66冊の著書から岩井氏が推薦する3冊のビジネス書

岩井俊憲氏(以下、岩井):みなさんこんにちは。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲でございます。後ろに入れているポートレートは、アルフレッド・アドラーでございます。ちょっと見にくいかもしれません。これを出すためにあえて背景なしでやっております。

今日はヒューマン・ギルド関係者もかなりいらっしゃっていることが、確認できております。援軍のようで、とてもうれしく思います。今日のタイトルは「プロティアン人生に活かすアドラー心理学~生涯現役を志す人に著者66冊のアドレリアンが勇気づけエール~」でございます。

膨大なアドラー心理学エッセンスをあなたに向けてぎゅっと濃縮してお伝えします。キャリア形成で起こる迷いや恐れは、けっこうあると思うんですね。それを乗り越える秘訣を伝授します。真のアドレリアンの「在り方」に触れる濃密で温かい50分となっています。

「自己紹介:私のプロティアン人生」「私とヒューマン・ギルドのミッション」「アドラー心理学のエッセンス」「時代を拓く『共同体感覚』」などアドラー心理学の価値観をご説明し、最後に「まとめ」と、こんな順番でいきます。

まず自己紹介として、私のプロティアン人生をお話しします。私はこういう経歴で、おそらく今日参加している中で最年長だと思うんですよ。75歳。私より上の人がいたらチャットで「私より上ですよ!」と自慢げに言っていただくとうれしいです。

もともとサラリーマンをやっていまして、外資系のGE(ゼネラル・エレクトリック)、日本のデンソー、トヨタ、三井物産の合弁会社に13年勤務しました。そのあとで、特に力点を置いたのは本。オファーがあれば何でも書いちゃうということで、(著書は)66冊に達しています。また、研修講師、カウンセラー、著者の3つの顔を持つ男です。

私がおすすめする3冊のビジネス書。ビジネス関係の本は他にもたくさんありますが、特にこの3冊をお勧めします。

(イベントを主催したプロティアンキャリア協会の代表理事)有山さんは、私の本を1冊しか読んでいないと聞いてビックリしちゃったんですけれども、2冊くらい贈呈しますね(笑)。

有山徹氏(以下、有山):申し訳ございません。ありがとうございます。

岩井:有山さんは中小企業診断士としても後輩だしね。(1冊目は)WBCジャパン栗山(英樹)前監督の愛読書でもあります(『経営者を育てるアドラーの教え』)。(2冊目は)チームビルディングの最適書(『みんな違う。それでも、チームで仕事を進めるために大切なこと』)も書いています。(3冊目として)https://www.amazon.co.jp/dp/4413230116も書いています。

自分の年齢に0.8を掛ける「8掛け人生」

岩井:「生涯現役」が私のモットーでして。たまたまタクシーに乗った時に、運転手さんが非常に人懐っこい人で「何をやっているんですか?」と私のことをいろいろ聞いてきたんですよ。

だから「実は研修講師で」と言ったら「いつまでやるんですか?」と。「95歳です。私は95歳の時に講演をして、万雷の拍手を受けてパタッと死にたい」と話したら、その人のいい運転手がこう言いました。「同感ですね。私もね、ハンドルを握ったままあの世に行きたい」と。ちょっと危ない運転手な感じがしましたけど、実際にあった話でございます。

そういうことで、私は「8掛け人生(年齢に0.8掛けるのが実力年齢という考え方)」をモットーにしています。我々は、キャリアというか自分の年齢を考える時に、親の年齢を1つの尺度にしていませんか?

私が35歳の時、75歳の父と観音霊場巡りをやったんですよ。今、私は75歳になりますが、父親とは若さがぜんぜん違います。知的にも体力的にもまったく違います。そういう点で言うと、父親の年齢に8掛けしてちょうどいいんじゃないかと思っています。

そして8掛けすることで「人生3段ロケット説(人生二毛作)」を唱えています。学業を修め、ビジネスの分野に入り、定年を迎えるけれども、それで終わりではないと思うんですよ。もう一毛作という考え方。50代後半から準備して、70代から本格的な人生の完成を目指すことができるんじゃないか。

そういう考えがあるので、私の強い訴えは「8掛け人生」。そして、生涯感動、生涯青春、生涯現役、生涯貢献でやっていると、輝いて生きることができるんじゃないか。そんなふうに思っています。

外資系企業を辞め、13社のオファーを断ってキャリアをリセット

岩井:私のプロティアン人生にちょっと触れておきます。先ほども言いましたが、外資系企業で13年間、営業の仕事をやっていました。これは嫌だったんですよ。会社に入る時に、企画、人事、経理とある中で営業だけはやりたくなかった。でも配属されたのは営業でした。

ただ6年半営業をやって、本社の総合企画室の課長に抜てきされ、そこでも6年半やりました。人事課長、TQC課長も兼務でやったことがあります。順風満帆でした。

当時GEは、ジェック・ウェルチが率いていました。ところがいきなり、日本から撤退になって、GEブランドは使っちゃいけないことになったんです。今はデンソー系統で生き残っています。

当時、私は事業計画立案部署にいて、どう見積もっても従業員の半分の首を切らないと存続できず、そのことを社長に提言しリストラを推進するとともに、私は自ら身を引いたんです。

同時に2つのことがありました。離婚したんです。まったく同じ1993年3月末、会社を辞め、離婚し、そして離婚の際は財産を全部妻にあげちゃいました。悪いことをしていたわけじゃないんですよ。私は完全にキャリアをリセットしようとした。

