2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
第一部 篠田真貴子氏講演パート(全1記事)
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榎本佳代氏(以下、榎本):みなさま、お集まりいただきありがとうございます。初めまして、私、エール株式会社の榎本と申します。今日はよろしくお願いいたします。
本セミナー開催に伴いまして、簡単にエール株式会社のご紹介をさせてください。エールは「社外の複業人材によるオンラインの1on1」を提供しております。この「社外の複業人材」というところなんですけども、まさに今日参加いただいているみなさまと同じように、ビジネスの第一線で活躍されている起業家や経営者、人事、プロジェクトマネージャー、営業といったさまざまな方々、1,800名(イベント開催時)に登録をいただいておりまして。その方々との、週に1回30分の1on1を提供しております。
この「社外の方と話す」ということが、オンライン時代において社員の自律や人材育成につながったり、新しい刺激を得て創発性を高めたりといったことで、多くの企業にご導入いただいております。
そして本日このセミナーですが、8月5日に発売された『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』の発売記念イベント第2弾ということで。9月3日にリリースを出させていただきましたが、この『LISTEN』が早くも2万5,000部(イベント開催時)を突破いたしました。みなさん、心の中で拍手をいただけるとうれしいです(笑)。
8月5日に発売して、1ヶ月経たない段階で早くも2万5,000部ということで、多くのみなさまに手に取っていただいたことをうれしく思います。ありがとうございます。SNSなどでご感想を投稿いただいていますが、VOOXの編集長の岩佐(文夫)さんからは「人の話を聴くっていうことはわかっているつもりなんだけど、ガツンと叩き込まれました」っていう話とか、あとは「多くの人は聞いているようで、実際には聞けていないよね」っていうことだったりとか。他にも『LISTEN』を読んで「聴くって難しい」という声をいただいていますけど。
そこに対して、本の監訳を担当された篠田さんから明確に回答が出ておりまして。「聴くというのは、そこに関心を持った時から、誰しもが練習・トレーニングをすればできるようになる」と明言をいただいております。
今回はセミナーのタイトルも「『聴く』力を高める」。組織・ビジネスにおいて、どうやって「聴く」を取り入れていくのか? がテーマになっておりますが。今日の朝、当社にて「組織の聞く力・1on1力」を高めるトレーニングとしての、オンライン研修プログラムをリリースいたしました。今日はまさに、そんな「組織の聴く力を高める」ための内容といたしまして、第一部では「聴く」をビジネスや組織に取り入れるとどういう良いことがあるのか? そんなことを篠田さんからお話しいただきます。
そして第二部では、組織の中で具体的に「聴く」を入れていく、管理職の1on1のスキルを高めるためにはどうすればいいんだろう? という具体的なポイントについてもお話ししていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
榎本:ではさっそく、篠田さんよりご講演をお願いいたします。
篠田真貴子氏(以下、篠田):はい、ご紹介ありがとうございます。みなさん、篠田真貴子です。私からは「聴く」ことがビジネススキルとしてものすごく大事ということを、この『LISTEN』という本をご紹介しながらお話ししていこうと思います。
先ほど榎本さんから話があった『LISTEN』。(スライドを指して)これは私が撮った写真なんですけども、自立する分厚さなんですよね。こんなにも分厚い本がもう2万5,000部。多くの方々に読んでいただき、温かいコメントを寄せていただいて、本当にうれしく思っています。
私はこの本に「監訳」というかたちで関わったんですけれども。この本を知ったきっかけは、左にある原著『You're Not Listening』を読んで感銘を受けたからです。「Next Big Idea Club」という、アメリカのオンライン上の読書コミュニティがあって、そこで知ったんですよね。
それで、これは本当良い本で。普通に一人の読者として「誰か日本語に訳してくれないかなぁ」ってずっと思っていたら、いろんなご縁が重なって、なんと私が監訳として本を出す側に関わってしまいました。
