2024.12.19
74歳の事務員がたった1人で請求業務を担当…… 作業時間を105時間→10時間まで削減させた、介護DX成功の舞台裏
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加留部有哉氏(以下、加留部):じゃあ前の話にも戻っていければと思うんですけど。今回ソース原理のレンズみたいなところを通してみると、お二方にとってこの(新規プロジェクトを立ち上げたが、停滞しストレスになっている)ケースというのはどういうふうな見え方をしましたか。
山田裕嗣氏(以下、山田):これだけでいくと、パターンはまず大きく2つあると思っていて。この7年目の人が本当にソース(創造活動の源になっている1人の特別な存在)としてすごく突き動かされてやっているパターンと、もう1個は「なんかおもしろそうじゃね?」って言って始めているパターン。
実はソースとして本当に引き受けてるっていうものではなくて、「なんかちょっと興味あるからやってみようかな」って思ってやっているみたいなことで、けっこう実は違うと思っています。……というのがソース原理というレンズのけっこう大事なところです。
さっきざっくり省いたんですけど、ソース原理ってもともと、提唱者のピーター・カーニックという方って創造性に向き合ってきた人というよりかは、それの前に30年ぐらい人の心の内面、特にお金に投影されるその人の中のシャドウとかアイデンティティとかにすごく向き合ってきた方なんですよね。
ピーターであり、彼の教え子たちがみんな大事にしているのって、身体感覚も伴うぐらい本当にその人がソースとして、深いところからやりたいと感じているのかっていうことをすごく大事にするんですね。
自分が作りたくて、心の奥深くから表現したい・作りたいって思ってるものとしてやっていることなのか、「なんかちょっとおもしろそうだから、興味あるからやってみます」っていうぐらいでやっているのかで、その人自身の突き動かされ方ってすごく違うんですよね。
山田:っていうところが、7年目のこの方が「なんか最近AIはやってるし、おもしろそうだしちょっと自分も手つけてみたいからやってみたいです」みたいな話なのか、「すごくこの技術は可能性があって、人生でやりたいことにつながってるから、本当にやりたいんです」っていうことなのかでけっこう違うなっていう、分岐が最初にあるような感じがしました。
長谷川博章氏(以下、長谷川):そこはむちゃくちゃ共感しますね。RELATIONSでもけっこう話すのが「土壌の下側」みたいな表現をするんですけど、ある木があった時に、それがイニシアチブとか事業とかだった時に、その下にたぶん広大な根っこが広がっている。
そこってふだんは見えないものだと思うんですけれども、それがどのレベルまでつながっていってるのかみたいなところのレイヤーにこのプロジェクトを例えていくと、本当に根っこの深いところで、その人の根本の衝動から「これをやりたい」ってなった時は、たぶんこの人は起業してでもこれをやり続けるんだろうし。ここでやれなかったとしても、必ずどこかで表現することを追求していくっていうぐらい、たぶん深い根っこのはずだし。
それがちょっと……いろいろあるんでしょうけど、そこで止まってしまうってことはもしかしたら、そこの根っこが興味・関心とか、レイヤーとして浅いところで留まってしまっているみたいなのもとらえられるな、みたいな。聞いてて思いましたね。
山田:止まってる状況が、長谷川さんがおっしゃったのがパターン1で、「起業してまでっていうほど突き動かされてないよね」っていう。もしかすると可能性としては、本人はけっこう深いところはやりたくてしょうがないんだけど、周りが反応してくれないことに困ってるみたいな。それはたぶん別の文脈で、一般論でいくとそれが続くとたぶんやめちゃうんですけど。
その時に後者の場合、本当に可能性を感じて人生でやりたくてしょうがないんだけど、周りがぜんぜん反応してくれないっていう場合は、どう再スタートするかっていうのは確かに難しい問いではありますよね。
長谷川:そうですね、確かに。だからこの会社の中での大きな文脈とか、たぶん本当は戦略とかAIのプロジェクト自体がどう位置づけられてるかと、その人が本当にどれだけ強く願いを持ってたとしても、会社の大きな文脈とずれてるとなかなか人が動かないみたいなのは、確かに起こりそうだなっていうのは思いますね。それがパターン2かもしれないですね。
加留部:経営者の方とか、この7年目の方の上司の方とかは、そこを見極めたりとかするためにどういったコミュニケーションとか、どういったところを見ればいいんですかね。
山田:ソースとして本当に引き受けてやりたいのかっていう時って、わりと問うことはシンプルで。その人が人生でやりたいことの中にどうつながってるのかっていうことがとらえられるかどうかだと思うんですね。
