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第三部「質疑応答」(全1記事)

習慣化やキャリア自律と「内発的動機づけ」に関する“誤解” 篠田真貴子氏が語る「やり始めないとやる気は出ない」の考え方

組織課題に当事者意識を持ち、変革を自ら進めていく“自律型人材”の育て方について、年間1万セッション以上の「1on1」を提供する「YeLL」に溜まった知見をもとに、エール代表取締役 櫻井将氏と、『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』を監訳されたエール取締役 篠田真貴子氏が登壇したイベント「"社員の内発的動機を高める"組織づくり」。最終回の本記事では、質疑応答パートをお届けします。内発的動機づけと「習慣化」「自律的キャリア形成」などの関係性について語られました。

新しいミッションでも「ひと匙」を加えて内発的動機に近づける

福山栄子氏(以下、福山):質疑応答の時間ということで、今、チャットでいただいている質問にお答えいただくところから、始めさせていただければと思います。

まず一番最初にチャットでいただいていたMさんからのご質問です。これは、13時48分に質問いただいているんですけど。

「究極的には企業の業務において、完全な内発的動機付けはありえないような気がしていますが、いかがでしょうか。例えば自分がやりたくて進めてきた業務だったとしても、最終的に会社や社会から評価が得られなかった時に、モチベーションがダウンすることはよくありますし、それなしに自分がやりたかったことだから、評価されなくてもいいやとなるのは、それはそれで間違っているような」というご質問です。

篠田真貴子氏(以下、篠田):そうですよね。というと答えになってないですよね(笑)。

櫻井将氏(以下、櫻井):Mさんからチャットをいただいたタイミングを見ていたんですけど、たぶん篠田さんが(スライドを指して)この図を説明される前に書かれていたので。だからこの説明でだいぶお答えにはなっていたんではないかな。

篠田:なっているといいなと思います。ありがとうございます。たぶん次のページで、自分の話を例に使ったんですけど、セミナーに登壇するという話だと、今おっしゃったようなことって起きるんですよね。

会社の方針で「セミナーやめた」となったら、今までの私は何だったの? みたいになるんですけど。もうちょっと細かくパーツに割っていくと、例えば若干専門的な内容を、「わからないな」と思いながら調べることに、私の内発的動機や源がある。そういうふうに自覚していれば、私はきっと新しいミッションでも、まさにそれ(自分の動機)をひと匙入れて、またやりだすんでしょうね。

(一同笑)

櫻井:私はきっとね。

篠田:私はきっと、頼まれてもいないのにそれで週末を潰したりするんですよ。

(一同笑)

「習慣」は動機があってもなくてもやるもの

櫻井:あと何か、みなさんにとって意味のありそうなご質問は。

篠田:けっこう書いていただいていますね。習慣化に関する質問。

櫻井:「内発的動機による自分への習慣化の難しさを感じています。内発的動機の源を強める工夫・ポイントがあればぜひお聴きしたいです。やはり好奇心や熱意でしょうか」。

篠田:習慣化ってまた別の軸で......。習慣って、内発的動機があってもなくてもやっちゃうのが習慣ですからね。

櫻井:なるほど。

篠田:歯磨きみたいなもので、多くの人は「歯磨きやる! もう大好き! 夢中!」というのはないじゃないですか。日本で育ってここにいらっしゃる世代の方々であれば、子どもの頃から習慣付けをされているんですよね。

それでいくと、私も習慣は下手くそだから、いろいろ悩んでいるんですけど(笑)。さっきの「やり始めないとやる気が出ません」という考えを含む、一連の意識じゃないところで、体が動くようになるというのが、ご質問に対するお答えです。内発的動機で習慣化しようという発想を、まずおやめになるところから始める。動機がなくてもやる。

櫻井:そうですね。このNさんのご質問の意図をがんばって汲もうと思うと、何かやりたいことが今あって、自分の内発的な動機が弱いから続かなくて困っているというご質問なのかなと受け取ったんですけど。

自分が続けられているものとか、習慣化できたものの、価値とか意味とか喜びみたいなものを見つけたりすると、それにはめるにはどうしたらいいだろう、という発想はできそうだなと思いながら質問をおうかがいしました。答えになっているかどうかちょっとわからないんですが。

たぶん習慣化できているものも、これまではあると思うんです。それと内発的動機がつながっているのか、つながっていないのかということと、今習慣化したいものという話が一緒に考えられると、おもしろそうだなと思いました。

終身雇用の日本以外では当たり前な「自律的キャリア形成」

篠田:次の質問にいきますね。

篠田:「今、悩ましい言葉が、『自律的キャリア形成』ではないか、と感じています」。なるほど。

櫻井:自律的キャリア形成は、前回のセミナーで篠田さんがしゃべった「自律」という言葉とセットでちょっとお話ししてください。

篠田:そう。どこからいけばいいのかな。キャリア形成を自律的にやるということに関して、すごく短くお答えを言うと、前回もちょこっとご紹介したんですけど、(高橋俊介氏の著書)『キャリアショック どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるか』という本があって、あれを見ていただくと、「自律的キャリア形成って何?」というのがけっこうわかるんだと思うんですよね。

キャリア形成の動機が内発的かということに関しては、たぶん結果的には重なると思うんです。キャリアという観点で言えば、与えられた仕事だとしても、自分なりにやってみて振り返って、もうちょっとうまくよりよい結果を出してやろう、というサイクルを自分で回せる。