なんですけれども、基本は読者なので。かつ、監訳というかたちで、たぶん今のところ日本では一番この本(『You're Not Listening』)を何度も読んでるんじゃないか? という気もしますので(笑)。あくまで「この本いっぱい読みましたよ!」という立ち位置から、今日はお話しをしたいと思います。
今日、私の時間では主にビジネス面でお伝えするんですけれども、その前に「この本は何なのか?」というのを簡単にお伝えをします。「はじめに」に、このように書かれているんですね。「本書は、聴くことを賛美する本であり、また文化として『聴く』力が失われつつあるような現状を憂う本でもあります」と。
私なりの理解では、この本は(スライドを指して)左にあるように、人と社会に関する理解を助ける、「聴く」という切り口からの教養の書だと思っています。そして、教科書ではない。右側で「ではない」というのを考えてみました。特徴としては、著者のケイト・マーフィさんはジャーナリストなんですね。もちろん彼女は仕事として、インタビューのかたちで聞くことはしてますけれども、彼女個人の聞き方の話ではなくて、ジャーナリストとしていろんな人たちに取材をした結果をまとめた本です。
ですので、カウンセラーやコーチ、あるいは宗教家の方が自分の聞き方を伝授するような本とは性格が違います。ですので、左にあるように「聞くとは何か」「なぜ聞くのか」という話がわりと多くて。内容としては左の3点目にあるように人の認知や心、それから職場や家族の人間関係。そしてスマートフォンが生活の深いところに入り込んでいる、現代の社会について書いています。
世の中に、私がこれまで見たことある「聞く」に関する本は、どちらかというと方法論であったり、個人の心とか人間関係のアドバイス・示唆を与えるものがあったかなと。それらとはそういう意味で、性格が異なるんですよね。
この本は章立てが“エッセイ風”といいますか、論文のように論旨をカチッと切って章立てしたものとはちょっと性格が異なるので、今日のビジネスに関するテーマの章はないんです。ただ、読者である私がそういう関心を持って読みましたので「聞く/聴く」っていうのはビジネススキルとしては必須なので学びましょう、と。こういうメッセージを1つ読み取ったので、そんな観点で私が何を読み取ったか? について、お話ししていこうと思います。
主にこの本の抜粋と言いますか、このテーマに関して私が気になったところをどんどんご紹介していく、というかたちになりますので。「聴く書評」というか「聴く読書感想文」みたいな感じになりますが、よろしくお付き合いください。
篠田:さっそく、この「『聞く/聴く』はビジネススキルとして必須なので学びましょう」について。なぜ私がこれを読み取ったか? というと、理由は3つあります。1つは「『聴く』は人間関係の土台であるから」。だからビジネススキルとして大事。
つまり、職場における人間関係ですよね、上司・部下であったり同僚同士、あるいはお取引先と、これもやっぱり人間関係なので。「聴く」が人間関係の土台である以上、ビジネススキルとしてもやっぱり大事だよなと、これが1点目です。
2つ目が、相当おもしろいと私は思っているんですけど「パフォーマンス向上に欠かせない」ということが、いろいろ書いてあったんですよね。そうなったらもう、ビジネススキルとしても必須ですよね。なんですけど、先ほど榎本さんのお話にもあったように「自然体ではなかなか『聴く』って難しい」。「だから学ぶ必要がある」。こういうことなんですよ。
一個一個見ていきましょう。まず「人間関係の土台である」。なんでそうなのか? というと、聴くということは相手に好奇心を持つことであり、相手を受けとめることであり、そして相手から学ぶことだから。「聴く」を一旦置いておいていただいても、人間関係を作るみなさんお一人おひとりの相手が「あなたに好奇心を持ってくれて、話を受けとめてくれて、あなたから学ぼうっていう姿勢でいてくれたら」、めっちゃ仲良くしたいと思いませんか? つまり聴くことができるということは、こういう態度・姿勢で、いろんな方と人間関係が取り交わせる、ということなんですよね。
また一個一個見ていきましょうかね。まず好奇心。Kindleで検索したところ、この本には「好奇心」という言葉がいろんなところで35回ぐらい出てきます。いくつか拾ってみたんですが「そもそも聞くという行為には、何よりも好奇心が必要です」という第2章の言葉ですとか。もう1つ、第3章にある「聴くことは、他の人の考えや感情への好奇心のあらわれであり(略)他の人の世界観を理解したいという切なる思いであり、また、人の話には驚きがあり、その経験には学びがあるという期待があります」と。
