2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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司会者:それでは続きまして、塩田さんに発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
塩田周三氏(以下、塩田):塩田と申します。よろしくお願いいたします。「『圧倒的なクオリティ』の源泉」という、大層なタイトルでお話をさせていただきますが、その理由も含めて、まずは私の会社であるポリゴン・ピクチュアズの説明をさせていただきます。
ポリゴン・ピクチュアズですが、南麻布に本社を置き、コンピューターグラフィックスでアニメーションを制作する会社です。現在というか、ここ数年だいたい300人近くのスタッフが勤務しておりまして、規模的には日本においては最大規模であります。
(スライドを指しながら)この写真は、ご想像のとおり何年も前に撮ったものです。今はコロナ禍でこんなに人が集まるわけではなく、ここ1年半ぐらいオフィスで勤務しているのは15パーセントぐらいの人材なんですが、変わらず300人ぐらいの規模でやっております。
特徴としては、規模もさながら、スタッフの構成が日本人中心ではありつつも、だいたい15パーセントから20パーセントぐらいが海外からジョインしてるスタッフで、常時18~20ヶ国ぐらいの人たちが勤務しております。
ついては、日常的に使われている言語が日本語および英語で、クライアント層も国内・海外と幅広いこともあり、トランスレーション専門のチームが8名常勤しております。今、東京にこちらのオフィスがあるのに加えて、Silver Ant PPIという合弁会社をマレーシアのクアラルンプールの近くのペタリンジャヤに設けており、こちらでも80数名のスタッフが勤務しています。
塩田:また、今年の8月に新たにPolygon Studios Indiaというインドのスタジオも構築しております。この3社が、ポリゴン・ピクチュアズグループを構成しているというかたちなんですね。なので特徴としましては、規模的には日本国内では最大規模であって、極めて国際色が強い。スタッフ構成もクライアント・仕事の種類も国際性が強いのが1つの特徴であります。
もう1つの特徴とては、1983年に設立しまして、コンピューターグラフィックスの世界においては極めて古い会社なんですね。そもそもコンピューターグラフィックスという言葉が使われ始めたのも1960年。アメリカのボーイングで、特に軍事産業での飛行機のシミュレーションとかを表現するために、コンピューター計算されたものをグラフィックスで表示するために生まれたものであると。
なので、コンピューターグラフィックスの歴史自体がそんなに古くはないと。Industrial Light & Magicという、ジョージ・ルーカスが『STAR WARS』を作るために作ったVFXの会社が、コンピューターの導入を少しずつ始めました。PDI(Pacific Data Images)という会社が、コンピューターグラフィックスを用いたアニメーション会社として初めての会社だと言われています。これが1980年です。
PDIは後々DreamWorksに吸収され、ちょうど35周年を迎えた時にブランドしなくなりました。そして、つい最近Blue Sky Studiosという老舗もなくなった。ついては、私が知る限りコンピューターアニメーション会社としては、ポリゴン・ピクチュアズが国内のみならず世界的な最古参であると考えております。
塩田:コンピューターアニメーションがさほど重要視されていない日本において、これだけ長く生き残っているのが我々の1つの誇りであります。どんな作品をやってるかご覧いただきたいので、ショーリールをご覧ください。
【動画再生】
このような作品をやっているんですが、国内では『ゴジラ』みたいな大きなフランチャイズから、海外においてはDisney本体であるとか、ジョージ・ルーカス、Lucasfilm Animationであるとか。
最近のストリーミングで言いますと、AmazonプライムでやApple TV+だったり、当然ながらNetflixさんともこうやってお付き合いをさせていただいていて。
比較的最近だと、『トランスフォーマー』のアニメーション3部作であったり、アメリカ発のコミックを我々がシナリオからキャラクターデザイン、プロダクションデザインまで監督も含めてつかさどった、制作中のアニメーションシリーズですね。こういったものをご一緒させていただいております。
年間30タイトル、約880分。これは2020年の実績で、ほとんどコロナ禍での実績なんですが、これだけの生産高を誇るCGアニメーションスタジオはたぶん世界の中でも極めて珍しい。
単に大量に作るだけじゃなくて、日本のスタジオの中では唯一、テレビ界におけるアカデミー賞と言われているエミー賞を何回も受賞したり、アニメーションにおける最高褒賞である米国アニー賞を受賞したりしております。
塩田:ということで、長年存続して多岐多様にわたる作品を作り続け、かつ世界からいろいろと賞賛をいただいている中で、「圧倒的なクオリティの源泉を」という話をしてください、というお話をいただいたと思うんですけれども。
そもそも、その源泉は何かと言うと、我々のミッションステートメントがまさにこの「圧倒的なクオリティ」という言葉を含んでおりまして。「誰もやっていないことを圧倒的なクオリティで世界に向けて発信していく」と。
これは、創業者の河原敏文が常々言っていたことを、私が20年近く前に社長になった時にミッションステートメントとして取り入れたんですが、この3行は極めて真面目に取り組んでおります。
どの時代においても必要な、誰もやってないけどやるべきこと。先ほど宮川(遙)さんのご説明の中で、技術やメディアも日々進歩していて、いろいろな新しいものが出てきている。「コンテンツ」と言うぐらいなので、常々出てくる外側の箱に見合ったものを作っていかなければいけないと。
そのために、常々誰もやってないことでやるべきことが発生していくので、これをどうすべきか。コンテンツが箱に応じて変わっていくのに応じて、クオリティが変わってくる。だから、時代における圧倒的なクオリティはなんぞやと。これを国内だけじゃなくて、常々世界に向けて発信していくということを考えています。
