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心理カウンセラーに聞く感情をマネジメントするために行う「やめる」の極意(全3記事)

不安を無視して消そうとすると、余計不安になって悪循環 心理カウンセラーが語る、“心の警報装置”との向き合い方

一般社団法人nukumoが運営する、サッカー指導者のための会員制コミュニティFootballcoach(フットボールコーチ)は、「指導者にスポットライトを。」をコンセプトに、子どもたちの未来を担う指導者のための対談イベントや交流会を行っています。今回は心理カウンセラーの片田智也氏をゲストに開催された「感情マネジメントの極意」の模様を公開。指導現場に溢れる「感情」をマネジメントするための考え方が語られました。本記事では、「不安」との向き合い方について語られました。

同じ出来事に対して「怒ってしまう人」と「怒らない人」の違い

尾倉侑也氏(以下、尾倉):進行をさせていただきます尾倉と申します。Footballcoach(フットボールコーチ)を立ち上げた1人です。今日は片田先生にお越しいただいて、『感情マネジメントに必要な「やめる」の極意』についておうかがいしていきます。

1時間と短い時間ですが、よろしくお願いします。イベント後には交流会も用意していますので、お時間を許す方がいましたらぜひご参加いただき、みなさまと交流できればなと思っています。よろしくお願いいたします。

さっそくイベントをどんなふうにやっていくか、なぜこのイベントをやろうと思ったのか、今日の趣旨についてお話しさせていただきます。その後、片田先生とのお話に入っていきたいと思っています。

僕たちの身の回りではいろんな出来事が起きると思うんですが、例えば「怒る」という感情をとった時に、起きた出来事に対して怒ってしまう人と怒らない人がいると思っています。本当の自分は怒りたくないのに、怒ってしまう時があると思うんですよね。僕自身もよくあります。

例えば、何度も注意したのに同じことを繰り返す我が子がいた時に、怒ってしまう人と怒らない人がいます。この両者の違いとして、さっきのように本当は怒りたくないけど怒ってしまった人は、望んだとおりに行動できていないと捉えることができます。

逆に怒らなかった人は怒りたくなかったので、望みどおりの行動ができている。そういったことが日常のいろんなところ・いろんな場面で、みなさんも経験があるかなと思います。

この両者の違いを考えていくのが、今日の会になります。今「怒る」という感情をとりましたが、怒る以外でも、さまざまな場面で自分の思ったような行動がとれるのか、とれないのか。この違いについて、今日は片田先生とお話しさせていただきます。

「自分がどう感じるか」で、その後の感情や行動が変わる

尾倉:片田先生のお話の前に、この両者の違いについて、いろんな人がこう捉えられるんじゃないかと説明をなされているんで、僕から簡単にご紹介できればと思っています。

例えば、アルバート・エリスという方がABC理論を説明しています。とある出来事、さっきので言うと我が子が言うことを聞かない、何度も同じことを繰り返すという出来事が起きた時に、それを自分自身がどう受け取るか・どう感じるかで、その後のすべての感情や行動が決まると捉えた方です。

さっきの怒ってしまう人と怒らない人で言うと、注意したことを何度も繰り返す子が目の前にいるという同じ出来事でも、「この子、悪いと思っていないな」と思ったら、もしかしたら怒ってしまうのかもしれない。

「自分が過去にした説明が理解できていないんだな」。つまり、「自分の説明の仕方が悪かったんだな」と思えば、怒らずにちゃんと説明しようとするかもしれない。

このように起こった出来事は変わらなくても、それに対して自分がどう感じるか、どう思うかで、その後の行動が変わるよねと伝えたのが、アルバート・エリスのABC理論になります。

さまざまな理論で説明される「望んだとおりに行動できる人」の特徴

尾倉:例えば他にも、僕が好きなアドラー心理学のアドラーさんの目的論で考えてみます。出来事があった時に、何かしら行動しますよね。この行動は「こうしたいんだ」とか、目的があるから行動すると言うんですね。

