2024.12.24
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This Ichthyosaur Terrorized the Triassic Seas(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:太古の生物の食性を解明し、そこから生態系での位置付けを推定するのは、簡単ではありません。ところが、今月『i Science』誌上に発表された論文により、古代のある肉食の生き物の食性は、はっきりとわかっています。その生き物は、陸上ではなく海中を支配していました。その骨格標本は、2010年に中国南部の貴州省で出土し、年代は約2,400万年前の三畳紀にまで遡ります。
その生き物とは、全長5メートルのイクチオサウルス、「貴州イクチオサウルス(Guizhouichthyosaurus)」です。三畳紀の海に君臨した魚竜のグループに属し、想像を超えた、驚くべき捕食者だったようなのです。
なんと、このイクチオサウルスの胃の中には、別の魚竜、Xinpusaurusの一部が残っていました。これは、魚や甲殻類などの小型の海洋生物を捕食する海洋爬虫類、タラトサウルスの仲間です。
イクチオサウルスの胃の中に保存されていたのは、小さいほうの魚竜、Xinpusaurusの半分ほどでした。とはいえ、その全長は優に4メートルはあったものと思われます。お話ししたように、食った方のイクチオサウルスは、食われたXinpusaurusよりも1メートル程度しか大きくありません。つまり、Xinpusaurusはおやつとしてはかなり巨大であり、それまで可能だと想定されていたよりも、はるかに大きなエサだったのです。
太古の魚竜の腹の内容物が、このような形で残っていることは非常に稀で、他の例はほとんどありません。これまで古生物学者は、体の大きさや歯の形を基に、生物の食性を推定しており、大型で鋭い歯の生物であれば、大きな獲物を狙っていた可能性が高いとしてきました。そのため、それほどの切れ味は無い、貴州イクチオサウルスなどのイクチオサウルスの歯であれば、イカなどのやわらかい獲物を捕らえるのに適していると考えられていました。
この度の新発見は、これらの生き物が、時には極めて大型のエサを狩っていた、「メガ捕食者」であったらしいことの大きな証拠となったのです。
これが狩りなのか、死肉漁りなのかまでは確定できませんが、論文の著者たちは、イクチオサウルスは獲物を生きたまま捉えた可能性が高いと考えています。なぜなら、胃の中に残っていた化石は獲物の足と胴であり、頭と尾が欠損していたからです。
生き物の死骸が海中で腐敗する際には、頭や尾よりも先に、足が外れる傾向があります。そのため、死肉が漁られた場合は、必ずしも足がついているとは限りません。しかもこの場合は、体の無い化石化した尾が、イクチオサウルスの化石から23メートルほど離れて見つかっています。
この尾は、食われたタラトサウルスの大きさと形に合致しました。もしこの尾がタラトサウルスの体の一部なら、現生の海の肉食の動物と同様に、イクチオサウルスが噛みついて振り回したからに違いありません。身の毛もよだつような絵図ですが、古代の魚竜の食性について、私たちが知らないことがまだたくさんあることがわかる、大きな手掛かりです。
驚くべき化石の発見の次の話題は、『カレントバイオロジー (Current Biology)』誌上で新たに発表された、恐竜の胚をのぞき見るという、珍しい機会を提供してくれる論文です。
どんなに大型の恐竜であっても、すべての恐竜は卵から生まれます。しかしほとんどの恐竜は、その成長と発達の過程についてあまりわかっていません。新しく発表されたこの論文は、アルゼンチンの卵の化石の中から発見された、3センチメートル足らずの頭骨についてのものです。
この頭骨は解剖学的見地から、長い首と太い脚を持つ恐竜、竜脚類であることがわかりました。
より正確には、ティタノサウルス類と呼ばれる竜脚類です。
この恐竜は、非常に巨大になるものもあります。つまり、この卵の標本は、史上最大級の巨大な恐竜として成長する可能性があるものだったのです。
すばらしいことに、この極小の頭骨は、これまで見つかったティタノサウルス類の頭骨の中でも、極めて保存状態が良好で、竜脚類が成長過程でたどる変化を詳細に物語ってくれました。
科学者たちは、この胚は、頭骨の発達上の特性から、孵化までの4分の3程度に発達したものと推定しました。顔部が、ティタノサウルス類だと判別できるくらいにまでに、成体の特性を表した発達を遂げていたのです。
しかし、成体とは異なる衝撃的な違いも持っていました。まず1つ目に、ティタノサウルス類の成体に比較して、目がより前方に向いていました。
つまり、幼体のうちは、前方にある物を見ることに長けており、だんだんと横にあるものを知覚できるようになるであろうことを示唆していたのです。
さらに胚の頭骨には、鼻づらのそばに変わった骨の突起物があり、前を向いた1本の小さな角のように見えました。孵化の時に卵の殻を破るために一時期だけ存在する「歯」である、「卵歯(らんし)」に似ていますね。
卵歯は、孵化すると消滅しますが、この小さな角は、上あごの骨に埋め込まれており、後日失われるにしても、どうやら長期間残ったようです。この角が、卵歯の代わりとして、もしくは卵歯と共に使用されたとしても、その他の用途でどのように使われたかまでは、よくわかっていないません。
これらの発見から今わかるのは、ティタノサウルス類の幼体は、成体とはまったく異なる生活を送っていたであろうということだけです。古生物学者たちは、この胚がティタノサウルス類のどの種かすらわかっていません。事実、産地がどこなのかすら、判明していないのです。
実はこの標本は、科学者たちの手に渡る前に、アルゼンチンから不法に輸出された物なのです。今でこそ産出国に返還されていますが、出土の詳細が不明であるため、大昔にどのあたりに生息していたか、どのような親戚が存在するかなどを調べることは、極めて困難となっています。
幸いにも、アルゼンチン産であるとわかっている恐竜の卵の化石は、他にもたくさんあります。運が良ければ、この小さな標本が、巨大恐竜の幼体の初期発生の謎をひも解くきっかけになってくれるかもしれませんね。
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