2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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加留部有哉氏(以下、加留部):2つ目のケースの既存業務の改善に移っていきたいと思います。ちなみに、どっちを取り扱いたいといったことはあります? 人事のほうと……2つめからいきますかね。
質問も来てますね。「まったく文脈が異なりますが、RELATIONSさんで実践されているホラクラシーとソース原理がどのように機能しているのか、その実感についてうかがいたいです」。
このケース2で触れていくと思うので、少々回答をお待ちください。ケース2は、業務改善施策を行っても目に見える変化が生まれないといったテーマを取り上げさせていただいております。
(続いての質問は)「私は営業部で働いている社会人歴5年目の一番若手のメンバーです。去年中途採用で入社して、営業部配属となりました。これまで属人化されていた営業ノウハウを蓄積して集合知化することで、全体のレベルアップをしたいと思っています」。けっこうやる気があるというか、意識高く仕事をやっていただいている方ですね。
「そこで、営業議事録をデジタルで共有するために、営業管理ツールの導入を主導しました。しかし、きちんとフォーマットに従って営業議事録を書いてくれるのは20人中8名ほどで、さらに議事録を書いただけで終わってしまっている状態です。どのようにすれば、全体のレベルアップにまでつなげることができるのでしょうか」というケースになります。
これもけっこうよく聞くケースというか。自分はこういうことをやったほうがいいんじゃないかと思っても、(周りが)なかなか動かなかったり、やってはみたものの、本来の目的や目指していたゴール、成果がなかなか目に見えないというお話かなと思います。
今回はこの事例を、インテグラル理論、自律型組織というかたちのレンズを通して見ていければと思います。ここについて長谷川さんから、簡単にお願いしてもいいですか。
長谷川博章氏(以下、長谷川):インテグラル理論も、レンズの1つとして聞いていただければなぁと思うんですけれども。4象限に分けて、あらゆる現象を見ていくというフレームになります。
横軸は内面と外面に分かれています。内面は心や内側にあるもので、外面は目に見えるものという分け方です。縦軸は個人と集団というふうに分けていまして。個人というのは言葉通りで、集団は複数の人たちが集まったものというふうに分けています。
例えば、内面と集団が組み合わさると文化的なものになるという見方をします。私たちでいう世界観なんですが、例えばそこで扱われるものは内面にある集団なので、文化やムード、なんとなくある雰囲気とかですね。
あとは、そこにある集団の価値基準や、いろいろな人たちの関係性も影響してきますよね。内面の左上には「主観的」とあります。内面の個人のほうにいくと、その個人の中にあるものを見ていくかたちになるので、感情やその人の経験そのものも含まれるかもしれません。そこから生まれる価値観といった類いのものです。
右上の個人と外面のほうを見ると「客観的」と書いていますが、行動や言動などですね。あとわかるものでいくと、年齢や性別、能力やスキルみたいに、ある程度言語化したり目に見えるようなかたちにできるものは、ここに属します。
右下の欄は「社会的」という側面になるんですが。集団の外面なので、組織構造もしくはその会社がどんな事業を営んでいるか、そこにおける戦略・戦術をどう進めていくか。評価報酬制度の仕組みといったものがここに属します。
例えば、今回のテーマにあるように、例えば営業ノウハウが蓄積されないといった時に、これも(インテグラル理論の)4象限から捉えることができます。
そもそもちゃんと提出することを良しとする風土になっているのかどうかが文化的な見方ですね。ちょっと怠けるような文化があると、機能しづらいという見え方もあるかもしれないですし。
長谷川:主観的なほうでいくと、「20人中8人しかやらなかった」という見方になるので、そこには20人それぞれの主観というものが存在します。一人ひとりがどんなふうに見ていくのかという見方から、それ(うまくいかない要因)を紐といていくのが主観的な見方です。
客観的な見方というのは、能力や経験、スキルの差といったいろいろなものから見た時に、この(議事録の提出を)やることがどう意味づけられるのかを見ていく。
制度から見た時に、それが評価報酬制度にどう紐づくのか。もしくは事業戦略に対して、今回の取り組み自体がどのように影響を及ぼすのかというところから、今回の取り組みを見ていくという考え方になります。
次のページは、たぶんホラクラシーの実践例で、自律型組織でも同じような文脈で見ていくんですが。それぞれの領域からテンションということでひずみを扱って、例えば内面のほうはRELATIONSだと、けっこう合宿や関係性といったところで扱っていて。
右側の外面的なところで言う、組織の構造や戦略はホラクラシーの中で表現されているので、そういったものから修正していくようになります。
あと、客観的な行動やプロセスのところは、ロールの中でどう表現していくかということで修正したりします。自律型組織では、こういったものを常にレンズとして備えながら運営しています。そういうやり方として、ご紹介しております。
加留部:ありがとうございます。じゃああらためて、このケースをソース原理やホラクラシー、自律型組織のレンズで見てみると、どんな解釈ができそうだなと思いますか? 長谷川さんからいいですかね。
※再掲
長谷川:そうですね。ソース原理はまた後で扱うとして、さっきの4象限とかの近いところで見ていくとですね……。
ちょっとソース原理にも近づいてくると思うんですが、やっぱり私から見ると、関係性の領域などは、事業の戦略や戦術がどう位置づけられていて、それが資料や議事録作成と、どのように密接に関与しているのかということが少し気になります。
例えば、最近は時折宮大工の本を読んだりしていて。寿司職人でもいいんですけれども、職人の世界観って、たぶんこういう話をしても、あんまり響かないのかなと思っています。口伝だったり、技術は見て盗むものだという文脈がある時は、たぶん機能しづらい。
