「プレゼン作成の専門家」2名による、パワポ作成術

司会者:それでは、お時間になりましたのでセミナーを開始させていただきます。本日は「社内で一発OKがもらえる効果的なパワーポイント作成術」にご参加いただきまして、ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。

まず、今回のイベントの企画趣旨についてご案内をいたします。「Eight ONAIR」では、今週月曜日からの1週間、「今すぐ使えるプレゼン作成のコツ」というテーマで、ONAIR限定のプレゼン作成に関するイベントを配信しております。

最終回の本日は、スペシャルなゲストをお呼びしております。プレゼンテーションクリエイターかつ書家、そして一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事を務める前田鎌利さん。

そして、スライドデザイナーで一般社団法人プレゼンテーション協会の専務理事を務める堀口(友恵)さんにお越しいただき、「社内で一発OKがもらえる効果的なパワポ作成術」について、お届けいたします。

お二方はプレゼンに関して数々のベストセラーを生み出している、プレゼン作成の専門家です。そして、前田さんにいたってはソフトバンク時代に、あの孫正義さんにプレゼンをして一発OKを連発するなど、この業界の第一人者でいらっしゃいます。

今回はONAIR限定で特別に、お二人から効果的なプレゼン作成のノウハウをお届けいただけることになりましたので、みなさまぜひご期待ください。それではよろしくお願いいたします。

前田鎌利氏(以下、前田):みなさんこんにちは。

堀口友恵氏(以下、堀口):こんにちは。

前田:プレゼンテーション協会代表理事を務めております、前田鎌利です。今日は「社内で一発OKがもらえる効率的なパワーポイント作成術」をお伝えします。

堀口:専務理事の堀口友恵です。

9割以上の人がプレゼンテーションに苦手意識を持っている

前田:みなさん、どうでしょうか。伝えることって難しいですか? こういう質問をすると、「難しい」と言う方が大半なんです。

「プレゼンテーションに対して苦手意識がありますか?」という統計を取ると、91パーセントの方が「難しい」「苦手だ」と言うんですよね。これほど多くの方が、プレゼンテーションに対して苦手と感じているわけです。そもそもプレゼンって何なのか、考えてみましょう。

最初はアリストテレスまで遡るんです。紀元前300年代ですから、2,300年ぐらい前にアリストテレスは、書物『弁論術』を出して「多くの人に物事を伝えるには、ロゴス(論理)・パトス(感情)・エトス(信頼)の原則を使って伝えるんだ」という道を示してくれました。

2,300年経ったこの現代においても、我々人類は未だに「伝えるのが難しい」と悩んでいる。これが現状です。「口頭で伝える」ことから、例えばステンドグラスを使って「ビジュアルで伝える」というように、伝え方もちょっとずつ時代とともに変化していきました。変化というよりも、プラスアルファというところですかね。

現代であれば、パワーポイントなどを使ってお伝えすることが多いと思います。(他にも)例えば、名刺交換はどうですか? 僕からしたら、これもプレゼンテーションです。

プレゼンテーションの定義はいろいろありますが、「限られた時間の中で、相手に対して自分のことをきちんと伝えていく」アプローチを指すと思うんですね。名刺交換も、今だと手渡しじゃなくてリモートですから。今日も僕の画面にも出ていますが、オンライン上で名刺交換ができるようになりました。

特に「Eight」は良いですね。読み込むと僕の過去の仕事まで全部出てくるわけでしょ。だから、自分が伝えたいことがもうデータで一発なんです。これも時代の変化に合わせた、新しいプレゼンテーションだと思うんです。

こういった新しいテクノロジーを、どんどん使いこなしていくのが大事になってきました。まさに、僕らの日常がすべてプレゼンテーションと言っても過言ではないと思います。

コロナ禍でビジネスシーンに起きた変化

前田:2020年、我々のビジネスシーンは大きく変わりました。みなさんご存知のとおりコロナの影響なんですが、ここ(スライド)に出ているワードは、これまで私たちがあまり意識することのなかったものです。今、こんなに多くのワードが出てきました。