13社から「うちに来い」というオファーがありました。それを全部断って、私が選んだ道は無報酬で不登校の子どもたちと母親、家族支援をすること。ぜんぜん関係ないキャリアで動き始めた。

そうする間にアドラー心理学を知ることになったんです。「これはいいぞ」という感覚で、37歳の時アドラー心理学を日本中に広めるため、有限会社ヒューマン・ギルドを作りました。ヒューマン・ギルドではいろいろな研修をやっていますが、カウンセラー養成もやっています。

「今さら」を「今から」に変える

岩井:あと23歳で中小企業診断士の資格を取得し、24歳から51年間、東京でも5本の指に入る古株の中小企業診断士でもあります。

看護学校や大学、2020年からは大学院の客員教授もやっていましたが、それを辞して75歳で、私はもうひと花咲かせたいと思っているんです。95歳まで20年あります。「私はこのままで終わらないぞ」という意気込みです。

こんなアクティブ・シニアの私。ブログ、Facebook、Twitter(現X)もやっています。72歳からユーチューバーになりました。本も書いています。だから、まずみなさんに言いたいのは、「今さら」を禁句にしたい。60歳を過ぎるといろいろな人が「今さら無理だよ」と言います。

私は「今さら」の「さら」を「から」に変えたいんです。「今から」です。65歳になっても75歳になっても、私は「今から」だと思っています。

船井幸雄先生が、私のことを2冊の本で書いています。『未来への処方箋』ではなんと15ページを私に割いています。そして『「本物」になるクセづけ』でも私のことを2カ所に書いています。

彼は私のことを「本物伝道師」と言ってくれたんです。ちょっとこそばゆい感じがしましたが、それをいただいて「勇気の伝道師」というのを私のミッションにし始めています。

これには背景があります。私は自殺を勇気欠乏症の1つのシンボリックなものとして考えています。(資料を)見てください。14年連続で3万人以上の自殺者数がいた。日本は、世界の中でも自殺率がとても高い国。今でもそうですよ、2万人いますからね。こういう状況下で私は、船井先生の言葉を借りて「勇気の伝道師」であろうというミッションを持ったんです。

同時にヒューマン・ギルドも、こういう(資料)ミッション・ビジョン・バリューを打ち立てました。さらにスタッフにはけっこううるさく行動指針を示しています。

特に3番目の「相互尊敬・相互信頼」に基づいた行動を、お客さまや受講者に対してしようじゃないかと、常々言いきっています。

アドラー心理学の5つの柱と2つの技法

岩井:私のことはさておき、みなさんはアドラー心理学に興味があると思うので、アドラー心理学はどういうものであるかをかいつまんで申し上げます。組織には2つの流れがあります。生産性という軸と、もう1つ人間性という軸です。

アドラー心理学は生産性はあまり強く言いませんが、人間性は生産性とともに車の両輪であると考えます。マインドだけでスキルがないと危険ですし、スキルばかりだと野蛮です。

私は企業活動の診断士ですから、企業の取り組みとして生産性もある程度言いますが、もう1つの軸である人間性を補完するものとして「ますますアドラー心理学が必要なんです」と強く訴えています。

アドラー心理学には、(スライドにあるように)大きく5つの柱があります。「人はみな自分の人生の主人公である」。これは自己決定論と言います。2つ目は「人間の行動には目的がある」。パーパスです。それまでは原因思考だったんですが、アドラーはシフトチェンジして「人間の行動は目的がある」と強く言っています。目的論です。

(3つ目は)「人は一人ひとりユニークな存在である」。これは全体論と言われます。(4つ目は)「人の見方は十人十色」。同じことを経験しても、そのことを語る語り口はぜんぜん違います。認知論と言います。(そして5つ目が)「人間のあらゆる行動は対人関係である」。対人関係論と言います。

こんな理論を中心にしながら、アドラー心理学の技法としては「勇気づけ」があり、思想、価値観として「共同体感覚」があります。

不具合の原因探しでは、解説はできても「解決」にはならない

岩井:特にパーパスの点で、私は目的と目標とは明らかに違うと言っています。ここを勘違いしている人がものすごく多いです。目的と言いながら「我が社の目的は何百億円企業になる」とか。「あのオッサンは何を言っているんですか」と思うんですね。

数値目標はあったとしても、数値目的という言葉はありません。短期目標、中期目標はあっても短期目的、中期目的はありません。目的は1つに収れんされます。

私が不登校の子どもたちの支援をしていた時、非常に困ったのは、当時は完全な原因説だったことです。不登校には原因がある。特にお母さんは、「母乳で育てなかったからだ」などと自分を責めるんです。そんな中で、ぜんぜん違う切り口のアドラー心理学を入れるのはけっこう大変でした。でも理解すると立ち直りがものすごく早かったんです。

過去の不具合の原因探しは、もっともらしい解説にはなるけど、解決にはならないんですよ。このことを強く言いたいんです。

さっきの自己決定論と目的論という立場から見ると、当時ありがちな考え方ですが、「否定的な原因が自分を被害者・犠牲者にした」と考える。「〇〇だからこうなってしまった」と否定的な現在の口実を探します。でもこれだと何も進まないんです。

ところがアドラー心理学は真逆です。「〇〇だったとしても、こうできる」と、肯定的な未来を創造します。そして未来の建設的な目標イメージを持ち、自分を人生の主人公として自己決定論と目的論で推進していくのがアドラー心理学です。