そういう態度でいると「話し手への質問は、自分の正しさを証明するため、罠を仕掛けるため、相手の考えを変えるため、あるいは相手を愚かに見せるためではなく、好奇心からでなくてはいけません」。このあたりで若干みんな「おっとっと……」って、私もやや反省するところが出てくるわけなんですよね(笑)。
次の「受けとめる」、これもとてもわかりやすい例が12章で紹介されていました。「ずらす対応」「受けとめる対応」と対比した例なんです。これはアメリカの本なので、登場人物は英語の名前なんですけど。ジョンが「うちの犬が先週、いなくなっちゃったんだ。見つけるのに3日かかったよ」って言った時に、「ずらす対応」をしているメアリーは「うちの犬はいつもフェンスの下を掘っているよ。だからリードをつけないと外に出せないの」。
これに対して「受けとめる対応」をする場合は、「えー、そうなの。で、結局どこで見つかったの?」。つまり受けとめる対応では、メアリーさんは自分の犬はいるんだけど、その「自分の犬がどうか?」はさて置き、受け止めてジョンの犬の話をし続けてるんですよね。
でも私もよくやってしまう、この「ずらす対応」。これは、ジョンが自分の犬の話をしたら、それで頭(意識)が自分の犬のほうにいっちゃって。自分の犬の話をして、ずれちゃう。
次の「相手から学ぶ」。これは聴く時に「『自分が間違っているかもしれない、もしくは少なくとも完全に正しいわけではないのかもしれない』という可能性に心を開くことができれば、会話からずっと多くを得られるでしょう」。これは科学的にも証明をされています。
「反射的な行動を司る脳の扁桃体の活動と、話を注意深く聞く際に使われる脳の活動は、反比例することが研究によりわかっています」と。「つまりどちらかが活発なら、もう一方は抑えられているということ」なんですよね。
これ、つまり「聴く」スキルを自分がちゃんと発動できれば、なにか変なこと言われて反射的・感情的に反応しちゃうことを抑えることができる、っていうことなんだと思います。こういう態度で人と接することができたら、確かに人間関係は建設的に作れて、それはビジネス上も必ず良いことがありますよね。ここまでが人間関係の話です。
篠田:次は「パフォーマンス向上に欠かせない」というところに入ってまいりましょう。まず1つ目は、量の話です。仕事の中で「必要なコミュニケーション量が増えた」。で、コミュニケーションは「話す」と「聴く」。「発信」と「受け取り」ですから、量が増えたってことは、聴くべき量が増えたということですよね。
2つ目が「聴かれると、個人の問題解決力が上がる」。3つ目が「パフォーマンスの高いチームは聴きあっている」。さらに「異なる意見を理解するため」にも、聴くことが大事だということがこの本に書いてあります。
一個一個見ていきましょう。この量の話は『ハーバード・ビジネス・レビュー』で紹介された研究なんですね。過去20年の間に「管理職と社員が一緒に働く時間は、50パーセント以上増加」しました。それから「社員は1日のうち、多い場合では80パーセントもの時間をほかの社員とのコミュニケーションに費やしています」……これ、いかがでしょうか? みなさん、ご実感と照らしてみてどうですかね? ご自身の働き始めた頃を思い浮かべていただくと、現在って「コミュニケーションしなきゃいけない量」って増えてますでしょうか? 量が増えているとしたら、まず「聴くべき量」が増えているということになりますよね。
2つ目以降は質の話です。まず「個人の問題解決力が上がる」。これも研究の紹介で、1つはヴァンダービルト大学に研究です。あるパターン認識の問題の解き方を子どもに説明させる時、母親が手を貸したり、あるいは批判とかをせずにただ耳を傾けていると「実際に問題を解きましょう」ってなった時の子どもの解決力が著しく向上することがわかったと。
2つ目の研究は、大人を対象にしたものです。「話をしっかり聞いてくれる人が相手だった場合、隔離された中でひとりで解き方を思いついた場合と比べ、代替案やしっかりした根拠を伴う、より詳細な解き方を説明する」ということがわかった。
ちなみにこの本の巻末に参考文献が全部出てまして。この2つの点も引用論文が書いてありますので、気になる方はぜひ見てみてください。だから科学的にも、大人も子どもも話を聞いてもらうと問題解決力が上がるってことがわかってるんですよ。
