2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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佐野創太氏(以下、佐野):視点を変えてストレスを軽減させるというところでも、たくさんコメントが来ていますよ。「今仕事で感じているストレスは業務内容が合わない。もう1つは業務量が多い。仕事を回すだけになっていて仕事そのものの楽しさを感じられない」どうしましょう。
本間正人氏(以下、本間):これもChatGPTに聞くと、「上司と相談しろ」とか「業務内容を見直して、減らせるところを考えてみましょう」「アウトソーシングできるところを考えましょう」とか言われますよ。
でも、その人の状況において、何がベストかはわかんないよね。ひょっとすると、仕事そのものの中に楽しさを見つける工夫があるのかもしれない。
同じような仕事をやっている人に「勝った」みたいな心理的優越感を味わうことが喜びかもしれないし。今まで78分かかっていた仕事が、「72分でできるようになったぜぃ!」みたいな、作業時間の自己ベストを更新していくことに喜びを感じることもあるかもしれないし。
業務量が多いというのは、「手を抜く」と言うとすごく聞こえが悪いけど、20パーセント80パーセントの法則というのがあって。20パーセントの投入時間で8割ぐらいのクオリティのところまでは行く。残り80パーセントの時間で残り20パーセントのクオリティを上げていくみたいに言うじゃないですか。
佐野:ありますね。
本間:そうすると手を抜くという発想ではなく、限られた時間の中でクオリティと仕事量のトレードオフを、どのぐらいのところで均衡させるかという捉え方は可能じゃないかなって思いますね。業務内容が合わないと感じる場合には、細分化してみる。合う合わないって茫漠とし過ぎているわけですよ。
でも、「求人票を書くのが大好き。テレアポ大嫌い」って刻んでいく。業務内容を例えば20分割した時に、AランクからC、D、Eランクとランキングをつけてみて、こっち(好き)側が増えるような工夫をするのは、あり得る気がする。
佐野:まさに仕事のみじん切りで。
本間:みじん切り、みじん切り。
佐野:(本に)書きました。
本間:レトリックがうまいよね!
佐野:みじん切りは大事ですよね。大きくやると全部嫌いになるんですけど、細かく分けると意外と「7分の2は好きだ」みたいなことが起きてきますもんね。
本間:本当に本当に。
本間:どんなお仕事をされているのかわからないですけど、コーチングのいいところは、人は考えるのが面倒くさいからざっくり捉えて、「業務内容が合っていません」とか言っちゃうわけ。
でも「ちょっと待って。業務内容が合わないっておっしゃったけど、業務内容は、例えば3本柱でいうと何と何と何ですか? Aの柱、Bの柱、Cの柱、一番合わないと思ってるのどれ? 合うと思ってるのどれ?」
考え方の道筋をつけるというサポートに、コーチングが入るとすごくやりやすくなるわけ。(本を手に持って)日経文庫『コーチング入門第2版』。こちらは『セルフ・コーチング入門第2版』。こういう本が出てるという事実だけ、お伝えしたいなと思うわけでありますが。
佐野:(笑)。僕、読んだんですよ。僕もけっこう考えるタイプだと思っていたんですけど、悩んでいるだけで前に進まないことも多くて、これを読むと前に進むんですね。
本間:自分の頭の中にコーチを置いて問いを投げかけて、それに自分で答える。これがセルフ・コーチングですけど、悩んでいる時にはダメダメな質問をする人が多いんですよ。
「なんで俺はいつもこんな貧乏くじばっかり引くんだろう」「なんでヘマしたんだろう」「あの人はどう思っているんだろう」とか、考えてもしょうがないことを考えるわけ。「あの人どう思ってんだろう」って聞いてみればいいじゃないですか。
佐野:(笑)。
本間:「あの時ああすれば良かった」って、タイムマシンはないんだからさ。考えてもしょうがないわけ。「何でこうなっちゃったんだろう」「理由なんかありません」って話なんだけれども。
佐野:(笑)。
本間:そういうことを考える時間は無駄です。コーチはそういうしょうもない質問をしないじゃないですか。
佐野:そうですね。しょうもない話(笑)。
本間:セルフ・コーチングだとついつい考えているつもりで、そういう後ろ向きな、非建設的な質問になっちゃうので、それを修正する。僕は「思考の罠」って呼んでいるけど、その罠から外れて、建設的な、前向きな未来志向の質問に切り替えると、セルフ・コーチングはうまくいきますよというのがこの本でございまして。
佐野:(笑)。ありがとうございます。
佐野:他にも、意思決定のところで「今、人生の岐路に立たされている感覚あります。その中でどのように選択していけばよいのか」とか、「『スパッと決断できる人が羨ましい』と思ったことが何回もある」と。
本間:そうね。スパッと決断するのって、練習が必要だと僕は思っているんです。
佐野:練習。
本間:明日お昼ご飯何食べる?