長谷川さんがさっき言われてたみたいに、その人が本当にやりたいことなんだとしたら「別にこの会社のリソースを使って、この会社の事業としてやらなくても私はやる」っていうぐらい、思い入れが本当に強いものなのかとかって。手段としてこの会社の場を使うっていうだけの話をしてるはずなので、「ここでもやりたいのか」という問いをきちんと投げかけるということが大事だなっていうのが、確認をしていくところではあると思います。
加留部:なるほど。そのコミュニケーションをすると本当に熱量が明らかになって、僕が質問されたら怖いなと思いました(笑)。
長谷川:(笑)。あとさっきのパターン2のほうで、会社と個人の関係性みたいなところにフォーカス当てると……さっきの私の前職のプロジェクトもけっこう近いんですけど、常務が見てたのはやはり数字的拡大なんですね。事業がどうこうっていうのはあんまりなくて、数字が上がるんだったら興味を持ってくれるんですけど、そうじゃないとやはり興味がない。
みたいなことになるとたぶん、そこはけっこう自分の中で心の乖離が生まれていくような感覚もあったり。同時に自分自身もその事業に本当の意味で……たぶんこのソース原理からすると、明らかに薄いところで関わってるというか。
どちらかというと海外に展開することのおもしろさだけでプロジェクトを見てたので、その事業を心の底から自分で独立してでもやりたいとかっていう思いはなかったりしたので。だから自分のプロジェクトに置き換えると、それは「両者ともソース不在」みたいな、そんなふうにもとらえられるんだろうなというのは思いましたね。
山田:加留部さんが冒頭「レンズだよ」って言っていただいたのはすごく大事だなと思うんですけど、「ソースでないからやるべきでない」「人生をかけられないからやるべきでない」っていうのはたぶん極論の極致の側になって。すべてをそれで片づけるのもたぶん、それはそれで若干行き過ぎな感じが個人的にはするんですね。
山田:で、長谷川さんが今おっしゃってたのに近い感じがするんですけど、例えばこの方の会社の代表とか創業者が、仮に今ソースとしてなにかやりたいことが人生にあって、その一部として今のこの会社があるんだとしたならば。この会社で代表は何を表現したいかっていうことの中に、このAIのR&Dはどう位置づけられるのかっていうことをきちんと、そこのつながりをわかりにいくっていうことはすごく大事なステップだと思います。
そこがつながるんだとしたら、この場でやることによってよりパワフルに、自分のやりたいこともこの方が進められるし。どう考えてもつながりが感じられないんだとしたら難しいですよね。ソース原理的なニュアンスでとらえると、けっこう難しいイニシアチブの立ち上げになるなって感じはしますね。
長谷川:確かに。これ加留部に言うとアレかもしれないけど、RELATIONSでもWistantの事業があって、加留部はそのWistantの事業責任者だった時期があって。たぶんRELATIONSだと自分が全体ソースで、加留部がWistantみたいな位置づけだったと思うんですけど、加留部は加留部でその時いろいろ大変な時期もあったのかな、みたいな。ちょっとリアルケースをいきなり持ち出して(笑)。
加留部:すごいことを持ち込んできましたね(笑)。でも本当に例としては最適かもしれないのでお話しさせていただくと、ソースではなかったかもしれないですね。「会社にとってこれが重要である」みたいな気持ちとか、「これをやるべきだ」「うまくいくだろう」「自分が率先してやっていきたい」っていう思いは間違いなくあったんですけど。
結局会社を譲渡するってなった時に、あらためてじゃあ人生をかけてチャレンジしたいことってなると、違うことをやろうとなったので。振り返ってみるとソースではなかったのかな、と思いますし。じゃあ自分がソースだったとしたらもっとうまくいったのかとか、成功確率上がったのかみたいなところは、すごく気になってるところみたいなかたちにはなってるかなと思いますね。
事業を立ち上げたといってもソースではない可能性もありますし。そこのコミュニケーションは、今振り返ると重要だったのかなって感じます。
山田:今のWistant(ウィスタント)のケースをどこまで具体にするかはちょっとわかんないんですけど。トム・ニクソンという方が書いた、『すべては1人から始まる――ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』という本の中に、僕がすごく好きな表現があります。
ソースを手伝う人にはいくつかの関わり方があって、全体ソースの中の一部を、自分がサブソースというかたちで引き受けて担うものもあれば、なんらかの対価のために貢献する業務協力者というものも、健全な関わり方の1つとして挙げられます。
それ(対価)は給料かもしれないし、この場への貢献や所属欲かもしれないし、スキルの発揮機会かもしれないし。なんでもいいんですけど。(著者の)トムは、そのために役割を担うことがあっても、ぜんぜん健全だよねと表現しているんです。