さらに、チームですよね。これはGoogleが2012年に「何がすばらしいチームを作るのか?」を探るため、調査に着手しました。わかったこととしては「最も生産性があるチームは、メンバーの発言量がだいたい同じくらいだった」と。
そして「能力の高いチームはまた、声のトーンや顔の表情など非言語な手がかりをもとに、お互いの感情を直感的に読みとる能力に長けていた」。これどういうことか? っていうと、チームの発言量がだいたい同じということは……わかりやすくするために5人のチームだったとすれば、1人につき5分の1。つまり2割ずつの時間を上司も部下も話している。そうすると、残りの8割の時間は聴いてるんです。しかもお互いの感情を読み取る能力に長けていたので、パフォーマンスの高いチームは「聴きあっている」チームだということが具体的にわかったわけですよ。
そういった個人・チームがいた時に、当然それぞれ違う意見を出し合って仕事を進めていくんですよね。その時に「聴く」ことができていれば、相手の理論の欠陥にツッコミを入れるようなことではなくて「相手がなんでそう思うのか? という理解を深めるための質問」ができる。これが「聴く」というスキルなんですよね。
効果的な反論をするにしても、相手の視点を理解して「その人がなんでそういう視点を持つようになったのか?」を完全に理解してからじゃないと、やっぱり良い反論はできない。
加えて、私たちは自分の信念に確信を持つには、やっぱり違う意見をぶつけてもらう必要があるんです。違う意見をぶつけてもらって「なんでその人は自分と違う考えを持つようになったのかな?」とか。そうすると翻って「じゃあ自分はなんでこういう考えなんだっけ?」っていうことを、違う意見に直面して初めて私たちはちゃんと考えるので。
だから違う意見をぶつけてもらうと、自分の考えにもより確信が持てるようになる。こういった異なる意見を理解し、自分の意見に確信を持つためには「聴く」「聴かれる」というスキルは欠かせないわけです。
別の言い方をすると、自分とは違う意見を持っている相手の話を聴く時に「相手の意図は肯定的であるんだ」ということを信じて聴く態度だと思うんですね。また別の言い方で「北欧、暮らしの道具店」の青木耕平さんが、自分と違う意見を言っているその状況に対して「相手は正気で、善良で、理もある」と。この前提で聴こうと、こういうことです。
違う意見をぶつけられると一瞬、瞬間的に私も脊髄反射で「バカじゃないの?」とか思いたくなっちゃうんですが(笑)、そうじゃない。違うことを考えられる態度、これが「聴く」なんですよね。
なので、その量が増えた中でやっぱり、聴かなきゃいけない量も増えてるし。その時にちゃんと聴ければ、個人の問題解決力も周りの人も上がって、自分のチームのパフォーマンスも良くなって、聴く・聴きあうことを通して自分の考えも深まり、相手への反論にも準備ができる。これが揃ってたらもう、仕事上のパフォーマンスは上がらざるを得ないじゃないですか。
逆に言うと「聴く」ことなしにこれらを達成しようとするって難しいし、ムダだと思うんですよね。こういったことをこの本から学んで「やっぱり聴くっていうのはビジネススキルとして必須だな」と思うようになりました。
篠田:なんですけど、自然体ではやっぱり難しい。これはいろんな感想でも寄せていただいています。この本でも「なぜ難しいと感じるか?」って、いくつか理由が挙げられて。たくさん書いてあるので、適宜抜粋してきました。
1つは「そもそも教わってないよね」っていう話。2つ目は一生懸命聴こうと思ってるんだけど、なんかボーっとしちゃったり、次に言うべきことを考えたくなったりしちゃうんですけど。それは思考のほうが相手の話のスピードより速いからという、脳の性質によるものですと。
あと3つ目。聴けないっていうのは実は、こっちに不安感がどこかにあるから。4つめは話を聴かれる側もそもそもそのこと(聴かれること)に慣れてないっていう指摘も、非常に大事だなと思いました。
「聴くことを教わってない」。これはこの本で学んで、私もいろんなところでお話ししてますけれども。「私たちは会話についていくより、話題を提供して場を仕切るようしつけられてきました」。ここだけ読むとアメリカっぽいなって思うんですけど、実際どうでしょう? 職場でご自身が上司あるいは先輩の立場であった時って、やっぱり相手の方の話についていくよりも、要はアジェンダを切って場を仕切るようにやろうとしませんか?
