アイドルとコピーライターが「言葉」について考える

司会者:みなさまお待たせいたしました。今日は橋口幸生さんの連続イベント『言葉最前線』の第5回目。ゲストに寺嶋由芙さんをお迎えしてイベントを開始したいと思います。橋口さん、寺嶋さん、よろしくお願いします。

寺嶋由芙氏(以下、寺嶋):よろしくお願いします。

橋口幸生氏(以下、橋口):お願いします。寺嶋さん、今日はありがとうございます。

寺嶋:こちらこそありがとうございます。よろしくお願いします。

橋口:「言葉最前線」というイベントは今年スタートしまして、早いもので第5回。隔月でやっていますが、今年はこれで最後です。「アイドルとコピーライターで、言葉について考えてみた」というテーマで、今日はお送りしたいと思っています。

この「言葉最前線」というイベントなんですけれども、「新しいものは必ず新しい言葉たちとともにやってくる」というテーマで、新しい言葉の使い手たちに、私、コピーライター橋口幸生が迫っていくという趣旨になっています。今回は寺嶋由芙さんをゲストにお迎えしました。寺嶋さん、ありがとうございます。

寺嶋:ありがとうございます。光栄です。

橋口:寺嶋さんは千葉県のご出身で、早稲田大学を卒業されていて、中学と高校の先生の国語の資格を取得されていると。ご自身がアイドルとして活動されるとともに、「アイドル」と「ゆるキャラ」をつなぐ「ゆるドル」として活動されていて、各種ゆるキャラのイベントにも出演されています。

今年の夏に『サバイバル・レディ』という素晴らしいアルバムを発表されていて、これは僕も最近毎日聞いていますけれども。

寺嶋:ありがとうございます。

橋口:来年の2月にはワンマンライブを浅草で予定されているということで、本当に大活躍ですね。こんなお忙しい中来ていただきまして、ありがとうございます。

なぜアイドルがコピーライター養成講座に?

橋口:ついでに僕のほうもご紹介いたしますと、私はコピーライターとして活動していまして、今ここ(スライド)に並んでいるようなものを担当しております。今日はしばらくお付き合いください。

まず「アイドルとコピーライターが何で対談するんだ」とみなさん思っていますよね。実は僕が寺嶋さんとお会いしたのは、寺嶋さんが宣伝会議のコピーライター養成講座に通われていて、僕もその講座に講師として登壇していて、そこでご挨拶したのがきっかけなんですよね。

寺嶋:そうです。あの時の橋口さんの講義の資料を持ってきました。

橋口:保管していただいているんですね。ありがとうございます。僕、ソーシャルメディアでバズるコピーの話をしましたよね。

寺嶋:そうです。SNSとコピー、バズを生むコピーということで、お話いただきました。

橋口:あの時も、いろんな生徒さんが質問してきてくださるんですけれども、だいたい若手の社会人の東京都周辺の方か、(コピーライター)志望の学生さんが多いです。なのでアイドルの方が通われていて、ものすごいびっくりしました。通われてみてどうでしたか?

寺嶋:最初は、自分が国語の教員免許を取ったりもして、国語とか言葉に興味があるし、歌の歌詞とかを読んだり、書いたりすることも好きなので、わりと向いているというとおこがましいですけど、たぶん親和性があるんじゃないかなと、ちょっとそういう目論見があって通い始めたんですけど。一番最初は宣伝会議さんのポスターになりたいというところから……。

橋口:はいはい(笑)。

寺嶋:「ポスターになりたい」と言って、いろいろ伝手を探してもらったら、「急にポスターは無理だけど、まず講座に通ってごらんよ。そしてコラムを書いてごらんよ」ってお仕事をいただいて、そういうきっかけだったんです。

コピーライターの仕事は「切り口」を見つける仕事

寺嶋:でもきっと(コピーライティングは)自分が好きだったことと近いから、講座も楽しく通わせていただけるんじゃないかと思ったら、初回からぜんぜん予想と違いました。もっと言葉のレトリックを学んだり、言葉のいじり方というか、それっぽいいい感じの言い方を教えてもらえる回だと思っていたら、そこに至るまでの思考の仕方を教えてもらうという講座だったんです。

