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kintone hive tokyo vol.12/ kintone AWARD 関東地区代表:株式会社東京ドーム 望月秀吉 氏(全1記事)

2021.01.06

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日々の業務はすなわち「イベント」 東京ドームの元イベントプロデューサーがkintoneで仕掛けた業務改善

提供:サイボウズ株式会社

kintoneの活用アイデアをユーザー同士で共有するライブイベント「kintone hive 2020」が、名古屋・仙台・福岡・大阪・松山・東京の6会場で開催されました。本セッションでは、各会場で地域代表として選出されたファイナリスト6社にその活用事例を発表いただき、2020年最も共感を得た活用事例「kintone AWARD グランプリ」を決定します。本記事では、“イベント業界あるある”の課題解決や、新型コロナウイルスによる自粛期間中の対応について語りました。

「楽しい」を提供する、株式会社東京ドーム

望月秀吉氏(以下、望月):みなさん、こんにちは。東京ドームの望月です。本日はよろしくお願いいたします。

さっそくですが、東京ドームをご存知の方、いらっしゃいますか? 説明はいらないと思います。

私たち株式会社東京ドームはこちらの東京ドームをはじめ、さまざまな施設を持っていまして「楽しい」を提供する企業です。

そんな中で、私たちは東京ドームのイベントの企画制作をしてきました。なので、ちょっと格好つけてイベントプロデューサーなんて書いていますけれども、実は11月1日付けで異動してしまって、今は違う仕事をしています。

家族はこちらの絵を描いている、絵が上手な妻と、飼い始めた猫のもんじゃくん。座右の銘は「もちはもち屋」です。

私が手掛けたイベントは、こちらの「ふるさと祭り東京」というイベントで、もしかしたらご来場いただいた方もいらっしゃるのかなと思いますが、日本のお祭りと食べ物を集めたイベントです。

その他にも4つのイベントをやっていまして、総入場者数約100万人という、たくさんのお客さまにご来場いただいてます。

私はイベントがやりたくて東京ドームに入社したので、ラッキーなことにイベントの仕事の担当になって、とってもうれしかったです。

そんな私が、本日みなさんにお伝えしたいことはこちらです。「kintone導入で会社が変わった」といった話ではありません。kintoneを導入して、まだ1年ちょっとです。その部署の一担当者として、kintoneビギナーならではの工夫をお話しさせていただいて、最後にkintone hive tokyoに出た後のお話もさせていただければと思います。

イベント業界あるあるの課題とkintoneとの出会い

イベントのお仕事は、こんな感じでけっこうたくさんやることがあるんですね。業務内容が本当に多岐にわたっていますので、残業や休日勤務などの長時間労働も業界全体の課題です。特に私たちのイベントは、多くの出店者さんと一緒に作っているんですね。なので、この出店の仕事のボリュームが非常に多かったです。

この4つのイベントの出店者さんは、約1,000社いらっしゃいます。1,000社の方々との間に、申し込みから申請といったかたちの作業があるんですけれども。この赤い部分、特に申請書は郵便とFAXだらけだったんですね。

一言で申請書と言っても、たくさんあります。これはもともと手書きの紙だったんです。手書きの紙などをFAXでもらって、それをいちいちパソコンに打ち込むことを社員2名と数人のアルバイトでやっていたので、当然、残業が発生していました。

そうです。これは“業務あるある”だらけの仕事だったんですね。ただ、私たちだけじゃなかったんです。実は裏側では1,000社の出店者さんが、それぞれ何枚も何枚も書いてFAXを出してというようなことをやっていたんですね。

私たちだけじゃなくて、出店者さんも業務あるあるだらけだったんです。これがもうなんとかならないかなって、ずっと思っていました。いろいろ試してみたんですね。ただ、うまくいかなかったり、しっくりこなかったりしていました。

そんな時です。私も2年前の2018年に幕張メッセに来ていました。このステージも、ちょうどあの奥のほうで見ていました。「kintone簡単だなぁ」と思ったりもしましたけれども、このkintone AWARDを聞いて、いろんな人たちがいろんなふうに使っているのを見て思ったんです。「求めていたのは、これなんじゃないか」。ラッキーな私は、タイミングよくkintoneに出会えたんです。

kintoneビギナーだからこそ「もちはもち屋」に

ただ、みなさんも簡単とおっしゃっていたんですけれども、難しいところもあったり、すぐにできたりということがなかなかなくて。特に私たちの仕事は時間がなかったんです。もう差し迫っていました。

なので、やったことは「もちはもち屋」。これは私の座右の銘なんですけれども、プロにお願いしました。ただプロにお願いすると言っても、システムを作ってもらうだけではなくて、一緒に業務改善をするプロを探しました。

早い段階でプロにお願いするメリットが何かというと、kintoneを一緒に作ってくれる方を見ていると、すごく今後のアプリの作り方の参考になるんですね。これは後ですごく効いてきます。

