ヤフーの広告部門を率いる赤星氏が登壇

宮本淳氏(以下、宮本):みなさんこんにちは。ニールセンの宮本でございます。今日は「『People Based』メディア計測がもたらすデジタルコンテンツの新しい価値」ということで、私が少しナビゲーションを務めさせていただきながら、ゲストでヤフーの赤星さんをお迎えして、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。赤星さん、お座りください。

赤星大偉氏(以下、赤星):ありがとうございます。改めまして、ヤフーの赤星と申します。私はヤフーに新卒で入社させていただきまして。もともとは広告メディアのエンジニアをやらせていただいて、そこからいわゆる広告サイエンスですとか。あとは、昔はインタレストマッチと呼ばせていただいていたんですけど、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)の商品企画や、ディスプレイ広告のプロダクト責任者をやらせていただきました。

2016年に一度ヤフーを離れまして、Facebookでエンターテイメント業種の広告主の担当営業としてのお仕事を2年ほどさせていただきました。2018年からヤフーで出戻りというかたちで戻ってまいりまして、今年の4月からマーケティングソリューションズ統括本部長というかたちで、ヤフーの中でいう広告の部門を率いています。あまりこういうメディア露出するのには慣れていないので(笑)。どうぞよろしくお願いします。

宮本:ありがとうございます。よろしくお願いいたします。みなさん、まず拍手をお願いします。

(会場拍手)

アドフラウドに対する広告業界の危機感

宮本:いま赤星さんにおっしゃっていただいたように、ヤフーさんにこういった場でしゃべっていただけるのはけっこう珍しいことかなと思います。しかも、今日はわりと核心に触れた話をしていただきたいなと思っています。

もう1回タイトルなんですけれども、「『People Based』のデジタルメディアの計測」ですね。デジタルのコンテンツだったり、メディアの計測がどういう新しい価値を生むのだろうか? ということなんですけれども。今日はみなさんと、どういうふうに新しい価値を示せるのかを考えていきたいなと思います。

まず、実は切っても切り離せない「People Based」の裏側にあるものが、昨今みなさんが議題にされているアドベリフィケーション(アドベリ)ですね。こちらにありますように、ブランドセーフティ(広告主のブランド価値を守ること)だったりとか、あるいはアドフラウド(広告費の不正な横取り)、それからビューアビリティ(視認性)という問題が主に挙げられるかなと思っています。

このアドベリの問題は、当然のことながら広告主さんからすると、安心・安全にデジタルを使いたいということが根底にあるんだと思うんですね。アドベリの問題では、やっぱり、媒体社さんはどういう対応をしていくのかが非常にキーになってくると思います。ちなみにヤフーさんでは、アドベリへの対応をどんなふうにされていらっしゃるのでしょうか? 

赤星:ちょっとここから、Yahoo! JAPANのアドベリと言いますか、取り組みを簡単にご紹介させてください。非常にタイムリーなタイミングでお声掛けをいただいて、非常にありがたいなと。

これはちょうど昨年末にJIAA(一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会)さんが調査しているものです。いわゆる業界への課題意識ってどういうことを感じますか? というものです。これを見ると一目瞭然です。

これはパーセンテージなんですけれど、半数以上の方がアドフラウド対策をもっと媒体に求めていきたいと思っています。ブランドセーフティが非常に課題だよね、と。ご覧のとおり、業界としてはこういったところを真剣に取り組んでいかないといけないね、という声が上がっています。

デジタルマーケティングですと、いわゆるCPRがどうだとか、運用側のコストがどうで、ランニングがどうで、と。それも非常に重要なファクターなんですけれども。昨今、この(アドフラウドの)領域で非常によろしくないニュースが出ているせいか、ここに対する危機意識が業界全体としても非常に高いという事実があると思います。

ヤフーが掲げる「広告品質のダイヤモンド」

赤星:それで、実はゴールデンウィーク少し前にはなるんですけれども、我々Yahoo! JAPANは、20何年もインターネットサービスを展開させていただいておりまして、メディアとしても一定の地位というのがあるのかなというふうに思っています。

その中で、昨今のアドベリなどの問題を受けて、Yahoo! JAPANが日本の市場の中でしっかりリードを取って、こうした取り組みをしていかなきゃいけないかなと思っています。

