みらいワークスの理念

嶋﨑真太郎氏(以下、嶋﨑):それでは、はじめたいと思います。まずみらいワークスさんの会社概要などをお話いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

岡本祥治氏(以下、岡本):みなさんはじめまして。株式会社みらいワークスの岡本と申します。本日はこういう場所でお話しさせていただく機会をいただけて非常に光栄です。まず最初に弊社みらいワークスのことをご存知でない方もいらっしゃると思いますので、みらいワークスについてのご紹介をさせていきたいと思います。

うちの会社は「日本を元気にしよう」という志を持って立ち上がった会社で、「日本のみらいの為に挑戦する人を増やす」という経営理念を掲げています。もともと私自身が47都道府県を全部自分で回り、その中で日本を元気にしたいと思って起業した経緯があります。そういった中でプロ人材がいろんな活躍の場を求めていると感じていました。

とくに個人事業主やベンチャー企業を経営する方々が増えてくる中で、自分自身も起業して、日本はどうしてもそういった方々向けの社会インフラが整っていないと感じました。そういったものを作ることによって、日本が元気になるのではないかと。そんなことを考えて今の経営理念に至っています。うちの会社の全社員は、名刺に点字でこの経営理念を刻んであります。それぐらい、この理念を大切にしているような会社です。

ビジネスモデルですが、現在登録いただいているプロ人材の方が8,700名ほどいらっしゃいます。この方々は個人事業主の方、もしくはベンチャー企業の社長といった独立している方々がほとんどです。

この方々に業務委託で入る仕事を紹介することが我々の主軸のビジネスとなっております。お仕事をいただくクライアント企業様は、大企業を中心として一部上場企業等がメインとなりますが、そういったお客様から我々は業務委託で仕事を受けて、業務委託で登録者の方に再発注するビジネスモデルとなります。

その間のマージンが我々の利益となります。それ以外にも通常の転職支援だったり、あとはフリーランスや起業家の方の再就職の支援もやっています。

「プロ人材」の3つのステージをサポート

岡本:私自身が、独立・起業した時には、一度独立したら片道切符で、もう二度とサラリーマンに戻らない印象だったんですけど、世の中が変わってきていて、一生のうち、限られた時間はフリーランスや起業家として過ごし、その後、また再就職する、そんな方々も増えてきていて、そういったところのニーズを我々の方でサポートさせていただいております。

実際に我々のサービスをどのように使っていただいているか、説明させていただきますと、社内でなにかプロジェクトを立ち上げる際に、正社員の方だけだと物事が進められないことがよく起きます。その際に弊社の登録プロ人材の中から必要なメンバーをご紹介し、サポートさせていただいております。

また予期せぬ欠員ということで、社員の方が転職する、産休に入る。そういったことで突然人がいなくなったときにそれを穴埋めするかたちで我々のプロ人材を活用いただいております。

我々のこの社会インフラが広がっていくことによって目指す世界観ですが、我々は「プロフェッショナル人材が挑戦するエコシステムを創造する」というビジョンを掲げており、プロ人材がライフステージに応じて「独立」「起業」「転職」を自由に選択できる社会をつくることを目指しております。

今は転職と同じような感覚で独立・起業する人が増えてきています。しかし、日本で人材紹介をやっている会社は2万社ぐらいありますが、基本的に雇用という働き方しかサポートできていないです。経産省の資料によりますと、日本で広い意味でのフリーランスとして働いている方々、副業をやっている方も含めて、1千万人ぐらいいるそうです。

働いている方の6人に1人くらいが、もうフリーランスになっているのに、日本の人材マーケットはこういった働き方の変化にもまだまだついていけていないのが現状です。

そういった中で、我々はプロ人材の方々が働きたいときに自分の働き方に合った選択肢を提供できます。ライフステージに合わせて、働き方の選択肢を選んでいきたいという方々が増えている中で、我々がそういったことをどんな働き方も展開できる会社になることを目指しています。

嶋﨑:ありがとうございます。

プロジェクトを変える感覚でステージを変える

嶋﨑:ここからはディスカッションしていきたいんですけど、その前にいくつか今の会社紹介の中でうかがいたいことがあったんですが。転職と同じように独立していく人が今増えてきているという中で、その後、もう一回会社に戻る人たちってどうなるんですかね。どういうふうに戻るのかなと。

僕は自分が独立した後に「会社にもう一回戻ろう」なんてことは勇気出ないと思うので。どういうサポートや支援をして、またサラリーマンというか雇用される側のほうに戻るのかなって。その心境はどういう感じなんでしょうか。

