自分の天才性を見つける3つのステップ

山口揚平氏(以下、山口):我々が考えている「ジーニアスベースドライフ」とは、「絶対的な安心」が先だと考えています。その上で「自由生活」と言うんですけど、ストレスフリー、ロケーションフリー、フィナンシャルフリーがあります。

その上に、「遊び」です。10歳のように遊びながら生きてみるという段階を経て、「仕事」があるという考え方です。まず仕事があるという考え方とまったく真逆になります。

このステップは細かくはやりませんが、この「ジーニアスファインダー」という考え方は大きく3つのステップにわかれています。1つは「とげぬき」。自分の記憶はかなり偏っていて、自己評価とか固定観念というのがあるので、それを抜いていきましょうということです。

2個目が「天才性」、自分のコアを探すというステップです。そのコアに基づいて生活と仕事を整えていきます。

これは恥ずかしながら、私のワークシートです。本に挿入されているワークシートなんですけども、これが「棚卸し」です。

5歳、10歳、15歳、23歳、それ以降も含めて自分がやったこと。その時にどう感じたか、結果はどうだったのかを丁寧に棚卸しをする。それを見ながら、自分はどんな価値観や考え方を持っているのかを言語化していきます。

(その価値観や考え方は)「それって本当なの?」「もうそれ、洗い流してもいいんじゃない?」と修正していくこともできると思うんです。これがまず第1ステップです。

天才性を表す4つの方向性

ステップ2は、天才性の発掘です。このページは、天才性を表す4つの方向性を書いています。縦軸は自分がいます。まず、人間は自然的な存在なんですね。だけど、動物的な存在でもあります。

『ホモ・デウス』という本を読んだ人がいるかもしれませんが、(ホモ・サピエンスは)「考える人」っていう意味なんです。要するに「考えるサル」なんですね。

人間とサルのDNAの遺伝子の構造を見ると、99.94パーセントは同じです。ただ、0.06パーセントだけ違う。それは「概念」というものを持っているんですね。さっき言ったように時間という概念だったり、お金とか、倫理とか、そういうものを持っているのが人間です。

お金を使えるのは人間だけです。お金に価値があるとしています。サルも棒を交換したりはできるんです。でも、お金を使って交換することはできない。それは概念がないからです。

僕は「概念を描く」ことが人間の本質だとは思わないですけども、頭がいいと言われる人は概念的な処理ができるということは言えると思います。ただ、そもそも「頭がいいこと」が正しいとは思わないです。

大脳新皮質という脳の一番周りの部分(で考える自分)。動物的な自分。そして、自然的な自分。この「自分」というのが縦軸になります。

そして人間は社会的な動物なので、自分と他者との距離を表しているのが、この横軸になります。

右側が、目の前の人を想うことです。そして左側が社会を観ることです。射程がまったく違うんです。目の前の人なのか、その先にある社会なのかということで違いを表しています。

数学者とは「計算ができる人」ではない

この4つの方向性で、自分の得意な領域が出てくるのが「ジーニアスファインダー」の1つのガイドラインです。特に例えば右側の想うこと。「目の前の人のことを想う」のがとても得意で好きな人は幸せになります。

幸せっていうのは、一体性の中からしか生まれないんですね。それは人との共有や共感、オーガズムとか、つながりの中でしか生まれないものなんです。脳内物質で言うとオキシトシン」とか「ノルアドレナリン」とかです。

上のほうの「考える」ことが得意な人、概念的に物事を処理できたり法則を見いだしたりとか、あるいはイメージ、絵を描ける人ですね。数学者とかもそれに当たります。

数学者って、計算ができる人が数学者じゃないんです。僕はそろばん1級を持ってますけども、数学者じゃないんですよ。僕もスタンフォードの数学者と飲みに行くんですが、割り勘ができないんです(笑)。数学者は計算ができないんです。

みなさん勘違いしているかもしれないんですけども、「概念的に物事を捉えられること」と「計算ができること」ってまったく違うんです。僕は計算はできるけど数学者ではない。

