2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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永井翔吾氏:どちらかと言うと従来的な課題解決は、どんどん分解していってボトルネックを1個見つけて、それを解決していくようなかたちになります。もちろん、仕事や状況に応じては、細かく分析してボトルネックを潰すことも有効なんですが、課題解決の方法はこれだけではないです。
むしろ、創造的に思いっきり課題を解決していくのであれば、(スライド)右側の「統合」に向かうイメージも持っていただくといいんじゃないかなと思います。
統合思考の中で、ニーズを抽象的・本質的・シンプルに考えて、ソリューション方法を考えるという話をしましたが、ここからはトレードオフの課題について見ていきたいと思います。
トレードオフの課題は「創造やイノベーションの宝庫」と呼ばれています。私が近くで見ている起業家の方やイノベーターの方たちもそうなんですが、トレードオフの課題がめっちゃ大好きです。仕事で「それをやったら、これができないです」と言ったら、絶対に「両方やる方法を考えて」と言われちゃうんですよね。
うちの代表の松本(勝)もまさにそうなんですが、それぐらい、トレードオフに対してイノベーターの方や起業家の方たちは両方解こうとしています。
逆に言うと、トレードオフの課題を見つけたらすごくチャンスです。多くの人は、トレードオフの課題やニーズを見つけたら、「どっちを解こうか」と考えちゃうんですね。その時に、「これはラッキーだ。両方解けたらめちゃくちゃブレークスルーになるな」と考えていただくのが、非常に大事なんじゃないかなと思っています。
統合思考的な考え方で、トレードオフの課題を解いた世界的な有名な事例としましては、P&GをV字回復させたA.G.ラフリー。V字回復をさせる時に、「自分は『OR思考』が嫌いで『AND思考』なんだ」と明言されていて、実際にAND思考でP&Gの経営を再建されたと言っています。
どういうトレードオフだったのかというと、差別化戦略。高付加価値戦略と、コストカットして低価格にしていく両方をすごくいいバランスで追いかけていって、P&GをV字回復させたと言われています。
他の例ですと、ウォークマンですね。イノベーションの例で取り上げられることも非常に多いんですが、当時は音楽を聞こうとするとカセットテープなので、移動しながら聞けなかった。「音楽を聞きたい」と「移動したい」という、トレードオフの課題をまとめて解いたのがウォークマンだったと言われていたりします。
あとはiPodですね。iPodはウォークマンの後に出てきたんですが、「移動しながら音楽を聞く」という上側のニーズはウォークマンが解消したんですが、さらにそれに対してトレードオフになっていた、「多くの曲を聞きたい」「自分で好きなようにセットアップリストを作りたい」というニーズが(ウォークマンは)ぜんぜん満たせなかったんですね。その統合を見事に果たしたのが、iPodだとも言われています。
スティーブ・ジョブズが本当に天才だなと思うのが、その2つを統合されたiPodを「1,000曲をポケットの中に」というキャッチフレーズで売り出したんですが、「1,000曲をポケットの中に」は、まさにトレードオフなんですね。
ポケットの中に入れられる、移動しながら聞ける、そして「1,000曲」という超大量に音楽を弾けるということで、このトレードオフを解いたのがiPodであり、それを超いいセクシーな感じで表現したのが「1,000曲をポケットの中に」。本当にもう、天才的だなと思ってしまいます。
ここで1つ言えることが、もともと「移動したい」と「音楽を聞きたい」というトレードオフを解いたのがウォークマンであり、ウォークマンの解いたニーズと「多くの曲を聞きたい」というトレードオフを解いたのがiPodであるということです。
まさにイノベーションというのは、トレードオフの課題の統合を繰り返してきた歴史だと考えています。もちろんイノベーションはいろんな要素があるんですが、その中で注目いただきたいのが、どんなトレードオフの課題やニーズを解いているのか。
この延長戦でいきますと、「移動しながら大量の音楽を聞きたい」に対して、次はおそらく「移動しながらパソコンがしたい」「移動しながらネットをやりたい」とか、そういったニーズがトレードオフになっていて、それを解いたのがおそらくiPhoneなんじゃないかなと思います。
