2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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安永雄彦氏(以下、安永):最後に、今日のテーマである「現代におけるレジリエンスを保つための秘訣」。最後だけいいとこ取りするみたいで申し訳ないんですが、塩沼先生から「こんなことをちゃんとやったらいいんじゃない?」というものが3つあれば、ぜひ。
塩沼亮潤氏(以下、塩沼):そうですね。今日お話しさせていただいた中で、思い当たることを3つ。
安永:それでけっこうです。
塩沼:1つ。私は過去に千日回峰行を白星でずっと飾ってきたので、結果が出ても出なくても、どちらにしても毎日自分なりに精いっぱい生きていく。その積み重ねが、過信ではなく自分の自信につながってくると思います。
そして2つ目が、与えられた環境の中で一生懸命、精いっぱい生きてみる。あとは、短期的な結果を追い求めない。ただ、精いっぱいがんばっていると、どこかで見えない功徳が花咲く時があるんですよね。
人生の選択肢で右か左かという時に、欲に負けて「こっちが簡単で出世するほう」「こっちが難しくなくてお金儲けするほう」という方向へ行ってしまいがちです。私は右か左かという時には、「人の今までの業を考えるとこっちだよな」と考えます。
「面倒くさいほうだよな」「地道なほうだよな」と歩いてきた結果、とても回り道をしたようですが、それが一番近道だった54年間でした。目先の損得にとらわれずに、地道に精いっぱい、ピュアな心で努力をし続けるのがポイントではないかなと思います。
安永:なるほど、ありがとうございました。こうしていろんなお話が出てきて、みなさんの中でも「心に残ったポイントはここ」「これはできるかな」と思われたのではないでしょうか。最後の3つの秘訣は、誰でもできますよね。
ただ、一度やると決めて、毎日その教えを守って、1個でもやろうと思うのはけっこう大変です。でも、続けると必ず突破していく道が表れてくるのかなと私自身も思います。
安永:残りの時間は、フロアのみなさんからの質疑応答をさせていただきたいなと思っております。どなたからでも。では、まずはこちらの方からいきましょう。どうぞ。
質問者1:本日は貴重なお話をありがとうございました。塩沼さんは修行を終えて笑顔が増えたそうですが、やはりマイナスの感情はなかなか日常生活で抜けないところがあります。
ただ、その中でも「いいマイナスの感情」と「悪いマイナスの感情」があるのかなと思っています。自分を成長させるため、自分に足りないものを身につけていくために、マイナス感情をバネにするところがあると思うんです。
私が今「良くないな」と思ってしまうのは、他の人と比較してしまうことです。自分との戦いに持っていきたいんですが、「あの人はすごいな」「この人に負けたくないな」という感情とどう向き合っていけばいいのか、教えていただければと思います。
塩沼:どうぞお座りになって、楽に聞いてください。「他の人と比較する」と言うと、私も負けず嫌いなので、もしかしたら他の人と比較してしまう自分がいるかもしれません。それで人生を生きていると、「あ、この人すごいな」という、はっとするようなすごい人と出会ってしまうんですよね。
今から言う言葉は、誤解がないように。その時に、相手ではなくて自分自身に「ちくしょう!」と思うんですよ。悔しいですよね。悔しいと思った瞬間に、その人を0点何秒の間にリスペクトするんですよね。
私も同じように、「どうやったらこれができるようになるんだろうな?」というのが、原動力やエネルギーになっていますね。それでここまで上ってきたのかなと思います。その気持ちは、遊び心として大事だと思いますね。
「人と比べたらダメ。そこにとらわれるな」と、経典には書いてあって、仏教学を勉強した人は「それは仏教に反するのではないですか?」と言うかもしれません。しかし、努力して努力して上を目指すには、ゆとりや遊び心みたいなものはあってもいいのではないかなと、今は思っています。
安永:ありがとうございました。じゃあ、後ろの方どうぞ。
質問者2:本日はありがとうございました。
塩沼:ありがとうございました。
質問者2:1つおうかがいしたいのは「復元力」です。大きな偉業を達成した後は気が抜けてしまうとか、ある種1つのゴールを迎えてしまうと思っていて。その後、次の目標とどう向き合っていくのかを教えていただきたいなと思っています。
塩沼:具体的に私の場合は、「現在進行形で向かっている夢」と、その先に「次の夢」を持つようにしています。なので1つの目標の通過点を達成したら、間髪入れずに「じゃあ次はこっち」と、夢のまた夢を持っているので、「はあ」と脱力してしまって次の一歩が踏み出せないとか、だらけることは人生の中でなかったです。
なので、白星・黒星の日記も999個しか付けていないです。32歳で1,000日を迎えたんですが、その時には日記も付けずに終わっているんです。人生の最後まで1,000日が永遠に続くように。
自分をストイックに追い込んで、修行していた時にしかモチベーションが高まってくるような幼稚な時代ではなく、雨露をしのげてご飯も食べられて、山も何十キロも歩かない今の環境でも、修行していた厳しい環境よりもモチベーションは今のほうがかなり上ですね。そうやって、自分の夢に次から次へと向かっています。
安永:ありがとうございました。それでは、他の質問どうぞ。お願いします。
質問者3:今日は大変興味深いお話をありがとうございました。
塩沼:ありがとうございます。
質問者3:塩沼先生が最後に「毎日精いっぱい一生懸命生きていく」「与えられた環境の中で精いっぱい生きていく」「結果を求めない」という3つのお話をしていたんですが。
私も自分で3つ考えてみて、先生の話している様子を見ていると、その日一日を楽しかったと思える心と、幸せだったという気持ちと、感謝。この3つでも、私的にはすごくいい人生になるのではないかなと思ったんですが、そのことについて先生はどう思われますか?