例えば、いじめがあって引きこもっている。いじめがあったから外に出たくないという人は、いじめがあったから外に出たくないんじゃなくて、外に出たくないからいじめられたという理由をつけている。彼はこういった捉え方をしています。

その定義では、さっきの注意したけど何度も繰り返すという出来事があった時に、例えばイライラを発散したいとか、「なんでわかってくれないんだよ」という自分の感情をどうにかしたくて怒ってしまうのかもしれない。「ちゃんと理解してほしいな」と思うから怒らないという選択をとるのかもしれない。これは一例に過ぎないんですけどね。

このように、1個1個の出来事に対して、「自分は本当はこうしたいけど」をできている人・できない人を説明するような理論を話している方がいらっしゃいます。

片田先生の考え方と通ずる部分もあると思うんですけど、片田先生の考え方以外もご紹介しました。その理由としては、自分が腑に落ちる考え方と出会って、自分の捉え方が変われば、行動は自ずと変わると僕は思っています。

なので、今回片田先生のお話を聞きながら、僕が「それってどういうことですか」「こういう捉え方はないんですか」とか、片田先生の考えをなるべく深く掘り下げて、みなさんの腑に落ちるような機会になればいいなと思っています。

その結果、明日からみなさんの行動に少しでも変化が起こるようになったらうれしいと思い、イベントを企画させていただきました。

感情に振り回されないための「コントロールできるもの」の見極め

尾倉:今回のイベントの内容は、『ズバ抜けて結果を出す人だけが知っている 感情に振り回されないための34の「やめる」』の中から抜粋してお話しさせていただきます。

『ズバ抜けて結果を出す人だけが知っている 感情に振り回されないための34の「やめる」』(ぱる出版)

この本を読んでいない方もいらっしゃると思うので、詳細はこの後片田先生からお話しいただきます。ざっくり言うと、感情に振り回されなければ、自分の思った行動ができるというのが1個あります。

あとは、感情に振り回されないためには、コントロールできるものとできないものを見極めて、コントロールできるものだけに集中しましょう。それが片田先生が言われている話になります。コントロールできるものや「たった1本の線」を見極めるとは何なのかを、今回1時間かけてお話をうかがっていきます。

今イベントの内容を紹介させていただきました。この後、本編として片田先生とお話させていただくんですが、質問やわからない点があったら随時チャット欄からコメントいただければ、交流会の冒頭で片田先生に答えていただく機会も作ろうと思っています。

質問が多いと全部に答えられないかもしれないですが、なるべく答えたいなと思っています。本当に細かいことでもいいので、何かありましたらどんどんチャットをいただければなと思います。

子どもの未来を変える「指導者」の不安解消の場に

尾倉:「長いよ」とみなさん思っておられると思うんですけど、最後に今回の主催のFootballcoach(フットボールコーチ)のお話だけさせてください。僕たちは指導者が変われば結果が変わると思って、いろんな活動をさせてもらっています。フットボールと言っているので、結果というのはもちろんサッカーの話です。

サッカーの試合結果が変わるとか、チームの雰囲気が変わるのはもちろんですが、そこにいる子どもたちの未来も変わると思っています。指導者から教えてもらったことで捉え方が変わり、社会に出てからの行動も変わる。そういった意味で、いろんな結果が変わると思っています。

どうすればその結果をいい方向に持っていけるのかと言うと、僕は指導者一人ひとりが持っている「この指導方法で本当にいいのかなあ」という不安を解消し続けることなのかなと思っています。

不安というのは、たぶん常にみなさんも持っていると思います。例えば今日のテーマで言うと、子育てに不安を持っている方は、不安であり続けることがよくなる方法だとも僕は思っています。

どうやったらその不安がよくなるかを考える。その考えるきっかけを、Footballcoach(フットボールコーチ)では今日のようなイベントで提供させていただいたり、コミュニティでいつでも気軽に相談できる場を設けて実現しています。

今日のイベントを通じて、おもしろそうだなと思ってくれた方がいらっしゃいましたら、Footballcoach(フットボールコーチ)で検索していただけるとうれしいです。

