新卒のアイデアも、事業化されるチャンスがあるバンダイ

北野唯我氏(以下、北野):そろそろ次のテーマへいきましょうか。

休日課長氏(以下、休日課長):次のテーマは、「事業を加速させる『若手社員』『経営人材』を輩出できる理由」ということで。新卒や若手人材を経営幹部に育成・抜擢するための制度にはどのようなものがあるでしょうか、ということなんですけど。松原さん、いかがでしょうか。

松原誠氏(以下、松原):我々はここ何年も社内コンテストのような、社員のアイデアを事業化することをやっているんです。実際に事業化されて世の中に広まっているものも実はいっぱいあって。そういうもののルーツを辿ると、実はその担当者ではなくて別の部署の人が「こんなのおもしろいと思います」とアイデアを出して事業化されたものもいっぱいあるんですね。

今年もやっていまして、ちょうど先週ぐらいに結果が発表されたんですけども。うれしいことに、今年入社した新人が2人、ノミネートされていまして。当然、何年も企画でやってきた社員もいたんですけど。新人でノミネートされるってすごいことだと思いますが、積極的にアイデアを出せば、役員や社員にヒットして、投票してもらえるということで。

1年目でもアイデアを考えることはできるし、フェアなので。そういう事業部の垣根を越えてチャレンジさせていくことも、いずれ経営幹部になっていく時に必要なアンテナになっていきます。そういう支援は積極的に行っています。

20代だけで会社を動かすプロジェクト「YMCA」

休日課長:サイバーエージェントさん、そういう特別な制度みたいなものはありますか?

曽山哲人氏(以下、曽山):若手向けにやっている取り組みで、「20代だけで会社を動かすプロジェクト」というのがあるんですね。名前は「YMCA」というんですけど。どこかで聞いたことあるなみたいな(笑)。

休日課長:なんかありますね(笑)。

曽山:「Young Man Cyber Agent」で、「MAN」は人という意味です。男という意味じゃなくて。「Young Man Cyber Agent」の頭文字をとった、「YMCA」というプロジェクトがあるんですね。「YMCA」の幹部は必ず30歳以下で、だいたい10人くらい選抜されます。言ってみれば経営チームみたいな感じですね。

ここが年に何回もいろんな取り組みをやっていまして。例えば「YMCAあした会議」というものがあるんです。これは5人1組の若手チームが、サイバーエージェントの「あした」につながることを社長の藤田に提案するというものです。藤田がやると言ったらもう決議になるので、それで新会社が生まれたり新しい人事制度が生まれたりするんですね。

休日課長:そのスピード感、速そうですね。そういう社内の公募のやつっていろいろ紆余曲折があって、もう本当に一握りしか実現しないイメージがあるんですけど。もうその場で、よければやるという?

曽山:決議というかたちです。「YMCAあした会議」の先輩格みたいなので、本家の「あした会議」という取り組みがもともとサイバーエージェントにはありまして。これは役員がチームを持って、社員4~5人とサイバーエージェントの未来を提案するという場なんですよ。これも藤田に提案するんですけど、1回開催して多い時だと8社ぐらい新会社が決まったこともあります。

例えば「あした会議」を8月1日にやったとすると、翌月の9月1日には新会社のうち5社が、会社の登記も終わらせ設立をプレスリリースで発表している。会社全体で、それくらいのスピードでやっていますね。「YMCA」では若手に焦点をあて、1年目や2年目の社員でも役員や社長の藤田と会う機会をつくっています。

ブラック企業と、ハードでもやりがいある会社の見極め方

北野:これはぜひお二人に聞いてみたいのが、いわゆるハードワークについて。今の学生さんとしゃべっていると、やっぱり自分のやりたいことをやりたいとか、熱中したいという人がけっこう増えているなと思っていて。働くことを楽しみたいとか前向きに捉えたいという人もいらっしゃって。

とはいえ、いわゆるブラックと言われる会社さんと、ハードワークなんだけど自分のやりたいことをできる会社ってけっこう見極めが難しいと思うんですよ。どんな説明でも、みんな「やりたいことをやっていいよ」と100パーセント言いますから。

(一同笑)

北野:お二人の目の前に、「ハードワークしたい」「熱中したい」という学生さんがいたとして、「ここは見極めた方がいいよ」みたいなポイントがあれば、うかがってもいいですか?