そんな中で、私たちはラッキーなことに株式会社ミューチュアル・グロースさんという、自分たちのやり方に合ったパートナーさんを見つけることができました。

パートナーは見つかった。次に何をしたか。「すべてkintoneでやらなくてもいい」ということを決めました。私も含めてですが、使うのはみんな初心者なので難しいことをやってもしょうがないですし、カスタマイズしたところでメンテナンスができない。

なので、標準機能とプラグインだけでやりました。例えばやらなかったこととしては、こういった図面を描くことは普通にはできないので、紙で残そうと最初から決めました。

それで、作ったシステムはこんな感じです。けっこうシンプルにまとまった、よくみなさんが使うようなプラグインを使ったシステムになっています。

紙とアプリの両方で対応する利点

このシステムを使う出店者さんも、当然みなさん初心者です。なので、できるだけシンプルに、そしてわかりやすくしました。ただ、どうしてもできない人がいます。

できない人に無理にやってもらう必要なんてないんです。できなければできなくていい。紙で提出してもらって、私たちが入力すればいい。これだけでも十分……。数社だけの対応だったので、業務改善できました。

これは、もともと紙のやり方を持っている強さなんですね。システムが不具合が起きた時にも、すぐに対応できる。紙って馬鹿にできない、という感じなんですね。

さらに、出店者さんにアンケートを採りました。いろんな声をいただきました。これは次の改善の参考になっています。私たちはこの仕事に関して、イベントにもよりますが多いもので9割ぐらい紙を削減しました。「使う人はみんな初心者である」という意識で、業務改善を実現しました。

さぁ次です。落とし物の業務。落とし物と簡単に言いますけれども、実は似たような紙が2つありました。いつどこでだれが何を拾ったのか、落としたのか。

これをアプリにした時にやったことが、こちらです。アプリの色を変える。ぱっと見てどちらの届け出かわかるようにしたんですね。

このアイデアを出したのは、現場スタッフでした。「一目見てわかるようにしてほしい」という声で、こういったことをしました。そしてkintoneが入っていないインフォメーションスタッフの方々には、kViewerを使って共有しました。

この内容に関しても、インフォメーションのスタッフからいろんな声をいただいて改良しました。現場の意見を反映してアプリは成長します。成長するアプリで業務改善を実現しました。

緊急事態宣言によるイベント自粛でECサイトを立ち上げ

そして今年の春です。コロナウイルスによる緊急事態宣言。東京ドームもイベントができなくなりました。出店者さんもいろんな催事がなくなったり、地元にお客さんが来なかったりします。東京ドームも出店者さんもみんな困っていました。何かできないかなと思いました。

私たちはまず「ふるさと祭り東京」の出店者さんと一緒にECサイトを立ち上げました。フルリモートの中、1ヶ月弱ですね。本当に数週間で一生懸命作りました。なんとかオープンしました。オープンしたら、毎日の運営があります。まずは作業をちゃんと固めてからkintoneで改善していこう。そんなふうに思っていました。

初日の作業では、ECサイトから情報を引き出して、各出店者ごとに分けて送って情報をもらうということをやっていました。この初日の作業、3人で6時間かかったんですね。「数ヶ月かけてなんかやればいい」なんて言ってる場合じゃなかったんです。もう、こんなんじゃ仕事が続かないと。

ただ、私たちはプロの力を最初に借りていたので、そこそこのアプリが自分たちで作れるようになっていたんですね。そして、もし困ったら相談できる方々もいました。そして、できるところからやっていったんです。そこでやった、ちょっとした工夫がこちらです。一覧で作業ステップを分けるといったことをやりました。

これは何かと言うと、一覧でレコードが並んでいて、あるフィールドを埋めていくと1個ずつなくなっていく。全部なくなったら次の一覧に動くかたちにしました。そういうワークフローになっているんですね。何が便利かと言うと、オペレーションが変更になっても一覧の設定を変えるだけでワークフローができあがる。これは、特にオペレーションを固める段階では、非常に便利です。

業務改善とは情報の流れを最適にすること

その結果、1週間後には1人で1時間かからないくらいになりました。一覧機能をワークフローに活用して、業務改善をしたんですね。ここまでが6月に話した内容です。ここからがその続きになるんですけれども、(kintone hiveに)出た結果、社内から「業務改善の話を聞きたい」という声がありました。私と一緒で、みんな「何か変えなきゃいけない、何かしなきゃいけない」と思っているんですけれども、どうやったらいいかがよくわからない。これはみなさんもそうなのかもしれません。

そこでいろんな方の話を聞いていて思ったことなんですけれども、業務改善とは何なのか。それは、情報の流れを最適にすることじゃないかなと思いました。どういうことかというと、情報を整理するのも受け渡しをするのにも、いろんな機能を使っていて、この整理するところと受け渡しするところのだいたいどこかで詰まっているんです。

kintoneはけっこう選択肢が多いので、最適な方法を選択して業務改善ができるんじゃないかなと思いました。ただ、私たちだけがよければいいのか。違いますよね。出店者さんがいたり、落とし物の情報を出すインフォメーションのスタッフがいたり、相手が必ずいます。

