相手の核心に迫るテクニック

稲村悠氏(以下、稲村):では、次です。想像してみてください。あなたの友人が最近やたらいい生活をしていると。ご主人は普通のサラリーマンのはずなのですが、やたら羽振りがいい。何かあるなと。ご主人の年収が気になる。いやらしいですけど、「知りたい!」と思った時にどうやって聞いていきますか? ご主人に聞いても、奥さんに聞いてもいいんです。

これは「2つ前から核心に迫るテクニック」を使います。(スライド)左側のスパイっぽいのがあなただとしましょう。右側が相手の方です。あなたは「実はね、最近息子が壁(紙)を破きまくって、修繕が必要なんだよ」と言います。すると相手は「そうなんだ、大変だね。うちも子どもが小さいから壁紙はけっこうボロボロだよ」なんて話をするんですね。

その後、「僕は持ち家だから、直すのにけっこう修繕費がかかるからイヤなんだよね。あ、マンションでもかかるか。マンションはどうなんですかね?」なんて話をすると、「いやいや、俺も持ち家だからね。いつ直すかタイミングを考えているんだよ」となるんですね。

(次にあなたは)「でもね、修繕するのにお金がかかるでしょう。ローンもあるし、いつか2,000万円くらい改築費用として必要なのかな」という話をします。その中で、例えば「僕は頭金をこのぐらい入れて、ローンをこのぐらいで組んでいるんだけど、あと何年払うんですよ」と、自分の支払い方法を先に言うんですね。

「頭金は入れてないから35年なんですよ」みたいなのを言うと、「そうなんだ、大変じゃん。俺はけっこう頭金を入れたから、月々はけっこう軽いんだよね」と答えてくれると思います。

核心に迫るためには、周辺情報を集めて推測する

稲村:これで核心に近い情報が得られました。月々の支払い方法、支払額がわかったと。これで核心の推測は立てられます。

これだけじゃわからないでしょ? と、みなさん思いますよね。そもそも持ち家かどうかわからなかったら、「そういえば、分譲マンションじゃなくて賃貸のマンションにお住まいでしたっけ?」とわざと間違える。すると「いや、俺、持ち家だよ」と簡単に教えてくれます。

それから、一般的推測がありますよね。Webなどで、「〇〇区のここらへんの家の値段はいくらぐらいだ」という。例えばご主人が営業の方だとすると、会社名と年齢と役職でだしたい年収の推測がつく。役職がわからなければ年齢で、「このぐらいの役職についているかもしれない」ということが、一般推論としてWebから得られます。

自宅の支払いの方法と同じように、今度は車の所有状況や支払方法など、似たような質問をぶつけるんです。それでも情報が足りなかったら、例えば子どもの習い事をいくつやっているのか。これで「月々いくら払えるんだな」とわかりますよね。

このように、いろんな角度から核心の周辺の情報を集めて、核心を見つけるんです。核心についてダイレクトに引き出すんじゃなくて、周辺の情報を集めて自分で推測して固める手法となります。けっこう堅い話ですね。

部下の本心を聞き出すには?

稲村:次が最後ですね。またみなさんにクイズを出すのでチャットの準備をお願いします。あなたは「部下が最近Yさんと話をしていないこと」を心配しています。どうやってその本心を聞き出しますか?

また3択ですが、4番があったら自由に記載してください。「またどうせ4番だろ」と思っているかもしれませんので(笑)、4番と書いていただけると幸いです。

1番が「Yさんのことをどう思う?」。2番が「Yさんと最近話をしていないでしょ?」。3番が「Yさん、最近感じ悪いよね」なんて、ちょっと同調してみる。ということでみなさん、朝会、諜報会議です。ぜひチャットに、1、2、3と打っていただけると泣いて喜んじゃいます。

(視聴者コメントで)「3番」、なるほどなるほど。ありがとうございます。3番が多いですね。4番もいらっしゃいますね。4番には、みなさんの「こう聞くよ」というご意見を自由に書いてください。

1番もいますね。「Yさん、最近雰囲気明るくなったよね」「Yさんと最近仲いいよね」「Yが悪口を言っていた」とか(笑)。ありますね。みなさん、さっきの「わざと間違えるテクニック」を応用してくださっていますかね。

わりとダイレクトに「お前、Yさんのこと無視してない?」「Yさんのこと嫌いなの?」と言ってみるというのもありますね。なるほど、やっぱりバラバラですね。

では、時間がなくなってきたので一回締めますね。ありがとうございます。みなさんの答えの中にも、確かに間違っていないものもたくさんあるし、別のテクニックとして使えるものもあります。ただ、今日は私がしゃべっているので、私が答えになるのでお付き合いください(笑)。