曽山:これはもう純粋に1個だけ見てくれと。社員同士、仲が良いかどうかです。もうこれだけ見とけば大丈夫。もう明らかに仲よさそうだなって。ただ面接だとわからないんですよ。面接だけの会社は、がんばって別のやり方で会う方法を探してみたほうがいいと思います。

例えばインターンシップをやると、例えば5人くらいの学生に1人メンターの先輩社員が付きます。隣のグループもメンターの先輩社員が付いていて、先輩同士がしゃべるシーンが、オンライン会議であっても見えるわけですよね。

そこがどういう関係性かというのを見る。私が学生として入ったとしても、その仲の良い状態に入ればいいわけなので。たとえ途中で仕事が変わったりしたとしても、「(社員同士が)こういう関係性だったらなんとかなるでしょ」という感じになると思うんですよ。

なので、こう言うと変ですけど「人事だけで決めないほうがいい」というのは、ものすごく重要なアドバイスです。人事だけで見ないで。実際働くのは現場なので、その現場の社員同士の仲をよく見るというのは絶対にやったほうがいいと思っています。

北野:めっちゃ良いアドバイスですね。

休日課長:なるほどな。

北野:確かにめちゃめちゃハードワークで、でもやりがいがなかったら、確かにみんなもギスギスしますもんね。そもそもね。

曽山:そうなんですよね。

北野:絶対にそれ、仲良くならないじゃないですか。

休日課長:しかもけっこう相談できる雰囲気とかって重要じゃないですか。困った時に他の社員とか先輩に相談できるかどうか。そういうのが見えますもんね。

社員同士の仲の良さと勤続年数に注目

北野:確かに。自社の採用をしていても、学生さんの声とかで「社員同士が楽しそうだからすごく良かった」ってやっぱり出てきますもんね。だからオンラインになって、さらにそれが見えにくいのかなというのは思いましたけど。

曽山:だから、バンダイさんとかめっちゃ楽しそうですよね(笑)。

松原:ありがとうございます(笑)。入社してからどのぐらいの人数がいるのか。つまり、辞めないでがんばっているのかみたいなことは、数字で見られる部分として、やっぱりけっこう重要なのかなと思いますね。

北野:バンダイさんもサイバーエージェントさんも、「ワンキャリアライブ」という、ワンキャリアのYouTubeに出ていただいているんですけど、めっちゃ楽しそうなんですよ(笑)。控室とかでも社員の方々とか楽しそうですし。

バンダイさんも(社員の方)お二人で出ていただいたりするんですけど、そのお二人の掛け合いを見ていても仲良いんだなという感じがすごく伝わってきて。サイバーエージェントさんもそうなので、確かに仲が良いって大事ですね。それはすごく思いましたね。

学生時代の友人と会話のレベルが合わないくらいの成長

北野:弊社は最近「ONE CAREER PLUS」というサービスをリリースしまして。働く人のリアルな声が見られるサービスなんです。今回、サイバーエージェントさんにこんな口コミがあったので、曽山さんにダイレクトに聞いてみたいと思います。

在籍3年未満のゲームプランナーの方から、「とにかく任せる風潮なので、1年目からチームリーダーや中長期企画を任せてもらっていました。苦労は多かったですが、その分やりがいも大きかったです。別の企業に勤めた大学時代の友人と会話のレベルがまったく合わないくらい、思い切って業務に取り組めていたと思います」という声が入っている。

曽山:なんとすばらしい(笑)。

(一同笑)

曽山:うれしい。ありがとうございます(笑)。

北野:ただやっぱり、「苦労は多かったですが」って書かれているので(笑)。

休日課長:確かに確かに(笑)。

(一同笑)

曽山:ああ、そうですか(笑)。やっぱりそう。これがけっこう大事だなと思いますね。やっぱりチャレンジしている分だけ大変だなというね。

北野:曽山さん的には「ここがうれしい」というポイントはどこですか?

曽山:苦労が多くてやりがいが大きいって、これは最高ですよね。うちに入ってきてもらった以上は、僕はやっぱり才能が大化けしてほしいと思っているので。大きな仕事を任せたいです。抜擢の文化が僕らの中にはあって、毎年10社ぐらい新会社を作っていて、今は120のグループ会社があるんですよ。そのうち90社は、社長が30代か20代なんですよね。

社長なんて絶対に大変なわけですよ。苦労があるとは思いますけど、やりがいが大きいと言ってくれるのはうれしいですね。

北野:これすごいですよね。だって、大学時代の友人と会話のレベルがまったく合わないくらい業務に取り組めたということなので。

休日課長:相当合わないんでしょうね(笑)。わざわざ書くってことは。

(一同笑)

北野:相当進化したっていうか、レベルアップしたのかなと思いますね。

休日課長:苦労が多かったからなぁ。すごいなぁ。

入社後に、自分の意外な一面を発見できる会社

北野:このサービスなんですが、転職元がわかるようになっていまして。こういったところも学生さんやキャリアを考える人に、より一層深く届けられる部分かなと思うんです。

松原さんがもしこれで口コミを投稿するとしたら、バンダイさんに転職されてきて「こうだよ」とか「こう思っていたけど、意外とこうだよ」みたいなところって、1個挙げるとしたらどういうところですか?