自由に感情を楽しむことができるマネジメントのポイントを伝授

尾倉:すみません。長くなりました。本題に入っていきます。片田先生をお招きして『感情マネジメントに必要な「やめる」の極意』について始めさせていただきます。片田先生、よろしくお願いします。

片田智也氏(以下、片田):よろしくお願いいたします。

尾倉:まずは簡単に自己紹介と、今日みなさんに伝えたいことがありましたら、そちらからできたらなと思います。よろしくお願いします。

片田:お願いします。では、自己紹介を簡単にさせてもらいます。心理カウンセラーをやっております、片田智也といいます。14年から15年前に目の病気をしました。緑内障ですね。目の見える範囲がどんどん狭くなってくる病気になりました。

右目はほとんど失明しています。左目は真ん中がちょっと見えるぐらいかな。ただ、視力がもうあまり出なくて。矯正して0.08というレベルなので、ほとんど見えないです。弱視ですね。視覚障害3級になったのが、28歳か29歳かな。

そこからどうやって生きていくか、どうやったら見えづらいハンディを気にせずに済むのかを考えて、結果的に生き残ったのがカウンセラーと研修の講師です。そういう仕事をしております。

ずっと精神障害を持っている方のメンタルのカウンセリングをやっていたんだけど、ここ2年、3年は、経営者やスポーツ選手とか元気な方がより結果を出すにはどうしたらいいかという、心の使い方を教えるような仕事をしております。

尾倉:ありがとうございます。よろしくお願いします。

片田:お願いします。あとなんだっけ……。

尾倉:みなさんに今日どういった機会になったらうれしいなとかがあったらと思いまして。難しいですよね。僕も振りながら思いました。ごめんなさい。

片田:大丈夫です。私は「感情のコントロール」ではないところに、すごいこだわりを持っています。コントロールって、制御すると言うんですかね。たぶん制限する、押さえつけるというイメージをみなさん持っていると思うんですよ。

そうじゃなくて、もっと自由に感情を楽しむことができる。そういうマネジメントのポイントをつかみ取っていただければなとは思います。

「イラっ」とした感情を否定する必要はない

尾倉:ありがとうございます。さっそくそのお話から聞きたいなと思います。片田先生は書籍の中や僕と日頃お話しする中でも、けっこう感情を受け入れるというか、例えばさっきの怒るという感情があった時に、イラっとした感情を否定する必要はないとおっしゃっています。

まず、どういった考えからそう思われているのか。もともと思われていなくて、そうなったのか。そのあたりをうかがってもいいですか。

片田:もともとずっとそうかもしれないです。

尾倉:あぁ、幼少期から感情を感じているんだから、ということですか。

片田:そうです。だって、あるんだから。あるものをないって言うのは、おかしいでしょ(笑)。大人になってロジックを調べていきましたけど、イライラは「思ったとおりにいっていないよ」というサインなんですよね。だから、リラックスしていちゃいけないんです。

「思ったとおりにいっていないから修正しなさい」というサインなので、イライラの感情が起きるほうが普通なんですよね。だから、イライラそのものに腹を立てる必要はないんじゃないかという自然観はあります。自然なものとして見てね。

不安の感情は、備えを動機づけるサイン

尾倉:よくいろんな場面で(ありますけど)、例えばサッカーの指導では、不安に駆られている選手がいた時に、その不安をどうやったら取り除けるかというアプローチをします。今サッカーで言いましたけど、受験勉強でもそうですよね。受かるかどうか不安だという子どもの不安を、どうにかしようとするじゃないですか。片田先生は、そのアプローチが違うということですよね。

片田:そうです。ぜんぜん違いますね。不安の感情は、備えを動機づけるサインです。例えば、受験に事前に不安を感じちゃうのは、本番になって焦らない・恐怖心に駆られないための準備の衝動です。だから、「今感じているのはむしろ健全だよね」と言ってあげます。