佐野:ええっとパスタ。
本間:これです。
佐野:(笑)。
本間:明日のお昼ご飯って、ちょっと遠い話をしたけれども。お昼どの店に入ろうかな。3秒で決める。メニューどれにしようかな。3秒で決める。「3秒ルール」って僕は呼んでいますけど。あとで「あっちのほうがおいしそうだったな」とかあるかもしれないけど、これをやっていると、スパッと決めるという筋肉が鍛えられます。
佐野:ああ、筋トレみたいなのがあるんですね。
本間:そう。電車に乗る。あっちの席とこっちの席が空いている、こっち。これは3秒待っていると他の人に座られます。ですからもっと早く行かないといけないんだけど、毎日自分の決断力を高めることを意識すると、その筋肉を高めることができます。
佐野:ああ、そうなんですね。
本間:学習の4段階というのがあって。最初はできないことを意識しない。できないことを意識する。意識するとできるようになる。意識しなくてもできる。これが学習の4段階なんですよ。スワヒリ語できる?
佐野:できません(笑)。
本間:気にしてる?
佐野:していません。
本間:これは、できないことを意識していない状態なんですね。
佐野:なるほどなるほど。
本間:でも、ケニア、タンザニアに行って、ナイロビ、ダルエスサラームは英語通じるけれども、ちょっと田舎行くと英語が通じないところがあるわけ。もちろん日本語も通じないじゃないですか。
「やべー! 俺スワヒリ語できねぇ!」ということに気づく。これが第2段階です。でも「まあどうせ1週間で帰るからいいや」と思ったら、別にスワヒリ語なんて覚えなくてもいいわけですよ。
佐野:はい。
本間:「でも、せっかく来たから、現地の人とコミュニケーションを取りたいなー」なんて、佐野さんなんかは思うんじゃないかと思うんですけど。
佐野:思いますね。
本間:思うでしょ? そうすると、ネットのスワヒリ語を会話集とか、ちょっと余裕があったらスワヒリ語学校とかに行って。意識するとできるようになるわけ。おはようって何て言うのかな。ジャンボ。こんにちは。ジャンボ。こんばんは。全部ジャンボかって話なんですけど。
佐野:(笑)。そうなんですか。
本間:そうすると、ある日あっちからジョンさんが来た時に、「ジャンボ」って意識しなくても言えるようになっている。でもそれは意識してやるってことを積み重ねていかないと、意識しなくてもできるという境地に達することはできない。
これが学習の4段階って話なんです。「決める」という行為も、やはり意識して決める。
本間:意識して決めると、それが鍛えられるし、ソニーさんの場合TOEICってどのぐらい受けさせられてるのか知らないんですけど、TOEICのスコアが上がります。
佐野:そうなんですか。
本間:そうですよ。だって「ああ、さっきのやつCだったかな、Dだったかなー」ってウジウジ考えていたら次の問題が始まって、雪だるま式に点を落とすわけですよ。聞いたらパッとつける。次の応用も聞いたらパッとつける。TOEICのスコアも上がるし、決断力を鍛えるトレーニングになると思う。
ご飯を食べる時でも電車に乗る時でも、自動販売機でどの飲み物がいいかなでもパッと決めてください。
佐野:急に大きな意思決定をどうのこうのというよりも、日常のちっちゃなところからやっていく。
本間:だって人生は決断の連続なわけじゃないですか。今日このジャケットを着てこよう、この靴を履いてこよう、このセーターを着てこようと決めたでしょ?