例えば、これが1個の小さいジョブに、1つ何かプロジェクトとか資料を作ってみたいなところから、だんだんサイズ感が大きくなっていく。その先にキャリア形成があるんだと思うんですよね。

これを持続させるエネルギー源、モチベーションって、内発的動機はたぶん有効なんだと思うんですけど、まったく違う切り口で言うと、キャリア形成が自律的じゃなきゃいけないといった議論は、終身雇用の先進国社会でしか成立しない問題意識で、つまり日本にしかないんですよね。

アメリカとかって70年代から終身雇用がないから、自律的キャリア形成以外ありえないんですよ。だけど、内発的動機という議論が出てきたのは2000年になってからなんですよね。だから重なっているように見えるんだけど、別個のものとしたほうが考えやすいなというのが、私の立場ですね。

会社のパーパスと個人のパーパスの落とし所

櫻井:なるほどな。あと5分なのでもう1個、「会社のパーパスと個人のパーパスにギャップがあった場合、どのように落とし所をつけられそうでしょうか?」

篠田:ありがとうございます。

櫻井:(スライドを指して)この図を見てご質問いただいたんだと思うんですけど、ギャップがある場合どうしたらいいかというところで、さっきの篠田さんの図でいうところの「すべきだから働いている」とか、「給料を得るために働いています」という方は、ある意味で給料を得るためということが、その人にとって価値があるところの紐付けなのかもしれないなと思っているんです。

インタビューをすると、それってタスクのこの仕事が、自分の価値観に合っているという話ではなくて、自分の人生とかキャリアとして、お金を稼いで家庭を幸せにしたいという価値観を満たすために、仕事をしているという話がけっこうあると思っています。

そのレイヤーの価値観や自分自身のパーパスみたいなものと、会社で働くことが重なっているのかという話だと思うんですね。だから、本当に重ならない仕事の内容や、自分のやっている部長という役職で、「パーパスが重ならないんだったら会社を出ていってくれ」という会社の方針もありだと思います。

それは、そういう会社がいいと言っているわけではなくて、会社として意思決定をすることもなくはないんだと思います。昔の会社であればたぶん(スライドを指して)こっち側の、「その人のキャリアや人生まで含めて雇いますよ」という終身雇用、年功序列を約束することで、ここの重なりを作っているという話だと思っていて。

少なくとも何かしらの理由で、その人が居続ける理由があると思うので、そこは絶対重なりがあると思うんですよね。それが会社にとってマッチしているのか、良しなのか良しじゃないのかということのジャッジなのかなと質問を見ていて思いました。

「自律的でありたい」というのは、人間の根源的な欲求

福山:ありがとうございます。もう1つ今、ご質問をいただいています。

篠田:「ジョブ・クラフティング定義、ご説明がありましたが、そもそもやらされ感が強いところからやりがいへの変容を、相手の話を傾聴する等の1on1で解決できるものなのか。動機づけをして解決できるものなのか」。

さっきのパーパスの話と重なるんですかね。まず「絶対なります」ということではないものの、相手の「自律的でありたい」というのは、人間の根源的な欲求なんですよね。そう思っていない人は生きていけないから、そこが出発点。

それを、今いる場所で発揮できるようにするサポートが、いくつかありましたけど、その中で「ネガティブな感情も言っていいんだ」とか「本当に自分の中で価値がある」「自分の内発的な動機に気付くサポートをするんだ」という項目がありましたね。それを行う1つの手法として、1on1が位置付けられた場合は、ご質問に対してイエス、解決できる可能性は十分あるということになると思います。

櫻井:うん、うん。

篠田:櫻井さんが途中でEQを高めたい企業さんの事例で出されていた、実際の社員の方の12週間の変遷って、まさに1on1でわりとやらされ感があったところから、「人にやってあげたい」くらいまで変わっていった例でしたよね。つまり論点はドンズバで、たぶんその櫻井さんの論点の中から紐付くことを、ご提示くださったなと思いました。

(チャットを見て)こちらこそありがとうございます。

すべての「やらされ感」を「やりがい」に変えるのは、1on1では難しい

櫻井:やりがいを何とするかですけど、1個の指標として最近言われているエンゲージメントみたいなものでいうと、1on1で解決できるエンゲージメントの話と、そうではないものがやっぱりたくさんあると思います。

それこそクラフティングでいうと、認知で何とかなるものは、1on1で何とかなると思うんですけど、業務や関係性を変えないとどうにもならないものもあると思います。それ以外の物理的な報酬や仕事量で何とかしないといけないものもあると思うので、すべて1on1でというかたちではなさそうかなとちょっと思いました。

福山:ありがとうございます。

櫻井:時間オーバーしちゃってる。

福山:すみません。「1on1はオンラインですか。対面ですか。その違いはありますか?」というご質問もいただいているんですが、こちらはオウンドメディアでお答えできればと思っています。

篠田:エールの1on1はオンラインです。

福山:そうです。ちゃんと理由があります。ということで、この続きは、またいずれ次回以降のセミナー、もしくはオウンドメディアでお伝えしていければと思います。すみません。15時になってしまいました。本セミナーはこちらで終了とします。

最後までご参加くださったみなさま、お聞きくださったみなさま、篠田さん、櫻井さん、ありがとうございました。それではまた次回ということで、どうもありがとうございました。

篠田:みなさん、ご参加くださってありがとうございました。

櫻井:ありがとうございました。

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