実態がどうかは抜きにして、仮に加留部さんが「いや、RELATIONSのためになるなら、別に好きじゃないけどやります」という、ある種の業務協力者だとしても、Wistantの責任者をやることはありうるし。そこで能力を発揮することはぜんぜんありうる話ですよね。それは(ソース原理の考え方としても)矛盾がない話で。
もう1つ、僕が好きなトムの表現は「すべての人は、必ず自分の人生のソースである」という大前提です。例えば加留部さんが、今のRELATIONSという場で人生のソースを表現したいかどうかは、加留部さんの選択なので。
(組織の側が)それを「Wistantの責任者なんだから、そこで表現しろよ!」と、押し付けることはできないのはけっこう大事なところです。
ただ、「今はWistantでは業務協力者的に手伝ってるだけだよね」という関係にあることをみんながちゃんとわかっていれば、その役を担うことができるのは、ソース原理のレンズという意味では大事だと思います。実態として、うまくそのトーンが噛み合っていれば、お互いに健全な関わりができるなぁという感じがしますね。
長谷川:確かに。今のところ、めちゃめちゃ大事だなと思いましたね。
長谷川:それぞれが本当に人生のソースを持っていたとした時に、もちろん会社という枠組みをどう扱うかということはあるんですけれども。その中で、お互いがどう表現したいか、どういうことを本当にソースとして成し遂げたいのかということは、対話を重ねていくと重なりが見えるかもしれないし。
ただ、やっぱりそれをちょっとコントロールしてしまうというか。私も経営者なので、「経営者だからこうしなければならない」というところで動きすぎてしまうと、自分の気持ちとちょっとズレが出ちゃうところがあります。
今お話をお聞きしていて、まずはフラットに自分の衝動や思いを見ていくところからスタートするのは、本当に大切だなぁと思いました。
加留部:ありがとうございます。Q&Aにコメントも来ているので、読み上げていきたいと思うんですけど。
「新規提案をした人に『お前はここでそれが否定されたら、会社を辞めてでもやる気があるのか?』とたずねた意思決定者が以前いました。それを聞いて『え、そこまで言わないといけないの?』と、私は正直思ったのを覚えています」。
「お話に出てきたスキル、外部環境、タイミング、企業。誰かのメリットになっていれば、そしてやりたいという人がいるならばいいのではと思ったのでした。……と書いていたら、山田さんの話が答えでした」という内容ですね。(個人と組織が)つながりをうまく持てるかどうか。
山田:ありがとうございます。僕は実践者側にいる身としては、やっぱりなんだか、ソース原理ってすごくレンズみたいだよねと思っています。
僕は、会社の利益を最優先の目的にすることにぜんぜん魅力を感じないんですが、一方で事業会社としてやる以上は、利益が出ないと続かないという現実はもちろんあって。
その中で、「いや、ぜんぜんソースじゃなくて、ただ手伝うだけの業務協力者だけど、この場を続けたいから、そのためにはやりますよ」と言う人は、大変健全な関わりをしてくれると思います。
それがたまたま事業責任者だったり、別にCOOだって、業務協力者であることはぜんぜんあるよねという捉え方はすごく大事だと思います。
長谷川:そうですね。
山田:一方で、必ずしもそれがその人の人生で表現したいことにはなっていないことを、本人も周りも認識しておけると、けっこう健全ないい関係ができるんだろうと思いますし、それが大事な気がしますよね。
長谷川:うん、確かに。
加留部:ありがとうございます。すみません、いつの間にかけっこう時間が経っていました。
山田:そうですよね。
加留部:ケース1については以上の取り扱いにしたいなと思うんですけど。本当にお二方が話してくださったように、ソース原理を通して、いろいろな分岐やコミュニケーションの仕方を見ていく中で、それが悪いことなのかいいことなのかということもいろいろ変わってくると思います。
(ソース原理の)レンズみたいなところは、新規プロジェクトがうまく走っていかないとか、「自分がやってるけど、本当にソースなんだっけ」といったところにぜひご活用いただければなと思います。
コメントなどもいろいろいただいてありがとうございます。
長谷川:ありがとうございます。
加留部:もしよければ、このケースで第一歩として始められそうなことや、ソース原理をこういうふうに活用したらいいんじゃないかということがあれば、チャット欄にご記入いただけると、それだけでみなさまの価値にもなるかなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
お二人ともありがとうございました。
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