岡本:私自身も独立してから、戻っていないので(笑)。その心境は私自身の話ではないんですけど、実際にサポートさせていただいた方々がどういった目的でまた再就職をしたかというと、やはり個人で働いている。もしくはベンチャー企業を立ち上げていると、どうしてもやれることは限界があるんですよね。

ですので、何のために起業したかという時に、なにか社会に対して大きなインパクトを与えたいとか、大きな物事を変えていきたいと思って起業したタイプの方は、それが独立していようが会社に所属していようがあまり関係ないんですよね。

この会社に再就職した方が自分がやりたいことを実現できるのであれば、再就職するという選択肢を選びます。ただそこでやりたいことが一段落する、もしくはプロジェクトが終わったらまた次のステップを行くという感じなので。

プロジェクトを変える感覚で転職とかフリーランスになるとか、そういった働き方を選ぶと方が増えてきているんじゃないかなと思いますね。

嶋﨑:なるほど。雇用が手段みたいな感じですよね。やりたいことを実現するための手段として雇用されている会社に所属した方がやりやすいだったり。

金銭に悩む経営者の仕事をサポート

嶋﨑:自分がやりたいことをやるためには会社にいない方がやりやすいという選択をする人材がちょこちょこはじめているみたいなイメージですよね。

岡本:そうですね。うちの社内でも、フリーランスの方にうちの会社の仕事自体を手伝ってもらっています。実は去年までうちのマーケティングをやってもらっていたフリーランスの方がいたんですけど、その方がまさに1月に再就職して(笑)。うちの仕事をそこで終わりにしないといけないという話になったんです。

再就職先は、最近上場が決まった会社で、交渉してもらって副業を認めてもらい、向こうの会社の社員として働きながら、うちの会社の仕事を副業でやる状態が続いています。我々もそういった意味で、再就職するにあたり「こんなことがオフィシャルになるんだ」と経験したばかりです。

嶋﨑:なるほど。ありがとうございます。そんなフリー側の方たちの支援をみらいワークスさんはやられているということでしょうか?

岡本:そうですね。我々はあくまでもフリーランスの方や起業家の方々がやりたいことを実現するに当たって、なにかお金を稼ぐ手段というものが必要になる場面が非常に多く、例えば、ベンチャー企業を経営していて資金調達をするまでの期間、なんの体制もまだできていないと、やはり金銭的には厳しくなってきますよね。そういう時に業務委託でできる仕事を提供することによって、それでお金を回しながらプロダクト開発をするといった経営の仕方をしている方が増えてきています。

なので、人によって我々のプラットフォームの活用方法はそれぞれなんですけど、あくまでも個人の方々がお金を得る、キャッシュを稼ぐ、そういった手段を提供している。これが一番の基本です。

その他、我々は大企業の新規事業開発といった仕事もさせていただいていますので、なかなか個人ではたどり着けないような仕事をすることもできます。そういった意味で我々のプラットフォームを活用いただいている方もいらっしゃいますね。

クラウドソーシングとどう違う?

嶋﨑:セッションに入る前に最後の質問をしたいんですけど、フリーを活用する会社などを、サービスとして提供している会社って、例えば、ランサーズさんやクラウドワークスさんなど、いろいろあると思うんですけど。みらいワークスさんと、それらの企業と一番違うポイントは、どういうポイントですか。

岡本:クラウドソーシングの会社と比べて一番違うところは扱っている仕事の差になります。クラウドソーシングですと、例えばライティングやウェブデザイン、ロゴを作るなど、多くはリモートでできる仕事になり、月額の報酬の平均が4万円ぐらいと言われています。我々の実際に活躍いただいているフリーのプロ人材の方々の月額の平均報酬は100万円を超えています。

金額だけで言ってもぜんぜん違う種類の仕事をしていることがわかっていただけるかと思いますし、あとは実際に現場に常駐して実行力を提供するような仕事が多くなってきていますので、そういった意味でも扱っている仕事がぜんぜん違うのかなと思っています。

あとはクライアントの対象も違ったりします。クラウドソーシング等は、中小企業やベンチャー企業がクライアントになることが多いです。

我々は大企業がほとんどになっていますので、例えばリクルートさん、楽天さん、AIGグループさんや、老舗大企業の古河電工グループさんなどがご利用くださっているのは大きな特徴だと思いますね。

嶋﨑:ただ単にランクが高いというよりかは、ここにも書いているようなプロ人材を求めているようなニュアンスでいくと、大企業の方が求められているニーズが高まっている感じなんですか?