あともう1つだけ聞きたいのが、宗教界はITを入れるとマッチング度合いがすごく良くて、革新できるのではないかと思っています。「すごくしがらみがある」というお話があったと思うんですが、その点についてもお話をお聞かせ願えればと思います。
塩沼:そうですね。今おっしゃったことは、私もそう思っています。毎日自分自身が「今日は一生懸命がんばって楽しかった」と思えるだけで、人生がとてもハッピーになって、豊かになってくると思うんですよね。でも、毎日ずっと続いていますか? 続かないですよね。
塩沼:「『そうなったらいいな』とイメージをしてください」とさっきも言ったんですが、私がまだ30代の後半ぐらいの時にある方とお話しをしていて。
「私はストイックに自分を追い込んできて、それで人生を楽しく生きていこうと思っているんです。でも、まだまだ今日より明日、明日よりあさってと思う心があるんです」と、同じような話をした時に、その方は1つ達観されていました。
「でも私は、毎日一生懸命がんばったら『今日は今日。まだまだ不十分な自分でもこれで良かった』と思うようにしているの」と言われて、その言葉が30代後半だった時の私にとても響いたんですよね。
53歳ぐらいになった時に思ったのは「あ、毎日が楽しい」。楽しい時ばかりが楽しいのではなくて、追い込まれた時とかストレスや負荷がかかる日々でも、「ずっと楽しくいられるな。本当に毎日楽しいな」と思えるようになったのが、53歳の頃ですかね。
それまでは「楽しく生きよう」というマインドをかけて、辛いことでも楽しく生きようとして、無理に楽しかったんだと思うんですね。だけど、よく考えてみたらあまり楽しくなかったんです。
でも、53歳になった頃に楽しい時期を迎えられた。なんとなく「自分はそれができている」という気づきと出会えたら、幸せですよね。
塩沼:安永さん、ITのことに関してはどうでしょうかね?
安永:私のほうがちょっと詳しいかもしれないけど、宗教界のIT化はめちゃめちゃ遅れています。私がいる宗派では、世間に比べてざっと40年遅れている。
だから逆に言うと、ITを入れると合理化できるものはものすごくいっぱいあります。そういった意味では、質問者がおっしゃることはまったく正しい。ただ、わかる人が少ない。だから、ぜひ来て手伝ってください。
塩沼:ちょっと自慢していいですか?
安永:どうぞ。
塩沼:慈眼寺は、お守りや本を求められた方はキャッシュレスで買えますよ。
安永:そうですか(笑)。非常に進んでいますね。
塩沼:Instagram、Facebook、ホームページ、YouTube、全部。たぶん、日本ナンバーワンだと思います。
安永:ナンバーワンですか。すばらしい(笑)。
塩沼:「時代に乗っていかないといけないな」と思うものの、そんなに多くは発信していません。というのも、言葉で自分の思いを伝えるのはすごく難しいんですね。
塩沼:お釈迦さんが悟った時に「これを言語化してみんなに伝えることは不可能だからもうやらない」と言うと、インドの最高神のブラフマーが「そんなこと言わないでやりなさい」と言った。「じゃあやってみましょうか。それだけ懇願されるんだったらやりましょう」と、言語化をして説法が始まったわけです。
先日ある会場で講演した時に、私がヨーロッパのイギリスでコンタクトを取っている人と話をしていて、「塩沼さんはヨーロッパに何を伝えたいんですか?」と言われたんです。
「いやいや、違うんだよ。『伝える』のではなくて『伝わる』んだよ。伝えると言うと作為的になる。当然宗教者としては説法をしないといけないが、自分が正しく生きていたら、『あの人楽しそうだな。まねしてみよう』と思ってもらえる。これが『伝わる』なんだよ」という話をしたんですよ。
そうしたら質問コーナーで、その人が「はい、はい」と手を挙げて。「先ほど『すでに伝わっているから伝えることはない』とおっしゃったのは、どういうことでしょうか?」と。そこでもう、言葉の取り違えが出てくるんですよね。
本当に言葉しか頼る道具がないんですが、言葉を伝えるのはとても難しいので、うかつにネットでいろんなものを伝えるのは本当に注意しないといけない。特に宗教の場合は注意しないといけないなと思いながら、この時代と向き合っています。以上です。
安永:ありがとうございました。それじゃあ後ろの方、どうぞ。