塩田:世界に向けて発信していく対象も、今までは例えば欧米中心だったものが、これからは中国が本当に大きなプレゼンスになっていったりとか。Netflixさんのようなストリーミングパートナーが出てくることによって、一瞬にして190ヶ国以上に対してアプローチができるようになっていくとか。こういった時代の変遷のうちで、この3行に本当に真摯に向き合っていくことによって、我々は常に存続し続けています。
今回の本題である、「圧倒的なクオリティ」とは何ぞやということなんですが、これは本当に難しい。先ほどの話じゃないんですが、絶対的な定義っていうのは何もなくて。やっぱり時代とか環境に応じて変わってくると思います。
例えば、『The Simpsons』ってみなさんご存知かと思いますが、『The Simpsons』のアニメーションを見て圧倒的なクオリティかと言うと、アニメーションだけで見るとけっこう雑なアニメーションなんですけれども。
でも、これはみなさんご存知のとおり圧倒的なフランチャイズで、『The Simpsons』のマーケティング価値はだいたい1.4兆円あると言われています。33年間にわたって、トップフランチャイズとして存続し続けていると。だいたい30分番組の1話あたり、ピーク時では5億円を超えていたと言われています。
明らかにアニメーションには(そこまで予算が)行っていないんですよね。シナリオであったりとか、声優さん、ピーク時で声優さんには1話あたり4,000万円払っていたという話もありますし、いろんなところにお金がかかっていることによって、一元的では定義できないクオリティを出しているわけですね。
なので私が思うに、圧倒的なクオリティは何かというと、要は圧倒する・他社を寄せ付けない大きな差をつけるというふうに考えると、やっぱり差別化なんじゃないかなぁと思うわけです。
塩田:じゃあ、差別化であるとするならば、我々なりの差別化をどうすればいいかと常々考えているんです。他社を寄せ付けない、今回のテーマにおいては国際マーケットにおいてどうやってそのクオリティを出していくかと。どのように存在感を出していくかという話なので。
そして国際マーケットにおいての差別化で言うと、あきらかに我々は「日本にいること」が大きな要素だと思っています。
実は私は15歳までずっとアメリカで育ったので、帰国子女でして。ある意味ダブルカルチャーで育ってるんですけれども、やっぱり日本という特異性、特にこのコンテンツ制作における特異性をものすごく感じるわけですね。
まず1つ、日本の土壌がまず縦長で、四季が明確にあると。日本は災害大国なわけですよね。全世界の面積の中の0.3パーセントぐらいしかないんですが、世界の活火山の7パーセントが集中して、地震がものすごく多い。だけど、何千年も国としては存続しているわけです。
4つのプレートが密集する地域は、世界中を探してもないわけですね。要は、非常に暴れん坊な土壌の上に日本人は何千年も過ごしてきた。四季と暴れん坊の土壌と共に養っていった感覚、これが日本のコンテンツ作りにすごく大きく影響していると思いますし、どこにも真似ができない。真似したくてもできない差別化の要素の1つだと思っています。
塩田:加えて、小さい国土。実際に住める国土がすごく少なく、東京、大阪なんかに人口が密集していて。世界の中でも人口密度は東京、大阪は各々4位、5位だったりするわけですね。
これは別に最近の話じゃなく、何百年もそうなわけです。そういった中で育ってきている我々は、だいたい親から「迷惑をかけてはいけません」というふうに言われながら育つわけですね。例えば、私が育ったアメリカだったら、「他者にいいことをしなさい」と言われる。日本の場合は「迷惑をかけてはいけません」と言われるわけですね。
なので、迷惑をかけてはいけないためにはどうするかというと、いつも他者の顔を見るわけです。「いいことをしなさい」という時には自分発信なんだけれども、「迷惑をかけてはいけない」ということは他者の顔を見るわけですね。他者の顔を見て、空気を読むことを常々訓練されている我々の人種。そこらへんの感覚も極めて特異だと思うんです。
それを「みなまで言うな」という言語体系の中で、我々は過ごしていると。これも非常に特異だと思っていて。
もう1つは政府や政治面ですね。今度選挙がありますが、だいたい我々が思っているのが、選挙があってどうあろうが、良くも悪くもそんなに体制は変わらないだろうと。
今、アフガニスタンがすごいことになってますが、これだけ長きにわたって良くも悪くも安定している政治体系にある。かつ、宗教という部分においても、日本は天皇制が続いていて、National religionが何かと言ったら神道なんですが、そういう意味だと、万の神、極めて自由な土壌、いわゆるアニミズムの土壌の中で私たちは育っているわけですね。
一方で欧米は、キリスト教国家の中で、ある程度のヒエラルキーの中で育まれた文化の中で出てくる発想。これはぜんぜん違うわけです。
塩田:もう1つは安全性ですかね。東京はこんなに大きな街なんですが、2019年までは世界1位の安全な都市だとずっと言われてたんですね。今回は5位かなんかに下がったんですが、それはサイバーセキュリティが脆弱だということで下がったらしいんです。
安全であるがゆえに公共の運搬手段や通勤手段が発達しているから、子どもがちっちゃい頃から1人で行き来できている。こんな国ってそうそうないわけです。(諸外国では)1人で行き来できないから、だいたい親に車で送ってもらったりとか。
(日本の)子どもが1人で塾に行ったり学校に行ったり、そういう時にも子どもは何をするかというと、自分の好きなことをやるわけですよね。好きなことをやれる時間が、日本は相対的に長いと思うんです。どこかの学会で発表されていることじゃなくて、私の感覚なんですけど。
こういった特異性や安全性が、例えば製作委員会みたいな日本独特の、契約はなくてもお互いの信頼の中で作っていく土壌につながっていく。それが、ひいてはいろんなコンテンツにつながっていくんですね。
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