岡本:実際はどんな企業でもプロ人材を活用したいという希望はありますが、やはり我々の登録プロ人材が月100万円以上の報酬を得たいということで、その単価を支払えるお客様となると大企業になってしまうのが現実なのかなと思っています。ただベンチャー企業の方がおもしろい仕事が多かったりします。

嶋﨑:そうですよね。

岡本:はい。面白い仕事をしたいというプロ人材のニーズを満たすために、ベンチャー企業の仕事を受託することもあります。

嶋﨑:なるほど。ありがとうございます。

経営と人事のつながりはどうあるべきか

嶋﨑:では、ここからはいくつか事前に僕のほうで聞きたいことをピックアップしてきていまして。ここに書いてある6つの項目、最後は会場の方からの質問の流れで、ディスカッションしたいなと。

事前にすり合わせをしていないので、ここでアドリブで答えていただきます(笑)。僕もアドリブで突っ込んでいくかたちでいきたいなと思います。

プロフェッショナル人材の活用となると単価も高かったりすると、人事の現場だけでは決め切れない部分もあったりすると思います。経営の戦略の中にプロ人材の活用などがないといけない、一方で、日本の企業って経営、人事、コーポレート、営業とか縦割りになっていると思うんですけど。

経営と人事のつながりはどうあるべきなんでしょうか。みらいワークスの岡本社長の観点からお話いただければなと思います。ディスっていただいても大丈夫です(笑)。

岡本:この質問の趣旨を今初めて聞いた感じなんですけど(笑)。まず経営戦略と人事戦略というものは当然のように密につながっているのは昔からずっとそうだと思うんですね。

ただ、今おっしゃった通りでとくに大企業になればなるほど、経営と人事が完全に切り離されて、人事というものがオペレーション部門だけになってしまっている。そのような実態があるのではないかなと思います。

という中で、また1つ大きな環境変化があって最近起きているのが、経営戦略が今までと違うようなかたちで実行されなければいけないような環境になっています。

世の中のビジネスのスピードがどんどん加速してきているんですよね。今なにかビジネスに関わっている会社も3年とか5年したら、もう完全に敗者に変わっていってしまう。そのぐらい速い環境ですし、ぜんぜん関係ない異業種が、同じフィールドに参入してくる。これも当たり前ですよね。

つまりは何が言いたいかというと経営というものの先行きを予測することが難しくなってきている。そうなると当然社内で必要となる人材というものも、例えば、10~20年後どんな人が必要かを予測して、それに対して教育を施していくこととか。

そんなことは無理な時代になっているんですよね。そうすると例えば、新卒一括採用でやってその人たちを育てあげて戦っていくとか、そんな戦い方をしてると当然のようにもう勝てないんですよ。

そうするとどうやって戦っていくか。これは人材を正社員だけでなく、例えば有期雇用みたいなテンポラルの方、業務委託で外部から連れてくるプロ人材の方、あとは外部のアライアンス先、パートナーシップを組んでやる。これらを総合して、どうやってビジネスを回す人材を確保するかを考えていかなければいけない時代になってきていると思います。

その時に問題になるのは、社内でこのマネジメントをどこがやるべきかなんですけど、ご存知のとおり、大企業ですと、外部の人材を調達するところが調達部門、採用するのが人事部門で、実際にアライアンスを組んだりするのが事業部門なので、機能が全部分割されてしまっているんですよね。本来であればそういったリソースのマネジメント、とくにヒューマンリソースのマネジメントはどこかで一括してやるべきだと思います。

これからの人事戦略の姿

岡本:今となれば、事業部門はしっかりとそういう機能になって全体を統括していく。そういったことをしなければ今のこのスピードが速くなっている時代は勝っていけないんじゃないかなと思います。

ですので、改めてこれを見たときに思うことは、やはり経営環境が変わったときにそれに合わせて人事の考え方も変えていかなければいけないと思います。たぶんこれからもそういったことは続くんじゃないかなと思っています。

例えば今起きている変化ですと、2000年代、2005年くらいから大企業はアウトソースをやるようになってきました。

IT部門を外部にアウトソースする。私がいたアクセンチュアもそうですし、IBMや日立などに大がかりにアウトソースすることが起きてたんですけど。今はそれがまた元に戻るような動きが出てきているんですよね。

デジタルトランスフォーメーションと言われるようなITを自社の経営にどうやって活かすか。そんなことをやろうとする会社が増えています。デジタルトランスフォーメーションをしないと競争に勝てないからなんですね。

という時にIT部門をアウトソースしてると、競争の一番強いところを外部に出しているので、勝てないんですよね。なので、社内にもう一度戻して、そこで競争力を上げて、再度戦い方を変えていく。これも経営が変わったタイミングで、外部のリソースの使い方が変わったことを意味するんですよね。

5年、10年といった単位だけでなく数年単位でも、戦い方はどんどん見直さなければいけない時代になっていますので、人事の戦略を世の中のマーケットと会社の状況を見ながら、物事を組み立てないと生きてはいけない時代になったのではないかと思います。