そして日常がテレワークになり、これがベースになっていきました。これは何も日本だけじゃなくて、世界中でテレワークが当たり前になってしまいました。これは、どこか1つの会社だけが行っている取り組みではありません。全世界的にラストワンマイルがつながって、誰とでも、インタラクティブなやりとりがすぐにできる環境になりました。

じゃあ、プレゼンテーションのやり方は変わるのか、変わらないのか。これは大きく変わっています。「リモート下においてプレゼンをする」と「リアルでプレゼンをする」、これは同じプレゼンであっても実はスタイルが違うんですよね。

例えばサッカーでも、フィールドで行うのとインドアで行うのでは、同じサッカーなのにルールが全然違うわけです。やり方も、使うテクニックも違ってきます。なので、環境変化に合わせて、どんどん新しいテクニックをキャッチアップしていく必要が出てきました。

そして人口構造も変わって、少子高齢化が進んで、エネルギーの問題、グローバル化、テクノロジーの進展、いろいろと社会環境が変わっていく。その中で、これまでの常識、方法論、価値観、経験則などがまったく通用しなくなってきていると思います。これ、けっこう肌感覚で「やばいな」と思っている人が多いと思うんですよね。

実際にこれまでのものが通用しないから、個々人が成長しなきゃいけない。成長って何かというと、「学ぶ」ことであると。やったことのないものに新たにトライしてみる、チャレンジしてみる、知らないことはどんどんキャッチアップして学んでいく。このように、個人が成長することが大事になります。

プレゼン資料作成術の書籍は、累計35万部のベストセラー

前田:そして、成長したことをどんどん外に出していかなきゃいけない。セルフブランディングをしなきゃいけないわけですよね。これまでと違って、副業や兼業が増えていきます。

「あなたは何ができるんですか?」「どんなスキルがあるんですか?」。スキルセットの話は、パッと見たらわかるんです。プラスアルファで(それを)伝えられるようにならなきゃいけない。ここの「伝える」スキルをどう鍛え上げていくか、これが大事なポイントになるんですね。

前置きはこれぐらいにして、ますは自己紹介をしたいと思います。僕は今、プレゼンテーションクリエイターで、書家の活動をしています。一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事を務めております、前田です。そして……。

堀口:みなさん、こんにちは。スライドデザイナーの堀口友恵と申します。前田とともに、一般社団法人プレゼンテーション協会で活動しており、『プレゼン資料のデザイン図鑑』と『パワーポイント最速仕事術』のデザインを担当しています。後半の最速Tipsで、みなさんにいろいろテクニックをお伝えしたいと思っております。

前田:今日は時間が限られていますが、より具体的なTipsにまで及びますので、いろいろ持って帰っていただきたいなと思っております。

堀口:ぜひ。

前田:書籍は、今日の時点で10冊ほど出ております。累計で35万部ほど売れているので、もしかしたらみなさんも読まれたものがあるかもしれません。海外でも翻訳され、広く読んでいただいています。今はコロナの影響でなかなか海外に行けないので、オンラインでつながって、多くの方にお伝えすることを行っています。

成果を出すこととは「意思決定の数」を増やすこと

前田:我々ビジネスパーソンが、何かしらの仕事をする時に1つの尺度として求められるのが、「スピード」です。スピードを持って仕事をしなきゃいけない、これはずっとみなさん言われてきたと思います。時間がないんですよね。

時間がない中で、スピード感を持ってアウトプットをする、成果を出す。このために何をしなきゃいけないか。例えば、売上を上げる、利益を上げる、いろいろあると思います。成果を出すためにどうすれば良いか。これは簡単なことで、意思決定の回数を増やせば良いんです。僕は3社の代表をやっていますが、すべて自分で決めて、ある程度動かすことができます。

でも、会社員として会社に帰属していた時は、自分の権限の範囲内にしか決定権はありませんでした。課長だったら課長、部長だったら部長、その範囲内だけに決定権があるわけです。最終的には役員や社長など、その方にとっての上司の方々から了承を取らなきゃいけないんですよね。意思決定してもらわなければいけない。

僕は2013年までソフトバンクに勤めていました。ソフトバンクの場合は、最終的には孫(正義)さんにOKをもらわないとGOがかからない、アクションがとれないわけですね。いかに意思決定の回数を増やすか、これが勝負になってくるんです。

