実は大人のユーザーも増えているTikTok

坂井:ありがとうございました。それではディスカッションのほうに入らせていただきます。まずテーマその1「スマホネイティブユーザーに対してのマーケティング戦略、アプローチ手法の違い、各ユーザーの特徴と最適なクライアント」ということで。 3社様のマーケティング戦略で、とくにどういうユーザーが特徴的に多いのか。今回はミレニアルというくくりにしておりますけれども、その中で特徴的なところがあるかと思います。

なのでそちらのご説明と、それに対するマーケティングを行なったほうがよろしいのではないかというクライアント様について、みなさまにお話をしていただきます。それではまずTikTok様、お願いします。

白地:ほかの今日のサービスさんも「こんなデモグラフィックです」「こういうユーザーがいます」と、もしかしたらお話しになるかもしれないですけれども。

TikTokとしては今、我々のデモグラを明確には公開してないんですね。なので男性が何パーセント、女性が何パーセント、というのはちょっとここではないんですけれども。

おそらくみなさまのイメージとして「10代がすごく多いんじゃないか」とお考えになっている方も多いんじゃないかなと思います。それは2018年時点でのイメージかなと思っていまして。今日一番強調したいなと思っているのは、本当に大人の、社会人のユーザーさんがものすごく増えていますということです。

なぜ社会人や大人の方が増えているかというと、やっぱりどういうコンテンツがあるかという、サプライ側ですごく大きな変化があるから大人のユーザーも入ってきているのかなと思います。端的に言うとコンテンツの幅、多様性がすごく増えている点ですね。

踊っている動画や歌っている動画が多いのかなというイメージがおありの方も、けっこういらっしゃると思うんです。でも、ハウツーの動画やファッションの動画、グルメの動画、あるいは英会話を教えてくれるような動画など、本当にいろんなコンテンツが出てきていて。

フォロワー数千人でも、投稿動画が200万回再生される可能性

白地:2つ目に、そういうコンテンツが「あなたにベスト」なかたちでおすすめされてくるところが一番強いのかなと思っています。ほかのSNSや動画でもいろんなコンテンツがあると思うんですけれども、TikTokを開くと、ここでも「Our technology」と書いてあるんですけれども、まずおすすめのフィードが出てくるんですね。

ふつうのSNSだと、まず「〇〇さんのアカウントをフォローします」「ゴールデンレトリバーのハッシュタグをフォローします」と、そうやって初めて自分のフィードに見たいものが出てくると思います。

TikTokの場合は、30分ぐらい自分がTikTokのアプリを見て、いろいろ「これはヤダ」「これは長くていい」とエンゲージしていただくと、ものすごくパーソナライズされたフィードができちゃいます。

昨日もすごく有名な芸能人の方とお話しする機会があったんですけど、TikTokを見てくださっていて。「なにを見ているんですか?」と聞いたら、「釣りの動画を見ています」とおっしゃったんですね。

今、釣りの動画もすごくいっぱいあって。確かに2年前はなかったんです。でも今はぐわーっと釣れるところとか、あるいは有名人の、那須川天心さんが投げ釣りをするものとか(笑)。釣りに関してもいろんな動画が出てくるんです。

なので、多様なコンテンツがあるのと、それがあなたにとってベストなかたちでおすすめされてくるところで、ユーザーさんの幅もかなり広がっているのかなと思います。

動画をアップする側のモチベーションとしても「とにかくバズりやすい」ところがTikTokの1つの特徴かなと思っていまして。例えば僕がほかの動画投稿サイトで「今日のイチゴ」とかをあげても、2ぐらいしか再生されないと思うんですよ(笑)。

ただTikTokの場合は、先ほどの「おすすめのフィードです」というところがあるんですけど、半分ぐらいはぜんぜんフォローしていない人のコンテンツが出てきます。そして10個に1個ぐらいは「これ、さっきあげたばっかりでしょ」みたいな、反応がまったくゼロくらいのコンテンツがひょいっと入ってくるんですね。

ただ、そのひょいっと入ってきた動画が、僕でもあげると100~200人は必ずデリバリーされる仕組みになっていまして。

その100~200人の反応がすごくよくて、「いいね」されるとか最後まで見られるとか、めすごくシェアされるとかがあると、「この動画はすごく評価されている動画ですね」とレコメンデーションが認識してくれて。

じゃあ次は1,000人に見せましょう、じゃあ次は1万人に、10万人に、100万人に……という感じで、フォロワーがいなくても動画そのものが評価されてバズっていくんです。僕もがんばってフォロワーを2,700万人……2,700人ですね、まで伸ばしたんですけど(笑)。