コンサルティングといった業態でも、より一人ひとりの色合いや特性を出すような領域だと、たぶん機能しづらい文脈ができるんだろうなという見え方があります。
一方で、細分化されて業務プロセスも定義されていて、それを再現性高くやっていくような世界観になればなるほど、ツールを出して議事録を取ることは、すごく価値が高まっていくので、戦略的な必然性が高まるなぁというふうに見えています。
このへんをどの文脈から捉えるかという観点は1つあるかなと思いますね。20人中8人なので、もしかしたら意味を薄く捉えているのかもしれないといった見方もしています。
加留部:この場合、関係性という意味だと、一番若手のメンバーで、しかも中途採用で入社してまだ間もないというところもけっこう影響があったりするんですかね。
長谷川:それはあるかもしれないですね。
加留部:チャット欄にも質問が来ています。「お二方の会社では、トップダウンで指示したり、ルール化して守れなかったら評価に反映するようなアプローチはしないのでしょうか」と。
確かに、新しい試みや既存業務の改善といったものと、そういったもの(評価)をある種結びつけて、強制力じゃないですけど、金銭的なインセンティブも含めてやるという手段もあると思いますけど。
お二方は、このケースについて「営業議事録を書かないと評価下げるよ」とか。ちょっと極論ですけども、そういうアプローチについてはどう考えているのか、おうかがいしてもいいですか。
山田裕嗣氏(以下、山田):議事録を書かないことに対して、インセンティブをネガティブにつけるかどうかというのは、ちょっとわからないんですけど。
大前提として、そういう評価の使い方をすることが是か非かでいうと、僕は是だと思っています。ただ当たり前だけど、それはけっこう丁寧な文脈があった上でだよねと思っています。
この組織で、何を守らないとマイナスがつくのかということの文脈がわかってるんだとしたら、その物差しを守ることがすごく大事だと思うんですね。減点法的な物差しは、たぶんRELATIONSや私が好きな組織としてはだいぶ少ないと思うんですけど。
例えば、毎回時間を守らないとだめじゃないですかということがあるとして、お互いに気持ちよくコラボレーションするためにも時間は守ろうよと約束しているとしたら、それが守れなかったらマイナスをつけるよと。そういうことは、逆にやらないことで時間を守っている人たちの文化が損なわれていったり。そのほうが僕は怖いなと思います。
そういうセットアップがちゃんとあった上で、マイナスをつけるんだとしたら、ぜんぜんありだと思います。ただし、すごく慎重にやる必要があるという前提だと思いますけれども。
長谷川:確かにそうですね。RELATIONSでも、けっこう近い問題が毎回勃発しては「どうする?」という話になっているので、人ごとじゃない問題だなぁと感じてるんですけど。
私の世界観からすると、やっぱり大切にしたいのはまず「オープン化」というか、それが本当に提出されていないという事実自体が全員に知られるようにしていくことが大切かなぁと思っています。
もし仮にそれが情報として周知された時に「ちゃんと提出しようよ」という人と、「いやいや、まあまあある程度でいいんじゃない」という人とでちゃんと分かれて、対話が起こる。それで、意味(のある取り組み)にちゃんと昇華されていく。地道なんですけども、そういうことをやっていくことが大切で。
ただ、何度対話したとしてもそれが続くようであれば、やっぱり最低限の罰則というか、ちゃんと評価に織り込んでいくほうがいいのかというのは別として。何かしらの処遇には入れていかないと、そういう方が放置されること自体でもストレスを溜める方がいるのは事実だと思うので。
ただ、いきなり最初から頭ごなしにやるのは、逆効果というか副作用のほうが強そうだなという感覚がしますね。
加留部:評価に入れる時は慎重にやらないと、本当に大炎上の危険性がありますよね。
長谷川:確かに。
加留部:では、お二人の回答としては、「アプローチをしないのでしょうか」という質問に対して「する可能性はぜんぜんあるし、すべきタイミングもある」ということですね。
山田:そうですね。「選択肢として持ってはいます」というのが僕の感覚的には近くて。使うケースがすごく少ない組織を作りたいですし、そのほうがきっと生命力があったり、僕の好きな組織だなと思っているんですけど。
山田:ちょっとソース原理の文脈で語ってみると、ソース原理でも「トップダウンとボトムアップはどっちも必要だよね」という言い方をするんですね。トップタウンをする時は限られているんですけど、イニシアチブの中で明確に外れているものがあった時に、「ノー」と言って境界を守ることはソースの責任であるという言い方をすごくするんです。
明確に「それは違う」と言うのはソースの役割で、そこに入っているものがあれば一緒にやっている人に委ねるほうが、その人もクリエイティビディを発揮できる。ボトムアップでどんどん活かされるほうがいいよね、ということの使い分けはどっちも必要だという話です。
ティール組織的な文脈で言うと、家族的な対話を大事にするのは、よく「グリーンの罠」と言われて。(グリーンな組織は)相談ばかりして、「みんなの意見を聞かなければ進めない」と言って、何も結論が出ないと言われたりするんですけど。
そういう時に、何か外れるものに「ノー」と言う振る舞いは、ソースだからできるんだよねということはすごく大事です。ティールとグリーンの捉え方の1つの違いとして、ティール組織の解説を書いている嘉村賢州さんもよくおっしゃってるので。
トップダウンだからだめじゃないというのも、大事なこととして1つ補足したいと思いました。
加留部:ありがとうございます。どこまでトップダウンでというか、ルールとして決めてやっていくか。どこまでクリエイティビティを担保して、みなさんに遊んでもらうか、やってもらうかという線引きや設計は大事そうですもんね。
山田:そうですね。
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