数学はとてもおもしろいです。方程式とか法則とかがわかると、極めて「実現力」が高まるわけです。物事をイメージでき、それを現実にしていける。内在的に出てきたものが、外の世界に移っていく。

さっき時間が経つことをエントロピーと言いましたけども、これもまさにエントロピーの動きです。拡散していって、内在世界から外の世界に飛び出していって、それで「物性」を帯びるんです。つまり形として知覚できるようになるんです。それが「現実化する」という意味だと思います。

頭の中にイメージしたものが徐々にかたちになって外に出て、五感で知覚できるようになる。それを可能にするのが、考えるとか概念化が得意な人ですね。

人によって得意なことも違えば、得られる脳内物質も違う

左側には「観る」と書いてあります。観察するの「観る」なんですが、これは「社会を観る」という意味です。社会を観られる人は、安心を得るんです。

例えば今、地球で何が起こっているのか。地殻変動で何が起こっているのか。あるいはウクライナ、キーフ周辺で何が起こっているのかということの、包括的な関係とか状況がわかると、安心を得られるわけですね。

そして下は「自然」ですね。自然を感じることができる人。より動物的であるということになるのかな。ここには理科と書いてありますが、こういう人はエネルギーを得るわけです。例えばアーシング(身体と大地を直接つなげる健康法)ができたり、風の中にいて、自然からの力を吸収することができるわけです。

それぞれの方向で得られるものが違うわけですが、得意な分野も違います。オキシトシンを得るのか、それともノルアドレナリンやドーパミンを得るのか。あるいは下側の人はセロトニンを得るんです。

そういった、得られる脳内物質も違うし、できることが変わってくるということで、この意識の4つの方向性がジーニアスファインダーの1つのガイドラインになります。「4つの方向性」について診断テストをやると、自分がどこが得意なのか、分散チャートで出てくるので、ぜひお試しください。

自分の「意識」が、どの次元にあるのかを知る

ここでちょっとだけ、意識と次元の話をしなきゃいけないんですが、先ほど言った「想う」とか「観る」とか「感じる」とか「描く」とかが、下にあります。それがぐるぐるっと回ってくるんですね。上に行くほど次元が上がります。

意識には次元があります。「次元」という言葉はアインシュタインが使った言葉で、聞いたことがあると思います。1次元は点、2次元は線、3次元は立体です。

4次元は何かと言うと「立体+時間」が出てきます。ここからが重要なポイントです。特にここから天才性の話につながってくるんですけども、「どこの次元に意識があるかがわかる状況」がとても重要なんです。

意識についての詳しい話は、また別の機会にしたいと思います。意識には4つの構造があります。1つは「知覚」すること、パーセプションと言います。もう1つはパースペクティブ、つまり「視点」です。どんな視点で、角度で物事を見るか。もう1つはコグニション、つまり「認知」です。意味をどう取るかということです。その認知がたまっていくと、リコレクションという「記憶」になります。

知覚と視点と、認知、記憶。この4つが少なくとも意識を構成しているものなんです。

この「意識を意識する」ことがとても大事です。特に今は「時間の時代」だという話をしましたが、時間軸で物事を考えられるかというのが4次元感覚を持つことなんですね。

トップマネジメントが持っている「5次元感覚」

そうすると、今ある立体だけじゃなくて長期ではどうなんだろうということが考えられるんです。マネジメントでは部長ぐらいになってくると、「今このミーティングでは向こうの話を聞いておくけど、最終的にはいいかたちに落とそう」と考えることができるんです。

でも、中堅社員は3次元で物事を見る、つまり今の五感でしか見ないので、このミーティングの中で決着しようというレベルで考えてしまう。

あるいは新社会人のような2次元では、紙に書いたら実現するんじゃないかと思っちゃう。例えば(新卒で)コンサルティング会社へ行っちゃうと、論理の中で「なんか不条理だぞ。これは正しいのにうまくいかない」ということが出てきてしまう。