「第三者」を使って、本心を聞き出すテクニック

稲村:「本心を聞いてください」ということですが、解説をしていきますね。1番の「Yさんのことどう思う?」、これもごまかされますね。「いや、何とも思いません」など、つれない返事が来る。

2番の「Yさんと最近話をしてないでしょ?」は、「まあそうですね」とごまかしやすいんですよね。こういう質問はフックが効かないので、非常にごまかしやすい。「はい」とか「うん」とか「いいえ」で終わっちゃう。

3番のように「Yさん、最近感じ悪いね」と同調してみても、「そうですね。どうなんですかね?」とごまかしやすい。なのでやっぱり、答えは4番ですね。毎回すみません。「クライアントがYさんのことをすごく良く言っていたよ」と言ってみるんですよ。これは、第三者を使うテクニックになります。

「あるクライアントが、Yさんのことをすごく良く言ってたよ」と言うと、「いやでも、意外にYさんはこんなところがありますよ」と言うかもしれない。もしくは「確かにYさんはいいところがありますよね」と同調するかもしれない。これはさっき言った通り、言葉で返ってこなくても表情でムッとしているか、にこやかに同調するかでも読めるんです。

同調してきたパターンなら、「そうなんだ。あれ? でも最近話をしてないじゃん?」と聞いてみる。そうすると「いや、忙しいから話す機会がなくて」という答えが引き出せるんですね。これが第三者を使うテクニックです。

これは別の使い方もあります。「Yさんが〇〇について『(どう考えているか知りたいこと)』と言ってたんだよね」と言ってみる。このカッコの部分はあなたが知りたいことです。

例えば相手が飲酒運転についてどう思っているか知りたい場合は、「Yさんは飲酒運転について『絶対に許せない』と言っていたんだよね」と言ってみる。すると相手の方は「そうなんですね。でもいろんな事情があるんじゃないですか。あんまりそう思わないですけどね」なんて、本心をしゃべってくれる。これも、第三者を装って本音を引き出す手段となります。

本音、嘘、秘密は「聞き出す」のではなく「引き出す」

稲村:今日は話術としては3つしかご紹介しませんでしたが、本当は無数にあります。なので、ぜひ興味のある方は別の講演を聞いていただいたり、可能であれば本を立ち読み……立ち読みはまずいのか、買ってもらうとか(笑)。買わなくても私に質問していただくとか、ぜひ調べてみてください。

ということで、まとめていきます。今日はいろいろしゃべってきましたが、「引き出す技術」とは、「信頼関係」があって「仕草」があって「環境」があって「会話」がある。これが(スライドの)後ろの絵のように複雑に絡み合っているんですね。

そもそもなぜ、本音、嘘、秘密を「聞き出す」じゃなくて、「引き出す」なのか。実は全部しゃべって聞いているわけですが、これは引き出しているんです。なぜかというと、相手に自発的に話をさせるように仕向けているからなんですね。自発的な話の内容は非常に確度が高いんです。なので、引き出す技術は使えるということです。

冒頭に申し上げた「なぜ人の本音や嘘、秘密を引き出したいのか?」について、みなさんもう一度考えてみてください。やっぱり、良好な人間関係を築きたいからですよね。

今日のテクニックを使って、みなさんもぜひ本音や嘘、秘密を引き出して、それをうまく使って、豊かな人生を歩まれることを切に願います。ということで締めさせていただきますね。

その前に、大事なことを忘れちゃいけません。宣伝ですが、こんな本が出るんですね。私は知りませんでした。『元公安捜査官が教える「本音」「嘘」「秘密」を引き出す技術』。これ、「引き出す」なんですね。

ちなみに今日ご紹介したのは、わりと表に載っていることなんです。また、中身もかなり抜粋してご説明しましたが、本ではもう少し整理してあって、読みやすくなっております。私の母も大絶賛でした(笑)。

全国の書店・各種オンラインストアで発売中ですので、ぜひ手に取っていただければ幸いでございます。本日は長い時間、お付き合いいただきまして誠にありがとうございました。

森透匡氏(以下、森):ありがとうございました。稲村講師は初めて本を出されましたので、ぜひみなさんもご購入いただけますと、非常に喜んでくれると思います。僕も本を出していますが、1冊目って著者にとって大事なんですよね。ぜひAmazonなどでご購入いただけるとありがたいと思います。

「公安」と「刑事」は仲が悪い、というのは本当?

:(視聴者コメントで)「もう予約済みです」。ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。若干時間がありますので、ご質問があればお答えします。手を挙げていただくか、リアクションボタンでアピールしていただいて、ミュートを外してお話しください。何でもけっこうです。

元刑事と話す機会もあまりないと思うけど、元公安捜査官ってたぶん、みなさんもほぼしゃべる機会がないと思うんですよね。

質問者1:すみません、よろしいですか?