(会場笑)

2,700万人はないですね(笑)。2,700人です。一番バズった動画は190万再生ぐらいしていて。ぜんぜんなんともない動画なんですよ、職場のちょっとイケメンな男性と、ちょっとおちゃらけた男性が掛け合いしている飲み会の様子みたいな感じなんです。でも確かにちょっとおもしろくて、それが200万ぐらい再生されちゃったりする。

あげる側としても、動画そのものがフォロワーじゃなくてマシンによって評価されて、しかるべき人のところに届く。それがこれだけ幅広いカテゴリーのコンテンツが短期間でブワーッと上がってきた1つの秘訣なのかなと思います。

これは補足なんですけれども、先ほど言ったように今はあげるだけで終わりではなくて。先ほどの釣りの話だったらマグロを釣っている釣りもありますし、糸が切れちゃって「あー」っていう釣りの動画もあります。

「釣りの動画」という1つのテーマは同じでも、そこから枝葉のようにみなさんのオリジナリティが加わって、テーマは同じなんだけどちょっとずつ変わっていく。

我々はこれをアメリカのインターネットで(使われている言葉で)「ミーム」と呼んでいます。そういうミーム的な広がりで広がっていくところも1つおもしろいところなのかなと思います。

坂井:ありがとうございます。今日はイケメンの動画はない? 

白地:ちょっと貼っていないですね(笑)。

詳細なデータに則した、オーディエンスへの広告アプローチ

坂井:失礼しました。それでは続いてSpotify様、お願いいたします。

石井:また唐突に出てきましたが、数字で見るSpotifyということで、グローバルなデータなんですけれどもまとめてみました。 (スライドを指して)現在アクティブマンスリーユーザーが2億7,100万人、先ほど申しました広告のサポートで聴いていらっしゃるフリーユーザーが1億4,700万人いる。それを引くとほかの方が有料のサブスクライバーなんですけれども、全世界79ヶ国で展開しています。

プレイリストの数が30億プレイリスト、そして先ほどもお話しいたしましたけれども、ポッドキャスト数が70万ということです。10年以上にわたり全世界でこれだけのユーザーの、毎日の視聴動向、そのデータを分析してビジネスに役立てています。

先ほどのお話に戻ると、私はSpotifyの広告のビジネスのサポートをしているという話をしました。Spotifyの広告は、ブランディングに向いている広告なんですよね。

これらのデータをもってオーディエンスに対してアプローチができるところが広告プラットフォームとしてのSpotifyかの強みと言えると思います。

(スライドを指して)そしてこれが、日本のSpotifyユーザーの特徴です。こちらは自社データで直近の2020年2月現在の状況をまとめたものですね。

見ていただくと、先ほどTikTokさんの話にもありましたけれども、「若い人だけじゃない」という話だと、うちも負けていなくてというか。このグラフで見ると45歳以上が1番多いエイジグループになっているんですね。

昨年9月でSpotify Japanは3年を迎えたんですけれども、当初はアーリーアダプター的な音楽のコアなファンが多くて。やはり10代から20代、34歳までの方が多かったんですけれども、今は45歳以上の方たちも非常に増えてきています。

これは全体のエイジグループで分けていますけれども、もうちょっと細かくすると、一番多いゾーンは18歳から34歳までの女性なんです。ここだけの話なんですけれども、そうなっています。

男女比率も若干女性のほうが多いということで、デバイス別に見るとスマートフォンが92パーセント、Spotifyの平均利用時間は2時間以上なんですね。

(スライドを指して)こちらは昨年の11月に公表したSpotifyのユーザープロフィール調査で、ビデオリサーチさんで行なったものです。見方としてはブルーのラインがSpotifyユーザーで、ブルーの薄いほうがノンSpotifyユーザーのライフスタイルや使用状況を比べたものになります。

こちら側のAnytime, Anyplaceというところで2時間以上、先ほど132分と言いましたけれども、「1日のうちでどういう時に聴いていますか?」という(質問に)答えていただいたグラフなんですね。

「くつろぎ中」というのが一番多い答えで、次が「通勤通学中」、それから「運転中」「家事雑用中」と、見ていただいたとおりなんですけれども、ここで申し上げたいのが、「1日でこの時間に聴いている」ということではなくて「ながら聴き」なんですね。