さらに5次元感覚というものがあります。これは今の量子論の世界ですけども、世の中は「場」でできています。素粒子という小さいものと、波動と、2つの性質で物事ができている。

これは4次元とだいぶ違うんですね。何が違うかというと、4次元はどこかで因果律が回っている。どこかで統合されていくはず。「情けは人のためならず」だとか「因果応報」だといえますね。

でも、トップマネジメントの人は5次元感覚を持っていて、物事はゆらぎとかカオスとか、遊びがあると考えている。何か起こるのはしょうがない。「人間万事塞翁が馬」って言うんですけども、起こることは起こる、誰のせいでもない。だからポジティブに捉えて、前向きに処理しましょうという考え方ができる。

「お金を稼ぐ」ことと「仕事をする」ことは別もの

この意識の次元がどこの次元にあるかで、物事の捉え方が違います。より高次元を目指せということではないんですけども、どんな次元も、意識だけがそれを越えることができる。だから「意識を意識」しなきゃいけない時代になってきているということです。

五感はしょせん「外的世界」です。「五識」って言いますけど、色即是空の色の世界なので、誰でも見えるんです。でも4次元以降の世界は、知覚をきちんと整えていかないと、本質を見ることができなくなってしまう。

なので、意識工学とか認知科学によって鍛えていくことが重要になってきます。

最後は「仕事をめぐる大きな変化」ということで、3つの世界の話だけします。まず、仕事に関しては「お金を稼ぐ」ことと「仕事をする」ことはまったく分けてください。

お金を稼ぐことを「Profitable Activities」と言いますが、価値と価格は相関しないと割り切る。いい仕事をしていたらいいお金が入ってくるわけではないということを理解することです。

仕事をするというのは、本来は価値を貢献に変換する作業です。つまり自分の天才性に忠実に取り組んで、それを他者に対する貢献に変えること。これが仕事であって、それはお金が入ってくることとほとんど関係がない。そして生活を楽しむ。この3つは分けて考えましょう。

年収が高いことは、必ずしも社会的な価値が高いわけではない

これは僕らが作った図なんですけども、縦軸は社会的な価値で、横軸は年収です。例えば収入1円がもたらす社会的な価値が高いものは、エッセンシャルワーカーですが、収入は低い。

収入が高い人は、残念ながら社会的価値はマイナスになっていく。これはどういうことかというと、搾取が行われているわけです。別にいい悪いではなくて、年収が高いから必ずしも社会的な価値が高いわけではないということです。

この常識をベースとして、生き方を再設計しなきゃいけないことになります。つまり、稼ぐことと、社会で仕事をすることは分けて考えなきゃいけなくなってきている。それが現実なんです。

こういったトラッキングができるようになってきたのが、AIとかIoT、ロボティクスを含めたブロックチェーンによる功績です。各人の行動と結果は、トラッキングができるような世界になってきたから、わかるようになったんです。

世界を分ける3つの領域

「ボーダレスワールド」と言いますけども、我々は今までずっと地球環境、地球のぐるぐる周りを回っていました。スペイン王国あるいはイギリスで始まった産業革命以降、500年間の資本主義産業経済はこれです。『人新世の「資本論」』か何かで書かれているものは、こういう世界観だと思います。

このホリゾンタル(水平)の動きは富を生むんだけど、そうじゃなくてこれからは、豊かさを生む流れ。バーティカル、つまり垂直に伸びていく流れです。

地球の中心から地殻、地質、土地の記憶、気候、文化・歴史、生活、産業っていうふうに、バーティカルに物事を見ていくパラダイムが大事です。

今、世界は大きく3つに分かれています。まず地上20メートルまでの世界があります。これは「シェアリズム」と言っていますけども、ここは共和的経済システムで、人々が住んでいるわけです。そこには自然や動植物、衣食住があるので、モラルがある。稼げればいいとか、埋め立ててしまえばいいとかってことにならないんです。