では、みなさんが今iPhoneを使っていて、まだ解消できていないトレードオフのニーズは何かあると思いますか? そういったものを統合するようなサービスが出てきた時には、さらなるイノベーションになるんじゃないかな、なんて思ったりもしています。
「まぁ言われたらそうだね」となるかもしれないんですが、トレードオフの課題やニーズは解消するのが難しいので、脳が勝手に、なるべくそれを考えないようにしちゃってるんですね。なので、あえてトレードオフの課題やニーズを見つけるのは非常に重要です。
見つけ方を大きく2通り書かせていただいてるんですが、1つは「安く食事をしたい」というニーズがあったとしたら、「その真逆は何なんだろう?」と考える。
真逆の状況の「費用が高い食事」の構成要素を考えると、「おいしい料理」「高級な内装」とかに分解されるので、それと「安く食事をしたい」というニーズをくっつけると、トレードオフの課題やニーズになってくるパターン。
もう1つは、例えば「プロのおいしい料理が食べたい」に対して、制約条件やボトルネックが何なのかというと、お店に食べに行かなきゃいけないわけです。
「家で食べる」と「プロのおいしい料理が食べたい」は、まさにトレードオフのニーズになってくる。これを解いているのが、プロの職人さんが家で料理を作ってくれるSHAREDINEさんのサービスだったりします。
トレードオフの課題やニーズは、イノベーションや新しい新規ビジネスを生み出すポイントです。あえてそれを考えて作りに行く、というのが非常に重要な手法になってくると思いますので、こうしたことを考えていただくと、再現性を持ってトレードオフの課題やニーズを考えられるようになってくるのかなと思います。
トレードオフを解決する方法を7個ぐらい挙げさせていただきました。ぜひ本を読んでいただければと思いますが、トレードオフの課題を解くためには普通の考え方ではうまくいかないので、こういうアイデアを参考にしていただければなと思います。
(スライド)右側はヘーゲルの弁証法を載せていただいてるんですが、イメージとしては、「テーゼ」と「アンチテーゼ」の2つのトレードオフをうまく解消すると「ジンテーゼ」になるという話です。
トレードオフの課題やニーズを解消しようとしてミスるパターンが、折衷案になることと、中途半端になっちゃうことなんです。中途半端になるぐらいだったら、トレードオフの課題をプロコンを取って、どっちかを選んでやりきるほうがまだマシです。
折衷案になってしまうと、本当に中途半端なものになってしまいますし、これが新規事業や新規サービスだと100パーセント失敗します。なので、トレードオフの課題やニーズを解く時は、アウフヘーベンしてジンテーゼになっていること。要するに、2つをしっかりと高次元に統合して解いているサービスを考える必要があります。
これは簡単ではないんですが、いろいろ考えていただければと思いますので、(スライド)左側が1つの大きなヒントになってくるんじゃないかなと思っています。私はトレードオフがけっこう好きなので、長くなっちゃいました。
最後に、ロジャー・マーティンさんという方が『インテグレーティブ・シンキング』という本を出されていて、かなりいろんなトレードオフの達人の方たちの事例などが紹介されています。その中で、統合思考の達人に共通する6つの視点を挙げています。
この中で、特に2番目が非常に重要だと思っていて、これが普通の人とイノベーターや起業家を分けているマインドセットの違いだと思っています。つまり、対立するモデルの存在は、問題解決において有意義であるということです。
普通の人は、対立するモデルやトレードオフがあったらめんどくさいんですよね。ですが、イノベーターの方や起業家は、「むしろこれは、課題解決・問題解決にとって非常に重要なものを見つけたんだ」と考えます。なので、このマインドセットを持っていただくと、よりいいんじゃないかなと思っております。
長くなってしまったんですが、続いてアナロジー思考を見ていきたいと思います。類似する他の物事と結び付けて新しい発想をしたり、物事の理解を深めようとすることで、日本では「類推思考」と呼ばれることもある思いますが、基本的には同じ思考法です。
簡単に申し上げますと、対象としている物事からエッセンスを抽出して、共通点やつながりがある他のものに発想を飛ばしていくことです。リンゴの共通点を取っていっても、(スライド)右側のようにいろんなものがあると思うんですが、こういうものを活用して発想を飛ばしていくのがアナロジー思考です。
