就職活動ではなく「就社活動」になっている

嶋﨑:次の質問にもつながるんですけれども、聞く側からすると、それは理想的と思う中で、現実的には、卵が先か鶏が先かのように、「経営が変わるの? 人事が変わるの?」のような、問題もあると思います。

次の質問にも含まれるんですが、そういう風土やカルチャーをどうやって作るのか、経営と人事のあり方がどうやって変わるのか。雇用じゃなくて外部をもっと活用していく新しい戦略のカルチャーをうまく作れている会社はどんな会社なのか。むしろどうやって作るべきなのか。誰からアプローチするべきなのか。どのようにお考えですか。

岡本:これはすごく難しい質問なんですけど、外部人材を活用するカルチャーにおいて一番弊害になっているのは終身雇用、新卒一括採用です。ちなみに終身雇用で新卒一括採用をやっているのは日本ぐらいなんですよね。

経団連などの大きな団体も新卒一括採用を止めるべきだと公には言っているんですけど、実際問題、みんな止められていないのが日本の実態になっています。それがなぜ悪いかというと、結局、新卒から採用して同じように教育するために「就職活動」と言っているんですけど、実際は「就社活動」ですよね。会社に入る、どの会社に入るのかをみなさん頭の中で描いているんじゃないかなと思います。

新卒一括採用をやることによって、自分のスキルや部門、どういった仕事をするかだけじゃなく会社の中でどういうふうに貢献するかというような会社の軸がどんどん強くなってきてしまって、それによってどうしてもこの就職、自分の無難意識というんですかね。そういったものが高まることによってどうしても外部の方が入って行きづらくなって、中途採用が入ってきてもどうもカルチャー的に合わなくなってしまうみたいな。

そんなことが起きてしまっているんじゃないかなと思います。ですので、外部人材を活用する第一歩はまず中途採用。それができないと、たぶん外部人材活用はまだできないんじゃないかなと思います。中途採用の次に来るのが外部の人材の活用ということになると思いますが、これも正直いうと、試していく、学んでいくのが一番大切なんじゃないかなと思います。みなさんご存知の通り、これから労働人口がどんどん減っていきますよね。

安倍政権が働き方改革の中でフリーランス活用を明確に言い出したのが3年くらい前ですけど、これは背景としては労働人口が足りなくなっていくときにフリーランスの空き時間をうまく活用していかないと、この労働人口の減少を止められないということなんですよね。じゃあ本当に正社員で人が採用できなくなったときにそこで初めてフリーランスを使ってみようかと言い出したら、もうこれじゃ遅いんですよね。

その時にはもうしっかりとフリーランスを活用できるようになっていなければいけないと。どういうふうなところが必要となってくるかというと、例えば雇用されている方ですと、労働時間というかたちで人の管理をすると思うんですけど、フリーランスになりますと業務委託になりますので、成果・アウトプットで評価してなければいけないんですよね。これは仕事の仕方が変わるんですよ。

しっかりと「いつまでにこれを出してください」といった、成果物だけで評価をしなければいけないので、「時間をかければ評価ですよ」ということではなくなってくるんですよね。そういった方と時間で管理するという両方の方が社内にいる状態でそれぞれに成果を出してもらう。

このチームのマネジメントは大変なんですよね。なので、マネージャーもそういうことをこれから勉強していかなければいけないんですけど、いきなりそれを今年からやると言われても無理ですよね。なので、これを3~5年ぐらいかけて組織としてそういった文化を熟成していくのは、今から着手しないと間に合わない気がしますね。

フリーランスの成果を計る指標とは

嶋﨑:弊社でもちょこちょこアウトソースするんですけれども、あまりそんなことをきちんと考えたことはなくてですね(笑)。みらいワークスさんとのプロ人材活用で行くとその成果にコミットするところを約束されている感じで取引されてたりするんですか?