コピーを生むためのいろんな考え方や視点の持ち方を学ぶ講座だったので、自分が予想していた“レトリックいじり講座”とはぜんぜん違って、目から鱗というか、とてもびっくりしたのを覚えています。

橋口:そうですね。僕も社会人になってからコピーライターになったので、新人の時、寺嶋さんのような衝撃がすごくありました。コピーライターって言葉の仕事というより、切り口を見つける仕事だと思っているんですよね。

よく僕たちの仕事で言われるのが、「文章が下手でも、発見が上手な人はコピーライターになれる」という言葉があって、確かにコピーって、レトリックのようなところじゃなかったりするんですよね。

寺嶋:そうですよね。まずは「何を書くか」を見つけるところから始まるので。なんとなく「この商品いいから買ってね」と言ったって誰も買ってくれないんだとか、私もYouTubeの広告とかけっこう飛ばしちゃうんですけど、広告はそういうものだという前提にまず立たなきゃいけないとか、いろんなことを教わりました。

そうすると、自分のSNSを使っていても「CDが出ました、聴いてください」って言い続けるだけじゃきっとダメなんだなと気が付けたりしました。いろんな考え方を教えていただく講座だったなと思っています。

SNSの発信は「何を言うか」と「誰が言うか」の掛け算である

橋口:今のTwitterとかnoteの発信で、コピーライター養成講座で生まれた成果が活かされていますか?

寺嶋:活かせているといいなと思うんですけど、橋口さんの講座の時に、「自分の視点から発信することがSNSでは大事だ」とすごくおっしゃってて。

橋口:はいはい。

寺嶋:「SNSの発信においては、それっぽい綺麗事を言っても響かないし、嘘はなかなか人に届かないから、自分の視点からだからこそ言えることを見つけて、それに発見とか共感があれば広がっていくんだ」ということを教わったので。

アイドルが言うから気が付いてもらえるとか、私は若い女性というカテゴリになると思うんですけど、若い女性が言うから新たに気付いてもらえるような、自分が持っているいろんな属性をうまく使って発信するにはどうしたらいいかなということを考えるようになりました。

橋口:そうですよね。ソーシャルな発信って「何を言うか」と「誰が言うか」の掛け算だったりしますもんね。ちなみに僕以外の先生の回で、誰かこの人がよかったみたいなのってありますか?

寺嶋:毎回とてもびっくりしながらだったんですけど、今度(12月18日)宣伝会議さんの体験講座といいますか、これからコピーライター講座を受けようとしている人向けにこんな講座ですよという話をする対談を、阿部広太郎さんとするんですけど。

橋口:はいはい。

寺嶋:阿部さんは「ミスiD」という、私が受けていた講談社主催のオーディションのコピーを書いた方で。私が受けた代とは違うんですけど、アイドルと近いところでお仕事されてた方なので、阿部さんのお話は、わりとアイドルにも活かしやすいなって思いました。

橋口:阿部広太郎は僕の後輩で、仕事もたまにするのでよく知っていますよ。彼はアーティストの歌詞を書いたりもします。

寺嶋:そうですよね。

橋口:エンターテインメントの仕事が多いので、確かに寺嶋さんとの対談はすごくおもしろい内容になりそうですね。

寺嶋:共通の知り合いの作詞家さんがいるので、そういうところからちょっとエンタメっぽい話とかにも、つなげられたらいいのかなって思っております。

橋口:きっといい内容なので、みなさんぜひ興味あったら見てみてください。

寺嶋:ありがとうございます。

日本最大のキャッチフレーズの公募賞にも挑戦

橋口:もう締め切っちゃいましたけど、「宣伝会議賞」も応募したって言っていましたね。

寺嶋:応募しました(笑)。一応、受講して以来毎年応募しているんですけど、今のところ引っかかったことはないです。

橋口:すごくびっくりしました。そこまで熱心に勉強されているんだって。

寺嶋:楽しみにさせていただいています。

橋口:そうなんです。毎年参加者が増えていて、去年も過去最高だったんじゃないかな。

寺嶋:61万点ぐらい。

橋口:僕、今ちょうど審査していますよ。

寺嶋:わー!