佐野:はい。決めました。
本間:決めているんですよ。
佐野:確かに、意思決定の連続ですもんね。
本間:今日このソニービルに来るという約束をしたけど、来ないってことだってできたわけじゃないですか。
佐野:そうですね。
本間:「行きたくな~い! モヤっとする。なんか本間さんやだ。よくしゃべるし」とか思ったから来ないって選択だって、実はあったわけじゃないですか。
佐野:確かに。でも今日来ました。
本間:来たわけ。決めているんですよ。だから、意識していなくても、人生で決めていることはいっぱいあるわけ。でも大事なことになると、どうしても重要だなと思うから一歩踏み出すことに慎重になる。
慎重になること自体は悪くないんだけど、慎重になりすぎると一歩を踏み出さないじゃないですか。そのためには、前に踏み出す筋力を鍛えることが僕は大事なかなと思います。
佐野:ありがとうございます。筋トレみたいのがあるとは思わなかったです。
佐野:そして、たくさん質問が来ていますよ。
本間:とてもじゃないけど、これは全部答えないほうがいいね。
(一同笑)
佐野:本間先生が20時から、また違うところのイベントがあるので、あと3分ぐらい。
本間:あとはお任せします。
佐野:(笑)。どこからいこうかな。定年の話はさっきしたので、「生業をいかに成立させるかを考えながら、定年に関係ない楽しみと働くことをつなげたものを始める時だと考えている」と。
本間:いいじゃないですか。
佐野:いいですよね。
本間:ピーター・ドラッカー先生が、パラレルキャリアというのを1990年代の頭に提案しているわけですね。定年が終わった後、そのあとの人生が80歳ぐらいまでありますと。この20年間をどう過ごすか、みたいな。車は急に止まれない。人生も急には変えられないみたいな。つまんなかったな。
佐野:(笑)。
本間:やはり助走が大事だよね。だから30代40代の頃から、仕事を卒業したら何するかを考えておきましょう。副業でも、マルチの複業でも、社会人としての学びでも、趣味でもボランティア活動でも何でもいいんだけど、それをパラレルキャリアとして早めにスタートして、助走をつけておくといいですよっていうのを、ドラッカー先生がおっしゃったわけです。すばらしい慧眼だ。
当時のアメリカだと「人生80年時代」だけど、日本は今、冗談抜きで「人生100年時代」ですからね。卒業したあとがもっと長いわけじゃないですか。そうすると早めに助走をつけておくだけじゃなくて、パラレルだと数学的に交わらないんですよ。
慶野英里名さんという人がここにいて、佐野さんともお友達なんですけど、一昨年の11月に一般社団法人クロスオーバーキャリアというのを立ち上げた。パラレルじゃなくて、クロスオーバーだと。
つまり子育ての経験が仕事に生きることもあれば、趣味が卒業後の仕事を創業する時に役立つかもしれない。あるいはボランティア活動で人間関係が培われて、その仲間と新しい会社を作っちゃうことだってあり得るわけで。
本間:キャリアの世界では、プランド・ハップンスタンス(Planned Happenstance)という考え方があります。偶発的な出会いによってキャリアが変化していく。成長していく。でも偶発的な出会いって、待っているだけではなかなか降ってこないから、自分から偶発的な出会いを求めていく。
勉強会に行くとかいろんな活動するといいよねっていうのが、プランドハップンスタンスっていう考え方です。同じように「クロスオーバーする人生なんだ」というビジョンを持って、卒業前から自分の強みを生かしたかたちのキャリア展開を考えておくといいなと思うんですよ。生業、いい言葉じゃない?