岡本:やはり月100万円以上をフリーランスの方にお支払いする、単価が高い仕事をしていますので、当然のように成果はお客様も求めてきますし、我々もそれをちゃんと成し遂げられる人を選択してお願いするようにしています。

ただ、その成果の測り方は当然いろいろあるんじゃないかなと思っています。例えば、なにかのプロジェクトをやっているときに、プロジェクトを成功に導くことを成果だと言われてしまうと、それはプロジェクトマネージャが決裁権を持ってやっていないとできないので。

嶋﨑:そうですね。

岡本:その中のどの部分をフリーランスの方に成果として求めるか。例えばプロジェクトの管理をサポートしている立場であれば、そのスケジュール進行、もしくはその課題の管理がしっかりできている状態がその方のパフォーマンスだったりします。

ただ、それをどうプロジェクトでうまくするかは、意思決定をするプロジェクトマネージャ、社員の方の役割があってできる事だと思うんですけど、この辺の役割分担はしっかりと切り分けて、「ここは社内ですよ」「ここは外部でお願いしますよ」とやっていくことにスキルが必要なんですよね。

嶋﨑:なるほど。ありがとうございます。そんな中で逆にいうと、これが出来ない会社は、どんな特徴がありますか。

岡本:これさっきほぼ言っちゃいましたけど(笑)。

嶋﨑:そうですよね(笑)。

岡本:新卒一括採用でやってるような会社で、外部から中途を受け入れていない会社。あとは外注に対して丸投げする会社。だいたいこの辺が特徴だと思います。とくにIT系の部門はシステムインテグレーターや外資系のコンサルティングファームに仕事を丸投げてる日本企業は多いんですよ。

そういう会社は正直、外部の活用はうまくないですね。そういう時に仕事がうまくいかなかったことを外部のベンダーのせいにするんですよね。たぶん、うまくいかないのってほぼ社内のせいなんですよ。

ちゃんと仕事の依頼内容が定義できていないから、向こうも力を発揮できていないことがほとんどですよね。そういったところをわかることが必要なんじゃないかなと思いますね。

嶋﨑:みらいワークスさんは発注取引が始まる前に、そこらへんの調整も全部やりにいく感じなんですか?

岡本:そうですね。そこは我々が間に入っている価値だと思っています。プロ人材のスキルセットだけでなく、業務のスケジュールやスコープ、そこも含めて我々はカチっと固めて、仕事をお願いしています。これが我々の価値なのではないかなと考えています。

嶋﨑:ありがとうございます。

成長スピードと採用戦略にはギャップが生じて当たり前

嶋﨑:続いて、先ほどのお話にあったように、どんどん事業の成長やテクノロジーのスピードが早まっている中で、人事としてどういうふうにアプローチしなきゃいけないんでしょうか。

外にお任せするという機能部的になっちゃっている会社もある中で、成長のスピード感が少しずつずれており、人事とか採用戦略はどんなふうにアプローチしていけばいいのかをお聞きしたいなと思ってるんですけど。

岡本:これはまず常にギャップは生じ続けるものという覚悟をしてやることが大切だと思います。逆にこれがうまくいっている会社って、事業の成長スピードのほうが遅いんじゃないかなと思ったほうがいいんじゃないかなと思います。どちらかというと経営や事業の状況は、どんどん変わっていくものなので後追いになってしまうのはしょうがないと思うんですよね。

という時にやはり人事採用などに関しては、固定観念に囚われずにフレキシブルに選択肢を選んでいくことが大切なのではないかなと思います。とくに人事部門の機能として、どうしても正社員を採用する、そして教育する、正社員向けの制度を作ることが人事の仕事だと定義をしてしまいがちなんですけど。

別にそれは自由に変えていいと思うんですよね。だから契約形態がなんであろうとそれを管理するのが人事の仕事ですと。人というものを最大化する。それが人事の仕事ですと定義してしまった瞬間に選択肢ってどんどん広くなってくると思うんですよね。

なので、経営陣に対して時代がこれだけ変わっているので人事もこうやって変えていきましょうとか。そういった働き方改革ができる人事だったら素晴らしいなと思います。

あとは個人的に思うことは人事部門の方がずっと人事に居続けるのはあまり良くないんじゃないかなと思います。やはり事業サイドをしっかり知っている人が人事に来て、その両方の通訳をする。両方の事情がわかっている人がやっていかないとうまくいかないじゃないかなと思います。「企業は人がすべてだ」と言う方がいらっしゃいますけど、確かにそうなんですよね。

ただそれだけ重要な部門なのにそこがかたちとして扱われていないような会社が多いんじゃないかなと思っています。だからこそ、仕事のキャリアを考えていくときに人事の仕事をしているということ自体が、その後の経営者になっていく、上に上がっていくためには必要な経験になっていく。