その相手にとって最適な方法を選択してあげることが、本当の業務改善なんじゃないかな。そう思いました。

電話もメールも会議も、日々の業務はすべてが「イベント」

そして、これは個人的なことなんですけれども、私が11月に異動してちょっと思ったことです。業務って何だろう。日々の業務っていろいろありますよね。これは平たく言うと、イベントなんじゃないかと思います。

毎日毎日新しいことの連続で、頭がついてこないんですけれども。実は日常的にやっている仕事も、他の人にとってみたら非日常だったりするのかもしれません。

電話も最初は取るのは緊張しましたよね。メールなども間違っちゃいけないとか、こういったプレゼンテーションをするのって、まさにイベントです。そういう業務を楽しくしたり、業務を良くする。いわゆる業務改善というのは、「楽しいイベントを作ること」なんじゃないか。楽しいイベントを作るというのは、イベントをプロデュースすることなんです。

そうです。イベントの仕事を離れましたけれども、業務改善をやっていこうと思った私は、今だからこそ胸を張って言えることがあります。私の職業は「イベントプロデューサー」です。そして、今日ここにお越しいただいたたくさんの方々、端っこから端っこまで、そして後ろのほうまで。

みなさんも何か業務改善をしたかったり、楽しく働きたいなと思ったから、ここに来たんじゃないですかね。そうです。業務を楽しくしたい、業務を良くしたいと思った瞬間、あちらの端っこから後ろまで、そして、こちらの端っこまで、みなさん一人ひとりがイベントプロデューサーなんです。

誰もが楽しい業務を作り出す、イベントプロデューサー

だとしたら、これだけいるんですよ。楽しいイベントがたくさんできるじゃないですか。そう思うと、もう1つ、ちょっとわかったことがあるんです。東京ドームとkintoneの共通点。よく言われます。kintone、最初は空っぽの箱。東京ドームも一緒です。

イベントがなければ、ただの野球場です。そこにイベントを入れたり、kintoneだったら楽しい業務を入れていきましょう。そうすると、楽しいイベントが詰まった「魔法の箱」になるんじゃないか。今回作って、意外とそうだなと思いました。

だとしたら、どんな魔法の箱を作るか。どんなイベントにするかは、ここにいるみなさん次第なので、みなさんと一緒に1つでも多くの魔法の箱を作っていきたいなと思っています。

最後になりますが、こちら株式会社東京ドームの経営理念です。「人とひととのふれあいを通して、お客様と『感動』を共有しよう」と書いてあります。要は、人とのつながりを大事にして一緒に感動しようよ、と言っています。

そのためにはまず、働く私たちにとって楽しい1日でなければ、お客さまの楽しい1日なんて絶対やってこないんです。だとしたら、業務改善はやっぱり必要ですよね。みんなが楽しく働ける環境を一緒に作りたいですよね。

kintoneはチームワークを作っていくツールになります。なので、楽しい時間を作るためには、kintoneなどを活用して人のつながりを意識して、それをちょっとだけ大切にする。例えば、目の前の人のことをちょっとだけ考えてあげるだけで、もう業務改善できると思います。

ここにいるみなさん。そして今日来てくださった方、来られなかった東京ドームの仲間たちと一緒に、1人でも多くの楽しい時間を作るために一緒にがんばっていきたいなと思っています。長くなりましたが、私の発表は以上となります。次はぜひ「楽しい」がいっぱい詰まった東京ドームでお会いしましょう。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

すべてをシステムで解決しようとしないことで、周囲を巻き込めた

相馬理人氏(以下、相馬):望月さん、ありがとうございました。法被まで着ていただいて、ありがとうございます。ではZoom応援団の方もさっそくお呼びしたいと思います。Zoom応援団のみなさ~ん! すごくたくさん画面に……。

望月:おぉ、いっぱいいる。ありがとう。ありがとうございます。

相馬:「がんばれ」っていうのが、たくさん届いていますね。ありがとうございます。最後の例えが秀逸すぎて、すごく感動したんですけど。「イベントプロデューサーである」というのが、大変すばらしいなと思いました。社内だけの改善ではなくて、そこから紙のやり取りが発生する社外まで広げたことが特徴的かなと思いまして。

その時に何か大変だったことや気をつけたこと、あるいは不安などはなかったんですか? 

望月:システム導入しようと思うと、全部をシステムでやろうとしがちなんですよね。当然お金もかけているので。だけど、できないことはできないし、できない人はできないと割り切ってやってあげることが大事かなと。そうすることによって、みんなを巻き込めるんじゃないかなと思っています。

相馬:なるほど。確かに「紙には紙のよさがある」とおっしゃっていただきましたものね。ありがとうございます。望月さんにもう一度大きな拍手をお願いいたします。

望月:ありがとうございました。

(会場拍手)

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