あるいは自分が何を吸収するかではなくて「相手に何を伝えるか?」というのが上司・先輩としての役割だっていうふうに、なにか思い込んでますよね。そういう立ち位置、上司であり先輩である時に「聴く」っていうことって、教わってきてないんですよね。
2つ目、これはもう脳の構造ですよっていう話なんですけど。「イタタタタ……」って思ったのは、2つ目の段落ですよね。「気が散る最大の原因は、次に何を話そうかと考えること」です、と。あと畳み掛けるようにですね(笑)、「頭の良い人は話を聞くのがへたなことのほうが多いです」と。なぜならIQが高いと、ほかにもっといろんな考え方を思いついちゃう。脳の力量からしてね。あと「相手が話そうとしている内容を自分はすでに知ってる」というふうに「だいたいこのへんの話ね」って、頭の回転が速いと決め付けちゃう。
もう一個「おぉ……」って思ったのが、内向的な人は静かなので聞き上手だと思われがちなんですけど、「聞くという行為は、実は内向的な人にはとりわけ難しい」。なぜかというと、内向的な人っていうのは自分の頭の中で忙しく思考が行き交ってるから、外に対して静かなんですって。なので新しい情報を入れる余地が難しいと。これは自分を内向型人間の典型だと自覚されている、ある方がFacebookでこの本を読んで「これはものすごい気づきだった」というふうに書いてくださっていました。
3つ目の「不安感」ね。実は聴くことができない大元は、自分がやっぱり十分ではない。自信ないんだけど、自信ありげに見えてないと不安だっていうところから、聴くことができなくなっているという指摘です。聴かれる側もやっぱり「親しい人に話を聴いてほしいとお願いするのは、相手に負担をかけると思う」とか。「もっと聴かせて」ってインタビュアーの方が言ったら、驚いたりするっていうようなポイントで描かれていました。
ここでは引用しなかったけど、リストの中に紹介されていた学術研究でも、社会心理学者の人が「人生の大きな決断をどういう人に相談しましたか?」っていう調査をしたら、第1位が「親しくない人」だったんだそうです。こんなところからも私たち、聴かれるほうも慣れてない。今日、後半でテーマになります1on1も、上司の方も聴くことに慣れてないし、聴かれる側である部下の方も聴かれることに慣れてないって、もう「慣れない者同士なんだな」っていうことを私は、この本から受け取ったんですよね。
ここまで「聴くということはビジネススキルとして必須なので学びましょう」ということを、この本から読み取った内容としてお伝えしてきました。人間関係の土台になるんだと。それからパフォーマンス向上に欠かせないということが、いくつか科学的な根拠をもとに論じられていて。でも自然体では難しいから、積極的に・意識的に学ぶ必要があるんだと、こういうことなんですよね。
もしここまでの私のご紹介で興味を持っていただいたら、ぜひ本を手に取っていただければなと思います。
篠田:ここまで『LISTEN』の「聴く」ことの話をしてきたんですけれども。これは、今日のもう1つの大きいテーマである1on1とどうつながるんだ? っていうところに少し触れていこうと思います。
1on1という面談。制度として、あるいは会社の勧めとして、場合によってはそこの組織の方の自発的な活動として行われている職場が増えてきているようです。一部の調査によると、4割ぐらいの企業が導入をしているというのも見たことがあります。
この1on1には、評価面談・業務面談的な要素と、「聴く」「引き出す」「対話する」っていう要素の両方が、おそらく職場によってはいろんなバランスで入ってこられるんだと思うんですよね。
この時に、評価面談・業務面談は、これまでみなさんご経験があるし、組織としても経験の蓄積がある。そこで必要なスキルって(スライドを指して)一番下にありますけども、「評価する力」とか「教える力」なんですよね。でも、ここで新たに「聴く」「引き出す」「対話する」っていうことが、1on1には追加で必要になってきて。けっこう短いサイクルだし、部下の話に上司がついていく、話し手である部下に委ねるっていう主体のチェンジがあるし。必要なスキルとしても共感力とか傾聴・質問・承認力……今まであんまり経験がないんですよね。ここで戸惑われてるのかな? というのはやっぱり感じますよね。
でもわざわざこんな新しいこと・新しいスキルを必要とするところに、週いっぺんとか2週にいっぺんという貴重なマネジメントリソースをかけようとした、この背景って何なんでしょうね?