その1つ目として、「広告品質のダイヤモンド」ということを提唱させていただきました。これは大きく言えば3つの領域の話があり、かつ細分化すると6つほど、それぞれブランドセーフティとかアドフラウドなどがあるかなと思います。本日は多少時間が限られてはいるんですけれども、一つひとつヤフーでどういうことをやっているのかを手始めにご紹介させていただきたいなと思っています。

まず1つ目がビューアビリティなんですが、これは非常に業界でもスタンダードになりつつあるなぁと思ってまして。ビューアブルインプレッションなどをどう計測するか。

これは日本の市場ではJIAAさんなどが先んじて定義されていますので、我々社内の媒体計測の方法とか、ビューアブルインプレッションへの対応もさることながら、いわゆるサードパーティに対してのこういったベンダーさんの計測を受け入れることも、実は新体制になって以降、発表させていただいています。

2番目のアドフラウドなんですが、これは多岐には不正リンクですとか、不正インプレッションのことを指しています。当然、ヤフーのYDN然り、そういったプロモーション広告を始めた当初から、いわゆる媒体さんに対してしっかりこういった対策がなされているかということは、ずっとやらせていただいていました。

当然ながら、パブリッシャーとして迎える際の審査もございますし、定期的にパトロール業務をすることで、例えば著作権といったようなものに違反していないかどうかチェックさせていただいたりですとか。不正なコンテンツが含まれていないかどうか。これはブランドセーフティにも少し通ずるところなんですけれども。そういった審査を厳格にさせていただいています。

すごくお恥ずかしながら、去年は少しNHKさんにも取り上げられてしまったんですけれども(笑)。ああいったアドフラウド対策などを強化させていきたいと思います。

広告主が安心して出向できる場を作るための取り組み

赤星:我々広告配信事業をやらせていただいているものとしては、売上にすごく直結するところではあるんですけれども、短期的な売上を捨ててでも、不正な面やブランドセーフティを侵害するような面は厳しく取り締まっていくということで、そういった業者さんを落とさせていただいたりもしておりました。

少し余談ですが……私もエンジニアなので、実はアドフラウド領域においては、ヤフーの中でも少しそういう仕事に携わらせていただいたことがあります。

我々はCtoCモデルで基本的に広告の使用を展開させていただいていますから、不正にクリックして予算消化しようというユーザーが一定数いるんですよね。私も実際、機械と人の両方でこういったものを判定しながら除外していく業務もやったことがあります。

昔はバーッと連続してクリックして、クリックのcookieを見ると全部統一されているので、これは全部不正だね、ということがわかったりするんですけど。それもどんどん巧妙化していって、途中から、cookieは変わるけどIPは変わらないとか。ユーザーエージェントは切り替えてるけど、ほかは変わらないとか。そういうふうに、どんどん巧妙化していって。

最終的には、本当かどうかわからないですけど、遠く離れた異国の地でいろんな端末を動かして、全部を偽装してクリックしている、という。おそらく4~5年前は、そういったことが横行していたのかなと思います。

ヤフーとしては、そういったものに非常に真摯に向き合って撲滅していくという取り組みをさせていただいております。そういったかたちで、広告主のみなさんにも非常に安心して(広告を)出していただけるような面を作ることに貢献していきたいなと思ってます。

プライバシーとか、これはどちらかと言うとユーザーの保護の観点が非常に強いんですけれども。ヤフーの中でいわゆるデータポリシーというものを定義させていただいておりまして。ユーザーのどういったデータを広告配信に使っているのかとか、いわゆるユーザーの行動ターゲットのオプトアウト(情報の受信を拒否する)機能というものを提供させていただきます。

もし自分自身が、いわゆるターゲティング広告が非常に気持ち悪いというふうに感じられる場合には、ネットワークを経由して、そういったものが嫌だということを意思表示できるようになっております。

アドベリに対応するための6つの軸

赤星:最適な広告フォーマットとアドクラッターは多少被る部分もあるんですけど。要は何が言いたいかと言うと、1つの面、1つのサイトの中が広告ばかりでコンテンツが形成されているような品質の低い面のことが、アドクラッターと呼ばれています。

我々はこういったスタンダードを作るにあたって、独自で作るというよりは、例えばUKの IAB Gold Standardなどの模範となるようなワールドスタンダードを網羅的に参考にさせていただいて、この6つの軸が重要だろうということで定義させていただきました。