橋口:名前が出ないんので、当然誰が書いたのかわからない。ひょっとしたら寺嶋さんのものも混じっているかもしれないですね。

寺嶋:審査の段階では、審査員の方にお名前が届かないんですね。

橋口:もちろんです。誰のコピーってわかっちゃったらまずいじゃないですか。

寺嶋:そっかそっか。本当に実力勝負というか、1行勝負というか。

橋口:そうですね。「ああ、これ寺嶋さんのコピーだから通しちゃおう」となっちゃうので、そうならないようになっているんですよ。けっこうな数の審査員がいますけど、全員がそのスタイルでやっているので、すごく公正に審査しているんじゃないかな。

寺嶋:楽しみに2月(の結果発表)を待ちたいと思います(笑)。

“アイドル村”から、外に学びに行くことで得られるもの

橋口:本当にうれしいです。広告業界の外の方にコピーで興味を持っていただけることが僕はすごくうれしくて。このイベントも敢えて広告業界の外の方と対談しているんですが、広告業界ってある種少し内輪体質なところがあって、身内同士で固まって話しがちなんです。

なるべくこの対談シリーズでは、広告業界の外で活躍されている言葉の達人を呼ぶというテーマでやっているんですよね。なので、アイドルの方にコピーに興味を持っていただけているのがすごくうれしかったんですね。

寺嶋:ありがとうございます。私は逆にアイドル村というか、ちょっと特殊な環境に身を起きがちで。そこでの常識が実は外の世界では非常識だということに気が付かないまま進んじゃっていることもあるんです。

なるべくアイドルの人たちや運営の人たちとも仲良くやりたいけど、外に学びたいなという気持ちが、特にこの数年ありました。コピーとか広告のことを勉強すると、結局広告は社会に届けなくちゃいけないから、今社会がどういうモードなのかとか、何を大事にしていこうという思考に至っているのかとかを知れるので、世の中を知るためにコピーを勉強しているところもちょっとあります。

橋口:僕たちも寺嶋さんに負けずに、それこそアイドルから勉強したほうがいいですよね。僕も広告業界周辺の人のセミナーとかビジネス本とかを読んだりしますけども、なかなか自分の仕事に活かすためにアイドルのライブに行こうって、なかなかそこまで発想がいかないので。やらなきゃなと話を聞いていて思いました。

寺嶋:じゃあ、2月はぜひいらしてください(笑)。お待ちしています。

橋口:ぜひぜひ(笑)。2月26日ですよね。

寺嶋:はい。

企業の成り立ちを表した、サンリオの経営理念のコピー

橋口:せっかくコピーライター養成講座の話で始まったので、最初に寺嶋さんと広告の話をしたいなと思って。もし好きな広告とかコピーがあったら教えていただいてもいいでしょうか。

寺嶋:私はサンリオがすごく好きなんですけど、サンリオさんの経営理念のコピーが「Small Gift, Big Smile」というコピーで。

橋口:ああ、かわいらしいですね。

寺嶋:かわいいんです。サンリオさんはもともとキャラクターグッズに至るまでに、メッセージカードやちょっとした贈り物や、ちょっとかわいい文房具とか、そういうものを人に贈ると幸せになるよねというところから始まっている会社で。

今の会長が創始者なんですけど、戦争を体験されて、平和な世の中の大切さとか、それを実現するためにはちょっとした贈り物で人々が幸せになることが大事だということを今でも説いていらっしゃる方なんです。

橋口:へえ!

寺嶋:その思いがこの「Small Gift, Big Smile」に入っていて、素晴らしいコピーだなっていつも思っています。

橋口:サンリオにそんな背景があったんですね。勉強になるなぁ。まったく知りませんでした。

寺嶋:あとは「一瞬も 一生も 美しく」という、資生堂のコーポレート・ガバナンスですかね。あとは、西武百貨店のバレンタインのコピーは毎年好きなんですけど、ちょっと前の「彼女がいること以外はぜんぶ好きです。」とか、似た感じだと時計のコピーで「好きな人はいますか。好きになる前に聞けばよかった。」とか。

橋口:ああ、いいですね。それ1本でドラマになっていますね。

寺嶋:あと本にもなっていましたけど、「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」とかは、やはりルミネで見ると、シチュエーションも含めてすごくグッとくるし、たぶんみんなどこかで体験したことがあるようなコピーだなと思って。歌詞にもなりそうですよね。