埋め立ててしまうと、エネルギーを土から吸収できなくなるし、ニンジンの栄養素はどんどん少なくなる。なので、ここは共産主義とか社会主義、左翼・右翼とかいろいろありますけども、そういう分け方は無意味で、地上からの距離で20メートルはだいたい共和的であるべきです。

そこから20メートルから200メートルは、いわゆる「キャピタリズム」です。さっき言ったボーダレスワールドですね。貿易と資本主義システムが成り立っている都市ビジネスや、我々がやっている大規模生産・加工、インフラ産業っていうものがキャピタリズムの世界になります。

キャピタリズムの常識を超えた「バーチャリズム」の世界

もう1個は「バーチャリズム」と言っていますけども、メタバースとか、いわゆるヘッドセットを使って生きていく世界です。地球規模のGAFA的なシステムだったりとか、暗号通貨とか、もはやキャピタリズムを超えちゃっているんですね。

何十兆円とかね、何百兆円とかになってくると、それはもうキャピタリズムでさえもない。そういった世界の3つに分かれています。

その中で、僕らはシェアリズム、地域の共和的な社会システムの中にいながらも、キャピタリズムで飯を食って、バーチャリズムに対して怯えている。これが今の現状だと思います。

ここまで3つの層と3つの生き方の話をしましたが、お金を稼ぐことと仕事をすることは違うと言いました。そして生活を楽しむという、3つの行動があります。そしてさっき言った3つの層があります。シェアリズムとキャピタリズムと、バーチャリズムです。

みんなが悩んでいるのは、その掛け算がごっちゃになって、何が何だかわからなくなっていることだと思うんですね。もちろん、1兆円、2兆円という桁の(お金を動かしている)人たちもいる。

ただ、日本ではあまりいないんです。キャピタリズムのトップがいて、だいたい2,000億円とか持っている人がいます。このキャピタリズムの世界の中で、資本家とか経営者、労働者として生産活動に従事して、対価を得る。それが「お金を稼ぐ」です。

それぞれの世界で「得意」なことを、ミックスして考える

ただ、アメリカとかイスラエルとかを中心に、メタバースの世界とかインフルエンサーマーケティングが広がっています。例えば中国のインフルエンサーが一瞬で何億円も稼いだり、メタバースの世界で若者がゲームをやって何千億円も稼ぐケースとか、暗号通貨の取引が行われていてなんじゃらほいと、よくわからなくなっているわけですね。

このバーチャリズムのお金を、シェアリズムという地上20メートルまでの世界で使うことができちゃうという、不思議な世界になっているわけです。

ところが何兆円稼いで、めちゃくちゃ大きな豪邸を建てたところで、友人がおらず使い手がいないという話がありませんか? こんな不思議な世界になっているわけです。

それぞれの世界が得意なのが、ヴァーチャリズムはお金を稼ぐこと、キャピタリズムは仕事仲間や消費者に価値提供をしていくこと。生活を楽しむというところで言うと、やっぱり人は土から離れては生きていけない。土や風、水などの自然や動物との関わり、パートナーや家族との生活に伴う消費活動が(シェアリズムの世界で)行われている。

こういったふうに、世界が3層に分かれつつあるのに、行為としてはお金を稼いだり貢献したり生活を楽しんだりしなきゃいけない。それをどの世界でどういうふうにして楽しめばいいのかっていうことを、ミックスして考えて、設計していかなきゃいけない、私たちのあり方なのかなと思います。

ここまでが私の話になります。まとめますと、一番最初に言ったのは、外の世界は混沌としているので、内側を見ましょうと。内側の世界は意外とはるかに大きいですっていう話をしました。そして、それを見るためには「意識を意識」しなきゃいけない。

ちょっとオカルト的な話になるかもしれませんが、ちゃんと意識の次元をきちんと丁寧に区分していくと、意識が見えやすくなってきます。確実に科学的なアプローチとして「自分とは何か」を知ることができます。自分を知るためのステップの話をしました。

3つ目に言ったのが、3つの世界と3つの生き方です。以上でございます。駆け足になってしまいましたけども、終わりたいと思います。