本日のトピックは、People Basedなマーケティングを行ううえでは、どんどんターゲティングが細分化されていて、ユーザーがどんどん識別できていく世界においては、おそらくこのあたりの大前提も非常に重要になってくると思っております。それを進めるにあたっても、ヤフーはしっかりとアドベリフィケーションに対応しているということを、冒頭にお伝えさせていただきたいと思います。

宮本:赤星さん、ありがとうございます。やっぱりアドベリのところはおそらく媒体社さんだけでも、あるいは広告主さんだけでもということではなく、みなさんで取り組んでいくべき課題だと思いますし。

そういう中で、ナショナルメディアの最大手の1社であるヤフーさんが、自らこういう部分について、重要なところに取り組んでいかれていることを発表されたのは、非常に意義があることなのかなと思っていますし。ここに業界が追随していくと、もっともっと安心・安全なデジタルメディア、信頼できる透明性のようなところにつながっていくんじゃないかなと思います。

「オレオレKPI」「オレオレ認知」から脱却すべき

宮本:「People Based」のこの先に、実はもう1つの議論があって。「People Based」といったときに何が必要なのかと言うと、いわゆる販促のコンバージョンを中心にした媒体というよりは、どちらかというと消費者とコミュニケーションをするための広告媒体としてのデジタルメディアを考えようとしたときに、安心・安全は当たり前なんですけれども。その先に重要になってくるのが、実はターゲットであるユーザーとちゃんとコミュニケーションができているのか。

やっぱり商品を知ってもらって、好きになっていただいて、買っていただく、使っていただくところが非常に重要なポイントだと思います。これを理解して、デジタルメディアをどのように使っていけるのかが、アドフラウドの先にあるデジタルメディアの健全化という世界なのかなと思っています。

つまり、誰とコミュニケーションを取れるのかということを各メディアさんが可視化していくことが非常に重要なポイントになっていまして。ちなみにヤフーさんでは、この可視化という分野についてもいち早く取り組んでいただくというようなことで、いま弊社ともやらせていただいてるんですが。このあたりについてはどうでしょうか?

赤星:そうですね。ヤフーの1つ重要なこととしては、せっかく我々はビジネスをやらせていただいているので、広告主さんにとって日本で一番有益なことを中長期的にはちゃんとやっていかないといけないなと思ってます。

おそらくあとで出てくるんですが、やっぱり指標が全然てんでばらばらで、結局どういうメディアプランを組んだらいいのかがよくわからない。そういう現実が、非常に顧客ファーストじゃないなと思いますので。

先んじてニールセンさんから、DCR(デジタルコンテンツ視聴率)ですとか、そういったソリューションが出てくる分には、いち早く、自分たちのオレオレKPI、オレオレ認知ではなくてですね。第三者の視点に立った計測を当然すべきだなと思って、宮本さんとそういう話をさせていただいたということです。

デジタルコンテンツ視聴率のポイントは「人ベース」であること

宮本:ありがとうございます。いま赤星さんからDCRというふうに発言していただいたんですけれども、弊社がグローバルに展開しているデジタルコンテンツ視聴率が、まさにPeople Basedのデジタルのコンテンツやメディアの視聴率になっていると思うんです。

今年この国内での提供を始めまして、ヤフーさんからも推進にご協力いただいて、いまちょうどサービスの展開を始めさせていただいたところになります。

このデジタルコンテンツ視聴率の一番大きなポイントは、人ベースというところが一番大きなポイントです。例えば、日本のメディアマーケットを人ベースで見てみたときにどんな数字になるのかをちょっとサンプルでご紹介します。

これは、「トータルデジタル」というふうにありますけれども、パソコンとモバイルを包含したかたちで、ユニークなユーザー数を人ベースで出しています。これはちなみに、2018年6月から10月までということで、月間平均でデータを見たところなんですけれども。

ヤフーさんが6,700万、Googleさんが6,700万、YouTubeさんが6,200万というふうになっています。あと、リーチはテレビの表現の仕方とはちょっと違うんですけれども、人口ベースですから、月間でいうと1億3,000万人弱くらいの中の54パーセントくらいが、ヤフーさんというメディアを使ってるということですね。