橋口:試着室というと映像が再生されますもんね。

キャラクターを通して体現されている「パーパス」

寺嶋:最近はチョコで......すいません、ガーナじゃないんですけど。

橋口:いえいえ(笑)。

寺嶋:「ひと粒、大人を休みませんか。」ですね。最近よくDARSを買うんですよ。そうすると(このコピーが)付いていて、これもけっこういいなと思っています。

橋口:ぜひぜひガーナもお願いします(笑)。プレミアムガーナというちょっと高級なやつが出て、すごくおいしいんですよ。ぜひお願いいたします。

寺嶋:(笑)。わかりました。

橋口:最初におっしゃっていたサンリオの「Small Gift, Big Smile」がすごくいいなと思って。今、僕たちの広告とかマーケティング世界で、「パーパス経営」という言葉がもてはやされていて。

パーパスは「目的」です。単純に「なんかいいものを作って売るぞ」じゃなくて、「世の中を良くする」という目的を掲げて活動するブランドや企業がすごく注目されているんですね。なので、サンリオさんはそれをすごく前から実践されていたんだなと。すいません、僕は不勉強ながらまったく知らなかったんですけど。

寺嶋:本当にそうなんです。今、キティちゃんはSDGsを一生懸命発信していて。

橋口:SDGs。

寺嶋:YouTubeとかもやっていて、企業としてかわいいものを売るだけじゃなくて、それによって「世界中がみんな仲良く」を目指している会社なんです。それってイコール世界平和なので、そのための活動をキャラクターを通してされている。そこにアイドルも学ぶべきところあるなと思って仕事をしています。

キティちゃんの仕事は「全部選んだ結果やっている」

橋口:キティちゃんって、よく「仕事を選ばない」と言われますけれども、SDGsの発信もしているんですね。

寺嶋:そうなんです。キティちゃんは仕事を選ばないんじゃなくて、「全部選んだ結果やっている」と言っていました。これがすごい格好いいと思って。

橋口:(笑)。素晴らしいですね。でもキティちゃんって、これは僕のただの肌感覚ですけど、日本のキャラクターとして世界で一番というくらい人気なんじゃないですか。本当、外国の方でも誰でも知っていますよね。

寺嶋:本当にそう思います。日本代表として世界中で活躍していて、あの姿勢が素晴らしいなといつも思っています。

橋口:「クールジャパン」でキティちゃんの名前を挙げる日本人はそんなにいないと思うんですけど、すごいですよね。みんな知っている。

寺嶋:大阪万博の(誘致)キャラクターとして、いろいろPR活動やっていたような。

橋口:それはいいですね。海外のお客さまもみんな知っているはずなので。

寺嶋:ご活躍されています。

橋口:素晴らしいですね。寺嶋さんはキャラクター全方位が好きなんですね。いわゆる地方のゆるキャラだけではなくて。

寺嶋:サンリオもすごく好きで、キティちゃんも好きだし、ポムポムプリンも。ご存知ですか?

橋口:イチ推しと言われていましたよね。

寺嶋:あ! ポムポムプリン。

橋口:寺嶋さんが好きだということで、知っていました(笑)。

寺嶋:ありがとうございます(笑)。

ポムポムプリンから考える、キャッチコピー・ネーミングのおもしろさ

寺嶋:ポムポムプリンも今年25周年で、「みんなの生活に、もっとポムポムを。」というキャッチコピーで、1年間いろんなシリーズが展開されて。

私たちの生活にもっとポムポムプリンのグッズを取り入れようでもいいし、ポムポムプリンのSNSに癒やされようでもいいし、「ポムポム」という言葉自体がすごく弾んでいてかわいいので、そういうポジティブな気持ちをみんなの生活にもっと入れようねという、すごいいいコピーだなと思っていました。好きなコピーです。

橋口:キャラクターにもストーリーやコピーがあるんですね。

寺嶋:そうなんです。コピーもそうだし、もしかしたら「ネーミング」にもコピー的な考えが入ってくるのかも。「ポムポムプリン」も、ちょっと弾んだかわいい感じの名前ですよね。その時々の流行りとかもあるんでしょうけど、ゆるキャラも含めてキャラの名前って、もしかしたらコピーを考える時と意外と近い発想で考えられているのかなって思う時もあります。

橋口:確かに、ただかわいい語感じゃなくて、企画になっていますよね。ポムポムプリンもそうなっている。

僕はキャラクターにはぜんぜん疎いんですけど、うちに小学生の子どもがいて、子ども達は「すみっコぐらし」が大好きですね。

寺嶋:キャー! 映画、ご覧になりました?