リンゴを抽象的に考えるという、この「抽象的に考える」とはどういうことなのかと言いますと、対象の物事を属性、モデル、構造という1段上のレイヤーで考えることです。なので、リンゴであれば「果物」「赤い」とかがあります。1つ上のレイヤーで考えることが、抽象的に考えるということです。
なぜ抽象的に考えることが必要なのかと言いますと、抽象的に考えると、発想をより遠くに“飛ばす”ことができるからなんです。
アナロジー思考だけではなく、この後に出てくる「転換思考」でも、抽象的に考えて真逆に飛ばすと一番遠くに飛んでいくこともあったりします。抽象的に考えることが、非常に重要になってきているのかなと思います。
例えば自動車を抽象的に考えていくと、まず1つは「人を乗せて4輪で動くもの」。じゃあ、これと共通するのは何かといいますと、トラックになります。さらに抽象度を上げて、「人を乗せてタイヤで動くもの」になりますと、次はバイクになっていく。
さらに抽象度を上げて、「人を乗せて地上を動くもの」だと、もうタイヤもあんまり関係ない。そうすると、次は「電車」になる。さらに抽象度を上げて「人を乗せて動くもの」になりますと、飛行機や船になります。
このへんはかなり抽象度が高まってくるんですが、さらに抽象度を上げていくと「自動車って『鉄の塊』だよね」となってきます。「鉄の塊」は、いくらでも発想が飛んでいく方法がありますが、抽象的すぎて発想としては生かしきれないところがあります。
この後も出てくるんですが、どこまで抽象度を上げていくのかが大事なポイントになってきます。
抽象的に考える際のポイントは、「そもそも何を抽象化していくか」と「どこまで抽象化していくか」の2つです。
実は最近、抽象化能力は非常に大事だと言われていて、特にアナロジー思考を駆使する場合には、抽象的に考えて遠くに飛ばすとみんな言うんです。抽象的に考えるって、具体的にはどうなの? というと、なかなか本に書いてなかったりするんですが、そのへんを今回はかみ砕いてお伝えできればなと思っています。
1つめの「何を抽象化していくのか」なんですが、その時に基準となるのは、今回かなり口をすっぱくして言っている「5W1Hのフレームワーク」だと思っています。
例えば、新しいビジネスや新規事業を考えようとした時に、ベンチマークにしたいサービスがあるじゃないですか。そういうものを考える時にも、漠然と抽象化してもうまくいきません。
そもそもこのサービスって、誰の、どんなところで、何をやっている時の課題に対して、どんなものを使って、どんなふうに動かして、どんなふうに構造化しているサービスなのかを、まずは分解して考える。そして、1つずつをちょっとずつ抽象的に考えていく。
例えば男性向けのサービスであれば、抽象化して、女性も含めた「人間へ」のサービス提供だったらどうなるのか? とか。寝る前のサービスの話であれば、寝る前だけではなくて日常をいつでも良くしたらいいんじゃないか? とか、少しずつポイントを絞って抽象化していきますと、非常に考えやすくなります。
そしてもう1つ。ニュアンスがかなり難しくなってきてしまうんですが、「どこまで抽象化させていくか」という話です。先ほど申し上げましたとおり、自動車を「鉄の塊」まで抽象化していくと、だいぶ抽象化レベルが上がります。鉄の塊のものって、ビルや斧もありますし、いろんなものが世の中にありふれていますよね。
そうすると、逆に発想の飛ばし先が多すぎちゃって、効率性が落ちちゃうと言えます。どこまで抽象化していくのかというと、「あまりに抽象的で、類推の対象が無数に広がりすぎてしまうレベルから1段下げた抽象度のもので、最低1つぐらいは具体的な要素が入っているもの」と定義しています。
言葉の定義を正確に書こうとして小難しくなってしまってるんですが、イメージとしては「抽象化しすぎてやべえ」「鉄の塊って無限にありすぎるよ」と思ったら、「人を乗せて移動させるもの」と、抽象度のレイヤーを1つ落としていただく。それくらいがスイートポイントじゃないかなと思います。
新規事業で新規サービスを作るのがうまい方は、この抽象度レベルの扱い方が非常にうまくて。普通の方ですと、抽象度をちょっと上げるぐらいが精一杯ですが、イノベーターの方たちは「共通点のあるものってこういうものかな?」と、もう少し抽象度を上げていけるんです。
ただ、(抽象度を)めっちゃ上げすぎると無限に広がっちゃって、ほとんど思考の参考にならないので、本当にいい案配で抽象化している。抽象化しすぎないぐらいの案配なんだな、と考えていただければと思います。
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