質問者4:本日は貴重なお話をありがとうございます。先ほど「心が折れそうになった時に、心の支えになる良き理解者を持つ」というお話があったと思います。
私は、自分自身が自分にとっての良き理解者であって、良い味方、心強い味方になりたいなと思っているんですが、そうなると自分との対話の中でしかそれは実現されないのかなと思っているんです。
たぶん塩沼さんも、日々の生活の中で自分と対話する機会があるかと思うんですが、いろいろな修行を経て、現時点で自分と対話する時間の中で心がけているものとか、自分へ問いかけているようなことがあれば、ぜひお聞かせいただきたいです。よろしくお願いします。
塩沼:自分を成長させるために、最後の一息まで成長していきたいと思っているんですよ。私とみなさんとは今日ご縁がありましたが、3ヶ月後や1年後にどこかでお会いした時に、「この間会った時と雰囲気が違うな」と思っていただけたら、1ミリは成長しているということなので、これを生涯にわたって続けていきたいと思うんですよね。
そのためには、自分自身を俯瞰的によく見て、自分の悪いところを自分で発見して成長させています。ただ、自分の悪いところや弱さを自分で認めると、ネガティブになってしまう方もいらっしゃると思うんです。
お仕事をする時も、チームのLINEのグループがありますので、自分の仕事の結果を見て「こういうところが今回悪かったです」と、私はあえて自分の悪いところを素直にあげます。
塩沼:55歳になるのでみんな私より年下ですが、「塩沼さん。この間、苦手なところや悪いところを言っていましたけど、ここをこうしたらどうですかね?」と、年下の30代の子が教えてくれるんです。「わかった、やってみる」と言うと、うまくいくんですよね。
だから変なプライドはなく、「自分自身をより完成度高くブラッシュアップしていこう」と、自分自身を本当に信じている1人です。
そしてさっき言っていた「心が折れそうになった時」。自分で自分自身を支えていながらも、人と人がわかり合えた時が人生最大の喜びではないかなと思います。ありがとうございます。
安永:それでは、残り時間が少なくなってきました。あと1人、どなたかどうぞ。
質問者5:本日はありがとうございました。私自身はけっこうポジティブな考えを持てる人ですが、パートナーがすごくネガティブな人です。ネガティブな人を支えて、なんとかいろんな逆境や日々のストレスから解放させてあげようと思っているんですが、なかなかうまくいきません。ネガティブな人をどのように支えていけばよいでしょうか。
塩沼:それは私でも難しいかもしれないですね。でも、そこにとらわれないで、自分が楽しくしていれば、いつかわかって真似してくれる日が必ず来ると思います。気長に、相手に求めずに、自分は楽しく生きていこうと思ったほうがいいんじゃないかな。
でも、なかなか難しいけどね。陰気なほうにじとーっと引っ張られてしまうので難しいと思うけれども、それも自分の修行です。
塩沼:うちのお師匠さんが「山の行より里の行」と言っていて、「人間関係が一番の修行だぞ」と教えてくれたんですよね。修行道場で2人きりでは、人間関係が生まれないからダメですね。3人いて、初めて修行道場の役目が果たされるんです。私も今は穏やかですが、こう見えて昔は荒々しかったんですよ。
安永:(笑)。
塩沼:角があってとがっていた。頭を打ってだんだん丸くなってくるので、みなさんもぜんぜん心配することはないです。もう本当に、荒々しく角が立ったぐらいでないと世の中で活躍できませんから。ぜひ、だんだんと痛い思いをしながら丸くなってください。
安永:ということで、あっという間に1時間経ってしまいました。今日の塩沼亮潤大阿闍梨からの学び、みなさんの心に刺さったポイントを思い起こしてみてください。
3つの秘訣を教えていただきましたが、たった1つでもいいので実行していくことによって、みなさんの人生は必ず変わっていきます。
大修行はできないけれども、人生を生き抜くのは大変です。でも、少しずつ良くなる。そして見る目を養えば、ネガティブに振れがちな自分を「ちょっとこっちに行っているな」と思ったらまた元へ戻せる。
塩沼さんが言ったことを思い出しながら、毎日を生き抜いていっていただきたいと思います。時間でございます。本日は誠にありがとうございました。
塩沼:ありがとうございました。
(会場拍手)
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