにアドオンされるのか。決して大きい企業とか古い企業にフレキシビリティがないと言っているわけではないのですが、スタートアップならではの動きを活かして、ダイバーシティアンドインクルージョンなどを、高度に実現できる可能性があるのではないかと実感しています。
ただ、スタートアップ自体の魅力が伝わりづらいというところで、ダイバーシティ獲得の機会を、失っている可能性をなんとかしたいというのが、今日の会を開かれた趣旨でもあるのかなと思っています。
あと、今日は多様性の一例として女性のパネリストが集まっているわけですが、いろんなライフイベントを経験して、ライフイベントを大切にしたい方がいらっしゃる。それを、当事者として仕事や組織との折り合いについて考えることもあるし、企業側としてどうインクルージョンできるかを考える機会が増えていると感じています。
周りを見ていても、自分なりの仕事やキャリアの実現の事例が増えていて、働き方や自己実現の多様性を目の当たりにしているところです。
それはさらに広がっていくことが想定されますので、どう応え続けていくかが、今回のように企業がダイバーシティを検討していくところの起点となりそうで、まずは今日のように「集まっていろいろ考えましょう」というのが、ディープテックの未来につながっていくのかなと思ったりもしています。
まとまりはないんですけれども、こんなことを思いながら参加させていただいています。
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