朝から夜、寝る時までいろんな聴き方をされていて、常に音楽に触れている方もいらっしゃると思います。「とにかくなにかをしながら聴いている」という状況なので、やっぱりターゲットに対するタッチポイントが非常に長いんですね。

「Spotifyユーザーは行動派」と書いているのも、非ユーザーと比べて、例えば「外食しますよ」「映画館に行きますよ」と、こういったアウトドアや外に行く行動派、アクティブに動いていらっしゃる方が多いという結果が増えています。

デバイスの制限なく、ユーザーに広告を配信する

石井:実際にSpotifyにどういった方々が広告を出しているのか。これは聴くメディアなので、音声でのブランディングをしたいというブランドさんに使っていただいています。

インダストリー別では、消費財系とか、テクノロジー、エンターテイメント、それから若者向けのラグジュアリーブランドの企業様などに広告を出していただいています。

(スライドを指して)すみません、ちょっともう1回戻っていただいて。クロスプラットフォームでの配信が可能ということで、スマートフォン、タブレット、デスクトップ、先ほど「車で聴いていますよ」という方もいましたけれども、スマートスピーカーや車など、いつも使っていらっしゃるところに配信をすることができる。

楽曲間のブレイクに広告を配信するので、シェアオブボイスが100パーセント。音楽を聴いていて、広告が入ってきそうなので消すという方はなかなかいないと思いますので、シェアオブボイスも100パーセントとなっております。

音声だけではなくてコンパニオンバナーというものがついていますので、クリック可能なコンパニオンバナーでサイト誘導ということがありますけれども、音楽を聴いていて気になった時に、そのコンパニオンバナーを見るとクリックができる。

実際にその人が見ていることを判別して広告を出すようになっているので、こちらも見逃すことがないような設計になっています。

(スライドを指して)そして、次に行っていただくんですけれども、実際の事例です。

(動画が流れる)

という音声広告なんですけれども、これはワーナーブラザーズさんの『Diner ダイナー』という映画の広告で使っていただいたものです。

ちょっと残念なのが、実はこれ、バイノーラルの音声広告になっていまして。今日の会場の音響ではわかりませんでしたが、実際にはほとんどの方は音楽を聴かれる時にイヤフォンをしていますので、右と左で違うバイノーラルサウンドで流れる。

バイノーラルの効果は、立体的で臨場感があること。それから音との距離感があること。耳の後ろで右から左へ音が回ってくる。ワーナーブラザーズさんにはその3D音声広告を使っていただいたんですね。

実際にワーナーさんはいろんな広告を打っていらっしゃいますし、オンラインでも効果的にメディアを使っていらっしゃるんですけれども、今までと違ったことに挑戦したいということでSpotifyを使っていただきました。

あと、Spotifyに出していただくきっかけとなったのが、先ほどのスライドで「Spotifyのユーザーは行動派」というのがあって、映画館に行く率が非ユーザーより2倍ぐらい高いというのがあったと思います。

そこに使うお金も多いということで、ワーナーさんは情報とかファッションとか、新しいトレンドに敏感な人たちにメッセージを届けることができるということで選んでいただきました。

実際に効果が出まして、ベンチマークの約2倍ぐらいのクリック数レートをたたき出しました。

(スライドを指して)次の事例です。

(動画が流れる)

こちらもみなさん、お聴きになったことがあるんじゃないかなと思います。メイスイという、カッパのキャラクターのテレビCMでもお馴染みの浄水器メーカーで、懐かしいと思われる方も多いと思います。

テレビよりも効果的ということで、ラジオ広告をやってらっしゃったのでSpotifyでもやってみようとなり、今回は「#ハッピーマイ泡(アワー)」キャンペーンというソーダメーカーの広告なんですね。

どちらかというとtoBのビジネスなので、消費者への接点が少ないということでSpotifyを使って音声広告をやってみたんですね。最後のほうのナレーションでは「プレイリストに入れてほしいな」と、ユーモラスな工夫もありました。

こちらも、やはり若年層を狙ったんですね。デジタルの広告なので、まずは20歳以上40代まででやってみて。本当はさらに若い層に当てたかったんですけれども、実際は25歳以上の方で聴いている人が多くて。

なのでそれ以下のセグメントは切って、フォーカスしてやったところ、こちらもクリック数レートで通常の1.6倍の結果になってご満足いただけました。

音声広告なので、クリエイティブとしては正解というものがまだないんですけれども、各社さんいろいろ工夫を凝らしてやっていらっしゃるので、私たちも今後の展開を非常に楽しみにしています。