橋口:残念ながら観てないんです。でも、大人が観てもすごいって評判ですよね。観たほうがいいですか?

寺嶋:私は大号泣しました(笑)。1作目は大人が観ると、トラウマというとあれですけど、1週間くらい引きずる課題を残される感じです。

橋口:えー! あんな見た目でですか。

寺嶋:2作目はもうちょっとほんわか泣けました。よかったです。お勧めです。

「すみっコぐらし」の映画が、大人でも泣けるワケ

橋口:なんでしたっけ、1人、お母さんと生き別れになったキャラもいますよね。

寺嶋:とかげですね!

橋口:なんでそんな悲しい設定にしたんだろうって。

寺嶋:全員けっこう悲しいんですよ。「ぺんぎん?」という緑の子がいるんですけど、自分はペンギンだと思っているんだけど、昔は頭にお皿が乗っていた気がして、自分が何なのかわからないからいつも本を読んだりして、アイデンティティを探し続けているキャラもいます。

橋口:哲学ですね(笑)。

寺嶋:哲学です。ちょっとしたネガティブなこととか、お母さんと生き別れなことをみんなに言えないとか、そういういろんな個人的な悩みを抱えながらも、すみっこでみんなで支え合って生きているという社会の作り方が、たぶん大人が見るとどこかに自分がいる感じがして泣けるんだと思います(笑)。

橋口:そんな深い話なんですね。お母さんと生き別れるってけっこうヘビーじゃないですか。漫画でもそんなキャラはあまりいないですよね。

寺嶋:しかも生き別れた理由が切なすぎて。「とかげ」というキャラなんですけど、本当は恐竜の生き残りなんですよ。だから恐竜だということが人間にばれちゃうと捕まっちゃうから、お母さんの大きな恐竜と離れ離れに暮らしていて、自分が恐竜だということを仲間にも言えず、とかげのフリをしているんです。

橋口:へえ! おもしろいですね。いわゆる『鬼滅の刃』みたいなシリーズコンテンツがあるわけでもないのにバックストーリーがあって、緩やかにドラマが続いているというのはおもしろいですね。他に日本以外でそういうことやっているのはあるのかな?

寺嶋:そうですよね。ミッキーも、映画とかが最初なんですか?

橋口:ミッキーはやはりアニメという、いわゆるコンテンツがありますもんね。MARVELとかも漫画でずっと続いてきたものだし。

寺嶋:お話ありきですもんね。

橋口:キャラクターありきでストーリーがあるのは、たぶん日本特有なんじゃないかな。

寺嶋:確かにそんな気がします。

「キャラクターありき」で展開する、日本ならではのビジネスモデル

寺嶋:サンリオでも、別に何か映画のシリーズとかがあるわけではないけど、ポムポムプリンの性格や生い立ちはきちんと作られています。キャラクターの設定と言っちゃうと夢がないですけど、プロフィールのようなものをすごく緻密に考えるのは、日本ならではなのかもしれない。 

橋口:そうですよね。僕の世代だと、ビックリマンチョコがそんな感じでしたね。

寺嶋:ああ! キャラごとにいろいろプロフィールがあるんですね。

橋口:当時の男の子はみんな夢中になった、よくわからないヒーローのステッカーなんですけれども、後ろを見るとわかったようなわかんないような設定が書いてあるんですよ。彼らが魔界から来てどうのこうのみたいな。うろ覚えの記憶なので、本当に詳しい人がいたら怒られちゃいますけれども。

寺嶋:ビックリマンという漫画があるとかではないんですね。

橋口:その後漫画やアニメになっていますけども、最初はシールから。それこそ今の「すみっコ」とかの感じだと思います。キャラクターからスタートして、なんとなくの設定があって、人気が出てアニメになった。そんな感じじゃないかな。

寺嶋:その進化の仕方は日本独自かもしれないですね。

橋口:あまり他に例を聞かないですよね。