1つにはね、リモート環境というのはあるんだと思うんです。こちらでご紹介してるパーソル総合研究所の調査でも、テレワーク業務時の不安として挙げられているものの上位に「コミュニケーション課題」というのは入ってきてます。やっぱり「非対面だと相手の気持ちがわからない」という1番目とか、この4番目で赤で囲ったところですけど「相談しにくいと思われているんじゃないか」。でも、それだけなんでしょうかね? もっと働き方を巡る構造的な変化もあるんじゃないかな、と思っています。
ここでみなさんのお考えもうかがいたいので、アンケート形式にしてみました。「働き方の構造の変化について、みなさんお一人おひとりがどう感じているか? お教えいただきたいと思いました。あなたご自身のこれまでのキャリアを振り返っていただいて、新人だった時と今、どんな変化をご自身で感じてるか? 当てはまるものを全部選んでください。上から「当てはまるな」と思ったら、ぽちぽちとクリックしていただけますでしょうか。お願いします。
……じゃあ開票、ドン! おぉ、出た。ありがとうございます。あぁ、すごいなぁ。やっぱりまず1番「動機のありどころが、外的なところから内発的な動機に比重が移っている」が75パーセント。「働き方が多様になった」が73パーセント。「業務に求められるコミュニケーション量が増えた」。これ、アメリカの研究をさっき紹介しましたけど、今日ご参加の61パーセントの方がこれを思ってらっしゃる。
4番「戦略のスピードが上がって、浸透した頃には次が降りてくる」も62パーセント。けっこう多いですね。「市場の変化が速くて情報に追いつく負荷が高まっている」は68パーセント。6番「従業員エンゲージメントのような組織風土を経営者が意識するようになっている」も65パーセント。けっこうどれも当てはまるんだな……ありがとうございます。
こういう構造的な変化がやっぱりあるんですね。私の仮説だなと思ってたけど、今日ご参加のみなさんの6割から、多い場合だと75パーセントにこういった変化があって。この変化ってつまり、「聴く」っていう力がビジネススキルとして重要になっていく背景に、やっぱり全部なってるんですよね。
ということは、1on1というマネジメント手法って「今がコロナだから・リモートだから」という一過性の話じゃなくって、今後ますます必要性が高まる。こういうことを示唆してるんじゃないかなと、改めて思いました。
で「これをどうやるの?」っていう話は、このあと内田さんが。2,000人の1on1を探求した結果として、びっちりお話ししていただけるので、ぜひそちらで受け取っていただければと思います。私のパートは以上です、ここまで聴いてくださってどうもありがとうございました。
榎本:篠田さん、ありがとうございます。いや、すごいですね(笑)。アンケートはけっこう驚きで、どの項目も高い結果で。
篠田:大ごとですよね。あれだけ変わってるのに、マネジメントの仕方として「聴く」っていうことを学べてない職場。
榎本:そうなんですよ。「マネジメントは明らかに変わらなきゃいけない」っていう大きなメッセージがありながら、私もマネジメントする中で変えていくことに、そこまで大きな教育は受けてきてないので。改めてみなさん、ご協力いただきありがとうございます。
篠田:ありがとうございました。
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