文化の変化が起きていけば、こういったギャップも自然に埋まっていくんじゃないかと思いますね。

人事が市場を把握し、社内で発信する必要性

嶋﨑:ありがとうございます。人事はどうアップデートしていくべきなんでしょうね? 岡本さんは代表取締役社長という立場で、例えば、人事の方から「こういうふうに変わっていかなければいけないんですよ」みたいなことを発信されてきて、イラつかないのか?とか。

社長によっては自分の会社の採用をぜんぜん知らないとか、採用に全くタッチしていないみたいな会社が多いなと僕は思っている中で。そういう人事側から経営側への発信をやっていいんですか? 人事の部門ができないと思っている方もいるんじゃないかなと思うんですけど。

そういう意味では人事側がアップデートをしていかなければいけないのか。こうアップデートすればもっと作用が強化されたとか。会社の成長に伴う、適材適所の外部人材活用などにつながっていくものはどんなものか。このような状況にお考えはありますか?

岡本:やはり人事の方からそういう新しい施策だったり、「こうやったほうがいいですよ、世の中こうなってますよ」という発信は、経営者に対してどんどんしていくべきだと思います。

経営者は、人事のことだけを見ているわけではなく、いろんなことを見ていますので。人事という機能軸で市場をしっかりと把握するのは、その部門の方の必要な役割だと思うんですよね。

ですので、今日みたいな展示会とかに来て、世の中の情報を仕入れることだったり、その中でどうやってそれが自社に活かしていけるかを提案していくことがすごい大切だと思います。

提案するにあたって、なにをその会社自体が重視しているのか。今、経営者はどういう優先順位で物事を考えているのか。しっかりと理解した上でその文脈に合うかたちで提案しなければ、当然のように刺さっていかないですよね。

これは人事に限らず、社内でなにか物事を通すときには常にそうだと思うんですけど、とくに人事で難しいのが法律関連が非常に複雑というか。どんどん変わっていきますし。逆のパターンもあるんですよね。

経営者から「こういったことがやりたい」と言って、どんどんアイディアが出てくるのに、「そのアイディアが法律的にはできません」ということもあったりするので、すごく大変な部門だとは思います。

ただ、それもアイディアが出ないと進まないと思いますので、ぜひ人事の方には世の中のいろいろな新しい会社の取り組みをどんどん情報発信してほしいですね。1回で伝わることってあまりないと思います。5回、10回いろんな情報を、角度を変えながら放り込むことによってある時、ピンと突き刺さって、物事が動き出すこともあると思いますので。めげずに提案し続けることが大切なんじゃないかなと思います。

あとは、これよくある話なんですけど、「どこの会社が始めてますよ」「この業界でこんな取り組みやっていますよ」というような提案の仕方って刺さるんですよ。会社によって違うんですけど、「この会社がやったらうちの会社もやらなくちゃいけない」と経営者は思うんですよね。

「ここの会社がやったら必ず真似しなくちゃいけない」と明確に言っている会社があるんですよ。だとしたらその会社の情報を調べて、それを持っていけばすぐに物事が進むみたいなことが起きてくると思うんですね。なので、これは各社によって社内の調整の仕方が違うんじゃないかなと思います。

嶋﨑:だからきちんと情報収集をしなきゃいけないということですね。

自社に導入できるギリギリを攻めるスキル

嶋﨑:機能部として事業計画で採用……年間採用人数の目標があってKPIで何人取らなきゃいけないことに翻弄されるだけではなくて、会社を成長させるために、もっといろんな同業他社や競合、異分野を含め、どうやって成長しているのか。人事が調べに行かないことには、動いていかない感じですか?