尾倉:あぁ、なるほど。

片田:そうしたら「不安でいいんですね!勉強します!」となりますよ。

尾倉:不安で手がつけられない人もいるじゃないですか。不安を認めてあげたら、「じゃあ勉強します」となる差は何ですかね。

片田:不安を長く否定し続けた方はやっぱり……。だって不安は「そのままだと危ないよ」という警報装置の意味ですから、ずーっと鳴っているんですよ。

尾倉:生きている中のいろんなところで、ということですか。

片田:そう。「そのままじゃいけないよ」と言ったら、不安がバーッとなる。要するに、それを準備に変えなきゃいけないんですね。行動に変えなきゃいけない。

不安を無視して消そうとすると、余計不安になる悪循環

片田:だけど、多くの人は不安を無視しちゃうから、準備をしないんですね。そうすると警報が大きくなります。「危ないよ、危ないって言っているじゃん」と、不安がどんどん大きくなっていくんだけど、みなさんはその意味を知らないから、消そうとしちゃうんでしょうね。

耐えられないような不安や病的な不安は、だいたいそういう悪循環によってできているかな。

尾倉:そうすると、やっぱり幼少期から不安と向き合うことに慣れているというか、対処法を知っている人のほうが……。

片田:健全ですね。

尾倉:健全ということですよね。

片田:親御さんや先生から「不安になっちゃいけないよ」と言われていると、体が「だめなことだ」と学習しちゃう。無意識に否定しちゃうんですね。やっぱりつらいと思います。だって、必ず出るものなのに、感じてはいけないってバツをつけるわけだから、余計不安になっちゃいますよ。かわいそう。

スポーツ選手にとって「不安のマネジメント」は仕事の一部

尾倉:なるほど。不安は大小あると思っています。例えば、人生で経験したことがないようなビッグイベントの前で、かつ、例えば受験もそうですけど、どうしても受からなきゃいけない時の本番は、不安になるのも当然かなとも思います。それを経験したことがなければないほど、不安になっちゃうんだろうなと思う。

とは言え、例えばスポーツ選手がオリンピックのメダルを取れるかどうかの瞬間って、みんな初めてです。そこでちゃんとパフォーマンスできる人もいると考えたら、今僕が言ったのは、単純に対処方法を知らないだけとも捉えられると思いました。どうですか。

片田:受験勉強だったら、中心にあるのはやっぱり勉強だから、不安は付随して加えているおまけみたいなものなので、「そんなの気にすんなよ」でいいと思うんです。

でも、不安を何度も繰り返すスポーツ選手だったら、不安のマネジメントは仕事の一部ですよね。メンタルマネジメントってね。ただただ流していけばいいというわけでもないかなと思います。

人は感情をもとに行動ができる

尾倉:今の話もすべてそうだったと思うんですけど、感情と行動はけっこう紐づけて考えられているじゃないですか。例えば、継続するのをやめるという回もありましたよね。

あれも継続しなきゃいけないという感情についてのお話からスタートしていると思うんですけど、そういうふうにすべての行動と感情をけっこう紐づけて考えられているのかなと思いました。その認識は合っていますか? 間違っていますか?

片田:合っていると思いますよ。感情を動機づけだと思っているので、私自身がたぶんそういう前提に立ってものを書いているんでしょうね。

例えば、「寂しい」がどんな行動を動機づけているかと言うと、人と仲良くしたいとか、仲直りしたいとかですよね。孤独感とか寂しい感情がないと、人間関係もめんどうくさいじゃないですか(笑)。だから寂しいという感情がないと、人は人とつながらないんだと思う。

尾倉:なるほど。

片田:動機づけですね。

尾倉:やっぱりそういう感情があるから、人は感情をもとに行動ができる。

片田:そうです。

尾倉:それがポジティブな感情の場合は比較的わかりやすくていいですよね。わかりやすいというか、簡単というか。

片田:そうです。理屈で理解しやすいし、納得しやすい。

尾倉:あとは、従っても不幸にはならない。

片田:そう、そう。

尾倉:ネガティブな感情は、場合によっては自分が望んでいない結果にもなり得ると思います。だから、その感情をマネジメントしていくのが、一番重要なのかなと思います。

片田:そうですね。

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