プレゼンは、自分の「勇気」と「希望」を相手に伝える場

前田:さらに、働き方改革で働く時間が短くなっている。「限られた時間の中で、どれぐらい意思決定が増やせるか」、これがポイントなんですよね。社内で行うプレゼンテーションはまさに、「限られた時間の中で会社の上層部に対して、どのくらい多くの意思決定を勝ち取ることができるか」、これが勝負になってきます。

そもそも、プレゼンでみなさんは何を伝えていますか? それぞれいろいろあると思うんです。「こういった新規事業をやりたい」「この課題を解決するために承認して欲しい」「この予算が欲しい」などいろいろあると思うんです。

実はそういったことよりも、もっと本質的に、根本的に大切なことをみなさんは伝えています。それはこの2つ、「勇気」と「希望」です。「いやいや、そんなの伝えてないです」って思うかもしれませんが、実際には伝えているはずです。

勇気とは、別の言葉では「挑戦」とか「やる気」です。「私にこの仕事をやらせてください」「私にこれを任せてください」というのは、チャレンジですよね。

そして、自分のやる気を示さないと、「じゃあこの人に任せよう」とは言われないわけです。やる気がない人には任せられないから、別の人を立てようって思うわけですよね。決裁者の立場になるとすごく良くわかります。

トップ層を動かすために重要なのは「わくわく感」

前田:そしてもう1つが希望、「わくわく感」です。特に会社のトップに立つ方々は、(社員に対して)このわくわく感をどう伝えるのかがすごく大事になってきます。会社のトップがわくわくしてると、(社員の方々は)プレゼンを聞きながら「いやあ、これ楽しそうだな」「私もチャレンジしたい」「僕もぜひこのプロジェクトに参画したい」って思うはずです。

わくわく感がない経営層の下だと、やっぱり社員の方もちょっと意気消沈してしまう。ですから、このわくわく感(つまり希望を大切にして欲しい)。「勇気」と「希望」、この2つをしっかりと伝えることが大事になってきます。

もちろん、社員の方がトップに対して、「こういうのをやらせて欲しいんです」と言う時も、自分がわくわくしていると、「お前がそんなにわくわくするんだったら、俺もわくわくしてみたい」と思うわけです。この人に託そうって思うためにも、この2つ(「勇気」と「希望」)を意識しましょう。

では、実際にどうやったら伝わっていくのか。伝わるメカニズムについて、ちょっと押さえておきましょう。これを理解してる人は、プレゼン上手なはずです。

最初に、「自分が伝えたいこと」が明確になっているかどうか。これ大事ですよね。言いたいことがまとまっていないと、「この人はいったい何が言いたいんだ?」となります。だから、しっかりと伝えたいことを明確にする。そして、絞る。これが大事です。

プレゼンテーションが伝わるメカニズム

前田:それをプレゼンで伝えるんですが、伝えて終わりじゃないんですよね。伝えるのは誰だってできるんです。相手に伝えたいことを投げてから、その後どう転がっていくか。ここを意識しなきゃいけない。

伝えたら、相手はまず理解します。理解は誰だってしてくれる。ただ、難しい伝え方、よくわからない伝え方をすれば、そもそも理解すらされません。(ちゃんと理解されるためには)「資料」と「話し方」が大事になってきます。

そして、その次は「納得」してもらうこと。これが難しい。ただ単にプレゼン資料を読み上げただけでは、納得感は意外と低いんです。だいたい2割ぐらいしかない。この「納得感」を作っていくのが、質疑応答です。質問に対してどう答えるか。ここがけっこう大事になってきます。後でこのことにちょっと触れていきます。

相手が納得し、腹落ちしたら、意思決定をしてくれます。そして意思決定をした後で、やっと行動に移してくれるんです。相手が行動しなければ、自分に返ってきません。自分に返ってきたら、ようやく自分がやりたいことを自走できますよね。当然、自分がアクションをとらなければ、言って終わりになっちゃいますから、アクションして結果を残します。この一連の流れが、「プレゼンテーションが伝わるメカニズム」です。