松原:1個に絞るのは難しいですけど。

(一同笑)

松原:「意外にやっていける」という。例えばキャラクターにめっちゃ詳しくないとダメなんじゃないかとか。なんかわかんないですけど、バンダイっておもしろいことを考える人ばっかりな集団なのかって思われがちなんですけど。

休日課長:天才集団みたいな。

松原:みたいな。特質性が必要なのかみたいなことを思われがちなんですけど。そんなことはぜんぜんなくて。入ってみてあとから備わってくる自分自身の意外な一面って、いっぱい発見できるので。そんな特別なものが何か必要なことはないという。「意外にやっていけます」って書きます(笑)。

休日課長:なるほど、なるほど。

北野:意外といけるの? と(笑)。

松原:はい(笑)。

就職先選びの失敗は、どの会社に入ったかでは決まらない

北野:なるほど。そろそろお時間が来ましたが。課長、いかがでしたか? ヒットコンテンツを生み出す人材が集まる理由とか、何か感じられたりしましたか?

休日課長:そうですね。やっぱり魂なんだなというのは共通してあるのかな。あとは、困った時は一緒に困って、上手くいった時には一緒に喜べる人たちがどっちの会社にもいるんだなと。そこはけっこう重要なのかなって。どうでした? 北野さん。

北野:やっぱりおもしろかったですね。仲が良いって確かにすごく大事だなとあらためて思いまして。バンダイさんもサイバーエージェントさんもこれまで何度かお仕事でご一緒させていただいていて、お話を聞いてきたんですけど。確かに仲が良いなと思っていました。仲の良さが、ハードワークとか20代のがんばる気持ちを支えるインフラというか、母体になる。だからこそチャレンジできるんだなという。

やっぱり帰ってくる基地というか、場所がないとチャレンジできないじゃないですか(笑)。1回やって終わりだったらなかなかチャレンジできないなと思うので、その秘密みたいなものが聞けたのかなと思いますね。

休日課長:確かに、仕組みとしてちゃんと持っていらっしゃる。仲間が作りやすいというか。それが斬新でした。

北野:そうですね。ということで、松原さん、曽山さん。今回のキャリアトーク、いかがだったでしょうか。じゃあ、松原さんから。

松原:私は人事をもう16年ぐらいやっていて、毎年学生さんとお会いして、いろいろなことを話すのが本当に楽しいんですね。おこがましいんですが、学生さんに1つだけアドバイスを。「失敗を恐れない文化」とさっきも言いましたけど、就職先を選ぶ時って、やっぱり「失敗するのが一番怖い」という学生さんが多いんですよね。

どこが(自分に)一番合うかよりも、失敗をしたくないという。さっき曽山さんもおっしゃっていて、僕もまったくそのとおりだと思っているんですけど、失敗かどうかを決めるのって自分なんですよね。なので、どこに入ったかで失敗することってないんですよ。あとは自分がどうするかだけなので。失敗を恐れて自分の行く会社を決めてしまうのって、すごくもったいないなと思います。

失敗をしたくないという恐怖心を一回よけておいて、ぜひ第一優先は自分に一番刺さるというか、やりたいなって思うことにして欲しい。まずそこに純粋に向き合って、そこからスタートしないとやっぱり本当にもったいないなと思うので。ぜひそういう視点を持っていただきたいなと思います。

社会人1年目にチャンスを与えないのは「才能の飼い殺し」

北野:じゃあ曽山さん、お願いします。

曽山:ありがとうございます。松原さんがお話された、「仕事の報酬は仕事」という、格言が先ほどありましたけど。これはサイバーエージェント社内用語かというくらいめちゃめちゃ使われている言葉で。これはバンダイさんの言葉だってことも社内で広がっているんですね。

今回のポイントはおもしろい仕事をどんどんやるには、自分で手を挙げて自分でやるということ。バンダイさんでも大事にされているのが本当に印象的でした。私たちも、もっとチャレンジできる環境を作っていこうと思いました。

学生のみなさんに会社選びでぜひ見ていただきたいのが、自分の意思を表明できるかどうか。バンダイさんも先ほどまさに、「やりたいですと言ったらやらせてあげるよ」とおっしゃっていましたし、私たちも新規事業の提案ができるとか企画会議がありますけど。

就職活動が終わって社会人1年目で、「僕・私はもっとできるのにやらせてくれない」と感じてしまうのが一番もったいないんですよね。才能の飼い殺しだと僕は思っているので。

なので、(「やりたい」と)言ったらやれる会社。仮に言ってダメ出しをくらうだけでもいいと思うんですよ。なんでダメなのかがわかれば新たなチャレンジができるので。そういったところでいうと、「仕事の報酬は仕事」という表現は一番本質的なキーワードだと思いますね。

「がんばって成果を出したら次の仕事ができるよ」というのを明確にしているので。そういったチャレンジができる環境をぜひ、学生のみなさんにはゲットしていただきたいなと思いました。

北野:あとはぜひ、曽山さんのYouTubeも見ていただけると。

曽山:みなさんチャンネル登録、よろしくね!

(一同笑)

北野:さすがもう慣れていますね、これ(笑)。(指をさす真似をして)

(一同笑)

北野:カメラ目線で、よろしくね! ということで(笑)。次回の「VOICE」も楽しみですね。ということで、本日もありがとうございました。

休日課長・松原・曽山:ありがとうございました。