2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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鈴木:岡田さん、ディープテックについてアナウトさまで経験された思いとか課題もあれば、シェアしていただいていいですか?
岡田:課題から先に申し上げますと、これはエコシステムの話にもつながるかもしれないんですが、想像していたとおり専門性の高い方が多くて。医師、看護師、薬事申請などのPMDAに出す資料を作る方、それから私たちのようなコーポレートの人間や開発のAIエンジニアの方と、それぞれがものすごく専門性が高く、ほかの組織よりもセクショナリズムができやすい環境にあると思います。
お互いに忙しそう、と遠慮してしまう。お互いに難しいことをやっているからわからないと思っているところはあるのかなと思います。
一方で、その課題を凌駕する部分として、今までいた会社と一番違うところは、直接プロダクトをお客さまに紹介する機会はないんですが、進捗を聞いたり顧客フィードバックを聞いているだけでも、この技術が本当に業界を変えるんじゃないかと感じることができることです。プロダクトの視覚訴求力が高いので、素人でも感覚的にわかりやすいこともあるかもしれないですが。
社長とまったく同じ目線では語れないし、感覚的に同じものを持っているとはとても申し上げられないんですが、現場で使ってくださる医師の方からフィードバックをいただいた時に、これが手術室にどんどん導入されていった先に広がる世界を、一緒に夢見ながらやっていけるというのはあると思います。
そこはみんなが同じ気持ちだと思うので。専門性を越えて、お互いにリスペクトしながら組織を大きくしていって、事業スピードを落とさずにやっていければ、そういう世界が先に待っているんじゃないかと。本当に日々ワクワクしながらやっています。
鈴木:ありがとうございます。本当に情熱が伝わってきますね。
鈴木:松村さんもいかがですか? 代表として、専門性があるチームをまとめる課題を感じてらっしゃるのか。ディープテックならではのほかの課題も感じていれば、それをどう乗り越えたらいいのかをぜひ教えていただければと。
松村:専門性という意味では、私たちの場合はVRというIT技術を活用していますが、事業に不可欠な医学、エンジニアリング、あとはビジネス領域で言語が違います。特に医学とエンジニアリングの言語は違って、最初は何を言っているのかわからないところから始まりました。
そこはフリクションもありながらですが、そのおかげで「この言語ってこういうことだよね」と、社内でエンジニアリングと医学がマリアージュできている感覚も、みんなで作っていくことができているというのはあります。
そうはいってもけっこうギリギリで、お互いに優雅な気持ちの状況がいつもあるわけではないので、「心療内科医なのにこんなにきつい言葉を言ってしまった」と、日々振り返ることもあります。
醍醐味としては、私自身が臨床の課題を解決するために会社を起こして、プロダクトが必要だと思って今、特定臨床研究をやっていますが、患者さんと直に接する中で手応えを感じられることは非常に大きな喜びですね。
鈴木:ありがとうございます。菅さんのスライドにあったようなスタートアップならではのダイナミズムとかワクワク、多様性から生まれるイノベーションもあるかもしれません。ディープテックは、本当に魅力的なエリアだなとあらためて感じています。
鈴木:少し関連して、ディープテックの領域に興味を持った方に、今できるスキルアップや情報収集、あるいは「そういうのはあまり必要ない」ということでも、みなさまの視点で何かあれば、ぜひシェアしていただければと思います。岡田さんはどうですか?
岡田:ディープテックじゃなくても、スタートアップへの転職を考えている方は「こういうところがあったほうがいい」というのは、会社によっても大きく違います。
ただ、スタートアップは今まで経験したことがない業界でも挑戦しやすいと思うんですよね。「AIをやってみたい」「宇宙をやってみたい」とか、自分で挑戦したいカテゴリーを決めて、そういう領域に関わりたいという意思が叶いやすいところだと思うんです。
そういうキャッチアップしようという意思は絶対に必要だと思います。あとは、タイトルにこだわるような欲は、少し抑えながらのほうがうまく溶け込みやすいのかなと。
プロダクトも組織も生き物のようにどんどん変化するので、都度都度、自分が何をやれば会社が良くなるのか、何をやればプロダクトが良くなるのかを考えたり、周囲を巻き込んでコミュニケーションやディスカッションのために自らどんどん動ける方。周りにもヒアリングをしましたが、これは一番欠かせない部分かなと思います。
自らディープテックを求めて探す方法は、周囲にも聞いてみたんですが、コミュニティやサイトなどは出てこなかったので……。回答になっていないかもしれないんですが、すみません。
鈴木:いえいえ、ありがとうございます。確かにディープテックという絞り方は少し不自然かもしれず、ディープテックの領域の中で興味のあるところにキャッチアップすることが大事なのかなと感じました。
今日の参加者でご興味がある方は、Beyond Next Venturesさまのサイトを見ていただくなり、ニュースレター等を出していらっしゃるディープテックの会社やVCも多いと思いますので、そういうのも1つかなと思いました。
鈴木:菅さんもいかがですか? 今できることとか、どういうスキルがあったらいいというのはありますか?