:どうぞ。

質問者1:公安と刑事の仲が悪いって本当ですか?

稲村:ありがとうございます。お答えを差し上げます。刑事の森代表の前で言うのも何ですけれども、仲は……距離があります(笑)。

というのも、刑事の方は目の前で起きている事件の被害者を救済すべく、毎日徹夜してがんばっているんですね。公安捜査官は事案の特性上、目の前で被害者が発生しない。オウムのサリン事件のようなものはなかなか起きないですし、目の前ですぐに被害者が発生しないんです。

その中で、公安捜査官はかなり奥にある国防という観点から、国益を守るために日々活動しているんですね。そこにギャップがあるんです。あと、公安は泊まり勤務の時に忙しくないのでよく寝られるんですよ。だけど刑事はめちゃくちゃ忙しくて寝られないんですね。そのギャップから、「公安この野郎」「ハムこの野郎」という感じで言われているイメージですかね。

ただ、「日本を守りたい」という気持ちは一緒なので、私はすごく仲間だと思っています。代表、こんな感じでよろしいですか?

:けっこうだと思います。

質問者1:ありがとうございます。

表情だけでなく、相手の「指の動き」まで観察する

稲村:ありがとうございます。(他の参加者の方も)手を挙げられていましたかね?

:どうぞ。

質問者2:相手の顔色を読み取って、テクニックを使い分けたりすることもあるんですか?

稲村:そうですね。今日はご紹介しませんでしたが、実は相手の外見や表情はすごく見ますね。表情だけじゃなくて、指先の動きも見ます。「嘘をついているかどうか」ではなく、「今何を考えているんだろう?」ということを見抜くために、仕草を非常によく見るんですね。いやらしい話、本にも書いてあります。何回言うんだって感じですが(笑)。

例えば、会食中に「ちょっとすみません」と相手の方がスマートフォンをいじるとします。その時の指先の動きが、フリックでメールを打っているのか、スクロールなのか、タップでメールを打っているのか。これだけで相手が何をしているのかわかります。

そこから「この人は今、退屈なのかな?」「今、何か調べているのかな?」と読み取るんです。だから、そこはすごく気を張っていますね。

質問者2:想像なんですが、動体視力を鍛えたりするんですか?

稲村:そうですね。実は僕はめちゃくちゃ目が悪いんですが、公安の時はコンタクトの度数をかなり強くしましたね。そういった努力もしていました。

質問者2:ありがとうございます。

稲村:ありがとうございます。

:チャットに「公安時代の服装はどうしていたんですか?」という質問がありました。

稲村:公安時代の服装ですね。Tシャツ・短パンもありますし、土方の格好もありますし、ひげを生やしている時もありますし、茶髪の時もあります。その場になじめる格好ですかね。

:なるほど。「特殊な教育は受けましたか?」という質問もいただきました。

稲村:これは意外に受けていないですね。人を見る視点が変わるので、そういった意味では自動的に学んでいくイメージですね。

本心を見抜きづらいのは「無反応な人」と「明るい人」

:(視聴者からの質問で)「公安でも見抜けない人はどんな人なんでしょうか? どんなテクニックがあれば見抜けないのかな?」。

稲村:ポーカーフェイスですね。ポーカーフェイスというか、まったく無反応な人ですかね。何をしても無反応。もしくは、僕もよく言われますが明るい人。明るくて、ユニークですぐ笑わせてくる人。こういう人は非常にやりづらいですね。

「何を言っているんだ? 笑いながら嘘をついているんじないか?」と思ったりするんですが、やっぱり見抜けないですね。「動と静」の両極端だと難しいところがあります。

:なるほど。お時間が過ぎているので、質問はこれで打ち切りたいと思います。最後に協会からの宣伝になります。

私の……というか、協会のメルマガを読んでいただいている方も多いと思いますが、協会では9月20日から、「9名の講師が話す」という初めての試みでオンラインセミナーを開催する予定です。稲村講師も私も話します。当日でなくても、アーカイブでも見ることができます。

最終日の16日には、「デカ飲みに参加できる」という特典がありまして(笑)。元刑事がワイワイ飲んでいるところに、みなさんも参加いただけるんですね。いろんな話を聞いていただいて、そこでも質問を受けたりして楽しく交流できればなと思います。もしご興味がありましたら、まだまだ申し込みできますので、よろしくお願いします。

協会も、いろんなかたちで民間のみなさんのお役に立つような活動をしていきたいと思っています。この機会に、いろんなものに参加していただきたいと思います。

今日は夜まで、お忙しい中ご参加いただきまして本当にありがとうございます。引き続き、よろしくお願いします。

稲村:ありがとうございました。