岡本:それは人事に限らずなんですけど、これからビジネスの世界で生きていく方は自分が情報収集をして、自ら動くことが必須になってくるんじゃないかなと思います。

そうじゃなくてオペレーションだけをやる人は、いつかはAIやロボットなどに置き換わっていってしまう仕事をしていることを意味するんじゃないかなと思います。

だからこそ、情報収集して、「この会社だったらこういったことが適応できる」とか、そうやって考えながら手探りで物事を進めていくこと。こういったことはおそらくは人間じゃないとできないことです。

しばらくの間はそうだと思いますので、ぜひそういった人じゃないとできないところに対して逃げずに戦い続けることをやっていかなければいけない時代なんじゃないかなと思いますね。

嶋﨑:人事が戦わなきゃいけないんですね。経営というか人事も戦わなきゃいけない。

岡本:それは本当そう思いますね。とくに人事制度は法律的にも非常に難しい問題が多いな思っていますし、どうしても日本は労働法というものがありますよね。歴史的にオフィスワークじゃないところから出てきている法律が多かったりして、実態と乖離することもよく起きちゃうんですよね。

ただ、それを管理しているからといって杓子定規にやるものではなく、どうやったらそれを実現できるか。この会社だったらここまでできるはずとか。そういったギリギリのところをうまく調整していく。そういったさじ加減をどうするかは、絶妙なスキルだったりするんじゃないかなと思います。

なにかこれから成長を遂げていこうとか、世の中を変えようと思っている会社であれば、そういった人事はもう喉から手が出るくらい欲しい逸材だと思います。ぜひそういった人材が世の中に増えていってくれればいいなと切に願っています。

あと10年経てば、日本の働き方が変わる

嶋﨑:ありがとうございます。時間が迫ってきていますので、最後に一点。今、HR EXPOでここにいる人、この外の会社でやっている人たちに聞かれると怒られるかもしれないんですけど。

外部人材の活用を含め、きちんと人材を活用できていないのにエンゲージメントばかり測っていて、きちんと人材活用する前に、その後するべきことを先にやって、やった気になってないかというのはちょっと思ったりするんですけど(笑)。

エンゲージメントを測って、社員のネガティブ情報をあぶり出して対策をかけていく前に、「やることなにかあるんじゃないの?」と。どうですか。

岡本:これ日本人あるあるだと思うんですけど(笑)。目的と手段が逆になっている会社は多いんですよね。だから例えばエンゲージメントは、従業員の方々の満足度を上げて、例えば離職率を下げるとか、よりパフォーマンスを上げてもらう目的があってそれでツール導入するということなんですけど。だいたいツール導入という手段を目的化してしまって、物事が進む日本企業が非常に多いです。

例えば、我々はRPAというロボティックスの導入をサポートしているんですけど、これも社長がどこかからRPAを聞いてきて、どこかの部署でそれを導入するぞと言っているじゃないですか。

そうすると部長はRPA導入するのが目的になって、どうやってどこに入れればいいのかという視点で物事を推進し始めるんですね。本来はRPAは業務効率化のためのものなので、当然、業務効率をやっていく中でここはRPAという手段を使えば効率化するというアプローチが正しいはずです。

キーワードや手段などが先行して物事が進みやすいのが日本企業においてよくあることだと思いますので、現場の方々が自分の部門の中でなにか上から降ってきたときに、ちゃんとその手段と目的を切り分けてコミュニケーションを取ることが大切なんじゃないかなと思います。

部下の方が上司の方に問い正す。こういったことを一つひとつやらないと、社内でなかなかうまくコミュニケーションはとれなくなってしまいます。私自身も気をつけるようにしています(笑)。

嶋﨑:そうですね。なにか本当に「日本のHRテックと、グローバルにおけるHRテックはぜんぜん違うな、日本しかないよね、こんなことやってるの」というようなので、儲かっている会社さんがいっぱいいらっしゃるなというのがあったので。本当に不思議な国だなと思ってたんですけど。

岡本:ただこれも変わってきているんじゃないかなと思っています。感覚的にいうと、2000年以降に働き始めた、ITを当たり前のように使って働いている40歳前後の方々と、それより上の方々の仕事に対する考え方やスタンスが違うなと私自身、感じています。

なので、そういった方々が会社や世の中で、しっかりとした立場で仕事をする時代になると、結果として変わってくるんじゃないかと。人が変わるというよりも世代交代が起きると日本全体の働き方は変わるんじゃないかなと思っています。でもまだそれは10年ぐらいかかっちゃいますね。

嶋﨑:そうですね(笑)。10年はかかりますね。ありがとうございます。お時間になりましたので、以上でみらいワークスとアスタミューゼのセッションを終わらせていただきます。

(会場拍手)