菅:私は当社しか見ていないのですが、ただ社内で生き生きと働いているメンバーを見ると、チャレンジすることで自分の成長を楽しめる方はすごくフィット感があると思います。ほとんどそこに尽きるのではないかなと。
専門性はもちろん武器にはなると思いますが、必ずしもそれだけではなく、そこから広げていこうとか、それを深掘りしようというところが、スタートアップだと非常に活かしやすいと、お話を聞きながら共感していたところです。
鈴木:ありがとうございます。松村さんも何かありますか?
松村:今、お二人がおっしゃったことに、確かにという感じですが、おもしろがるというか、「自分はこれが大好き」というものがあるほうが楽しいかもしれないですね。
先ほど生き物のように変わるというお話がありましたが、予想することってなかなか難しい。よくわからない、理屈はないんだけど、ここが好きというテーマがあると、深掘りを後押ししてくれるのかなと思いました。
あと、最近は論文でもスタートアップが関わっている領域がけっこうあるので、興味がある領域だったら論文を見てみてもいいと思います。Googleでバンバン検索して「あ、なんかおもしろそう」と出会ったり、Beyond Next Venturesさまが出しているニュースレターも有用だと思います。
鈴木:ありがとうございます。好奇心などが共通項なのかなと思いました。
鈴木:少しステップバックして、みなさまが今いらっしゃる会社ではなく興味がある分野、注目している分野があれば、参加者の参考になるかもしれません。AIなのか、あるいは再生医療だよとか、今ご自身がやってらっしゃる領域の外で示していただけたらと思います。
菅さんはいかがですか?
菅:難しいですが、たまに考えるのは予防医学ですかね。お薬とか医療機器がある程度充実している分野については、今後、予防が必要とされるのではないかと思っているので。
あと、やはりQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)。これは本当に個人的なものですが、病気になってもQOLが上がるような生活に興味が湧くことがあります。
鈴木:ありがとうございます。するどい菅さんがおっしゃるなら、そこは見ておいたほうがいいのかなと思う方も多いと思います。確かに、予防医学やQOL、ウェルビーイング的な視点が最近重視されているかなと私も思います。
岡田さんもどうですか? 次はここだよという分野はありますか?
岡田:先ほど松村さんがおっしゃったように、自分の今までの人生史で、なんとなく楽しそうで興味があるものは、何かの経験に裏打ちされたものです。例えば子どもの教育ですね。子どもの貧困や教育格差、介護、医療の分野はもともとずっと興味があったところなので。
その手段として、AI、ロボティクスのどれがいいということはないのですが、領域としてはエドテック、ヘルステック、ケアテックにはすごく興味があります。
鈴木:岡田さんはいつ頃からその軸が明確化したんですか?
岡田:小さい頃からの積み重ねです。私はすごい山の中から片道2時間かけて塾に通ってやっと中学受験をしましたが、東京に住んで、すぐそこに塾があることとの格差をすごく感じたところもあります。
あとは、おじいちゃんを介護したので、介護のあり方は10代からずっと考えていたところです。5歳から医者を志したんですが、私は脳みそが文系だったみたいで(笑)。結果文転しましたが、今も『家庭の医学』のような感染症についての本を読むのは好きなんですね。
先ほど「苦手な方は目を伏せてください」と言った内臓の画像も大好きで、よくプロダクトの動画を見ています。「感覚的に好き」というのが昔からあって、夢は破れたけれども別のかたちで関われていることを、今すごく誇りに思っています。なので、自分の人生史に裏打ちされた部分が各領域であるなと感じています。
鈴木:ありがとうございます、すごく貴重な原体験も教えていただいて。ずっと岡田さんがおっしゃっているように、ご自身のご興味があるところで経験を踏んでいく。その中で、必ずしも一般的にわかりやすいルートをたどる必要はないという。医療に興味があるからと言って医師にならないといけないわけではない、というのを体現されているので、とても勇気づけられます。
松村さん、ほかに注目領域はありますか?
松村:ウェルビーイングもすごく重要な領域だと思います。あとは、死に寄り添うことにもすごく興味があります。最近の医学の「老化は疾患なので治療します」という概念も、それはそれでありかもしれないんですけれども、死に対してクオリティという概念を持つとか、どう寄り添えるかといったところも非常に興味がある分野です。
鈴木:ありがとうございます。多忙な中でも、違う分野についても常に興味がおありなのかなと思いました。松村さんがおっしゃったような、ロンジェビティについての考え方も足元で普及しているのかなと思います。
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