佐野:いい言葉ですよね。
本間:やはり強みを活かすことを考えるといいと思います。何がお好きな方か、何が得意な方か、何がノーストレスな方かはわかりませんけれども、それがたぶん強みでいらっしゃると思うので、それを活かすかたちにする。
そしてソニーの人脈とか、ソニーで培ってきた能力を、最大限活用するかたちで、次の展開を、見つけていただけたらいいなと思います。当然リスクはあります。でも何もしないほうがたぶん体に悪いですよ。今まででいっぱい働いてきたんだもん。
佐野:(笑)。
本間:ドーパミンの世界にいたわけでしょ。急に変わると体に悪いから、徐々に徐々に人生設計を考えていっていただくといいんじゃないかと思います。
佐野:ラストの視聴者の方の声をご紹介します。「若い世代に特に伝えたいことをお聞かせください」とか、「ミドル世代が学び直しを先送りする理由に関心があるので、結果として人の転機になりうる出来事をつかむために大切にしてること」といった質問が来ていますので、それをうかがって、本間先生は次の番組に。
本間:僕は「学び直し」って言葉を実は使わないんですよ。
佐野:ほう。
本間:リスキリングもスキルにちょっと特化していて。ものの見方とか、知識、感性とか、「スキル」って言葉になじまない学びも僕はすごく重要だと思うので、リスキリングって言葉を使わない。
「学び直し」っていうのも悪くはないんだけど、「直す」っていうのはどっかが壊れているとか、どこかがうまくいっていないから「直す」わけですね。病気だったり、故障箇所を直すわけじゃないですか。過去にやってきたことを否定するニュアンスが入っているふうに感じちゃうのね。僕は語感として。
だから僕は学び直しって言わないで、「最新学習歴の更新」と言っています。学歴って、教育基本法の一条校を卒業すると得られるわけだけど。仕事の中の学び、人間関係の学び、趣味の学び、家事育児の学びもみんな学びなわけです。これは学習歴。「最終」があってはいけないので、「最新学習歴の更新」と言うのが、よりジェネリックな、ユニバーサルの言葉だと僕は思っていて。
キャリアコンサルタントの方にも、大学生・子どもたちにも、「最終学歴なんていうのはないんだよー」ということをお伝えしたい。アンコンシャスバイアスというか、固定観念があるからね。
本間:18歳で大学に行かなきゃいけないと思っている人がすごく多いんだけど、そんなことはないわけで。今、放送大学の年間の学費は16万円ですよ。我が京都芸術大学の手のひら芸大は17万円です。まだ申し込みできます。(※2023年3月16日に開催されたイベントです)
佐野:(笑)。
本間:例えば高卒で仕事しながら、放送大学で4年間学ぶ。仕事しながらだから、貯金ができるからね。仮に4年間で400万円の貯金ができたら、えらい違いじゃないですか。100万ずつ借金背負って、大学卒業する時に400万円、500万円、最悪600万円の借金を背負って卒業するのと、貯金持って卒業するのってえらい違いだと。
そういう意味では、周りの人が、同級生がどうしてるかということよりも、自分がどうしたいのか。今は何歳からでも高等教育を受けるチャンス、機会が開かれているし、英語さえできれば、MOOC(Massive Open Online Courses)というのがあって、スタンフォードだ、MITだ、ハーバードだの授業が無料で受けられます。すごいことです。
単位を取ろうと思うと、お金払って試験を受けないといけないけど、それだって、今までだったら何千万円かけて、ボストンに行かなきゃいけなかった、ハーバードに行かなきゃいけなかったみたいなやつが、日本にいながらにして、働きながら世界最高峰と言われる大学の授業を受けられる。こんなの昔はなかったんだから。
だから、広い目で自分の生涯学習戦略を考えていただくことが、今すごく重要じゃないかと思っていて。同級生がどうするかじゃなくて、本当に視野を広く持ってキャリアを考えてほしい。そして「学ぶことは楽しい! 学ぶのが楽しいんだ!」ということを、2歳のお子さまにもぜひ伝えていってほしいなと思うのでございます。
佐野:ありがとうございます。本間先生、8時なので次に行かないと。僕も学習学に影響をいただいて退職学を始めた立場として一言。「若い世代に特に伝えたいこと」で言うと、「どっちの方向に向かって働くか」があります。
これまでは1社がくれる終身雇用を手にするために。これからは複数社や複数人から「もう一度一緒に仕事をしよう」と声をかけられる自分になる「セルフ終身雇用」になります。
本間:はい。次に行きます。
佐野:(笑)。「ミドル世代」に関して言うと、楽しいキャリアの棚卸しがおすすめです。軽い興味でいいので「これやれたらいいな」という、これからやりたいことを仮置きする。それに近しい経験を過去から芋づる式でつなげる。すると「私は仮置きしたことにつながる経験をずっとしているんだ」と気づき、自信が湧いて、また学びたいことや情熱が湧き上がってきます。
本間:ありがとうございました。
佐野:ありがとうございました。
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